心身医学科(心療内科、脳神経内科、神経科を含む)
<一過性全健忘>
健忘とは、過去の一定期間の出来事を思い出せない状態をいいます。
健忘症とは、陳述記憶の障害を指します。これには前向性健忘(新しいことが覚えられない)と逆行性健忘(発症以前に覚えたことを思い出せない)があります。
追想できる範囲により、全健忘と部分健忘に分けられます。
一過性全健忘は、突然誘因なく発症し、発作中は意識清明であるが、前向性健忘と逆向性健忘の両症状を主徴とする症候群です。
発作は平均5~6時間続き、24時間以内に消失するといった予後良好な経過をたどります。
50~70歳代には75%と多いですが、40歳未満の発症は稀です。
見当識は保たれるが、近時記憶障害のため、同じ質問を繰り返します。
発作中の記憶は永久に欠落します。ただし、数唱などの即時記憶、自分の生い立ちなど遠隔記憶は保たれ、意味記憶や手続き記憶も保たれるので、車の運転、料理も可能です。
診断基準(1990年、Hodgeら)
1)発作中の情報が、その間ほとんど目撃した目撃者から得られる
2)発作中、明らかな順行性健忘が存在する
3)意識障害は無く、高次脳機能障害は健忘に限られる(失語や失行はない)
4)発作中および発作後に神経学的徴候はない
5)てんかんの特徴がない
6)発作は24時間以内に消失する
7)最近の頭部外傷や活動性のてんかん(治療中、過去2年間に発作があったもの)のある患者は除外する
原因は未だ不明で、従来から両側の海馬障害によると考えられています。
片頭痛、脳血管障害、代謝異常および脳静脈灌流異常などが推測されている他、精神的ストレスなど情動的なもの、入浴、水泳およびバルサルバ負荷が誘因になることが報告されています。
画像診断では、頭部単純MRI拡散強調像で、発症直後に異常はないが、6~72時間で海馬CA1領域を中心に小さな異常信号を検出でき10日後までに消失するのが観察できることがあります。
これは、一過性全健忘の特徴といわれ、診断の一助になります。
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