日々の臨床 6月5日 月曜日 

中毒・物理的原因による疾患、救急医学

 

テーマ:アセトアミノフェン中毒

 

 

<気をつけよう!カタカナ・略語・お墨付き>

 

近年、世の中が物騒になってきておりますが、カタカナの日本語、

 

特に略語ほど危険で無責任なものはありません。薬品も例外ではありません。

 

 

 

アセトアミノフェンは解熱・鎮痛薬として広く用いられています。

 

脳の視床下部に作用して解熱を、視床および大脳皮質に作用して鎮痛をもたらします。

 

しかし、急性中毒症状を引き起こすことがあります。

 

 

毒性中間代謝物(N-アセチル-p⁻ベンゾキノンイミン)の蓄積により、

 

肝臓をはじめ様々な臓器に障害を来すことがあります。

 

食欲不振、吐き気・嘔吐は典型的な中毒症状です。また重症例では、肝障害の他に、

 

意識障害、腎不全、心筋障害などから死に至ることもあります。

 

早目に気付けば、N-アセチルシステイン(アセチルシステイン「あゆみ」®)

 

という内用液が拮抗薬(解毒剤)として用いることができます。

 

 

皆様は、OTC医薬品という言葉をご存知でしょうか。

 

主に医師が処方する医薬品である医療用医薬品に対して、

 

OTC医薬品とは一般用医薬品であって、

 

薬局・薬店・ドラッグストアなどで販売されている医薬品です。

 

 

OTCの語源は英語の「Over The Counter:オーバー・ザ・カウンター」の略で、

 

カウンター越しにお薬を販売するかたちに由来しています。

 

従来、大衆薬・市販薬と呼び慣わしてきたものを

 

業界がわざわざ「OTC医薬品」に呼称を変更しました。

 

法律的にも「一般用医薬品」と表現されておりましたが、

 

2007年より「OTC医薬品」に呼称を変更・統一しています。

 

法律は、危険な暴力装置の後ろ盾(お墨付き)にもなりうるわけです。

 

 

OTC医薬品は、業界が宣伝するように、

 

いろいろな疾病や症状の改善に効果を発揮するのは確かです。

 

確かに自分自身で健康管理(セルフケア)を行うことは私も大賛成です。

 

しかし、<軽い病気の症状緩和などに活用するよう推奨>というのは、

 

大きなギャップがあり、いただけません。

 

 

ですから、以下のようなキャッチ・フレーズは要注意です!!

 

これからは、自分の健康は自分で守る「セルフメディケーション」の時代。

 

OTC医薬品を上手に使いましょう。

 

三段論法は、合理的な推論法の一つですが、大衆操作のために悪用されやすいです。

 

(大前提) これからは、自分の健康は自分で守る

 

(小前提) これからは、「セルフメディケーション」の時代

 

(結論)  OTC医薬品を上手に使いましょう。

 

 

ここには魔の三段論法が隠されています。

 

それでは、トリックがどこに隠されているか、チェックしてみましょう。

 

 

(大前提)では、すこぶるまっとうな命題を提出し、一般大衆に有無をいわせません。

 

(小前提)ここが、「セルフケア」の時代、などの表現に留まれば、問題なしですが、

 

      「セルフメディケーション」の時代というのは、明らかに論理の飛躍です。

 

      これが、トリック・フレーズ1号です。

 

 

(結論)OTC医薬品を<上手に>使いましょう。

 

    この<上手に>というところが、最も難しいのに、サラリと流しています。

 

    言いたいことの結論は、OTC医薬品を買ってください、

 

    「セルフメディケーション」のリスクは決して少なくないので<上手に>

 

    といって逃げているのです。これが、トリック・フレーズ2号です。

 

 

何か問題が生じたら、つまり、トラブル処理は

 

    <医師または薬剤師にご相談ください>であり、(もうけだけは、こちらに)

 

    と読めなくもありません。つまり、副作用が苦しむようなことがあっても、

 

 <上手に>使えなかった貴方の自己責任ですよ!と責任を回避しているわけです。

 

ですから、やたら、自己責任論を唱える昨今の政府の態度に疑問を感じています。

 

 

2017年1月から「セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)」が始まりました!

 

規制緩和に裏があり、減税の陰に、<業界との>癒着あり、透けて見えてこないでしょうか?