診察室より 第12回

第114回日本内科学会総会に参加して(その2)

 

 

医師という職業は、弁護士等とは違い社会的に確立した

 

Specialty(専門家)ではないと考える理由について述べてみようと思います。

 

 

まず、私の日常の一端をご紹介いたしましょう。

 

私は、自分の職業を尋ねられた際に<医師です>というのは、少しぎこちない気分になります。なぜなら、ほぼ100%近く、<何科がご専門ですか>と尋ね返されるからです。

これは、すなわち医師という職業が社会的に承認されたSpecialtyに至っていないことに他なりません。それが現実だから、たとえば最初から<内科医です>と答えることになるのでしょう。

 

このあたりは眼科医や耳鼻科医あるいは皮膚科などの専門医とは異なるところです。

しかし、世間様は、内科医というだけでは、まだ納得してくれません。

逆に、納得したつもりになった方は<風邪をひいたら伺います>などとお答えになります。

《風邪は万病の元》であり、他の病気に劣らず、高度な専門的知識と広汎な臨床経験とが要求されますが、素人の方は軽い病気の括りとして考えていることは否めません。

内科専門医という呼称が、一般の方にピンと来ない理由は、そのあたりにあるのではないでしょうか。これは、実に大きな誤解というものです。内科医とりわけ一般内科医は、軽い病気のみを診療する医師ではありません。

 

その他、大半の方は<内科の何がご専門ですか>とさらにお尋ねになります。

この質問は実際にはSpecialty(専門)ではなく、Subspecialty(特殊専門)に関するものです。医師の間のみならず内科医も世間的にはSpecialty(専門家)と認めてくださっていないようです。

 

どうやら内科医はSubspecialty(特殊専門)をもってようやく世間様のお尋ねに応えることができるようです。その現実を、次回ご紹介いたします。