循環器・腎臓・血液内科 Vol.5

今月のテーマ「血液病の最新医療」

 

 

<輸血後鉄過剰症>

 

 

<再生不良性貧血>や<骨髄異形成症候群>などの骨髄不全症候群では、

 

長期に赤血球輸血を繰り返さざるを得ない場合が多いです。

 

 

生体では鉄の排泄ルートがないために、輸血で体内に入った

 

過剰の鉄は肝臓・心臓・内分泌器官などに沈着していきます。

 

 

肝臓では肝腫大・線維化・肝硬変、心臓ではうっ血性心不全や不整脈をきたします。

 

 

内分泌系では、膵β細胞が鉄沈着により糖尿病が出現し、

 

下垂体系機能も低下します。さらに、鉄過剰は造血系の障害も考えられています。

 

 

輸血後鉄過剰症の診断は、骨髄不全で赤血球輸血依存となった症例で、

 

1)総赤血球輸血量20単位以上

 

2)血清フェリチン値500ng/mL以上

 

鉄キレート療法開始基準:

 

1)総赤血球輸血量40単位以上

 

2)連続する2回の測定で(2ヵ月以上にわたって)血清フェリチン値>1,000ng/mL

 

維持基準:

 

鉄キレート剤により、血清フェリチン値500~1,000 ng/mL

 

 

輸血後鉄過剰症患者に、鉄の蓄積による進行性かつ不可逆的な臓器障害リスクを軽減し、

 

患者予後とQOLの改善を目指す目的で、

 

経口鉄キレート剤のメシル酸デフェロキサミン(デフェラシロクス)の連日投与を行うと、

 

血清フェリチン値の低下、 肝機能障害の軽快や心機能の改善がみられます。

 

 

さらに造血状態も改善し、輸血必要量が減少するケースもあります。

 

 

鉄キレート療法を十分行った場合は生存期間も延長します。

 

 

しかし、デスフェラール(注射製剤)を輸血の際に投与するだけでは効果がありません。

 

最近、経口鉄キレート剤のデフェラシロクス(エクジェイド)が開発され、

 

我が国でも漸く本格的な鉄キレート療法の実施が可能となりました。

 

 

ただし、鉄キレート療法は、余命1年以上が期待できない患者には推奨されません。