神経・精神・運動器

 

テーマ:抗てんかん薬の処方について

 

<抗てんかん薬はどのように使われているか?>

 

高円寺南診療所で、抗てんかん薬を処方している患者さんのほとんどは、

 

双極性障害、線維筋痛症、片頭痛、三叉神経痛の方であり、

 

てんかんの治療目的のみの方は少ないです。

 

 

ただし、双極性障害の方でてんかん気質の方は少なくありません。

 

そのような場合は、てんかんと双極性障害の双方に有効な抗てんかん薬を使用しています。

 

その代表が、バルプロ酸(デパケン®)、カルバマゼピン、ラモトリギン(ラミクタール®)です。

 

また、バルプロ酸はてんかんと片頭痛の両方の予防薬ですが、

 

体重増加を来すことがあります。

 

 

これに対してトピラマート(トピナ®)は

 

体重減少を来す傾向があるため、肥満の方にはこれを使います。

 

 

 

てんかんとは、慢性脳疾患の一つです。

 

大脳神経細胞の過剰発射(神経生理学的な興奮)の結果

 

生じる反復性発作(てんかん発作)を主徴とします。

 

 

てんかん発作は、慢性反復性の発作であり、

 

慢性非誘発性発作とも呼ばれることがあり、病因として急性疾患は除外されています。

 

これに対して、中枢神経系を侵襲する急性疾患あるいは代謝障害によって生じる発作は

 

急性症候性発作と呼ばれますがてんかんには含まれません。

 

 

てんかんの症状はてんかんの発作によって、

 

意識障害、痙攣(けいれん)、神経症状、自律神経症状、精神症状などが一過性に生じます。

 

 

 

<発作型の分類>

 

発作は部分発作と全般発作に二大別します。

 

部分発作とは、発作が一側大脳半球の一部から始まるものです。

 

〇単純部分発作:内側側頭葉由来の前兆として、未視感・既視感

 

〇複雑部分発作:側頭葉を中心に発作間歇期にspike & waveを認めます。

 

側頭葉てんかんは、意識障害を伴う自動症を呈することが多い複雑部分発作の一病型です。

 

やはり側頭葉を中心にspike & waveがみられます。

 

〇二次性全般化発作:カルバマゼピン

 

 

全般発作:バルプロ酸、クロナゼパムが推奨されています。

 

〇欠神発作:脳波は全般性の3Hz棘徐波複合です。

 

バルプロ酸、エトスクシミドを処方します。

 

〇強直間代性発作:口腔内泡沫、流延。フェニトイン、バルプロ酸が用いられます。

 

 

てんかんの約70%は抗てんかん薬で発作が抑制され、

 

難治(薬剤抵抗性)てんかんは10~20%とされます。

 

注意しなければならない抗てんかん薬は、前述のバルプロ酸です。

 

これはカルバペネム系抗生物質との併用は禁忌です。

 

また女性で挙児希望があればバルプロ酸は避け、

 

ラモトリギン、レベチラセタム(イーケプラ®)に変更し、葉酸の投与が推奨されます。

 

さらに高齢者の有病率1%とされる高齢者てんかんは、

 

高齢で初発するてんかんで、その90%以上は部分てんかんです。

 

これには発作型は複雑部分発作、二次性全般化強直間代発作が多いです。

 

てんかん分類では、側頭葉てんかんが最多です。

 

側頭葉てんかんの前兆としては、上腹部不快感や既視感が知られています。

 

部分発作であれば、ラモトリギン、レベチラセタム、ガバペンチン(ガバペン®)を用います。

 

皆さんご無沙汰しております。

 

聖楽院コンサート第三週先任ピアニストの佐々木です。

 

去る6月21日、第12回聖楽院週例コンサートを終えました。

 

主宰の飯嶋さんの他、藤岳音さんのチェロ、

 

大学時代の友人、小嶋慶子さんのクラリネットを出演者として迎えました。

 

 

各々のソロ演奏に加え、クラリネット、チェロ、ピアノで

 

ベートーヴェン作曲のピアノ・トリオ「街の歌」をメインに

 

90分たっぷりと演奏をさせていただきました。

 

ことにトリオに関して、若き日のベートーヴェンが

 

この珍しい編成のために作曲した作品を音海で披露できたこと大変嬉しく思います。

 

 

僕としても、初めての試みでした。

 

