日々の臨床 6月20日火曜日<多発性骨髄腫>

血液・造血器の病気

 

テーマ:多発性骨髄腫

 

 

医学の進歩と共に、外来診療の重要性が増すにつれて、

 

高円寺南診療所をはじめて受診される患者さんの病気も、

 

いっそう多様性と複雑性を増す傾向にあります。

 

大学病院をはじめとする基幹病院の外来と大きく変わらない状況になりつつあります。

 

高円寺南診療所はチーム医療を実施しておりますので、高度に専門的な病気についても、

 

専門職員が無関心かつ無知であってはならない、と気持ちを新たに引き締めて取り組んでいます。

 

 

さて骨髄は血液を作る器官なので造血器です。多発性骨髄腫は血液・造血器の病気です。

 

とはいっても、症状が全身に及ぶので、全身の病気として扱われています。

 

多発性骨髄腫の特徴は骨髄で形質脂肪が腫瘍性に増殖すること、

 

その産物であるM蛋白という免疫グロブリンが過剰に生産されること、

 

その腫瘍が全身に及ぶことの3点にあります。

 

 

50歳以後、特に60歳以上に多いです。発症は緩徐で、骨痛や腰痛を初発症状とすることが多く、

 

腰椎圧迫骨折、長管骨の圧迫骨折、貧血で診断されることも多いです。

 

 

 

診断:①骨髄穿刺(異型形質細胞の増殖)、②血清・尿検査(M蛋白の検出、形質細胞の単クローン性増殖)にて診断確定

 

その他、頭蓋骨のX線所見で骨打ち抜き像、血中β2ミクログロブリン上昇

 

血清免疫電気泳動にてM-bow形成など

 

 

 

病態:多発性骨髄腫ではNF-kBが活性化しています。

 

   ⇒NF-kBの活性を阻害できるプロテアソーム阻害薬の可能性

 

   ALアミロイドーシスの合併

 

 

 

治療:一般的には65歳以上または移植適応のないものには化学療法、

 

   アルキル化剤(メルファランなど)により二次性悪性腫瘍が報告されています。

 

   シクロフォスファミドの副作用で出血性膀胱、骨髄抑制、肝・腎機能障害、脱毛などがあります。

 

 

   65歳以下で移植適応のあるものには導入化学療法に引き続いて移植療法(自家移植)を行います。

 

 

ただし、近年ボルテゾミブ(プロテアソーム阻害薬)が第一選択薬として用いられつつあります。

 

また、難治・再発例では、ボルテゾミブに加え、サリドマイド、レナリドミド(サリドマイド誘導体)、

 

ポマリドマイド、パノビノスタット(HDAC阻害剤)、エロツズマブ(SLAMF7抗体)、

 

カルフィルゾミブ(第2世代プロテアーム阻害剤)などの最近承認された新薬の使用も可能になってきました。

 

 

対症療法としては、高カルシウム血症に対して輸液およびループ利尿剤、骨病変や骨痛に対して

 

ビスホスフォネート製剤またはデノスマブが投与されることがあります。

 

 

 

予後:病期と治療効果によって異なります。生存期間は数か月から10年以上と様々ですが、

 

   新薬の登場により改善してきています。

 

   劇症型(LDL1,000IU / L以上、高カルシウム血症併発)では1年とされます。

 

   BJP(ベンス・ジョーンズ蛋白)骨髄腫は腎障害を起こしやすく予後不良であり、

 

   IgG骨髄腫は最も予後が良いです。

 

   血中アルブミンが低値で、β2ミクログロブリンが高値であるほど予後不良です。

 

 

注意:乏尿などを機に腎不全が進むので、水分補給を指導します。

 

   また易骨折性がみられるため、日常生活上、転倒したり、

 

   重いものを持ったり、無理な姿勢を摂ったりしないように指導します。