日々の臨床 ②:11月27日 月曜日<予防と行動変容>

総合医療・プライマリケア

 

<予防と行動変容>

 

高円寺南診療所の受診者層は、他の医療機関の急性疾患より、慢性疾患の比重が大きくなっています。

 

慢性疾患の多くが患者さんの持つ生活習慣によるものであるため、好ましくない生活習慣に対して働きかけをする必要性が高まってきました。

 

 

不適切な生活習慣には、不健康な食事や運動不足、過度のアルコール摂取、たばこ等が含まれます。

 

これらの不適切な生活習慣は、「心血管疾患、がん、2型糖尿病、感性呼吸器疾患」といった慢性疾患の根本原因です。

 

生活習慣の改善により疾病の予防や症状の悪化を最小限に抑えられることがわかっています。

 

 

習慣化された行動パターンを変えることを「行動変容」と呼びます。習慣化された行動のほとんどが無意識で行われている癖のようなものですから、自分自身で問題の早期発見をすることは難しいことがあります。

 

ですから患者の行動変容に目を向け、アプローチしてみることは益々重要性が高まっていると思います。

 

 

①問題の早期発見

 

高円寺南診療所では、慢性疾患の場合は、必要に応じて、初診時から「生活リズムに関する健康調査票」を記入していただき、睡眠・覚醒・起床リズムや食習慣のリズム、運動習慣リズム、入浴習慣リズムから勤務時間帯に至るまでの基本チェックをしていただくことによって、最も根本的な問題の早期発見に努めています。

 

 

②適切な介入(行動変容)

 

患者さんの行動変容が起こる過程には段階があります。

 

ですから、何かの問題に関して、その患者さんがどの段階にあるかを把握することから、適切な行動変容の方法を選択することができます。

 

行動変容が起こる段階には、無関心期関心期準備期行動期維持期確立期があります。

 

行動変容のステージの、どの段階にあるかを見定めることからスタートすることが大切だと考えます。

 

その理由は、ステージごとに、患者へのアプローチ法を変えることで、効果的なサポートが可能となるからです。

 

 

介入がうまくいった場合は、確立期でもって行動変容は終結しますが、ひとたび確立期を迎えたかにみえても再発期を迎えてしまうことがあります。

 

その場合の患者さんは、行動変容に対して無関心期ではないものの、関心期の状態にあると評価して、同様のサイクルを再度試みるか、期待可能性が乏しい場合は、必要に応じて紹介します。

 

 

③必要に応じて紹介

 

なかなか行動変容がうまくいかない場合でも、これまでの高円寺南診療所は粘り強く対応を続けてきました。

 

しかし、必ずしもそれが患者さんのためになるとは限らないようです。

 

高円寺南診療所では禁煙に関しては多数の成功実績を誇っていますが、その場合でさえ、パーソナリティ障害を伴っていると治療は進捗しません。

 

最悪のケースは、医師を操作する患者さんです。

 

わかりやすく言うと、準備期、場合によっては行動期であることを装いながら、無関心期のままであるような場合です。

 

これは、誠意に満ちた医師を消耗させます。

 

またパーソナリティ障害を伴っている場合は、治療介入に対して被害者意識を高め、突然通院を中断し、外部のメディアを使用して誹謗中傷を加えるなどの行動化により被害を受けたことがあります。

 

またアルコールをはじめ薬物中毒といった、いわゆる依存症領域の場合は、どのような方法を用いても外来での行動変容が難しい場合があります。

 

その場合は、なるべく早期にアルコール中毒治療の専門医に紹介する必要があると考えています。