それにもかかわらず、この作品の持つ若々しく爽やかな曲想を、お二方とも巧みに引き出していたため、

 

大変気持ちよくピアノを弾かせていただくことができました。

 

お客様の中には臨月の女性もおいででした。

 

お腹の赤ちゃんに音楽の癒しを与える一役を買うことができ、嬉しかったです。

 

<この日、重たい曲が入ってなくてよかったね>と密かに出演者一同ホッとしておりました。

 

どうか元気な赤ちゃんを産んでくださいますように。

 

ということで今回の一言、「安産」です。

もう少しツボの世界を見ていきましょう。

 

 

今回は「足の三里(あしのさんり)」です。

 

IMG_1871

 

場所は膝の骨と靭帯との間の外側の窪みを探しそこから指4本下にあります。

 

 

 

「胃腸炎」「胃下垂」「消化不良」「高血圧」「気管支炎」「気管支喘息」等に効果があります。

 

 

 

このツボを刺激すると胃の動きが確認できるそうです。

 

 

 

胃の調子が良くない人はこのツボを刺激してみてください。

 

 

 

<参考文献>

このツボが効く 先人に学ぶ75名穴       谷田伸治 

 

 

経穴マップ イラストで学ぶ十四経穴・奇穴・耳穴・頭鍼      監修  森 和

                                      著者  王 暁明・金原正幸・中澤寛元 

 

 

 

高円寺南診療所 統合医療部 漢方鍼灸医学科 鍼灸師 坂本光昭

内分泌・代謝・栄養の病気

 

テーマ:潜在性甲状腺機能低下症

 

<内科医も精神科医も、ともに見落としやすい病気?>

 

甲状腺機能低下症は、体内臓器・組織での甲状腺ホルモン作用が需要に満たない状態です。

 

甲状腺機能低下は、一般臨床において見逃されやすい病態の一つです。

 

高円寺南診療所では、身体と精神の両面にわたる診療を行っていて、

 

院長自らが声楽家活動も続けているためか、甲状腺機能低下症にとどまらず、

 

潜在性甲状腺機能低下症の患者さんを多数発見しています。

 

<それでは、甲状腺機能低下症から説明します。>

 

まずは、全身症状としての、寒がり・低体温、嗄声(かすれ声)について、

 

患者さん本人が病気の症状として、どれだけ意識しているか、ということが最初のカギになります。

 

 

次に、易疲労感(疲れやすく、根気がない)、全身倦怠感、体重増加などを身体症状と受け止めるのか、

 

精神症状と受け止めるかということも重要です。

 

体重増加は、蛋白異化が低下し、皮下組織に多糖体が沈着し、水を引き込むために生じます。

 

心身医学的な立場から診療する医師にとっては、大切な課題になっています。

 

精神症状として、無気力、精神活動の鈍麻、

 

動作緩慢・活動性低下、記憶力・計算力の低下、眠気を来すことがあります。

 

一般の内科医は、こうした症状をどれだけきちんと評価できるでしょうか、難しい問題です。

 

 

以上の情報を部分的に得るだけだと、内科では「冷え性」、

 

高齢者では「認知症」、精神科では「うつ状態、うつ病」あるいは

 

「統合失調症の初期」という診断を受けてしまうことがあります。

 

 

もっとも、「冷え性」と「うつ状態」はあながち全くの誤診とは言えませんが、

 

原因を見逃していることには変わりありません。

 

 

皮膚症状をきちんと診察する内科医であれば、

 

顔面、四肢に圧痕を残さない浮腫(粘液水腫)がみられ、

 

発汗減少、皮膚乾燥・粗造(乾燥して肥厚して荒れる)、

 

頭髪脱毛、カロテンの沈着による皮膚の黄染などは見逃しません。

 

また、鼻粘膜の浮腫により口呼吸となり、風邪をひきやすく、

 

また声帯の浮腫により声が枯れやすくなることもあります。

 

アレルギーの専門医は皮膚や粘膜をきちんと診察する習慣があるので見落としは少ないはずです。

 

 

その他、正しい診断のためには、

 

消化器症状(食欲低下、腸管運動は弛緩性を示し、

 

便秘を来す、ただし、緊張が続くと下痢;舌肥大)、

 

循環器症状(息切れ;低血圧、徐脈、粘液水腫心;心音は減弱し、

 

心電図では、低電位、T波の平低・陰性化がみられる。

 

心嚢水貯留などにより、胸部エックス線では左右に心拡大し、

 

