今月のテーマ「血液病の最新医療」
<輸血後鉄過剰症>
<再生不良性貧血>や<骨髄異形成症候群>などの骨髄不全症候群では、
長期に赤血球輸血を繰り返さざるを得ない場合が多いです。
生体では鉄の排泄ルートがないために、輸血で体内に入った
過剰の鉄は肝臓・心臓・内分泌器官などに沈着していきます。
肝臓では肝腫大・線維化・肝硬変、心臓ではうっ血性心不全や不整脈をきたします。
内分泌系では、膵β細胞が鉄沈着により糖尿病が出現し、
下垂体系機能も低下します。さらに、鉄過剰は造血系の障害も考えられています。
輸血後鉄過剰症の診断は、骨髄不全で赤血球輸血依存となった症例で、
1)総赤血球輸血量20単位以上
2)血清フェリチン値500ng/mL以上
鉄キレート療法開始基準:
1)総赤血球輸血量40単位以上
2)連続する2回の測定で(2ヵ月以上にわたって)血清フェリチン値>1,000ng/mL
維持基準:
鉄キレート剤により、血清フェリチン値500~1,000 ng/mL
輸血後鉄過剰症患者に、鉄の蓄積による進行性かつ不可逆的な臓器障害リスクを軽減し、
患者予後とQOLの改善を目指す目的で、
経口鉄キレート剤のメシル酸デフェロキサミン(デフェラシロクス)の連日投与を行うと、
血清フェリチン値の低下、 肝機能障害の軽快や心機能の改善がみられます。
さらに造血状態も改善し、輸血必要量が減少するケースもあります。
鉄キレート療法を十分行った場合は生存期間も延長します。
しかし、デスフェラール(注射製剤)を輸血の際に投与するだけでは効果がありません。
最近、経口鉄キレート剤のデフェラシロクス(エクジェイド)が開発され、
我が国でも漸く本格的な鉄キレート療法の実施が可能となりました。
ただし、鉄キレート療法は、余命1年以上が期待できない患者には推奨されません。
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