日々の臨床 ⑥:12月8日 金曜日<脳梗塞の再発予防としての抗血小板薬について>

心身医学科(心療内科、脳神経内科、神経科を含む)

 

<脳梗塞の再発予防としての抗血小板薬について>

 

 

脳梗塞の後遺症で不自由な生活をしている方は少なくありませんが、高円寺南診療所の患者さんでの問題点は、むしろ、幸いにも後遺症を残さなかったがゆえに、再発に対して無防備な方です。

 

意識的に詳しい問診をしない限り、このような重要な病歴は聞き取ることができません。

 

 

有力な脳梗塞再発予防には、抗血栓療法があります。

 

これは脳梗塞の病型と病態に対して正しい診断のもとに、適切な抗血栓薬を選択することが大切です。

 

代表的な薬剤としてはアスピリン®とシロスタゾール(プレタール®)がありますが、どちらにも一長一短があるので、両者を比較して紹介します。

 

 

もっとも、抗血栓療法を開始する際には、いずれの薬剤を使用するにしても高血圧がある場合、血圧値を130/80mmHg未満を目標に管理することが推奨されています。

 

 

まず、アスピリンの利点としては安価であること、服用早期に血小板凝集抑制効果があること、アテローム血栓症の発症を抑制するエビデンスが豊富であることなどです。

 

これに対して欠点は、出血性脳卒中や消化管出血の発症が多いことに加えて、アスピリン喘息を誘導する可能性が指摘されています。

 

 

一方、シロスタゾールの利点としては、日本人の脳梗塞再発予防効果のエビデンスが確立していること、ラクナ梗塞やアテローム血栓性脳梗塞の再発予防効果を基地出来ること、血管拡張作用をもつこと、誤嚥性肺炎の予防効果がること、出血合併症が少ないことなどです。

 

ただし、良いことばかりではなく、欠点としてうっ血性心不全例には禁忌であること。

 

冠動脈狭窄例には慎重に投与する必要があること。頭痛や頻脈の発現率が高いことなどが問題になっています。

 

 

以上より、アスピリンの使用にあたっては、脳出血の予防のため、出血性脳卒中の既往の有無を確認する必要があります。

 

そして、脳出血リスクが高いラクナ梗塞では使用を控えること、消化管出血の予防のため、上部消化管潰瘍がある症例やヘリコバクター・ピロリ感染者には使用を控え、どうしても使用しなければならない場合はプロトンポンプ阻害剤を併用することが推奨されています。

 

 

これに対して、シロスタゾールの使用にあたっては、脈拍数の増加により虚血性心疾患や心不全、頻脈性不整脈が発症する場合があるので注意が必要です。

 

頻脈や頭痛が懸念される場合には、少量から開始して、慎重に漸増させていくことが推奨されています。

 

 

このように、脳梗塞再発予防のためには、脳血管系のみならず心臓循環器系、消化器系、呼吸器系やアレルギーなど複数の専門的な観点からの見当が必要になってくることをご理解いただければと思います。

 

診察の際に、医師の専門性を狭く受け止め、素人判断で限られた情報しか提供しないケースが少なくないのですが、

 

<体は一つ、心も一つ、部分は全体と繋がっている>ということを忘れないで、相談してくださいますように。