粘液水腫心を示す。)、

 

 

神経筋症状(筋肉痛、こむら返り;筋力低下、筋肥大、反射運動は遅延する。

 

特にアキレス腱反射の弛緩相が延長する;筋細胞の破壊により、

 

血清CK、LDH,ASTの上昇がみられる)。

 

 

骨代謝が滞り、骨年齢が遅延する。

 

代謝系:胆汁排泄遅延により、高コレステロール血症となる。

 

腎臓系:水利尿不全により、低ナトリウム血症をきたす。

 

血液系:成人では大球性正色素性貧血を呈することが多い。

 

 

検査:T4の低値とTSHの上昇があれば、診断は確定します。

 

原発性の甲状腺期の低下症は、TSHの軽度上昇からはじまる。

 

 

合併症:

甲状腺機能低下では、TRH増加に伴い、

 

プロラクチン分泌が刺激されるために、高プロラクチン血症がみられます。

 

甲状腺自己抗体がしばしば証明されます。

 

 

原因が橋本病であれば、抗ミクロゾーム抗体が高率に高値で検出されます。

 

 

治療:薬物治療を開始する前に心電図検査を行う。

 

甲状腺ホルモンは心機能亢進に働くため少量より開始する。

 

 

 

潜在性甲状腺機能低下症

 

F4が基準範囲内であるが、TSHが基準値上限を超えるものです。

 

症状の乏しい無症候性のものが多いとされていますが、

 

患者さん本人が気にしていない、あるいは気にしないようにしているケースも多数経験します。

 

しかし、甲状腺ホルモン不足は軽微であっても将来様々な障害を伴う可能性があります。

 

そこで、TSHが10μU /mlを超える持続性の潜在性甲状腺機能低下症では、

 

甲状腺ホルモン補充療法を行うことが推奨されています。

 

<第4ステップ> その1

 

「自分にどれだけの解決能力があるか」が判断できたら、

 

次は「人に助けを求めるかを決める」段階に入ります。

 

この段階での前提として大切なことは、気づきです。

 

たとえば、以下のような気づきです。

 

〇「自分は問題を抱えている」

 

〇「しんどいな」

 

〇「これは重大だな」

 

〇「一人では解決が難しいな」

 

しかし、人はそれでも助けを求めない場合があります。

 

それは<HELP!力>第3回~第9回で上げた数々の理由が存在するからです。

 

 

私が行った研究(宮仕, 2010)では、悩みが深刻である時に、

 

助けを求めよう(あるいは、求めまい)という意思決定が起こるのではない、ということがわかりました。

 

 

そうではなく、「自己スティグマ」が助けを求める妨げとなるというものでした。

 

つまり、「こんな自分は周囲に受け入れられないというレッテルを自分自身に貼ってしまうこと」が

 

「自尊心や自己評価が下がること」に繋がります。

 

その時こそが助けを求めることをためらってしまうプロセスを形成し始める、

 

という結果が得られました。

 

 

この研究結果は、臨床心理士として、

 

とりわけ認知行動療法を専門とする私の考え方を支える大きな柱の一つになったように思います。

 

 

* 参考文献: 太田仁,2005,「たすけを求める心と行動」,金子書房

 

ストレス対処 MIYAJI 心理相談室(高円寺南診療所内)

 

主任 臨床心理士 宮仕 聖子

 

心臓・脈管 / ・泌尿器の病気

 

テーマ:急性腎炎症候群

 

 

高円寺南診療所では、初診時にはすべて血圧・脈拍数の測定をしていただいておりますが、

 

尿試験紙による血尿・蛋白尿のチェックも同様に大切だと考えています。

 

 

高円寺南診療所の専門外来科目の一つがアレルギー科ですが、

 

医学のいろいろな領域にアレルギーがかかわってきます。

 

急性糸球体腎炎もⅢ型アレルギーが関与しています。

 

 

 

<かぜは万病の元>といわれますが、風邪症状を訴える初診の方で、

 

乏尿(尿量の減少)がみられる場合には、浮腫(むくみ)が生じているかどうか、

 

血尿・蛋白尿がみられるかどうかを確認するようにしています。

 

 

それは急性腎炎症候群を見落とさないためです。

 

急性腎炎症候群では、症状が日単位で変化していきますので、

 

初診だけでなく、必ず再診してくださることが大切ですが、

 

なかなか理解していただけなくて難渋することがあります。

 

