日々の臨床 ④:11月29日 水曜日<成人のアトピー性皮膚炎>

総合アレルギ-科(呼吸器・感染症、皮膚科・眼科を含む)

 

< 成人のアトピー性皮膚炎 >

 

総合アレルギー診療を実践している高円寺南診療所では、他の多くの報告と同様に、花粉症患者の低年齢化や高齢者患者の増加が目立っています。

 

その理由として、花粉アレルゲンの増加や大気汚染の関与、あるいは食物アレルゲンと同様に、皮膚のバリア機能障害による経皮感作の可能性も考えられています。

 

 

またアトピー性皮膚炎は、本来は成長につれて寛解する病気でしたが、思春期、さらに社会人、最近では高齢者アトピーともいうべき患者さんが増えているといわれています。

 

高円寺南診療所では高齢者アトピーはほとんど経験しませんが、完治しないまま中年期に至っているケースは少なくありません。

 

その背景には、悪化因子の多様化、生活習慣の変化、治療に対する反応性の個人差など、明らかにされていない病態が多数残されています。

 

 

アトピー性皮膚炎は、湿疹・皮膚炎群に含まれる病気です。

 

アトピー性皮膚炎の病変部では白血球浸潤がみられますが、これは表皮角化細胞産生するRC/CCL17などによりもたらされることが明らかにされました。

 

そして、血清TARC/CCL17はアトピー性皮膚炎の短期の病勢の指標として、保険適用となったため、高円寺南診療所でもこれを用いて、治療効果の判定に役立てています。

 

治療により短期間に正常化するケースでは、このマーカーも低下しています。

 

 

近年、天然保湿因子である遊離アミノ酸の供給源となるフィラグリンの遺伝子変異が、アトピー性皮膚炎の病態と密接な関連のあることが世界的な話題になっています。

 

 

このフィラグリンの遺伝子変異がある場合、ネコの同居は明らかにアトピー性皮膚炎を悪化させることが明らかにされました。

 

しかし、遺伝子変異が最大の原因であるとは考えられません。

 

もしそれが事実だとすれば、太古の昔から、現在ほどの頻度でアトピー性皮膚炎がみられたはずだからです。

 

 

それよりも注目すべきだと思われるのは、中枢レベルでの痒みについてです。

 

β-エンドルフィンなどの内因性オピオイドとその受容体がかゆみに関与していることも注目されています。

 

、痒、悩という辛い症状で苦しむ患者さんを救いたいというのが、高円寺南診療所の主要なモットーの一つですが、アトピー性皮膚炎の患者さんの中には、「3一体型」の重症例も少なくありませんでした。

 

最近では、その頻度がめっきり減り、滅多にお目に掛らなくなりました。

 

 

現在でもまだ解決されていない難治性の成人型アトピー性皮膚炎の皮膚症状としては、顔面の難治性紅斑、頸部の網状の色素沈着、顔面の急性の表在性細菌性感染症を伴う膿痂疹様病変や全身皮膚の浮腫性の発赤・腫脹が挙げられます。

 

 

おとなのアトピー性皮膚炎における重症の皮膚症状は、

 

1)難治性の湿疹・痒疹病変が全身に見られ、通常の外来治療ではコントロールできないタイプ

 

2)ステロイド剤の不適切な使用に基づくと考えられる紅皮症化した汎発性の皮膚症状を呈するタイプ

 

3)上記の1)2)が混在しているタイプ

 

このような難治化、慢性化に関わる因子としては、ステロイド剤以外にも、様々な心理社会的ストレッサー、感染症、紫外線など様々な因子が考えられており、これらの総和的な作用の結果もたららされるものと考えられてきました。

 

 

しかし、原因、悪化因子は、年齢、個人の生活環境で大きく異なります。

 

アトピー性皮膚炎の発症予防や寛解維持には個々の患者さんに悪化因子を認識していただき、それをもとに生活環境の整備、ライフスタイルの改善などを積極的に推進していくことが大切です。

 

特に、汗対策やペットの飼育、ストレス回避やストレス耐性の獲得などを含めた生活習慣やセルフコントロール、環境整備の指導を総合的に強化するのみで、驚くほどの改善がみられることがあります。

 

特に、水氣道®は温水プールでの稽古のため、塩素消毒のためにアトピー性皮膚炎の悪化を懸念していた時期もありましたが、その恐れは払しょくされました。

 

アトピー性皮膚炎の患者さんは、継続的な水氣道参加により、見違えるほど健康的な皮膚を取り戻しつつあります。

 

 

そのコツは、適切なスキンケアです。異常な皮膚機能の補正には皮膚の清潔と保湿が最重要課題です。

 

水氣道のあとはシャワーで十分に洗い流し、帰宅直後に入浴し、保湿剤の外用によるケアをしっかりと行うことで、水氣道の効果を最大限に引き出すことができます。