統合医学(東西医学、代替・補完医療)
< 糖鎖(とうさ)とは何か?>
最近、高円寺南診療所の事務長は<糖鎖>の人体実験中です。
(人体実験とは、他に有効な治療や服薬などをせず、それだけの効果を確かめています。)
事務長と言っても彼女は薬剤師であります。
しかも、オリゴ糖の合成に関する研究で修士号を得て、さらに米国へ留学する予定だった頃に、当時虎の門病院の研修医だった私と出会ったのでした。
今では診療所の窓口を手伝うオバサンになってしまったのだから、私の責任も相当大きいことは間違いありません。
私が診断した線維筋痛症患者第一号の彼女が言うには、糖鎖を服用すると、起床直後の激痛の継続時間が短くなった、とのことです。
残念なことに、糖鎖なるものが、なぜそれほどまでに痛みに効くのか私には皆目見当がつきません。
そこで、こっそりと下調べをはじめてみることにしました。
人体は約60兆個の細胞でできています。その細胞ひとつひとつの表面を、産毛のように覆っているのが糖鎖です。
糖鎖とは、人体を構成する全ての細胞をつなげる役割をする物質です。
「糖鎖」は、様々な糖(単糖)が鎖のようにつながってできている物質です。
この糖鎖は、体内で主に次の3つの働きを担っています。
〇自己防衛機能(免疫力)
〇自己修復機能(正常に戻ろうとする力)
〇自己調整機能(現状を維持する力)
最近の研究で、糖鎖が正常に働けば、体に元々備わっている自然治癒力や免疫力が充分に発揮され、自家製の薬として働き、病気にかかるリスクが減ることがわかってきました。
反対に、糖鎖に異常が起きたり、劣化したりすれば、それは病毒となり、たちまち様々な病気を作り出してしまいます。
つまり、糖鎖の構造が解明されれば、ほとんどの病気が治る可能性が高い、とまで考える人たちがいるそうです。
たしかに糖鎖の構造や働きが少しずつわかるにつれて、病気の原因や生命活動の仕組みも解明されていくことでしょう。
高血圧、脂質異常症、糖尿病、痛風などの生活習慣病にとどまらずガンや心臓病、アレルギー疾患が昔に比べ、現代人に増えているのはなぜなのか、まだ解明されていません。
まずは、アレルギー専門医の視点から糖鎖を検討します。
アレルギー疾患は国民病とも呼ばれるまで増加してきました。
特に子供に多く発症しているのは、アトピー性皮膚炎と気管支ぜんそくです。
成人になっても社会生活に支障が出るほどの重症患者がいます。
しかし、アレルギーもアトピーも、治療によるコントロールは以前に比べて容易になってきましたが、一般的には根本原因が不明とされ、根治する治療法も確立されていません。
そもそも、アレルギー症状はなぜ起こってしまうのか?
それは、外来の環境物質を有害な異物として認識し、体外に排泄しようとする働きを強めてしまうためです。
例えば、アトピー性皮膚炎などでは、体内にアレルゲンが侵入すると、その部分の血流を増やし、アレルゲンを薄めるようとする反応が起こり湿疹を生じさせます。
一方、気管支ぜんそくでは、アレルゲンをシャットアウトするために、反射的に気管を収縮させ、強い息で吐き出させようという過剰な反応が起こり、それが発作をもたらします。
どちらも不快な症状ですが、根本的には、アレルゲンから体を守ろうとする治癒反応であるということです。
アトピー性皮膚炎などへの対処としては、抗ヒスタミン剤、抗セロトニン剤、抗ロイコトリエン剤、ステロイドホルモン、消炎鎮痛剤などが使用されています。
これは病気を根本から治すものではなく、あくまでも対症療法です。
それでは、糖鎖はアレルギーやアトピーなどの疾患と、どのような関係があるのでしょうか?