 

急性腎炎症候群の原因は様々ですが、よく知られているのは病原体による感染症です。

 

急性腎炎症候群の代表は急性糸球体腎炎で、溶連菌感染後糸球体腎炎などが重要です。

 

 

 

急性糸球体腎炎

 

先行感染の後、一定の潜伏期を経て、

 

血尿、高血圧、浮腫などの症状が急激に出現しますが、多くは保存的治療で治癒します。

 

A群β溶血性連鎖球菌(12型)感染症が代表的ですが、

 

他の細菌や、パルボウイルスB16・B19をはじめとするウイルス感染によっても生じることがあります。

 

なお、パルボウイルスB19は、伝染性紅斑、巣状糸球体硬化症にも関与します。

 

 

溶連菌感染後急性糸球体腎炎

 

高血圧、乏尿(尿量の減少)、浮腫(むくみ)などが生じることがあります。

 

A群β溶血性連鎖球菌(12型)に対するⅢ型アレルギーによる急性糸球体腎炎です。

 

咽頭炎・扁桃炎・丹毒などの先行感染後、2週間で発症します。

 

血液中の補体(ほたい)の濃度が変化します。

 

補体とは、生体が病原体を排除する際に

 

抗体および貪食細胞を補助する免疫システム (補体系) を構成するタンパク質です。

 

補体系は自然免疫に属しており、血液中の多数の小タンパク質からなり、

 

それらは通常不活性な酵素前駆体の形で循環しています。

 

 

溶連菌感染後急性糸球体腎炎では低補体血症を呈します。

 

発病2週以内に、補体が低下し、症状の改善とともに上昇する。

 

顕微鏡による組織像では糸球体係蹄内に炎症細胞が増えて、

 

管内増殖性糸球体腎炎を呈します。

 

腎臓の糸球体の係蹄壁に免疫グロブリン蛋白のIgG

 

補体蛋白のC3が顆粒状に沈着します。

 

 

IgGはウイルス、細菌、真菌など様々な種類の病原体と結合し、

 

補体、オプソニンによる食作用、毒素の中和などによって生体を守っています。

 

IgGはヒトの胎盤を通過できるので自分の免疫系を確立する生後1週間までの間、

 

胎児を守ることができる免疫蛋白です。

 

 

治療:基本は安静・保温、食事療法(塩分・水分制限)です。

 

必要時のみ薬物療法を行います。

 

浮腫があるときは利尿薬(フロセミド)、

 

高血圧には降圧剤(カルシウム拮抗薬)、

 

ステロイドなどの免疫抑制薬は、症状を増悪させることがあるため、慎重に用いられます。

 

 

予後:多くの症例は数か月で治癒しますが、慢性糸球体腎炎に移行することがあります。

呼吸器 / 感染症 / 免疫・アレルギー・膠原病

 

テーマ:咳喘息と神経性咳嗽

 

<心身症との鑑別が難しい咳嗽>

 

 

アレルギー内科の専門医は、喘息診療のエキスパートです。

 

喘息には<咳喘息(せきぜんそく)>というタイプがあり、早期に診断して対応することが大切です。

 

しかし、喘息(ぜんそく)という名称の括りに対して心理的に抵抗を感じるためか、

 

診断に納得されず、咳止めだけの処方を希望される方がいます。

 

十分な説明によって、御自分の病態を正しく理解していただく必要を感じております。

 

 

 

咳喘息の診断は「咳喘息に関するガイドライン」で基準が示されています。

 

1)喘鳴を伴わない咳嗽が8週間(3か月)以上持続、

 

聴診上wheeze(ゼイゼイと聞こえる呼吸の雑音)を認めない

 

 

2)気管支拡張薬が有効、

 

この2つを満たすものとされています。

 

 

特徴:

咳喘息は、典型的な喘息とは異なり、慢性的に続く咳が主体であり、喘鳴や呼吸困難は伴いません。

 

また呼吸機能検査(スパイログラム)で喘息特有の閉塞性パターン(気流閉塞)は示しません。

 

しかし、喘息の亜型または前段階と考えられています。

 

実際に、約3割が本格的な気管支喘息に移行します。

 

咳喘息では喀痰中、気管支肺胞洗浄液、気管支粘膜生検において好酸球の増多を認めます。

 

 

 

治療:

鎮咳にはβ2刺激薬、ロイコトリエン受容体拮抗薬が有効です。

 

