内分泌・代謝・栄養の病気
テーマ:甲状腺機能亢進症
<妊娠中の甲状腺療法>
甲状腺の病気は、バセドウ病でも甲状腺機能低下症でも妊娠初期は治療法が変更されます。
ですから、高円寺南診療所では、妊娠希望の方もしくはその可能性のある方には、
妊娠前から妊娠時の治療の変化を御指導しております。
とくに、妊娠の第1三半期は、薬剤の種類や量の変更が必要なので、
妊娠したら直ちに連絡するようにご説明いたしております。
今回は、バセドウ病にしぼって解説いたします。
最近になって、無機ヨウ素(KI)の有用性が明らかになってきました。
1)軽症バセドウ病:初期治療でKI単独療法が試みられています。
2)中等症以上のバセドウ病:未治療の場合であれば、MMI15mgとKIの併用療法が有用です。
3)MMI,PTUで副作用を生じた例:KI単独療法が有用です。
バセドウ病の薬物療法
薬物療法は妊娠希望女性と妊娠初期以外は、通常、MMI15mg/日から開始し、
最初の3ヵ月は2週毎に副作用のチェックを行います。
1)MMIが副作用で使用できない場合:PTUに変更するが無機ヨード単独でも有効な場合もあります。
2)抗甲状腺薬の効果が出るまでに3~4週間かかるため、
治療開始時に、動悸、頻脈、振戦など交感神経症状の強い例ではβ遮断薬を併用します。
妊娠時のバセドウ病の薬物療法
1)MMIの投与:妊娠初期のMMI投与は、
MMI奇形症候群(胎児の後鼻孔閉鎖、臍腸管瘻や頭皮の欠損など)が起こりうるので、
妊娠初期のMMI継続は可能な限り回避すべきということになりました。
すでにMMIを服用している場合は、PTUあるいは無機ヨードに変更します。
2)PTUの投与:未治療患者の場合、妊娠15週まで、特に4~7週まではPTUで開始します。
しかし、PTUでも奇形が発生するとの報告もあり
TRAb高値で甲状腺が大きい場合は甲状腺全摘手術がよいという専門医の意見もあります。
「妊娠中のバセドウ病薬物療法の効果と安全性に関するエビデンス作成」
委員会がバセドウ病治療薬の催奇形性に関する報告を発表される予定です。