日々の臨床 ③:11月14日 火曜日<膠原病に伴う消化器疾患>

一般内科(循環器・消化器・内分泌・代謝・栄養関連の病気)

 

<膠原病に伴う消化器疾患>

  

膠原病のお話は、本来であれば木曜日、日々の臨床⑤:総合リウマチ科(膠原病、腎臓、運動器の病気を含む)で度々採り上げています。

 

それを、なぜ火曜日なのか、というと、病気が発生する区分が消化器だからです。

 

 

膠原病は、内科のリウマチ科の領域ですが、そもそも膠原病は全身性疾患であるということをご理解いただきたいと思います。

 

膠原病は免疫異常を背景として全身の結合組織と血管の障害を引き起こします。

 

今回テーマとする膠原病に合併する消化器病変は、潰瘍病変、運動機能障害、蛋白漏出性胃腸症、アミロイドーシス、腸管嚢腫様気腫症、悪性腫瘍など多様です。

 

 

これらの消化器疾患を伴う代表的な膠原病として以下の2つ挙げることができます。

 

①全身性エリテマトーデス

 

②全身性硬化症

 

 

まず、①全身性エリテマトーデスにおける消化器病変は、

 

①-1.ループス腸炎、および①-2蛋白漏出性胃腸症が重要です。

 

 

①-1.ループス腸炎の本体は血管炎です。

 

これは小腸を主体とした広範囲な浮腫、腹水を認める虚血腸炎型と、主として大腸を主体として潰瘍や穿孔を生じる多発潰瘍型があります。

 

 

①-2.全身性エリテマトーデスに伴う蛋白漏出性胃腸症は、若い女性に多く、下痢が続き、浮腫みが顕著となります。

 

正常な小腸がもつひだ(ケルクリング皺襞)が腫大し、粘膜浮腫や発赤を生じます。

 

 

ついで、②全身性硬化症の消化管病変は、全消化管共通に認める固有筋層の線維化と筋組織の萎縮によって起こります。

 

代表的なものは、

②-1.食道病変(胃食道逆流症)

 

②-2.偽性腸閉塞、および

 

②-3.腸管嚢腫様気腫症です。

 

 

②‐1.食道病変(胃食道逆流症)は、食道下部にある括約筋が弛緩することが原因となり、胃から食道への逆流が起こり、さらに食道下部の蠕動運動が低下することが原因となり、逆流物が胃内に速やかに送り込めないために生じます。

 

 

②-2.偽性腸閉塞は、予後不良の病態です。

 

小腸の粘膜下平滑筋の萎縮や線維化によって生じます。小腸の蠕動運動が低下することにより小腸細菌叢が増殖することで吸収不良症候群を呈します。

 

 

②-3.腸管嚢腫様気腫症は、やはり腸管蠕動低下によって細菌叢が増殖し、腸管内圧が上昇し、また微小粘膜病変による腸管壁内へのガス貯留が生じることで嚢腫様の拡張をきたす病態です。腸管壁が穿孔することもあります。

 

 

以上のケースでお示しした通り、リウマチ内科医は、様々な合併症を有する膠原病を扱うため、消化器内科をはじめとする総合内科を中心とし、

 

また関節リウマチなどの整形外科でも扱われる領域にも深く関与する総合医療の立場をとるべき必要性があることを確認することができると思います。