消化器・代謝内分泌内科 Vol.5

 

今月のテーマ <クリーゼ(危機)>

 

 

「副腎クリーゼ(急性副腎不全)②」

 

 

健康な人は、常に体の状態に合わせて適切にホルモンが分泌されています。

 

しかし、何らかの原因で、副腎皮質ホルモンの分泌が急激に不足するようになると、

 

急性副腎不全(副腎クリーゼ)の状態になります。

 

 

治療が遅れると、両側副腎の急激な機能低下により

 

ショックを主体とする生命を脅かす重篤な病態になります。

 

 

自覚症状としては、全身倦怠感、発熱、悪心(吐き気)・嘔吐など、

 

他覚所見としては、血圧低下、徐脈(脈拍数が低下)などが

 

特徴である低体液量性ショックを呈します。

 

 

血液検査では低血糖、低ナトリウム血症、高カリウム血症、高カルシウム血症などの

 

電解質(血液中のミネラル類などのイオン成分)異常がみられます。

 

 

また、副腎皮質ホルモンであるコルチゾンが低下するので、

 

その状態を是正しようとして副腎皮質刺激ホルモンが高値を示します。

 

 

糖質コルチコイドと鉱質コルチコイドの低下が原因となって低ナトリウム血症をきたします。

 

 

急性副腎不全(副腎クリーゼ)による低ナトリウム血症は

 

血漿浸透圧(濃度の低い溶液が、濃度の高い溶液へ移動させようとする血液の水圧)の低下を伴います。

 

 

しかし、急性副腎不全(副腎クリーゼ)は、細胞外液量(循環血液量)は正常と変わらず、

 

脱水も認めないので、臨床的に気づかれにくい可能性があります。

 

 

それでは、クリーゼのような重篤な危機に陥らないようにするには、どうしたらよいでしょうか。

 

 

それには、

 

まず、① 慢性の病気の存在自体が慢性のストレッサーとして

 

心身の調節系(自律神経系、ホルモン内分泌系、免疫系)のひずみを

 

生みだすことを知っておくこと。

 

 

次に、② 慢性的ストレッサーに気付き、放置しないこと。

 

 

さらに、③ 別のあらたな急性ストレッサーが加わることによって、

 

危機(クリーゼ)をもたらし、生命を脅かす、ということを理解しておくこと。

 

 

以上が必要だと思います。

 

 

治療はヒドロコルチゾン(副腎皮質ステロイド剤)投与と輸液による電解質補正が重要です。