日々の臨床① 10月1日日曜日<補完代替医療>

統合医学(東西医学、補完・代替医療)

 

<補完代替医療>

  

いわゆる難病の患者さんに向けて高円寺南診療所が積極的に推進してきた医療でもある補完代替医療は、

 

英語のComplementary & Alternative Medicine の訳語です。

 

この頭文字を取って CAM(カム)と言います。

 

 

CAMには、2つの要素があります。

 

1)現行の医療をすべて止めて何か別のものに置き換える代替医療

 

2)現行の医療に何かを上乗せして、さらにQOLを向上させる補完医療

 

の2つですが、両者を厳密に分けることができないものも存在します。

 

 

CAMは当初、がんの終末期患者や治療法の確立されていない難治疾患を対象とした代替医療としてスタートしました。

 

 

ところが、現行の医療に補うところの補完医療へと、

 

さらには未病者に対する予防医学へと、漸次、前倒しの傾向がみられます。

 

 

CAMは、米国の国立補完代替医療センター(NCCAM)によれば、

 

通常の医療の領域外の治療法でまだ科学的にその効果が証明されていないもの」と定義されています。

 

鍼灸治療や心理療法は、高円寺南診療所では通常の医療の領域です。

 

 

臨床において、CAMは、がんを筆頭に婦人科疾患、神経・精神疾患、脳・心血管疾患、整形外科など広い領域を包括しています。

 

 

CAMの特徴を挙げてみますと、以下のように考えられています。

 

 

①予防こそが最善の医療であるという考え方・・・疾病の予防がCAMにおける究極の目的であるとすること。

 

高円寺南診療所で重視しているのは、再発予防です。

 

それは、発作性の病気で来院される患者さんの多くが、

 

発作が消失すると治ったものと早合点し、更なる発作を繰り返しているのを目の当たりにしているからです。

 

 

②自然治癒力を利用しようとする考え方・・・現代医療も基本的には同じであるべきですが、実際にはそれとは逆の方向へと進んでいます。

 

化学的あるいは生物学的に合成された薬物療法中心の医療には、自然治癒力という言葉さえ馴染まないように感じられます。

 

生活習慣【生活リズムの是正・食事の改善など】の改善などの行動療法、心理療法、運動療法や物理療法など

 

非薬物療法を統合的に組み合わせた治療体系が準備されていなければ、

 

自然治癒力を利用することは難しいのではないでしょうか。

 

高円寺南診療所は、薬物療法中心の内科から脱皮し、

 

心理療法や物理療法をも必要に応じて適宜併用する物療・心療内科専門医療機関であるともいえます。

 

 

③全人的な医療であること・・・現代の医療が専門医による部分的医療であることのアンチテーゼであるともいえるでしょう。

 

しかし、多くの識者の意見とは異なり、高円寺南診療所は複数領域の専門医資格に担保された総合的な医療を提供することは、

 

現代においても決して不可能ではない、という立場に立っています。

 

単なる総合医では全人的な医療を担っていくことは困難だと思います。

 

 

④安全性が第一であること・・・副作用や医療事故が少ない医療であるとはいえ、完全に安全な医療は存在しません。

 

水や食物さえも毒になることがあります。ましてや薬ですから、たとえば漢方薬でさえ副作用をもたらすことがあります。

 

心理・社会的なストレッサー(ストレス要因)に晒されているような方は、

 

副作用や医療事故を起こしやすいハイリスク群であるという認識で診療に当たっています。

 

 

⑤利用者が積極的な係りをもつこと・・・我が国の国民皆保険制度はすべての患者のニーズに応えられる完璧なものではないにもかかわらず、

 

理想化して幻想を抱いているナイーブな患者さんは少なくありません。

 

こうしたナイーブな患者さんは、しばしば制度規制と仁術の行使との狭間で苦悩する医師の現状を知りもしなければ、知ろうともしません。

 

知ろうとしないアマチュアが素人(しろうと)であり、

 

知っているがゆえに苦労と共に生きるプロフェッショナルが玄人(くろうと)なのかもしれません。

 

自分の健康は自分が守る。自分自身の健康上の本質的な問題から

 

「逃げたり、避けたり、その場を誤魔化したり」して病気を悪化させた挙句、

 

健康保険制度の限界や矛盾を知り、改善を図るために取り組むべき根本的な問題意識からも

 

「見ざる、聞かざる、言わざる」を続けている利用者でいる間はCAMと積極的な係りをもつことは難しいのではないかと思います。

 

高円寺南診療所は、自分の問題の本質の理解と対処法について、

 

ともに学んでいきたいと願う患者さんが徐々に増えてきました。

 

患者さんに積極的に病気の治療に関与していただくことによって、

 

はじめて安全性が高く、個人の自然治癒力を育むことのできる全人的な医療を実現できるのだと思います。