日々の臨床 7月24日月曜日<慢性腰痛の病態と治療上の問題点>

中毒・物理的原因による疾患、運動器疾患、救急医学

 

慢性腰痛の病態と治療上の問題点

 

<麻薬中毒者・依存者を増やさないために>

 

 

 慢性腰痛は国民の間で有訴者数が最も多い疾患です。

 

原因が明確でない慢性腰痛の場合、原則として保存療法が第1選択となります。

 

保存療法とは生活指導、運動療法、理学療法、ブロック療法などを

 

併用しながらの薬物治療が中心となります。

 

 

椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、脊柱変形などによる腰痛・坐骨神経痛など、

 

原因が明らかな場合も同様に保存療法が第一選択です。

 

 

しかし、残念ながら慢性腰痛を最も多く診療しているはずの多忙な整形外科医の多くは、

 

運動療法を具体的に指導する余裕はありません。

 

丁寧なドクターでさえプールでのウォ―キングを勧めるのが精いっぱいで、

 

ましてや私の知り合いの数少ない優秀なドクターや理学療法士でもない限り

 

水氣道®など具体的に紹介してくれようはずがありません。

 

 

また心身医学療法や認知行動療法などの心理療法が

 

慢性腰痛に有効なのは良く知られているはずですが、

 

整形外科医の多くは無関心です。

 

 

 

さて、特に高齢者で注意が必要なのは、鎮痛剤の使い方です。

 

従来、一般的に処方されている鎮痛剤(非ステロイド性消炎鎮痛剤)の長期服用は

 

様々な障害をもたらすので問題になっています。

 

そこで、心身医学療法や心理療法を試みることもなく、

 

無効と判断するなり難治例とし、手術を勧めてしまいます。

 

 

最近は様々な低侵襲手術が開発され

 

患者の負担を軽減しつつ安定した成績を挙げていますが、

 

それでも術後一定の頻度で遺残性疼痛が生じます。

 

術後も続く痛みへの対応は、必ずしも十分ではないように見受けられます。

 

 

そこで手術ができなかったり、手術でうまくいかなかったりするときに

 

麻薬性鎮痛薬(オピオイド)の使用を積極的に勧める整形外科の権威が、

 

一般医にも、一般人にも大きな影響力を及ぼしています。

 

 

その際、速効性と持続性の両者を併せ持つ麻薬が理想的であると唱えています。

 

私自身もやむを得ないと判断したケースで使用することもありますが、

 

麻薬類似物質であることをきちんと説明せずに、

 

安易に処方されつつある現状に大きな懸念をいだいております。