咳喘息に対しては吸入ステロイド薬による長期管理が推奨されています。

 

 

ところで、慢性の咳嗽を来す疾患や病態は多いため、

 

咳喘息と診断するためには、他の疾患を否定する必要があります。

 

神経性咳嗽もその一つです。実際の症例を示します。

 

 

 

S.W 30代男 医療従事者

 

(個人情報保護の配慮により、本人の許可を受けました)

 

 

診断:神経性咳嗽(しんけいせいがいそう)

 

 

主訴:「咳がおさまらない。薬が効かない。」

 

 

医療面接:以下は、問診の結果得られた情報です。

 

〇日中に多く、夜間は少ない。

 

〇話をしていると咳が出易く、黙っているときには少ない。

 

〇話をする機会が多いのは職場、家では余り話をしない。

 

〇職場は多忙でストレスフルであり、絶えず緊張を強いられている。

 

〇「職場の対人関係は何とかコーピングできている」との発言、

 

 しかし、実際には積極的なストレス対処ができているのではなく、消極的に回避している。

 

コーピングという言葉を、回避して悩みを一時的に紛らわせることだと誤解していた。

 

〇最近、トラブル続きで、今日も嫌なことがあった。

 

 

 

病態:

神経性咳嗽とは長期間にわたる発作性・反復性または慢性連続性の

 

乾性咳嗽(タンを伴わない咳)を呈する疾患です。

 

心理社会的因子の関与がみられ、咳嗽の出現に季節性がなく

 

睡眠中には起こらないなどの特徴があります。

 

 

鑑別:

慢性の咳嗽を来す疾患や病態は多いため、

 

神経性咳嗽と診断するためには、他の疾患を否定する必要があります。

 

つまり、内科的なアプローチを経ないと診断できない病気です。

 

特に鑑別が問題となるのは咳喘息やアトピー咳嗽です。

 

これらは、治療的診断によって鑑別することができます。

 

前者では気道過敏性が認められ気管支拡張薬が効きます。

 

後者では気管支過敏性はなく、ヒスタミンH1受容体拮抗薬やステロイド薬が有効です。

 

 

慢性咳嗽のその他の原因としては、胃食道逆流症や百日咳が増加しているので注意しています。

 

さらには降圧剤のなかでACE阻害薬の副作用で生じることもあるので、

 

他の病院を受診している方には、お薬手帳を見せていただいております。

 

 

S.Wさんはアレルギー体質であるため、喘息の治療を継続しつつ、

 

神経性咳嗽に対して心身医学的サポート(水氣道®、認知行動療法など)が有効です。

 

対人関係が得意でなく、コミュニケーションにおいてストレスフルになりがちな方には、

 

聖楽院でのヴォイストレーニングも有効です。

 

これは、咳喘息にも神経性咳嗽にも役立つ、コーピング技法です。

 

理気航法No1

 

 

私たちは生まれてからその一生を終えるまで、絶えず呼吸をし続けています。

 

しかし、この呼吸を意識して生活している人は意外に少ないものです。

 

 

また、トレーニングの目的で呼吸を意識して行っている人は少なくないですが、

 

意識しているときだけに有効な呼吸法には限界があるのではないでしょうか。

 

 

水氣道の稽古に慣れてくると、呼吸を特に意識せず、つまり、無意識のうちに

 

理想的な呼吸パターンが身体に定着していくので、睡眠中の呼吸も整っていくことになります。

 

 

理気航法では、まず息を吐くことを意識します。そして、それに連動した形で

 

上半身を中心にストレッチをしていきます。

 

そうすることで無駄な力が抜けやすくなります。

 

そのためリラックスした状態で、体を動かすことができます。

 

 

人間の呼吸は、吐き出した分の空気は、必ず自然に戻ってきます。

 

つまり、しっかり意識して努力して吐き出すようにすると、

 

無意識のうちに自然に吸い込むことができます。

 

その結果、緊張を続けなくても、しっかりした呼吸ができるようになります。

 

つまり、過剰な緊張(ストレス)の連続ではなく、

 

適度で心地良い緊張と弛緩との繰り返しによって

 

安定したリラックス状態を導くことができるようになるのです。

 

 

日本水氣道協会 副支援員 水氣道少初段上

 

水氣道理気航法 直伝 金澤 克彦

 

消化器系の病気

 

テーマ:

 

 

