日々の臨床 4月3日 月曜日 

中毒・物理的原因による疾患、救急医学

 

テーマ:ベリリウム中毒

 

 

小さな診療所の医者をやっていると、ふだんは必要な検査ですら受けようとしない患者さんに限って、

 

ひとたび健康不安が高まると精密検査をしたいから、大病院に紹介状を書いてほしいという希望を出されます。

 

そのようなときは、私は、患者さんの要望に応じることにしていますが、

 

ここでよく考えていただきたいと思い、ベリリウム中毒の例を挙げました。

 

 

私は、虎の門病院で初期研修を終えた直後に東大の衛生学教室(故和田攻教授)のもとで、

 

予防医学をはじめ微量元素や毒物学、環境医学の勉強をしてから、内科医となりました。

 

和田教授ご自身が優れた内科医でした。私が労働衛生コンサルタントをはじめ、

 

第一種作業環境測定士、放射線取扱主任者の国家資格をもっているのも、

 

この時期に学んだことが後の臨床に役立つことに気づいたからでもあります。

 

 

私はアレルギー専門医となってから、喘息ばかりではなく、

 

接触皮膚炎、結膜炎、気管支炎などの患者さんと日常的に接しています。

 

今回のテーマとしたベリリウム中毒には、決め手となる治療法がありません。

 

ですから、予防こそが肝要になります。

 

いきなり精密検査をしても、解決には繋がりません。

 

なぜなら、職場環境について詳細に聴取したうえで診察しないと正しい診断や予防に結び付かないからです。

 

 

ベリリウムというのは元素記号Be、周期表では4番目の元素です。

 

工業用品による中毒の原因として重要です。

 

中毒症状としては、

 

急性期には:皮膚では接触皮膚炎から潰瘍、目には結膜炎や角膜潰瘍、

 

呼吸器には気管支炎、肺炎、肺水腫を来します。

 

 

慢性期には:ベリリウム吸入後数年から十数年後に、肺に生じた肉芽腫性病変から肺線維症となるベリリウム肺を生じます。

 

その結果、肺性心といって心不全を生じます。

 

発生場所は、宇宙航空材料、原子炉材、原子工業用品を扱う施設です。

 

侵入経路は、口・気道・皮膚・粘膜で、特に皮膚で感作され、炎症反応を引き起こします。

 

検査は、胸部レントゲン検査の他、ベリリウム肺では、気管支鏡検査で、

 

生理食塩水を注入して気管支肺胞液を回収すると、リンパ球が著明に増加していることが確認されます。

 

ただし、同様の結果は、過敏性肺炎、サルコイドーシス、特発性間質性肺炎などでも認められるので鑑別が必要となります。

 

 

なお、以下が、上記の臨床に有益と思われた私の保持資格リストです。

 

労働衛生コンサルタント登録証

登録年月日平成19年6月15日(登録番号:保―第3021号)

事務所の名称;高円寺南労働衛生コンサルタント事務所

合格した区分:保健衛生 合格年月日:平成19年3月23日

 

第一種作業環境測定士電離放射線

作業環境測定士講習修了証:第日測 第原機五八四号(平成二十年一月十八日)

 

第一種作業環境測定士鉱物性粉じん

作業環境測定士講習修了証:第日測 粉〇八〇四五号(平成二十年八月一日)

 

第三種放射線取扱主任者免状 第1398号、平成21年9月8日

 

衛生工学衛生管理者:終了証 東 第09761号(平成21年9月25日)

 

第一種作業環境測定士金属

作業環境測定士講習修了証:第日測 金〇九〇三三号(平成二十一年十月二十三日)