日々の臨床 6月6日 火曜日 <IgA血管炎>

血液・造血器の病気

 

テーマ:IgA血管炎

 

<気をつけよう!同義語の多い病名>

 

 

私の専門とする領域は、カタカナ、英語、ドイツ語、同義語が入り混じっていることが多く、

 

落ち着いて話をしたり聞いたりしないと、とんでもない誤りを犯しかねないのが悩みの種の一つです。

 

 

今回のテーマであるIgA血管炎は最近の呼称であるため、

 

一瞬何のことかわからなくなったものの一つです。

 

以下のうちいずれかの呼称であれば、すぐにピンときたはずです。

 

 

同義語:Schönlein-Henoch purpura、アレルギー性紫斑病、血管性紫斑病

 

これは、アレルギー性疾患であるにもかかわらず、

 

出血が問題となることがあるためか、血液病学に分類されていることが多いです。

 

学童期までの男児に多いので小児科の先生は経験が多いのではないかと思います。

 

しかし、実際には成人にも発症し、皮膚症状のため皮膚科、関節症状のため整形外科やリウマチ科、

 

腹部症状のため内科・消化器科を受診される方も少なくないことでしょう。

 

また、腎炎を合併すれば内科・腎臓病科で診てもらうこともあることでしょう。

 

 

上気道感染(特に溶連菌感染症)の後、

 

1ないし3週間を経て、四肢伸側に左右対称の紫斑が出現することが多い病気です。

 

上気道感染とは、俗にいえば風邪(かぜ)です。

 

 

TVのCMでGACKT君が<風邪は内科、薄毛は?>などと、語らされていますが、

 

昔から<風邪は万病の元>といいます。

 

患者さん自身が風邪と自己診断して受診されることも多いのですが、

 

これが大きな落とし穴になることも少なくありません。

 

 

風邪様症状のすべてが風邪ではありません!

 

 

IgA血管炎は、皮膚症状(紫斑、血管浮腫)、関節痛、腹部症状(腹痛、血便)の3つが主な兆候です。

 

紫斑は触れてみると丘疹状であることがわかります。

 

 

全身性アレルギー性血管炎により毛細血管動脈側の透過性が亢進して、

 

浮腫(むくみ)や組織での出血をきたす病気です。

 

 

血管壁がもろくなるため最小血管や血管壁の脆弱性をみる検査

 

(Rumpel-Leed試験)を行うことがあります。

 

 

一般的には経過は良好で数週間以内に自然治癒することが多いですが、

 

腎障害を合併するとIgA腎症に類似の病態となり慢性化して予後不良となります。

 

また、血小板や凝固系は正常で出血時間などの止血検査は正常ですが、

 

出血が重度の場合は、血小板第Ⅷ因子製剤を投与することがあります。