今回は「番外編 その8」、「「物」による助け合い」のつづきです。

 

 

エピソード3

 

これは15年ほど前のことです。

 

 

登山中に友人の靴底がはがれてしまったことがありました。

 

原因は、靴底のゴムと接着の劣化によるものでした。

 

これでは満足に歩行ができず、かなりのストレスになり、また危険でもあります。

 

 

皆にとってこれは想定外でした。

 

しかし、今考えてみれば、準備の段階で調べておくべきことだったと思います。

 

私は「何かの時に」と、いつも少量のガムテープを持参していました。

 

そのため、友人の靴に応急処置を施すことができました。

 

皆、ガムテープを持参していた私に感心していました。

 

 

何かあった時を想定して、入念に準備をしておくこと!

 

そうすれば、実際にトラブルが起きた時にも冷静に対応できます。

 

また「他人のため」に対応する、人助けの余裕も持つことができます。

 

そういった余裕を持っていると、何かの時に力を発揮できます。

 

 

また、周囲から信頼されることにもつながるのではないか思います。

 

そして、こちらが困った時には、周囲が進んで助けの手を差しのべてくれるようにも思います。

 

 

(次回へ続く)

 

 

ストレス対処 MIYAJI 心理相談室(高円寺南診療所内)

 

任 臨床心理士 宮仕 聖子

 

今回は「番外編 その7」、「「物」による助け合い」のつづきです。

 

 

エピソード2

 

私が他の登山者を助けたこともあります。

 

もう20年くらい前になります。

 

 

友人たちと富士山に登ることになりました。

 

私はすでに1回登ったことがあったので、準備は万端でした。

 

しかし、友人たちは初体験であり、また軽い気持ちや油断もあったようです。

 

そのため、持ち物など登山の装備に不備がありました。

 

その日はよく晴れていたので、皆で順調に登っていました。

 

 

しかし、周知のことのはずですが、やはり山岳部の天候は急変しやすいものです。

 

その日は天候が激変し、大粒の雨が降ってきました。

 

皆ずぶ濡れ状態になってしまいました。

 

 

<これは危険だ>と皆の空気が一変。 七分丈のズボンの男性などは、ブルブルと震えていました。

 

幸い、何とか避難小屋に辿り着くことができました。

 

 

そこで天候の回復を待ち、次の山小屋に移動しました。

 

ところが、同行の皆は満足な着替えも持っていませんでした。

 

 

私は余分に着替えを持っていたので、女性の友人に衣類を貸すことができました。

 

 

富士山に軽装で行く人をよく目にします。

 

 

しかし、山の天気は想像以上に変わりやすい。

 

本当に危険です。 しっかりとした装備でのぞむことが肝心です。

 

 

(次回へ続く)

 

ストレス対処 MIYAJI 心理相談室(高円寺南診療所内)

 

主任 臨床心理士 宮仕 聖子

 

今回は「番外編 その6」です。

 

いろいろな「助け合い」について、引き続き北アルプス登山のエピソードから、お話しいたします。

 

 

これまで「声かけ」の助け合いや、「情報交換」の助け合いについてお話ししてきました。

 

いろいろな助け合いの中には、「物」による助け合いもあります。

 

 

私が助けられたり助けたりした、3つのエピソードをご紹介いたしましょう。

 

エピソード1

 

それは2,3年前、ガスバーナーを初めて持参したときのことでした。

 

山では火がつきにくいことを知っていたので、ライターも持参しました。

 

案の定、バーナーの着火が不調でした。

 

そこでさっそくライターを使うことにしました。

 

 

今度は当然着火するはずと期待して試すと…つかない!

 

友人のライターも私のライターも、いくらカチカチとやってもつかない。

 

 

さてはて、どうしよう…と困っていました。

 

途方に暮れていると、隣の女性が「つけましょうか?」とライターを差し出してくれました。

 

 

後で知ったことですが、私たちが持参していたものは「電子ライター」という種類でした。

 

このタイプのライターは気圧・気温が下がると、電圧が下がり着火しにくくなるとのことです。

 

これに対して女性が差し出したのは「ヤスリ式ライター」、

 

これのおかげでやっと着火に成功しました。

 

このライターの原理は、発火石を回転式のヤスリとこすり合わせることで火花を起こして着火する、 というものです。

 

マッチも同じ原理なので着火します。

 

 

火がつかないと自炊が全くできません。おいしいご飯にありつけません。

 

女性が差し出してくれた、たった一つの炎で、私たち全員が大変助かりました。

 

 

(次回へ続く)

 

 

ストレス対処 MIYAJI 心理相談室(高円寺南診療所内)

 

主任 臨床心理士 宮仕 聖子

 

今回は「番外編 その5」です。

 

(第34回、番外編その4の「山の事故」についての続きです)

 

 

また、数年前、日が照っていたものの風が強い日に、私がTシャツで登っていると、

 

すれ違った登山者から、「寒そうな格好しているな、風強いよ!」と忠告を受けました。

 

