今月のテーマ<心療内科の周辺③ 神経内科>

 

 

心療内科と神経内科は、互いに重なる領域が少なくありません。

 

 

神経内科は認知症、 脳血管障害、運動疾患、炎症性疾患、感染症、末梢神経疾患、筋疾患など

 

広汎かつ膨大な 脳・神経・筋疾患の診断治療を担っています。

 

 

このように、神経疾患は、その種類と患者数の膨大さ、

 

また ADLやQOLを障害する度合いの大きさが特徴ですが、課題はその難治性にあります。

 

 

その理由は、神経組織の再生し難さによると思われます。

 

 

そこで現在ほとんどの疾患では本質的治療法がなく対症療法にとどまっています。

 

 

神経疾患には行政的な「指定難病」を含め膨大な患者数を有する難病が多く存在します。

 

 

たとえば、国内の患者数が 200 万人以上と思われるアルツハイマー病でも根本的治療法はなく

 

その意味ではまさに難病であることを銘記しておく必要があります。

 

 

 神経・筋疾患のスペクトラムは極めて広く、

 

国内の患者数約 460 万人の認知症や同約300 万人に上る脳血管障害をはじめ、

 

超高齢化社会を迎えた今、加齢とともに頻度の増加する 神経疾患の患者数は軒並み急激に上昇しており、

 

治療法や予防法開発の必要性がより一層高まっています。

 

 

神経疾患のうち、血管障害や炎症に対しては

 

それぞれ抗血栓・抗凝固療法および免疫抑制剤・免疫調節療法の開発により、

 

多くの患者が救われるようになってきました。

 

 

しかし、急性期を乗り切っても高度の後遺症が残る例も少なくなく、

 

後遺症状を軽減あるいは代償させるためのリハビリテーションの標準化、

 

およびその効果に関する科学的検証が必要となっています。

 

 

一方、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症などの神経変性疾患は

 

従来「治らない病 気」というレッテルを貼られてきましたが、

 

原因遺伝子変異が同定され発症の分子機構が解明され、

 

一部では QOL や ADL を向上させる補充療法が出てきています。

 

今月のテーマ<心療内科の周辺② 脳とこころ>

 

 

脳はヒトが人として生きる「こころ」の源です。

 

 

「こころ」は、認知、行動、記憶、思考、情動、意志などの全ての高次脳機能を担っています。

 

 

さらに、脳・脊髄・末梢神経・筋は、運動機能、感覚機能、自律神経機能など

 

人の持つあらゆる機能を全てコントロールしています。

 

 

ですから、これらの神経系と骨格筋のどこがどのような疾患に冒されても、

 

その機能障害は、ヒトが人らしく生きるために必要な認知機能、

 

芸術を鑑賞する、喋るといった社会文化的機能から、立ち、歩き、走るといった運動機能まで、

 

また生物として極めて重要な、

 

食べる、呼吸する、といった生命維持機能までが冒されることになります。

 

 

そうなると、その人のADL(日常生活動作)QOL(生活の質) の大幅な低下に直結する。

 

脳の研究は、20 世紀の終わり頃から現在に至るまで、米国の

 

「Decade of Brain」や我が国の「脳の世紀」等、様々な努力がなされ、多くの成果が上がっている。

 

 

ADLとは食事・更衣・移動・排泄・整容・入浴など生活を営む上で不可欠な基本的行動を指します。

 

 

QOLとは、一般に、ひとりひとりの人生の内容の質や社会的にみた生活の質のことを指し、

 

つまりある人がどれだけ人間らしい生活や自分らしい生活を送り、

 

人生に幸福を見出しているか、ということを尺度としてとらえる概念です。

今月のテーマ<心療内科の周辺① 精神神経科>

 

 

膨大な脳・神経・筋疾患を扱う診療科としては、心療内科以前に、

 

神経内科、精神科、脳神経外科、整形外科が挙げられます。

 

 

脳神経外科と整形外科では、これらの疾患のうち脳腫瘍、

 

くも膜下出血、脊椎病変、手根管症候群など外科手術を要する疾患を扱います。

 

 

精神科では神経細胞死など器質的病変が見られないいわゆる精神疾患、

 

すなわち統合失調症、うつ病、躁病、神経症(身体表現性障害)などを扱います。

 

 

これに対して、心療内科は、

 

主に心理的背景をもつ身体症状(心身症)を扱うことになっています。

 

 