糖鎖には粘膜を丈夫にし、好酸球(白血球の一種)の働きをコントロールする働きがあるようです。
そうだとすれば糖鎖が正常に働けば、過剰なアレルギー反応が抑えられ、症状の緩和も期待できそうです。
そこで、今後は上記下線部に関連する更なる研究成果が期待されます。
次に、リウマチ専門医の視点から糖鎖を検討します。
関節リウマチは30代から50代の女性に多く見られる膠原病の代表的疾患です。
手、腕、足、膝の関節で左右対称に炎症が起きて腫れ、痛みを伴います。症状が悪化すると、症状が悪化すると関節の動きが悪化し、変形することもあります。
関節リウマチは、ストレス→免疫抑制→パルボウイルスや風邪ウイルスの増殖→顆粒球過多→関節破壊→慢性化のプロセスで発症につながるとする説があります。
このとき関節炎を起こす顆粒球は、炎症の発生箇所で直接作られています。
関節リウマチは自己免疫疾患とも呼ばれ、免疫力が過剰なために自己を攻撃してしまい、発症する病気と考えられています。
近年の研究により、免疫力抑制状態で発症していることがわかってきました。
それにもかかわらず治療には免疫抑制剤やステロイド剤など免疫力を極力抑制する薬が使用されていることがジレンマになっています。
さて関節には「骨と骨を繋ぐ」「骨格が動くようにする」「姿勢をしっかり保つ」の3つの役割があります。
そして関節包という膜で包まれた関節の内側は、滑り易い膜(滑膜)で覆われています。
滑膜は関節を滑らかに動かすための関節液の分泌や、関節に栄養分を供給する働きをします。
ところが、滑膜がひとたび炎症を起こし、炎症性の情報伝達分子インターロイキン6を過剰分泌してしまうと、糖鎖と結合し血液内皮増殖因子(VEGF)を分泌させてしまいます。
それによって本来なら必要のない多くの血管が作られ、それらが酵素と栄養分を吸収して滑膜が成長・増殖していきます。
その後、滑膜からインターロイキン6を多く含む潤滑液が放出されると、血流に乗ってやってきたマクロファージが滑膜の中に入り込みます。
そして、線維芽細胞の働きで破骨細胞へと変身し、骨を溶かし関節を破壊してしまうのです。
この一連の流れを止めるために、2008年に登場したのが、抗体医薬(アクテムラ)です。
抗体を患者に注射し、その抗体を患部の細胞膜表面などの糖鎖に結合させてインターロイキン6の結合を阻止するというものです。
この方法によって、従来の抗炎症薬、抗リウマチ薬、ステロイド剤などでは果たせなかった関節リウマチの進行をほぼ完璧に食い止められつつあります。
しかし、糖鎖内服が有効かどうかについては、判断できる段階にはないと思います。
アレルギー・リウマチを専門とする内科医の視点から
癌は、男性の2人に1人、女性の3人に1人が発症しています。
発癌の主な原因として、発癌物質の他、生活習慣の乱れによる精神的・身体的ストレスも原因のひとつと考えられます。
アレルギー・リウマチ疾患は免疫異常を伴っているので、専門医としては、つねに癌を忘れずに診療しています。
治療法としては、手術、抗がん剤療法、放射線療法がありますが、どの方法でも、すでに免疫力が低下している患者の免疫力をさらに低下させるリスクがあり、
完治したかに見えても、数年で再発してしまったというケースを少なからず経験します。
さて癌になると糖鎖の構造が変化し、正常な細胞間コミュニケーションが障害されます。
癌化した細胞の糖鎖は、正常細胞とのコミュニケーションを絶ってしまいます。
それによって、無制限にがん細胞を増やしてしまいます。
また、癌化した糖鎖は細胞からはがれやすくなり、血管に浸潤して転移していきます。
癌化が起こると、糖鎖にも異常な変化が現れ、それが癌細胞の転移の原因にもなってしまうことは理解できますが、その逆に、癌細胞を正常糖鎖で覆うことは可能なのかは疑問があります。
もしそれが可能であれば癌を覆転移を食い止めることは期待できると思います。
人間の体には、本来癌を防ぐ機能が備わっています。
癌細胞を発見し、攻撃細胞に命令を出して、癌細胞を撃退するのも、糖鎖の役割です。
しかし、糖鎖構造栄養素が体内に十分に補充すれば、糖鎖が正常に働くのでしょうか。
つまり、免疫細胞が的確にガン細胞を発見し、情報伝達物質インターフェロンも活発に分泌するようになるのかどうかの検討は必要でしょう。
攻撃細胞のNK細胞やT細胞の糖鎖も正常を維持できれば、インターフェロンに迅速に反応し、ガン細胞を確実に駆遂するようになるでしょう。
以上より、糖鎖の基礎研究は、今後の医学の画期的な進歩に繋がることは間違えなさそうです。
しかしながら、この糖鎖を食品として摂取して、ただちに現行の薬剤以上の効果を期待できるのかどうか、疑問は残ります。
事務長に学術データや文献など、更なる情報収集を依頼することにします。
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