たとえ晴天でも冷たい風に長時間当たり続けていると、いわゆる「低体温症」の危険があることを知らせてくれたのです。

 

 

今夏はといいますと、不幸にして天候に恵まれず、途中で下山することになりました。

 

せっかく3000mまで登ったのに、という残念な気持ちでいっぱいになりました。

 

しかし、同行した年上の友人は「残念だけど、決断も大事」という意見。 相談の結果、下山しました。

 

 

このように、周囲の忠告や意見というのは、ひとつの「助け」だと思います。

 

人は注意を受けると決して気分のよいものではありません。

 

しかし、場合によりけりですが、

 

これを「(相手が自分のことを考えた)助け」と受け取ることができれば、

 

日々のストレスもかなり軽減されるように思います。

 

 

(次回へ続く)

 

 

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主任 臨床心理士 宮仕 聖子

 

今回は「番外編 その4」です。

 

いろいろな「助け合い」の在り方について、

 

今夏の北アルプス登山の経験を題材として今回も引き続きお話しいたします。

 

 

皆様もニュースなどでご存知かと思いますが、山の事故は、なかなか後を絶ちません。

 

経験の乏しい登山者ではなく、ベテランの中高年が事故に遭う、といったこともしばしば見受けられます。

 

防ぎようがなく、やむを得ない自然災害のほか、

 

一瞬の不注意・判断の誤りが事故につながらないとは限りません。

 

 

「慣れている」からといって、油断は大敵です。

 

 

もう15年近く前のことですが、私が北アルプスの難所、大キレットに行ったときのことです。

 

 

その時、少し足を滑らせて、ヒヤッとする経験をしたことを覚えています。

 

ちなみに、大キレットのキレットとは漢字で「切戸」と書きます。

 

長野県の南岳と北穂高岳の間にあるV字状に切れ込んだ岩稜帯です。

 

この縦走ルートは痩せた岩稜が連続し、

 

<長谷川ピーク>や<飛騨泣き>といった難所が点在しています。

 

毎年数名の死亡者と多数の負傷者が出ています。

 

国内の一般登山ルートとしては、今なお最高難度のルートの1つです。

 

(次回へ続く)

 

 

ストレス対処 MIYAJI 心理相談室(高円寺南診療所内)

 

主任 臨床心理士 宮仕 聖子

今回は「番外編 その3」です。

 

今夏の北アルプス登山から、いろいろな「助け合い」について、今回もお話いたします。

 

 

私は、実は少し人見知りのタイプなのです。

 

それで私から他の方々には積極的には話しかけることは多くありません。

 

しかし、山小屋や途中の休憩所ではけっこう話しかけられることがあります。

 

たいてい「どこから来たんですか」とか「どこに向かうんですか」といった声かけから、話が自然に発展していきます。

 

 

そうなると、いろいろな情報交換がなされるようになります。

 

それが登山の行程のどこかで活きてきて助けられることがあります。

 

 

また、一生懸命登っている小さい子どもの姿に触れることがあります。

 

すると私自身の幼い頃のことが自然になつかしく思い出されます。

 

逆に高齢の方(今回は80才の方に出会いました!)とお話しする機会もあります。

 

すると自分もこの方のように、高齢になるまで登山を続けていられるだろうか、

 

どうすれば体力や筋力、気持ちを将来にわたって維持できるのだろう?と思いをはせたりします。

 

 

さて「助け合い」の話に戻りましょう。いざ助けを求めようとする時に活きてくるのは、

 

実は「日常的に何気なく、声かけをしておく習慣や心掛け」なのかもしれません。

 

 

そうした習慣や心掛けを身に着けておけば、助けてほしい方は第一声を発しやすくなるのではないでしょうか。

 

また助ける方もいきなりのSOSよりは、<助けてほしい>というサインを余裕をもって自然に受け取りやすくなるのではないでしょうか。

 

 

ですから、日ごろから周りの人々に笑顔で接し、気持ちの良い自然な挨拶をする、 こうした何気ない行動を心がけていると良いと思います。

 

 

「声かけ上手」は、「助けられ上手」、なのかもしれませんね。

 

 

(次回へ続く)

 

 

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主任 臨床心理士 宮仕 聖子

今回は「番外編 その2」です。

 

今夏の北アルプス登山でも、いろいろな助け合いに出会いました。

 

基本的に山は「自己責任」。

 

天候が悪い時や体調が悪い時に、先へ進むか、小屋にとどまるか、山を下りるかは自分で判断しなければなりません。

 

時には生死にかかわることもあるので、重要な判断・決断となります。

 

 

持ち物も、水、食料、着替え、コンパス、薬など、非常時にも応急的に対応できるよう、自分で持参します。

 

今回、私は食事を自分で作るため、バーナーや鍋を持参しました。

 

もちろん、その分荷物は重くなります。

 

自分が背負って登って、帰れるだけの重量に荷物をまとめます。

 

ゴミは山では捨てられません、自分の家まで持ち帰ります。

 

 

