心身医学科(心療内科、脳神経内科、神経科を含む)
<摂食障害>
摂食障害は、食行動の異常をきたす病気で、患者さんの数は増加傾向にあります。
その背景は、長引くダイエットブーム、日常生活上のストレスの増大などとされています。
最近では、身体的障害の他に発達障害、自閉症、精神疾患との合併症もみられ、治療に難渋するケースが目立ちます。
複数の医療機関を渡り歩いた揚句に高円寺南診療所に辿り着いたという方が、当方では典型例です。
摂食障害の男女比は1対20です。女性の障害有病率は神経性やせ症で0.9%、神経性過食症では1.0%以上とされます。
摂食障害の基本となる病型は、神経性やせ症です。
「摂食制限型」という表現型から、ある時点で空腹感などに耐え切れずに過食を伴うようになると「過食・排出型」という表現型に変化します。
これに対して、神経性過食症の場合には、もともと神経性やせ症として始まりますが、外見上ではやせが目立たないこともあります。
また、いわゆるうつ病、境界性パーソナリティ障害などが合併あるいは潜在していて過食という表現型をとることもあります。
治療方法としては外来通院治療と入院治療があります。
高円寺南診療所では外来通院治療を専らにしていますから、入院治療の必要な方は外部の病院に紹介することになります。
入院治療の必要な方とは、極端に体重が減少していて生命の危険が迫っているようなケースです。
治療指針として、英国のNICEガイドラインや米国精神医学会のガイドラインが出されていますが、NICCでは、神経性過食症については早期来院で症状経過を観察し、患者さん自身が自分の症状を記録するとか規則正しい生活をするなど、前向きに症状改善に取り組み、治療者はそれを援助する指導付ヘルプという方法を推奨しています。
日本の多くの医療機関では、薬物療法が主体です。
神経性過食症ではSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)の有効性が認められています。
薬は治療効果を高めますが、薬だけで治療することは難しいので、生活改善を行いながらの使用が推奨されています。
そこで高円寺南診療所でも、神経性過食症に対しては外来治療(生活指導、心理療法、薬物療法)に加えて院外治療(水氣道®や聖楽院での音楽療法)がとても役に立っています。
ただし、残念ながら、本人の自覚と改善のための姿勢が欠如しているタイプの神経性やせ症の治療成績に関しては芳しくありません。
心理療法としては、諸外国での標準的な非薬物療法が2つほどあります。
その一つが、① 神経性過食症に特化した認知行動療法プログラムです。
これは治療初期に1週間に2回通院して1時間面接する方法ですが、日本の現行の保険医療制度下で実施することは事実上不可能だと思います。
もう一つが、② 対人関係療法です。
この治療法は、努力すればするほど治療効果の上がる治療法です。
「症状に振り回されないようになるための強力な手段」を生活の中で試し、スキルを高めていく努力が治療になるからです。
具体的には、家族やパートナーなど「重要な他者」との「現在の関係」に焦点を当て、感情を指標に周りの状況に変化を起こすことで病気を治していきます。
対人関係療法のなかで、患者さんは以下の3つの課題に取り組みます。
○ 自分の気持ちをよく振り返る(自分との関係を改善する)
○ 自分の周りの状況に変化を起こす(行動の仕方を改善する)
○ 対人関係スキルを高める(他者との関係を改善する)
これらの3つの課題に取り組むことによって、【自己志向(自分との関係+行動の仕方)】と【協調性(他者との関係)】をバランスを取りながら高めていきます。
【自己志向】と【協調性】のバランスは安定した「愛着(アタッチメント)」の土台にもなります。
対人関係療法に取り組む中で、【関係性(協調性)】という安心基地は【自己志向(自己受容)】を支え、これによって健全な【関係性(協調性)】が維持できることを体感的に理解しながら、病気から回復していきます。
このような明確な課題と取り組む過程で高められる受容なスキルが3つあります。
それは、
□心の状態の変化についての気づき(自分との関係を改善する)
□ 考え・感情・情動のコントロールについての気づき(行動の仕方を改善する)
□ 自己概念や関係の中における役割についての気づき(他者との関係を改善する)
これらのスキルを磨くことによって病気の治療だけでなく再発防止までを目指します。
以上は対人関係療法ですが、これは水氣道®や聖楽院で実践している方法論にも当てはまります。
水氣道®は集団(小社会)の中で温水に浸かりながら行う有酸素運動です。そのため身体面でのトレーニング効果も加わり、まさに心身のバランスを再統合する治療法として、通常の対人関係療法より優れた側面をも併せ持っています。
このことは、会員の皆様であればどなたも実感しておられるのではないかと自負している次第です。
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