【日曜コラム】聖楽の楽しみ 4月23日

ゲルノート・クランナーGernot Kranner 氏との出会い

 

それは3月25日(日曜日)ウィーン滞在最後の日の夜のオペラ観劇、

 

演目はアルフレード・カタラーニ作曲の歌劇<ラ・ワリー>でした。

 

 

フォルクス・オーパーで既に私の左隣の席に着いていた親切そうな紳士に、

 

念のため私の席が隣で良いかどうか、私のチケットを見せて尋ねたところ、

 

彼は間違いないですよ、という感じで確認してくれました。

 

 

さて、オペラ開演の前、まだ舞台の幕の下りたままのオーケストラ・ピットでは

 

楽団員たちが音の調整に余念がありませんでした。

 

そこで、彼の紳士は「今日のオケの連中、とっても良い音を出している。絶好調だな!」

 

という内容のドイツ語で小さく独り言をつぶやきました。

 

シャレではありませんがドイツ語の独語を始めて聴きました。

 

すると、彼は響きの良い、とても純正なピッチで軽く鼻歌を始めるのでした。

 

「これは只者ではない。」と私は直感し、

 

反射的に「突然で恐縮ですが、貴殿は絶対音感をお持ちのようですが?」と英語で尋ねたところ、

 

「いえ、そこまでは持ち合わせていませんよ。あなたは、お持ちなのですか?」と優しく問い返されました。

 

そこで「私の音感は全く優れていません。突然おうかがいして、大変失礼しました。

 

貴殿が、音楽のマエストロの雰囲気をまとっておいでだったものですから、

 

ついお伺いしてしまった次第です。」などと言い訳をしていると、

 

「私がマエストロなんて飛んでもありませんが、明日と、明後日の夜、この舞台に立ちます。」

 

とおっしゃるのでした。

 

そこで、私は、「それは、あいにくとても残念です。私は、明日、東京へ帰ります。

 

しかし、もし可能であれば、このオペラが終了した後に、お名前をいただけませんか。

 

私は東京の医師で、毎年この季節、ウィーンに医学と音楽の修業に来ています。

 

次回、私にレッスンしていただけないでしょうか。」と畳みかけると、

 

「お引き受けいたしましょう。」といって彼は私に名刺をくださいました。

 

 

ホテルに戻って早速、ネット検索をすると、彼はフォルクス・オーパーに所属する

 

歌手(Sänger)・劇作家Schauspieler・演出家(Regisseur)・著述家(Autor)

 

・舞台芸術監督(Künstlicher leiter)を兼ねるゲルノート・クランナー氏でした。

 

http://www.gernotkranner.at/

 

 

フォルクス・オーパーの日本公演が上野の東京文化会館で

 

2008年5月31日(土)14:30開演、

 

ヨハン・シュトラウスⅡのオペレッタ「こうもり」で、

 

ブリント博士役で出演されていたことがわかりました。

 

http://www.nakash.jp/opera/review08/32volksoper/r.htm

 

旅先での出会いは不思議なものです。