胆嚢ポリープの大部分はコレステロールポリープです。

 

通常は無症状で経過します。

 

コレステロールポリープは多発する傾向があります。

 

胆嚢ポリープを見つけたら、まずは超音波検査(腹部エコー)で経過観察をします。

 

以下は、高円寺南診療所で今週撮影した29歳女性のデータです。

 

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<図1>腹部超音波画像

左)肝臓と右腎臓     

 脂肪肝はありません。

 

右)胆嚢(たんのう)とポリープ

 

 

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<図2>腹部超音波画像

(パワードプラー法 併用)

左)通常の画像           

胆嚢ポリープの大きさ10.1×6.2mm            。

1㎝を超えるポリープです。

 

右)パワードプラー法

パワードプラーで、ポリープとその周辺に異常血流は見られません

 

 

ポリープの大きさは1㎝を超えますが、異常血流を認めないため、

 

胆のう癌である可能性はそれほど高くありません。

 

しかし、数か月前より大きくなっているため、最寄りの大学病院へ紹介した症例です。

 

 

直径1㎝以上では胆のう癌の可能性もあるため胆嚢摘出術を考慮します。

 

また広基性病変では胆のう癌を考え、肝床部を含めた胆のう摘出術を考慮します。

 

胆のう癌の可能性が高い場合は、開腹下胆のう摘出術(開腹しての手術)を選択します。

 

必要に応じて肝葉切除+リンパ節廓清を加えます。

 

ただし、ラパロスコープ(腹腔鏡下)つまり、腹壁に穴を開けての遠隔手術は、行うべきではないとされています。

 

 

日本では、胆のう癌の60~70%に胆石を合併しています。

 

とくに胆嚢進行癌では結石を伴うことが多いです。

 

ただし、胆石症患者における胆のう癌合併率は約1%です。

 

また胆のう癌の9~15%に胆管癌を合併します。

 

胆のう癌の発生と関連する疾患には膵・胆管合流異常症があります。

 

第114回日本内科学会講演会に参加して(その4)

 

(4月14~16日:東京国際フォーラム)

 

テーマ:超世代の内科学-GeneraltyとSpecialtyの先へ-

 

招請講演<がん幹細胞研究の進歩と治療開発>

 

赤司浩一(九大研究院・病態修復内科)氏の公演を聴いて(その4)

 

 

がん組織(腫瘍)を構成する細胞は不均一です。

 

ことの原因は、<がん幹細胞>という概念により、遺伝子変異だけが原因ではなく、

 

後天的な環境要因も重要だということが説明しやすくなりました。

 

 

細胞が、がん化するためには、異なる遺伝子変異や

 

エピゲノム異常が集積することがきっかけとなり、クローン進化が生じます。

 

このエピゲノムとは DNAの塩基配列は変化せず、

 

DNAやヒストンへの化学修飾が規定する遺伝情報です。

 

後天的な環境要因によって遺伝子発現が制御されます。

 

 

生体内において、より異常なクローンが生存競争に勝ち抜き、

 

未分化で自己複製能力をもつがん細胞へと変化するものと考えられます。

 

がん幹細胞は自己複製によって、がん幹細胞を増やすだけでなく、

 

がん細胞でない細胞(非がん細胞)も生産します。

 

 

この過程で、酸化ストレス低酸素刺激などの微小環境<ニッチ>の変化が、

 

生物学的特性の異なる様々ながん細胞を出現させます。

 

しかも、非がん細胞集団の一部は、がん幹細胞になっていきます。

 

 

がんの治療が難しいのは、がん細胞集団が均一でないことも原因です。

 

治療効果を示すがん細胞集団と治療抵抗性を示すがん細胞集団が共存している場合に、

 

治療によって、治療抵抗性のがん細胞集団のみが残存し、

 

腫瘍の再発・転移の原因となることは、臨床的事実と一致します。

 

 

遺伝子を変えることはできませんが、生活習慣や環境の改善など、

 

後天的な工夫や努力によって、DNAの塩基配列は変化しなくても、

 

DNAやヒストンへの化学修飾が規定する遺伝情報の発現を制御することは可能だ、ということです。

 

 

高円寺南診療所での生活習慣指導外来栄養食事指導自律訓練法認知行動療法をはじめ、

 

水氣道聖楽院での諸活動は、すべて上記のがん予防の内容に通じるものであることは、

 

ご理解いただけるのではないでしょうか。

 

診察室から