その上で、山に登る人たちは、譲り合い、助け合いの余裕を持ち合わせています。

 

 

山道ですれ違う時は、大体互いに「こんにちは」と挨拶を交わします。

 

山を下る人は登る人に道を譲りますが、その際、「頑張ってください」とか「あと少しですよ」といった声をかけたりもします。

 

道を譲られた側も、苦しくても「ありがとうございます」と返事をしたりします。

 

 

3畳のスペースに4~6人が寝ることになっても、不平を言う人はいません。

 

お互いに、「今日はよろしくお願いします」と言い合います。

 

見ず知らずの人たちが出会い、山の話をし合ったりして交流を深め、情報を交換し合うこともしばしば。

 

 

山では、自然と穏やかな「助け合い」が交わされます。(次回へ続く)

今回は「番外編 その1」です。

 

この夏、私は北アルプスに登ってきました。

 

そこで、山で経験した「HELP!力」についてお話ししたいと思います。

 

 

山では様々な(暗黙の)「譲り合い」「助け合い」に遭遇します。

 

山道は狭いところもあり、そこでは「登る人優先」という暗黙のルールがあります。

 

すれ違う時に下る人はスペースを見つけて、登る人に道を譲ります。

 

ただ、登る人が譲ることもしばしばあり、そこは状況に応じて臨機応変にお互い声をかけ合います。

 

「先、どうぞ」や「先に行きます」など。

 

 

また歩くペースも人それぞれなので、遅い人は速い人が来たら道を譲ります。

 

 

山小屋では100人以上が宿泊します。

 

水源も限られ、風呂もなく、寝床も3畳に6人ということもあり、個人の十分なスペースはありません。

 

食事は食堂で皆一斉に取り、あるいは持参して自分で作って食べたりします。

 

疲れて早く眠る方もおり、騒いだりすると迷惑になるので、静かに過ごします。

 

 

このように、限られたスペースや資源の中、お互いが嫌な思いをしないように、

 

山では皆が暗黙のルールを守り、たくさんの譲り合い、助け合いが必要となります。

 

(次回へ続く)

 

 

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主任 臨床心理士 宮仕 聖子

<第6ステップ> その3

 

「社会的スキル」の向上には、失敗を恐れず、過去の経験を顧みて、絶えずトライ・チャレンジすることが必要です。

 

まずは勇気を出して助けを求めること。

 

その結果、問題が解決の方向に向かったならば、相手に「ありがとう」と伝えること。

 

それが実行できるならば、助けを求められた相手も「お役に立てて良かった」と思えることでしょう。

 

そうなれば、最高の結果がもたらされたと言えるでしょう。

 

 

しかし、身近な人に知られたくない気持ちが強い場合、適切なサポーターが見つからない場合、

 

その相手にうまく伝えられない、またはその自信がない場合、助けを求めても問題が一向に解決しない場合など、

 

もしそうした状態が長く続くならば人間関係にヒビが入ったり、問題がかえってこじれたりしてしまいかねません。

 

そのような場合は、ためらわずに専門家に相談しましょう。

 

 

臨床心理士はまず来談者の皆さまの苦しい胸の内に謙虚に耳を傾けます。

 

協力チームの全員で秘密を厳守します。そして安易で独善的な解決法を提示したりはしません。

 

 

臨床心理士は来談者の皆さまの気持ちを受け止め、ともに解決方法を探り、

 

そして、その人の社会的スキルの向上も念頭に置きながらサポートする専門家なのです。

 

 

* 参考文献: 太田仁,2005,「たすけを求める心と行動」,金子書房

 

 

ストレス対処 MIYAJI 心理相談室(高円寺南診療所内)

 

主任 臨床心理士 宮仕 聖子

<第6ステップ> その2

 

「社会的スキル」は私たちが生活していく上で、生きやすく活動していくために、

 

また他者と円滑な関係を築き、維持していくためにも非常に重要なスキルです。

 

 

このスキルは幼少期から家族や他者と関わっていくプロセスを通して発達していきます。

 

他者とのやりとりがうまくできて要領を得て成功体験を蓄積したり、

 

必要なことができなかったときに謙虚に反省することなどをくり返したり、

 

そうした試行錯誤の中から徐々にスキルアップしていきます。

 

 

しかし、場当たり的に試行錯誤をくり返すだけでは

 

スキルは向上しないということは、指摘しておかなければなりません。

 

 

「社会的スキル」の向上が見込めない具体例を挙げてみましょう。

 

 

・相手のことを考えずに強引に行動してきた。

 

・自分の望ましくない行動について、しかるべき適切な立場の人から指摘されてこなかった。

 

・過去の失敗を恐れて、相手とのやりとりを避ける行動様式を身に着けてしまった。

 

・孤立して他者とのやりとりの機会が極端に奪われてしまった。

 

 

スキルアップには、失敗を恐れず、過去の経験を顧みて、

 

絶えずトライ・チャレンジすることが必要です。

 

 

* 参考文献: 太田仁,2005,「たすけを求める心と行動」,金子書房

 

 

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