内分泌・代謝・栄養の病気
テーマ:潜在性甲状腺機能低下症
<内科医も精神科医も、ともに見落としやすい病気?>
甲状腺機能低下症は、体内臓器・組織での甲状腺ホルモン作用が需要に満たない状態です。
甲状腺機能低下は、一般臨床において見逃されやすい病態の一つです。
高円寺南診療所では、身体と精神の両面にわたる診療を行っていて、
院長自らが声楽家活動も続けているためか、甲状腺機能低下症にとどまらず、
潜在性甲状腺機能低下症の患者さんを多数発見しています。
<それでは、甲状腺機能低下症から説明します。>
まずは、全身症状としての、寒がり・低体温、嗄声(かすれ声)について、
患者さん本人が病気の症状として、どれだけ意識しているか、ということが最初のカギになります。
次に、易疲労感(疲れやすく、根気がない)、全身倦怠感、体重増加などを身体症状と受け止めるのか、
精神症状と受け止めるかということも重要です。
体重増加は、蛋白異化が低下し、皮下組織に多糖体が沈着し、水を引き込むために生じます。
心身医学的な立場から診療する医師にとっては、大切な課題になっています。
精神症状として、無気力、精神活動の鈍麻、
動作緩慢・活動性低下、記憶力・計算力の低下、眠気を来すことがあります。
一般の内科医は、こうした症状をどれだけきちんと評価できるでしょうか、難しい問題です。
以上の情報を部分的に得るだけだと、内科では「冷え性」、
高齢者では「認知症」、精神科では「うつ状態、うつ病」あるいは
「統合失調症の初期」という診断を受けてしまうことがあります。
もっとも、「冷え性」と「うつ状態」はあながち全くの誤診とは言えませんが、
原因を見逃していることには変わりありません。
皮膚症状をきちんと診察する内科医であれば、
顔面、四肢に圧痕を残さない浮腫(粘液水腫)がみられ、
発汗減少、皮膚乾燥・粗造(乾燥して肥厚して荒れる)、
頭髪脱毛、カロテンの沈着による皮膚の黄染などは見逃しません。
また、鼻粘膜の浮腫により口呼吸となり、風邪をひきやすく、
また声帯の浮腫により声が枯れやすくなることもあります。
アレルギーの専門医は皮膚や粘膜をきちんと診察する習慣があるので見落としは少ないはずです。
その他、正しい診断のためには、
消化器症状(食欲低下、腸管運動は弛緩性を示し、
便秘を来す、ただし、緊張が続くと下痢;舌肥大)、
循環器症状(息切れ;低血圧、徐脈、粘液水腫心;心音は減弱し、
心電図では、低電位、T波の平低・陰性化がみられる。
心嚢水貯留などにより、胸部エックス線では左右に心拡大し、
粘液水腫心を示す。)、
神経筋症状(筋肉痛、こむら返り;筋力低下、筋肥大、反射運動は遅延する。
特にアキレス腱反射の弛緩相が延長する;筋細胞の破壊により、
血清CK、LDH,ASTの上昇がみられる)。
骨代謝が滞り、骨年齢が遅延する。
代謝系:胆汁排泄遅延により、高コレステロール血症となる。
腎臓系:水利尿不全により、低ナトリウム血症をきたす。
血液系:成人では大球性正色素性貧血を呈することが多い。
検査:T4の低値とTSHの上昇があれば、診断は確定します。
原発性の甲状腺期の低下症は、TSHの軽度上昇からはじまる。
合併症:
甲状腺機能低下では、TRH増加に伴い、
プロラクチン分泌が刺激されるために、高プロラクチン血症がみられます。
甲状腺自己抗体がしばしば証明されます。
原因が橋本病であれば、抗ミクロゾーム抗体が高率に高値で検出されます。
治療:薬物治療を開始する前に心電図検査を行う。
甲状腺ホルモンは心機能亢進に働くため少量より開始する。
<潜在性甲状腺機能低下症>
F4が基準範囲内であるが、TSHが基準値上限を超えるものです。
症状の乏しい無症候性のものが多いとされていますが、
患者さん本人が気にしていない、あるいは気にしないようにしているケースも多数経験します。
しかし、甲状腺ホルモン不足は軽微であっても将来様々な障害を伴う可能性があります。
そこで、TSHが10μU /mlを超える持続性の潜在性甲状腺機能低下症では、
甲状腺ホルモン補充療法を行うことが推奨されています。
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