日々の臨床⑦ 10月7日 土曜日<漢方・鍼灸と水氣道®との統一的な基礎をなすもの>

東洋医学

 

<漢方・鍼灸と水氣道®との統一的な基礎をなすもの>

 

 

漢方医学陰陽説(いんようせつ)と五行説(ごぎょうせつ)という学説を統合した陰陽五行説(いんようごぎょうせつ)に立脚しています。

 

 

陰陽説というのは、とても原始的な宇宙観に基づく科学理論です。

 

しかし、それは決して廃れることのない科学技術的真理に則っているように思われます。

 

そのように私が思うのには根拠があります。それは、陰陽説がコンピュータ原理にも通じているからです。

 

そもそもコンピューターの内部では全てのデータを「0」(無)と「1」(有)の2つの値だけで、つまり2進数のデジタルで対応しています。

 

しかし、「0」であっても、文字通りの無ではないはずです。

 

実際にはコンピュータの内部では、これを電圧のHi(High高い)とLo(Low低い)の2つのデジタルの状態で対応しています。

 

別の表現をすれば、コンピューターは2進数によって、物事を二つにデジタルに割り切って分類していることになります。

 

 

そもそも分類の始まりは二です。陰陽説の表現法にしたがえば、コンピュータでは「0」と認識するところを「陰(いん)」、

 

1と認識するところを「陽(よう)」と表すのではないかと思います。

 

これが陰陽です。つまり、物事の有無ではなく、マイナス(-)とプラス(+)のような対立概念です。

 

つまり、一方が存在してこそ、他方が存在するのであって、一方のみの存在はあり得ないということになります。

 

 

ある条件で自然界の現象をデジタルに二分類することによって、どちらに、より均衡が傾いているか、

 

すなわち二極性のいずれに属性が高いかを判断することが可能になります。

 

これによって、はじめて現象の科学的観察と記述が可能となり、現象は意味を帯びた存在となり、人間の知性が機能し始めるのです。

 

つまり、陰陽説の陰陽(二元認識法・二進法)は普遍的な知の根本原理であると言えそうです。

 

 

陰陽の二極性のうち、陰とは負極性(マイナス・ネガティブ)の傾向をもつもの、消極的、内向的、収縮的なものをいいます。

 

これに対して陽とは陽極性(プラス・ポジティブ)の傾向をもつもの、積極的、外向的、発散的なものをいいます。

 

 

しかしながら、陰陽は必ずしも一定したものではありません。

 

対立しては統合し、また消長し転変を繰り返し続けます。

 

つまり、陰陽という二進法のデジタルは仮の姿に過ぎず、複雑な現象の多様な変化を捉えることの必要性を内在しています。

 

 

そうして、陰陽説が結びついたのは5進法のデジタルである五行であったわけです。

 

 

この五行とは、物質の属性およびその相互関係を理解するために想定されたとされる文分析解釈理論です。

 

五行の「五」とは宇宙を構成する五つの事物とその属性、「行」とはそれらの運動・運行の規律をさします。

 

 

たとえば、二次元平面を認識するためには、南北という対立概念の軸だけではなく、東西という対立概念の軸が必要になります。

 

つまり、一種類の陰陽ニ元デジタルでは説明不能で、もう一つ質的に異なる別の陰陽二次元デジタルが不可欠になります。

 

さて、これで東西南北という四方(4つの属性)が揃います。

 

しかし、この四方が存在するためにはある前提の存在が必要です。

 

それが中央です。中央にいる主観者あるいは観察者が必要になります。以上で5つの属性が揃うことになります。

 

 

次回以降は、陰陽説(二元論デジタル)の延長としての、虚実、寒熱、表裏といった話題や、

 

五行説(五元論デジタル)の延長としての、五蔵論(肝・心・脾・肺・腎)の話題に、少しずつ入っていきたいと思います。

 

 

これらを統合する陰陽五行説が、次回にご紹介する氣・血・水学説と相まって、

 

いかに漢方薬処方や鍼灸治療、さらには水氣道の理論体系を構築しているか、ということを徐々に解き明かしていきたいと考えております。