カテゴリー: 鍼灸
第114回日本内科学会講演会に参加して(その4)
(4月14~16日:東京国際フォーラム)
テーマ:超世代の内科学-GeneraltyとSpecialtyの先へ-
招請講演<がん幹細胞研究の進歩と治療開発>
赤司浩一(九大研究院・病態修復内科)氏の公演を聴いて(その4)
がん組織(腫瘍)を構成する細胞は不均一です。
ことの原因は、<がん幹細胞>という概念により、遺伝子変異だけが原因ではなく、
後天的な環境要因も重要だということが説明しやすくなりました。
細胞が、がん化するためには、異なる遺伝子変異や
エピゲノム異常が集積することがきっかけとなり、クローン進化が生じます。
このエピゲノムとは DNAの塩基配列は変化せず、
DNAやヒストンへの化学修飾が規定する遺伝情報です。
後天的な環境要因によって遺伝子発現が制御されます。
生体内において、より異常なクローンが生存競争に勝ち抜き、
未分化で自己複製能力をもつがん細胞へと変化するものと考えられます。
がん幹細胞は自己複製によって、がん幹細胞を増やすだけでなく、
がん細胞でない細胞(非がん細胞)も生産します。
この過程で、酸化ストレス・低酸素刺激などの微小環境<ニッチ>の変化が、
生物学的特性の異なる様々ながん細胞を出現させます。
しかも、非がん細胞集団の一部は、がん幹細胞になっていきます。
がんの治療が難しいのは、がん細胞集団が均一でないことも原因です。
治療効果を示すがん細胞集団と治療抵抗性を示すがん細胞集団が共存している場合に、
治療によって、治療抵抗性のがん細胞集団のみが残存し、
腫瘍の再発・転移の原因となることは、臨床的事実と一致します。
遺伝子を変えることはできませんが、生活習慣や環境の改善など、
後天的な工夫や努力によって、DNAの塩基配列は変化しなくても、
DNAやヒストンへの化学修飾が規定する遺伝情報の発現を制御することは可能だ、ということです。
高円寺南診療所での生活習慣指導、外来栄養食事指導、自律訓練法、認知行動療法をはじめ、
水氣道、聖楽院での諸活動は、すべて上記のがん予防の内容に通じるものであることは、
ご理解いただけるのではないでしょうか。
診察室から
もう少しツボの世界を見ていきましょう。
場所は内踝から指4本上です。
このツボの効果は、まず「足の冷え」が取れることでしょう。
また、「生理痛」、「生理不順」、「子宮内膜炎」、「更年期障害」等の婦人科疾患に効果があります。「逆子」を治すつぼとして有名です。
お灸がよく効きます。
女性のためのツボといえます。
その他に「前立腺炎」、「前立腺肥大症」にも効果があります。
<参考文献>
このツボが効く 先人に学ぶ75名穴 谷田伸治
経穴マップ イラストで学ぶ十四経穴・奇穴・耳穴・頭鍼 監修 森 和
著者 王 暁明・金原正幸・中澤寛元
高円寺南診療所 統合医療部 漢方鍼灸医学科 鍼灸師 坂本光昭
第114回日本内科学会講演会に参加して(その3)
(4月14~16日:東京国際フォーラム)
テーマ:超世代の内科学-GeneraltyとSpecialtyの先へ-
招請講演<がん幹細胞研究の進歩と治療開発>
赤司浩一(九大研究院・病態修復内科)氏の公演を聴いて(その3)
正常組織を構成する細胞群の中にも幹細胞があります。
この正常幹細胞はさまざまな支持細胞群からなる微小環境の中で維持されています。
これを<幹細胞ニッチ>と呼んでいます。
このニッチからのメッセージによって、自己複製や分化が始まります。
前回【先週】は、がん幹細胞の治療抵抗性、
つまり、がん幹細胞が薬剤・放射線治療に抵抗して生き残る背景について触れました。
がん幹細胞が強い理由の一つは、がん幹細胞を支えるニッチの存在です。
なぜならば、がん幹細胞もニッチからのメッセージにより、
自己再生や増殖分化の制御を受けているからです。
したがって、がん幹細胞の制御のためには、
ニッチを形成する細胞が果たしている役割について研究が進められているのです。
《朱に交われば赤くなる》という成句があります。
人は交わる友によって善悪いずれにも感化されることの譬えです。
細胞レベルだけでなく、人格をもった個体レベルでも同様のことが言えるのではないでしょうか。
個人にとっても、いわば<個人ニッチ(個人的な居場所となる小さなコミュニティの要素)>があります。
視点を変えれば、すべての人が、周囲の人々に対して
<個人ニッチ>となることが理解できます。
高円寺南診療所では、個人の環境を整えることや、対人関係の改善、
コミュニケーションや表現能力の向上を支援しています。