しかし、目の前の患者さんの病気の原因や発症に至るまでの経過、その後の症状経過に

 

どれだけ心理的背景が関与しているのかという評価は決して容易ではありません。

 

 

来院時に「人間関係のストレスで・・・悩んでいます。」

 

と自ら語ることができる患者さんは、心身症というよりは神経症の傾向があり、

 

精神神経科領域である場合が少なくありません。

 

 

ただし、御自分の身体症状や体の病気に気づいていない場合があり、

 

内科医である心療内科専門医として、見落としのないように診療をします。

 

 

このようなタイプに対して、「最近、頭痛やめまいや耳鳴りがあって、

 

肩こりもひどく、動悸や息切れがあり、下痢をしたり便秘になったり、

 

湿疹も増え、・・・それから、生理(月経)も滞りがち・・・」

 

などと、多数の複雑な身体症状がオンパレードする割には、

 

ご自分自身の心の在り方をはじめ生活や仕事の背景に言及がないような方もいらっしゃいます。

 

こうしたタイプに心身症傾向がみられることが多いです。

 

 

すでに多数の臨床科を受診し、毎回、異常なしとの見立てを受けて困っている方たちなのです。

 

 

このようなタイプの方は、担当医から「一度、心療内科を受診されたらいかがでしょうか」

 

とのアドヴァイスを受けることが多く、

 

そのほとんどが、心療内科を標榜する精神神経科医を受診するため、

 

心療内科医療の現場は、甚だしく混乱している、という実感があります。

 

 

思えば、平成元年に高円寺南診療所を開設した際は、

 

内科・皮膚科・外科を標榜していましたが、

 

「心療内科」の標榜は一般に認められていませんでした。

 

 

そのころから既に多数の心身症の患者さんを診療していました。

 

 

「心療内科」の標榜が全国的に可能になるのは、平成8年に至ってからのことでした。

 

 

それからというもの、内科疾患や心身症より神経症やうつ病の患者さんが増加し、

 

初期の統合失調症の方までが来院されるようになったのは、宿命だったのかもしれません。

 

 

今月のテーマ<医療機関の科目標榜と専門医制度について>

 

 

第Ⅳ話:心療内科標榜の混乱②

 

 

高円寺南診療所は平成元年以来多くの患者の皆様の信頼と期待に応え今日を迎えております。

 

 

そうした多数の患者の皆様が憂慮してくださった、書き込み例を提示します。

 

 

「11か月前のクチコミの例/ 医者が高圧的、難病だと言われて納得いかなく、

 

セカンドオピニオンを他の病院ですると言うと怒鳴る。

 

精神科は心療内科と違う、カウンセラーは専門外だと言われました。

 

高額な医療費に週一で来いと言われて辛く逃げ出した病院です。」

 

 

(心療内科医は保険診療で時間をかけて精神疾患の患者さんのカウンセリングするのが当然である、

 

との思い込みが強く、誤解なさっていたようです。以前の書き込みを読み、

 

見当違いな過剰な期待とともに受診されていた模様です。

 

これがネット書き込みの褒め殺しの一大副作用です。

 

期待外れになって俄かに不穏状態になった患者さんに

 

熱心に誠意をもって説明を試みることになり難渋いたします。

 

声楽家でもあるためか、

 

どうしても声の響きが大きくなりがちなので普段から気を付けてはいます。

 

ただし、怒鳴る、のとは真逆です。残念です。)

 

 

上記の書き込みを懸念して応援してくださった患者さんのコメントの抜粋です。

 

「2週間前のクチコミの例/(前略)心療内科とありますが、医師の専門性は非常に高く広く、

 

今までに糖尿、痛風、躁鬱、パニック障害、不眠などなど、

 

現代病を患う友人や部下が何人もお世話になっています。

 

(中略)私は医師の高い専門性と倫理観を高く評価、信頼をしており、

 

さまざまな現代病で苦しむ方の一助になればと、

 

率直な意見をコメントさせていただきます。」

 

 

(コメント:この患者さんのメッセージにどれだけ励まされたことでしょうか。

 

このメッセージを読んで励まされた方は多数にのぼります。

 

とてもありがたく厳粛な気持ちになりました。)

今月のテーマ<医療機関の科目標榜と専門医制度について>

 

 

第Ⅳ話:心療内科標榜の混乱①

 

 

実際の書き込み例です。

 

 

「2010・8・9の口コミの例 /親切すぎる精神科:

 

