神経・精神・運動器
テーマ:ミトコンドリア脳筋症
骨格筋障害のうち、その原因が筋肉自体にあり、
神経によるものではないものをミオパチーといいます。
骨格筋障害というと、整形外科を考える方が多いと思いますが、
このミオパチーを専門領域とするのは、まずは神経内科医です。
(ただし、神経内科は心療内科とは異なるので区別してください。)
筋肉の細胞の異常には
①筋細胞の構成蛋白の異常、
②エネルギー代謝の異常、
③炎症
があります。①は筋ジストロフィーなど、②はミトコンドリア病や各種のミオパチーなど、
③は多発性筋炎/皮膚筋炎などの膠原病です。
この③のみは、神経内科医ではなく、リウマチ内科の領域です。
②エネルギ代謝異常によるミオパチーにはミトコンドリア病があります。
これは先天性代謝性ミオパチーで、ミトコンドリア脳筋症とも呼ばれています。
ミトコンドリアはヒトを含め真核生物の細胞小器官です。
二重の生体膜からなり、独自のDNA(ミトコンドリアDNA)を持ち、分裂、増殖します。
それはATP合成や酸素呼吸(好気呼吸)の場として重要な役割を担っています。
このDNAは母系遺伝します。
ミトコンドリア病は、ミトコンドリアの機能異常によって、
エネルギー産生障害(ATP酸性の低下)のため、
体内の乳酸が増加して体液が酸性化するアシドーシスを生じます。
体の中で最もエネルギーを必要とする臓器である脳や骨格筋をはじめ、種々の臓器が障害される病態です。
共通の症状は、四肢の筋力低下、低身長、感音性難聴、痙攣、脳卒中様発作、糖尿病などです。
先天性であるこの病気とは異なり、線維筋痛症は後天的な病気ですから、病的な低身長は特徴的ではありません。
しかし、エネルギー不足や有酸素呼吸機能低下傾向を認めるため、
筋肉や脳の機能異常をきたしているという現象は共通しています。
線維筋痛症の患者さんが有酸素運動である水氣道®を継続することによって治療効果が得られますが、その場合は、骨格筋機能と同時に脳の機能にも改善がみられています。
このように、発症頻度の少ない難病を経験することは、発症頻度の多い病気の理解や治療法の開発の上でも役に立つ場合があります。これは、逆のこともいえそうです。日常的に遭遇する病気を丁寧に観察することによって、難病の患者さんに対して新たなアプローチが可能になるのではないかと思います。
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