水氣道や聖楽院での取り組みは、健康的な居場所や創造的で生産的かつ芸術的な活動を通して、
みずからも良好な<個人ニッチ>となりうるように成長していきたいものです。
第114回日本内科学会講演会に参加して(その2)
(4月14~16日:東京国際フォーラム)
テーマ:超世代の内科学-GeneraltyとSpecialtyの先へ-
招請講演<がん幹細胞研究の進歩と治療開発>
赤司浩一(九大研究院・病態修復内科)氏の公演を聴いて(その2)
古くからのお馴染みの患者さんの中には<がん>幹細胞(ステム・セル)の最新研究など、
高円寺南診療所の日常診療には直接関係ないでしょ、などとおっしゃる方がいらっしゃいます。
実は、そうでもないのです。大腸がん、膵がん、前立腺がん、頭頸部がん、
など決して稀ではない様々ながん幹細胞が、続々と同定されています。
前回【先週】、がん幹細胞の治療抵抗性について簡単に触れましたが、治療抵抗性とは、
治療効果が上がらない、つまり、効かない、ということです。
がん幹細胞は、抗がん薬や放射線療法が効きにくいので、治療抵抗性なのです。
ただし、がん幹細胞の治療抵抗性である背景は、
がん幹細胞は、低酸素、酸化ストレスへの抵抗性が高いこと、
薬剤排出機構の亢進、DNA修復機構の亢進、
アポトーシス(プログラムされた細胞の死)の抑制などの特徴をもつこと、などが次々と報告されています。
低酸素や酸化ストレスは、がんの発生に関与していることから考えれば、
そうしてできあがったがん幹細胞が、低酸素や酸化ストレスに強いのは容易に頷けます。
《 予防に勝る治療なし》です。
がん幹細胞の研究は、がんの予防法の進歩にも貢献すると考えることができます。
癌細胞、がん幹細胞の発生を予防するためには、
たとえば、低酸素状態や酸化ストレスを抑止することが大切です。
こうした背景から考えると、医学的に管理されていない激しい競技スポーツは、
低酸素状態や酸化ストレスをもたらし易いので、がんを減らすことには繋がりにくくなります。
これに対して、水氣道や聖楽院でのボイストレーニングはどうでしょうか。
水中の有酸素運動や呼吸法により、全身の低酸素状態は解消され、
酸化ストレスをも軽減でき、がんの予防のためにも
優れた健康プログラムであるということがご理解いただけるのではないでしょうか。
高円寺南診療所は、がんの予防に対しても、大学の研究室とは異なった立場から、
独自の先進的な取り組みを続けています。
第114回日本内科学会講演会に参加して(その1)
(4月14~16日:東京国際フォーラム)
テーマ:超世代の内科学-GeneraltyとSpecialtyの先へ-
招請講演<がん幹細胞研究の進歩と治療開発>
赤司浩一(九大研究院・病態修復内科)氏の公演を聴いて(その1)
私は毎日<がん>の患者さんを診ています。
このように言うと、
『高円寺南診療所は、すごくハイレベルなクリニックなんですね』、
という反応が返ってきます。
しかし、日本の国民の過半数は<がん>で亡くなります。
ですから、<がん>患者の診療は、
ごく普通の診療所の普通の医者にとっても日常的なことなのです。
正常な組織を構成する細胞は、自己複製する能力がありますが、
幹細胞でない多くの正常細胞は、他の種類の細胞に変化する能力(分化能)を持ちません。
これに対して、悪性腫瘍である<がん>組織の中にも、
自己複製する能力を持ち合わせた細胞が少数ながら混じっています。
これが<がん>幹細胞(ステム・セル)です。
そのため、正常組織は分化能のない細胞集団なので、細胞レベルで均一なのですが、
《 悪性腫瘍の組織は、分化能をもつ<がん>幹細胞が
正常とは異なる分化能を示すことにより、細胞レベルで不均一となる。》
というモデルが提唱されているそうです。
がん幹細胞とは、2006年の米国癌学会で、
「腫瘍内に存在し、自己複製能と主要組織を構成するさまざまな系統のがん細胞を生み出す能力を併せ持つ細胞」
と定義されました。
医学用語の定義は、今後の研究の方向性を明確にするうえで大きな役割を果たします。
この定義により、
がん化とは・・・正常細胞ががん幹細胞化すること
がんの治療とは・・・治療抵抗性が高いがん幹細胞を根絶すること
がんの再発とは・・・残存がん幹細胞が再活性化すること
がんの転移とは・・・がん幹細胞の移動と局所への定着
そして、がん治療の標的は、がん幹細胞にある、
ということが明確になってきました。
治療抵抗性については、次回【来週】で採り上げます。
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