儲けを度外視して、真剣に患者と向き合い、その人に合った方法で、治療をしてくれます。

 

先生は独特ですが、患者の事を考えて、怒ったり指導してくれたりと、

 

なかなか普通では出会えないような、精神科医です(笑)」

 

 

(コメント: この患者さんは、とても感謝してくださったのだと素直に受け止めています。

 

ですから悪意はみじんも感じられません。ご活躍をお祈りしています。

 

ただし、善意ではあっても、誤解に基づく意図せぬ褒め殺し効果は後々に大きく現れるのは確かです。

 

一般に内科医としての医療費は精神科のそれより低廉です。

 

「診療費が安くて済んだから良心的な医療なのだ」という判断は全くの誤解です。

 

精神科医でなく内科医の括りだから安いのです。

 

この口コミを鵜呑みにして過剰な期待を胸に来院した方は、

 

悪い予感通り、大きな失望と怒りをもたらす結果となりました。)

 

 

「2010・10・27のクチコミ例/ 心療内科以外の知識も豊富なので、

 

医師としての技量・知識としては素晴らしいのかもしれませんが…。

 

心療内科として通われるのであれば、あまりオススメできません。」

 

 

(コメント:心療内科専門医は、

 

少なくとも日本内科学会が認定する内科医の資格が必須条件です。

 

ですから心療内科専門医の一般内科の知識が豊富なのは当然です。

 

心療内科専門医は受診者の重大な身体疾患を見逃すことは免責されないからです。

 

この方は心療内科としての心身医学的アプローチが必要な方でしたが、

 

心療内科=精神科の固定観念に縛られ前身できない状況に陥りました。)

今月のテーマ<医療機関の科目標榜と専門医制度について>

 

 

第Ⅳ話:「心療内科」標榜の問題点

 

 

平成25年8月現在、精神科専門医数10,104名に対して心療内科専門医数127名に過ぎません。

 

全国の心療内科専門医数は精神科専門医数の1.3%にも満たないのです。

 

多少データが古いですが、厚生労働省の平成20年の統計資料(全国)によると、

 

精神科を標榜する病院1539、診療所5629

 

心療内科を標榜する病院590、診療所3775

 

 

これらの数字が何を意味するのか、単純に計算してみると、

 

心療内科を標榜する全国の医療機関(病院+診療所)4365施設

 

そこで心療内科専門医のみが心療内科標榜医療機関に所属していると仮定すると、

 

4365÷127=34.4、つまり、34施設を掛け持ちしなければならないことになります。

 

 

逆に心療内科専門医が一つの医療機関にのみ所属しているとすれば、

 

34施設あたり33施設までが心療内科専門医でない医師が心療内科を担当していることになります。

 

 

実際には、心療内科を担当しているのは、

 

心療内科専門医ではなく、ほとんどが精神科医だとされています。

 

 

これが、日本の心療内科の在り方を難しくしている最も大きな原因の一つなのです。

 

 

心療内科が精神科と同一視されている限り、

 

患者と心療内科専門医との深い理解と信頼関係の樹立は困難なように思われます。

 

 

心療内科は精神科の婉曲な表現として使用されている現実にしばしば遭遇します。

 

 

こうした誤解が深刻な状況に至っていることは、

 

ウェッブでの口コミを通してたびたび気づかされます。

今月のテーマ<医療機関の科目標榜と専門医制度について>

 

 

第Ⅲ話:広告可能ではない専門医資格の例

 

温泉療法専門医(全国218名>都内33名>杉並区内1名>高円寺1名

 

⇒ この資格は、水氣道の発案の医学的背景と密接なつながりがあります。

 

 

心身医学専門医(全国581名>関東甲信越212名>>高円寺1名

 

この資格は、心療内科専門医の多くが同時に取得しています。

 

⇒ 心療内科学会の母体である日本心身医学会の専門医資格です。

 

心療内科専門医とは異なり、認定内科医の資格がない精神科等の医師でも取得可能です。

 

 

<日本痛風・核酸代謝学会>

 

認定痛風医(全国55名>都内10名>杉並区内0名

 

 ⇒ 高円寺南診療所院長は平成28年度認定痛風医資格試験に合格しました。

 

全国で痛風患者が50万人、予備軍である高尿酸血症患者が500万人以上だとすると、

 

認定痛風医55名は極端に少なすぎます。

 

仮に認定痛風医だけが痛風患者の診療を担当するならば医師1人につき9000人の痛風患者、

 

