私が愛読する声楽技術書 No.2

リリー・レーマン Lilli Lehmann “Meine Gesangskunst” 

 

(1848⁻1929)ドイツ人・ドイツ語

 

 

これまでに私が出会ってきた声楽書のなかでは、最も信頼のおける有益なテキストです。

 

目下、熟読玩味中。定例稽古での実験を繰り返していますが、確かな手ごたえがあります。

 

驚いたことに、以下に紹介するすべての著者の中で最も古い時代に活躍した方です。

 

他の著者たちは、彼女の業績をどの程度評価していたかはわかりません。

 

しかし、文句なく第一級の業績だと思います。

 

もっとも、以下の書物を読んできたからこそ、

 

彼女の偉大さの一端が理解できたのかもしれません。

 

 

フレデリック・フースラー Frederick Husler “Singen” 

 

(1889-1969)  ドイツ人・ドイツ語

 

これはたしかに著名で権威のある書物です。

 

藝大教授のテノール川上洋司先生のホームレッスンでも耳にしたことがあります。

 

ただし、川上先生ご自身はフスラーの理論は因果関係でいえば、

 

『結果を記述しているに過ぎない』とおっしゃっていたように記憶しています。

 

もっとも、私がそのようにしか理解できなかったからかもしれません。

 

ただ、たしかに光りの源ではなくアンザッツという影を観察しても、

 

なかなか真理には到達しません。

 

光りの道筋、声の道筋こそが楽器作りで重要なのではないかと思われる次第です。

 

後述のジェローム・ハインズも同僚のメトロポリタンの有能な歌い手たちに、

 

Placement(響きを置く場所)について質問していますが、

 

直接歌唱技術に役立てるというのではなく、

 

うまく歌えたときに間接的に確認するためのヒント、といった役割が期待されます。

 

ですから、私の現時点での実力では、余り参考にできません。

 

 

ただ、フースラーに関する書籍の中では、武田梵声氏の

 

「ボーカリストのためのフースラーメソードー

 

驚異の声域拡大をもたらすアンザッツとは?」(Ritter Music)

 

は,次にご紹介するリードやハインズの書を理解する上で

 

有用であったことを付け加えておきます。