日々の臨床 ②:12月25日月曜日<実録プライマリケア:KH君と歩んだ23年>

総合医療・プライマリケア

 

<実録プライマリケア:KH君と歩んだ23年>

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KH君の報告によると、彼とのお付き合いが23年にも及ぶことに、改めて驚きを感じています。

 

プライマリケアの要素の一つが継続性であることを感慨深く噛み締めています。

 

高円寺南診療所の開設者・管理者となったのが28年前の平成元年(1989年)7月、水氣道の発足が平成11年(2000年)ですから、その間の大部分の期間を、彼は高円寺南診療所や水氣道と共に歩んできたことになります。

 

 

重症のアトピー性皮膚炎、慢性アレルギー性鼻炎、慢性副鼻腔炎、アレルギー性結膜炎、気管支喘息、コミュニケーション障害、学習障害、不登校、引きこもりなど、KH君はこうした多くの困難を一つ一つ乗り越えてくることができました。

 

その間に、彼はホームヘルパー1級の資格を取得したり、交通機関に就職したりするなど、弛まず学習し、社会経験を重ねてきました。

 

少しずつですが次第に身体的・心理的・そして社会的な健康を獲得してきました。

 

 

文字を書くことは得手ではないようですが、苦にすることもなく、率直な自分の考えや気持ちを紙上にも記すことができるようになりました。

 

自身の欠如や苦手意識はまだ払拭されていません。しかし、たとえ苦手な課題であっても、必要とあれば、逃げることなく、避けることなく、誤魔化すことなく、真正面からその課題に取り組んでいく姿勢はしっかり身につけることができました。

 

意味のあることであれば、たとえ辛いことであっても、いずれ快感に転じることがあるということを繰り返し体験してきました。ですから、今後の彼の更なる成長や発展が期待されるところです。

 

 

またケアを受けたり、支えられたり、といった受け身の生き方が、自分のできる範囲で他者のお世話をするまでになりました。

 

KH君は、むしろ、人のお世話をできること、奉仕できることを誇りに感じています。

 

いざとなったら覚悟を決めて、恐れずに勇気をもち、たとえ半歩でも前進してみよう、たとえ結果がすぐに出せなくても、焦らずに、あわてずに、落ち着いて、何度でも繰り返してトライし続けようというチャレンジ精神が旺盛になってきました。

 

それが更なる自信となり、さらに、他者に対する信頼に繋がり、人生に希望をもつことで、大きな目標が定まりました。

 

 

また彼は、通院と水氣道によって、身体の呼吸法にとどまらず、魂の呼吸法をも身に着けつつあります。

 

それは、祈りと感謝です。祈りとは魂の呼気です。そして感謝とは魂の吸気です。

 

正しい呼吸法は、しっかりと息を吐くことによって、その反作用によって吐いた分だけの空気を自然に受け入れることです。

 

つまり希望をもって懸命に求めつつ、焦らずに待つことかげきれば、真に必要なものはおのずから与えられる、ということです。

 

 

彼は、自分自身が祈りの人であることには気づいていないかもしれませんが、心から感謝することができる人は、自分のために祈り続けている何者かの存在に気づいている人だといえるのではないでしょうか。

 

 

まさに継続は力なり、です。良い習慣を持てるということは第二の天性であると思います。

 

プライマリケアの意義や本質は、現場を知らない立派な学者が記した書物の理論からではなく、KH君たちと分かち合ってきた実践の歴史から学ぶことができたと言うことができると思います。