日々の臨床 ⑤:11月23日 木曜日<ロコモティブシンドロームの運動対策>

総合リウマチ科(膠原病、腎臓、運動器の病気を含む)

 

<ロコモティブシンドロームの運動対策>

 

運動器疾患には、椎間板の変性関節軟骨の変性骨粗しょう症などの変性疾患が多いです。これらの疾患は、気づかれないまま進行しますが、50歳以降になるとはっきりと現れてきます。

 

 

骨は全体重の約20%、筋肉は30~40%を占める重量の大きな組織で、血流も豊富であり、活発に形成と吸収を繰り返しています。

 

そのため、からだをつくる栄養素、特に蛋白質とミネラルの補給は重要です。

 

そして、骨や筋肉の血流を促進する運動を継続することも併行して行うことが勧められますが、水氣道®の調血航法とは、そのような目的のために考案されています。

 

 

転倒・骨折サルコペニア(筋肉減少症)関節痛・腰痛などの病気となる結果に対して、運動や身体活動による各種の機能向上プログラムの有効性が報告されています。

 

文科省の新体力テストの結果でも、運動習慣のある人の筋力バランス能力柔軟性などの体力は、運動習慣のない人と比べて、どの世代でも良好でした。

 

 

これは、主に陸上での運動によるデータですが、一般にはウォ―キングが勧められています。

 

しかし、ランニングほどリスクは高くはありませんが、陸上の直立二足歩行は膝関節軟骨や腰椎椎間板に負担がかかりやすい移動様式です。

 

陸上の運動は初心者、高齢者ではオーバーユース(反復性の使い過ぎ)になりがちです。

 

これに対して、水中運動では、自ら受ける抵抗や粘性のため陸上よりはるかに大きな筋力やバランス能力を要求されるし、自然にバランス能力が強化されます。

 

また、陸上とは異なり、水による浮力の作用とリラックス作用とによって、重力に逆らって大意を保持するための抗重力筋の緊張が緩和し、関節の可動域が拡大し、柔軟性を高める動作を行いやすくなります。

 

このような、水中運動の特性を可能な限り高める目的でデザインされたのが水氣道®です。

 

 

関節軟骨と椎間板髄核の組織特異性を考慮しないと、オーバーユースや関節負荷の増大によってこれらの組織をいため変性をもたらしてしまいます。

 

これらの組織の特異性とは、血行が無い点です。同じ運動器組織である筋肉や骨組織とは異なり、血液が通っていないため、栄養補給、老廃物の排出は水分の出入りによって行うほかありません。

 

血管が無いため通常の組織修復は期待できず、傷害は修復されにくく、むしろ一度、組織が損傷を受けると、それによる変性は緩徐に進行しやすいことが臨床上の問題点になっています。

 

 

水氣道®の活水航法とは、このような人体の解剖生理学的特性と病理特性に鑑みて、デザインしたエクササイズです。

 

それは、水中で関節可動域を無理なく拡大することによって、関節軟骨と椎間板髄核を保護しつつ、同時に新陳代謝を高めて、関節組織変性のリスクを軽減しようとするものであり、従来のエクササイズにはみられない好適なメソッドです。

 

 

効果的な運動介入の実現のためにはいくつかの原則があります。

 

①意識性の原則:目標・目的を明確に意識し、それに応じた運動の種類を選ぶ

 

②過負荷の原則:機能向上を目指すには、現状より少し負荷量の高い運動を選ぶ

 

③漸増性の原則:安全性をみながら目標レベルまで少しずつ漸増する

 

④反復性(継続性)の原則:効果を持続するには、反復・継続して運動する

 

 

水氣道®は、以上のような運動介入の原則を網羅的に取り込んだ運動プログラム体系を確立しています。

  

 

ロコモ対策。少なくとも週に1~2回以上、水氣道の稽古に参加されている方は、十分なロコモ対策を講じているといえるでしょう。