日々の臨床④:11月15日 水曜日<アレルギー性鼻炎のトータルマネジメント>

総合アレルギ‐科(呼吸器・感染症、皮膚科・眼科を含む)

 

<アレルギー性鼻炎のトータルマネジメント>

 

 

スギ花粉症を含むアレルギー性鼻炎は非常に増加しています。

 

全国的有病率調査では1998年⇒2008年で、通年性アレルギー性鼻炎(18.7%⇒23.4%)、スギ花粉症(16.2%⇒26.5%)であり、現在では少なくとも4人に1人の割合であると推計できます。

 

 

そこで今回は

①鼻炎とは何か?

②治療法の選択は?

③実際の薬剤の特徴は?

という質問にお答えする形でまとめてみました。

 

 

①鼻炎とは何か?

 

鼻炎は様々です。大別すると1、感染性、2、過敏性非感染性、

3、刺激性、4その他(萎縮性鼻炎、特異性肉芽腫性鼻炎)です。

 

 

高円寺南診療所で最も多く診療しているのが2の過敏性非感染性鼻炎に含まれるアレルギー性鼻炎です。

 

アレルギー性鼻炎には、ダニなどが原因となる通年性と、主として花粉が原因となる季節性があります。

 

後者には花粉-食物アレルギー症候群を伴うケースもあり、注目されています。

 

 

アレルギー性鼻炎には、風邪に代表される感染性の急性鼻炎と、急性・慢性副鼻腔炎との鑑別を要することが多いとされますが、風邪がきっかけとなってアレルギー性鼻炎を発見することがとても多いです。

 

非感染性の好酸球性副鼻腔炎は難治性なので、見落とさないように注意しています。

 

 

問題なのは、生理的で正常な鼻粘膜の防御作用を病的なものと素人判断して不適切な対応をした結果、自分で病気を作り、悪化させている方が増えていることです。

 

 

②治療法の選択は?

 

患者さんのタイプに応じた治療法の選択が必要です。

 

 

たとえば花粉症であれば、大切なのは、初期療法の開始時期です。

 

使用する薬剤の効果発現までの日数や患者さんの例年の飛散花粉に対する過敏症の特徴が関与するので、それらの情報を整理することがコツだと思います。

 

 

アレルギー性鼻炎一般について抗原回避は有意義です、そのための工夫は、患者さんが自らできる重要な治療法です。

 

 

実際の治療法としては、アレルギー性鼻炎の病型(くしゃみ・はなみず型、鼻づまり型)とともに重症度評価をして分類し、中等症以上である場合の薬物療法には、病型を考慮したうえで作用機序の異なる薬剤を複数組み合わせる必要があります。

 

抗ヒスタミン薬は、アレルギー性鼻炎に有効性が高く、日中の眠気などの副作用が弱い第2世代の抗ヒスタミン薬を用います。

 

 

根本的な治療として舌下免疫療法があります。

 

高円寺南診療所では、治療の限界や注意点もご説明したうえで実施しています。

 

また、薬物によらない全身的治療法として水氣道®聖楽院でのヴォイストレーニングをお勧めしています。

 

アレルギー性鼻炎で鼻閉型の方には、しばしば低換気で低酸素血症の方がみられ、不眠傾向を伴い運動不足のため体力が低下しています。

 

しかし、屋外での運動はアレルゲン暴露や、冷え、脱水、粘膜乾燥のためアレルギー性鼻炎を増悪させます。

 

これに対して水氣道は屋内の温水プールでのエクササイズです。

 

水場であるためアレルゲンは極めて少なく、湿度や温度が保たれる環境下での有酸素運動であるため、アレルギー性鼻炎の患者さんにとっては好適なエクササイズです。

 

なお、喘息はアレルギー性鼻炎に合併しやすい病態です。

 

水氣道は、アレルギー性鼻炎のみならず喘息にもきわめて有効であり、とくに鼻炎合併喘息(気管支喘息の3人に2人はこのタイプ)では、薬物療法を凌ぐ治療効果が期待できます。

 

 

③実際の薬剤の特徴は?

 

治療薬は症状の病型と重症度により使い分けます。

 

適切な併用療法を積極的に行うことも推奨されています。

 

 

わずかな初期症状であっても第2世代抗ヒスタミン薬抗ロイコトリエン薬を開始することが、その後の経過を改善します。

 

 

中等症以上の場合は、病型を問わず通年性アレルギー性鼻炎や花粉症に鼻噴霧用ステロイド薬が標準的に用いられ、実際に好ましい治療成績が得られています。

 

鼻噴霧用ステロイド薬の特徴は1)効果が強い、2)効果発現は約1~2日と早い、3)副作用が少ない、4)鼻アレルギーの3症状(くしゃみ、はなみず、はなづまり)に等しく効果がある、5)投与部位のみに効果が発現し、全身的副作用がない、という素晴らしい性質を兼ね備えています。

 

鼻噴霧用ステロイド薬は全身的副作用がないばかりでなく、治療により鼻閉が解消されると、口呼吸や睡眠障害が改善され、その結果、合併することの多い気管支喘息まで改善されることが多いです。

 

鼻噴霧用ステロイド薬には様々な剤型があり、患者さんの希望に併せて最適なものを選択することで計画的で無駄の少ない治療が継続できています。