今月のテーマ「糖尿病の最新医療」
「劇症1型糖尿病」
本疾患は初期症状が典型的でないため、患者さんが協力的でないと、見落としやすく、
治療が遅れると予後不良の転帰をとる可能性が高いです。
医師は積極的に疾患の存在を疑い、少なくとも初診時に尿検査を行うことが求められます。
しかし、「余計な検査は受けたくない。過剰診療だ。」と仰って、
保険点数26点(3割負担で70円)の尿検査を拒否する方が、
過去において少なくなかったことを経験しています。
実に嘆かわしい医療現状です!
劇症1型糖尿病は急性1型糖尿病の約20%とされます。
ウイルス感染による膵臓炎、ウイルス感染に対する免疫応答、
または、その両方がインスリンを産生する膵島β細胞の
急激な破壊につながると推測されています。
膵島β細胞の機能障害は永続的なため、糖尿病も持続的です。
ただし、通常の1型糖尿病とは異なり、GAD抗体などの膵島関連抗体は通常陰性です。
約70%の症例に前駆症状として上気道炎(咽頭痛、発熱など)、
消化器症状(上腹部通痛、悪心・嘔吐)などの感染症状があり、
急激な血糖上昇のため、口渇、多飲、多尿、全身倦怠感を示します。
(ただし、代謝失調は急激に生じるため、
初診時のHbA1cは8.7%以下であることが診断基準の1つです。)
発症1週間前後で膵β細胞に激しい炎症が生じ、
ケトーシスあるいはケトアシドーシスに陥ります。
ケトアシドーシスにより重症化すると昏意識障害、
さらに昏睡に陥るので、適切な輸液とインスリン投与が遅れれば致死的です。
また、回復してもインスリンの枯渇により、血糖コントロール困難となり、
糖尿病に伴う、さまざまな合併症(網膜症、腎症、神経障害、動脈硬化症)のリスクが高く、
社会生活に高度の支障をきたす重大な病気です。
全身状態について、呼吸、循環器の救急的管理が必要な場合もあります。
また、膵外分泌酵素
(アミラーゼ、リパーゼ、エラスターゼⅠなど)の上昇を伴うことが多いです。
急性期から回復後は、インスリン強化療法など、通常の1型糖尿病の治療に準じて、
食事療法、運動療法、インスリン治療、自己管理が必要となります。
膵移植、膵島移植などはドナー不足のため、まだ現実的ではありません。
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