9万人余りの高尿酸血症患者を診なければならない計算です。

 

認定痛風医資格試験は余りにも難しいので敬遠されているのではないかと思います。

 

 

<日本頭痛学会>

 

頭痛専門医(全国778名>都内113名>杉並区内2名>高円寺0名

 

⇒ 慢性頭痛は3,000万人、日本人の3人に1人に上る頻度ですが、

 

適切に遅漏されていないのが現実です。高円寺南診療所院長は、

 

目下、頭痛専門医資格取得のため研鑽を積んでいます。

今月のテーマ<医療機関の科目標榜と専門医制度について>

 

 

第Ⅰ話:高円寺南診療所の診療科目の経緯

 

 

高円寺南診療所は平成元年(1989)に『内科』標榜の医療機関として開設しました。

 

平成8年(1996)に至ってはじめて心療内科、アレルギー科、リウマチ科等の標榜を追加しました。

 

その理由は、もともと、内科の中でアレルギー・リウマチ・心療内科を特に研鑽しており、

 

制度改正により、診療所においてこれらの科目の標榜が、可能となったためです。

 

 

現在の日本では,麻酔科を除く診療科については,自由標榜制がとられています。

 

標榜科とは,医療機関が医療法等の規定に基いて,広告に表示できる診療科の名称です。

 

つまり,医師免許を持っていて,初期研修さえ終えれば,専門医資格等を持っていなくても

 

法令上認められた全ての診療科名を標榜することができるのです。

 

 

こうした極めてあいまいで不徹底な制度が、医療の混乱をもたらし、

 

勤勉で誠意ある医師の専門的業務の遂行を困難にしている現状の一端について、

 

次回から、順を追ってお話いたしましょう。

 

今月のテーマ<救急医学⑤…二次救命処置>

 

 

「二次救命処置(ALS)における心停止アルゴリズム」

 

 

二次救命処置は、質の高い胸骨圧迫を継続しながら、

 

除細動器と心電図の装着からはじまります。

 

 

脈をふれない心室頻拍もしくは心電図で心室細動が確認されたら

 

電気ショックを実施し、ただちに胸骨圧迫から再開します。

 

 

2分後に脈拍・心拍のリズムチェックを行います。

 

 

二次救命処置は、あくまでも質の高い胸骨圧迫を継続しながら、

 

◎可逆的な原因の検索と是正 ◎静脈路/骨髄路確保

 

◎考慮を検討すべきなのは、血管収縮薬投与、抗不整脈薬投与、高度な気道確保です。

 

心拍再開後もモニタリングと管理が必要です。

 

◎吸入酸素濃度と換気量の適正化 ◎循環管理 ◎12誘導心電図・心エコー

 

◎体温管理療法(例:低体温療法)

 

◎再灌流療法

 

◎さらなる原因検索と治療

今月のテーマ<救急医学④…心肺蘇生の教育>

 

 

市民に対しての一次救命処置のコースは、

 

従来の人工呼吸を含めたトレーニングの代替として、

 

胸骨圧迫のみのトレーニングを行うことも可能です。

 

 

その根拠は、胸骨圧迫のみの心肺蘇生でも、人工呼吸を含めた心肺蘇生でも、

 

神経学的障害に予後の差はないという結果が得られたからです。

 

 

また市民に対する指導に関して、30分のe-ラーニングのコースと

 

3~4時間のインストラクター付の指導では習得する技能に有意差がなかったとのことです。

 

 

ただ、トレーニングにおいてフィードバック器具を使用すると、

 

正確な深さの胸骨圧迫ができるようになるので使用が推奨されています。

 

 

ただし、一次救急処置、二次救急処置とも、

 

ある程度期間をおいて再トレーニングの必要があります。

 

 

除細動器には単相性のものと二相性のものがあります。

 

心室細動に対する初回の電気ショックエネルギーは

 

単相性除細動器の場合は360ジュールが推奨されます。

 

二相性除細動器の場合は切断指数波形で150ジュール以上、

 

矩形波形で120ジュール以上が推奨されます。

 

 

除細動器を使用する場合は粘着性除細動パッドはパドルより安全性が高いので、

 

パドルの代用になります。

 

 

波形が心室細動であることを確認した場合、電気ショックを1回行い、

%e5%bf%83%e9%9b%bb%e5%9b%b3%ef%bc%92

 

 

胸骨圧迫を再開します。

 

 

最初のリズムチェック後、再度のチェックは2分後に行います。