日々の臨床 ⑤:11月2日 木曜日

総合リウマチ科(膠原病、腎臓、運動器の病気を含む)

 

<リウマチ患者さんの歯周病>

 

 

これまで、日々の臨床では、歯科・口腔外科領域のトピックスを掲載したことはありませんでした。

 

しかし、総合リウマチ科をタイトルとして、改めてこの領域との関連性を日常診療において数多くの気づきが得られています。

 

 

そもそも、関節リウマチと歯周病の関連性は古くから指摘されていました。

 

そして実際にリウマチ専門医は口腔環境が芳しくない患者さんに接することが多いです。

 

歯周病はリウマチ患者さんに併発しやすい生活習慣病とされています。

 

 

しかしながら、歯学部を卒業された歯科医の先生とは違い、医学部医学科を卒業した医師は、専門的に歯周病について勉強する機会にはなかなか恵まれません。

 

そこで、まず、歯周病について皆様と共に勉強したいと思います。

 

 

歯周病の原因は、歯と歯肉の間の溝である歯肉溝・歯周ポケットなどに生息する細菌です。

 

歯垢(プラーク)とも呼ばれています。

 

この細菌と、生体を守る「生体防御機能」のバランスが崩れたときに歯周病が発症するといわれています。

 

 

歯周病は以下の3つのリスク因子が複雑に絡み合う多因子性疾患です。

 

その1.上記の「細菌因子(歯周病原菌)」、

 

その2.「宿主因子(免疫・炎症反応・遺伝)」、

 

その3.「環境因子(喫煙・ストレス・生活習慣)」

 

 

歯周病には「歯肉炎」と「歯周炎」の2段階があり、このことは重要です。

 

 

歯肉炎は、炎症がまだ歯肉に限局している状態です。

 

これはプラークコントロールによって改善します。

 

 

歯周炎は炎症が歯周全体(歯肉のみならず、セメント質、歯根膜、歯槽骨)に波及し、

 

歯槽骨吸収が進行し、深さ4mm以上の歯周ポケットが形成された状態です。

 

これは治療による歯槽骨の再生が可能な症例が限られてしまいます。

 

 

2016年の厚生労働省の歯科疾患実態調査によると、

 

歯周炎は25~34歳ですでに32.4%、65~74歳では57.5%にまで達し、国民病の1つに数えられました。

 

また歯を失う原因の約半分が歯周病とされます。

 

なおリウマチ患者さんの場合は86%が歯周病という2007年の報告があります。

 

 

リウマチがあると歯周病が発症・進行する理由は、いくつか知られています。

 

 

その1.ステロイドや免疫抑制剤の使用

 

その2.ストレスや不安定な精神状態

 

その3.歯周病原細菌(ポルフィロモナス・ジンジバーリス:Pg)

 

 

とくにこのPgは歯周組織蛋白をシトルリン化させるシトルリン変換酵素を持つことによって、抗シトルリンペプチド抗体(抗CPP抗体)を作ってしまう唯一の口腔内細菌です。

 

この抗体は血行を介して関節内のシトルリン化蛋白とともに免疫複合体を作り炎症を引き起こします。

 

つまり関節炎を発症させる、ということです。この抗CPP抗体は、リウマチにとって精度の高い血液検査による診断指標です。

 

この抗体が高い症例の多くは予後が悪いことが知られています。

 

 

以上より、リウマチ患者さんは一度は歯科を受診し、歯周病が指摘された場合は、歯周病の治療は必ず行うことをお勧めいたします。