今月のテーマ<腎臓の特定内科診療>

 

「急速進行性糸球体腎炎」②

 

 

症例:60台男性。「カゼ」との自己診断とともに、

 

「風邪薬が欲しい」とおっしゃった方<続き>

 

 

超音波検査では腎臓の萎縮などの異常は認めませんでした。

 

その旨をご本人に告げると

 

「異常がないのに、検査代を取るのか。納得がいかない。」

 

とおっしゃいました。

 

 

腎臓の萎縮は原発性糸球体腎炎による慢性腎不全で認めることが多いため、

 

この症例は急性腎不全であると判断し、

 

「紹介先の病院で精密検査が必要です。」

 

と申し上げたら、急にトーン・ダウンされて、

 

「ここで検査できないのか」とお尋ねになるので、

 

「残念ながら、できません。」とお答えしました。

 

 

以上より、この症例は、

 

たしかにカゼなどの先行感染症後に生じた腎障害であると推定しました。

 

臨床的には急速進行性腎炎症候群に一致します。

 

 

そこで、病理組織学検査が必要であるため、某大学の腎臓内科に紹介し、

 

精密検査を受けていただきました。

 

 

その結果、病理所見では、「半月体形成性糸球体腎炎および血管炎を認めます」

 

病理診断は「顕微鏡的多発血管炎」であり、

 

飯嶋先生のご指摘の通り、

 

急速進行性腎炎症候群の臨床診断に一致する所見でした、

 

とのお返事をいただきました。

 

 

 

患者さんからのご報告:

 

「大学病院の若い生意気な医者から、

 

『腎臓ばかりでなく、肺や胃腸の出血、

 

多発神経炎などの多臓器が障害を受けて危ない状況になるところでしたよ!』と脅かされた」

 

といってお怒りでした。

 

しかし、「カゼは万病の元。なるほどなあ」との独り言が印象的でした。

 

口は悪いが何となく憎めない方でした。

今日は前回挙げたAさんの『自動思考(頭の中にパッと浮かぶ考え)』から、

 

よくあるパターン1)~ 3)をお話しします。

 

 

例)Aさんは職場の会議のプレゼンの時に、

 

「資料の数値に間違いがある」と指摘されました。

 

 

Aさんが即座に思ったこと=『自動思考』は…

 

1)これでプレゼンは台無しだ。

 

2)上司の評価も下がり、もう昇進はなくなった。

 

3)自分は肝心な時にいつもミスばかりしている。

 

みんなにダメな人間と思われている。

 

 

 

 1)「全か無か思考」:

 

物事を白か黒か、0点か100点か、善か悪か、

 

と両極端に考えやすい傾向のことです。

 

完全・完璧を求めやすいです。

 

 

Aさんは少しのミスから「プレゼンは完全な失敗」と考えています。 

 

このような考え方ですと、柔軟な捉え方、解決策が思い浮かべにくくなります。

 

 

2)「論理の飛躍」:

 

根拠もないのに悲観的な結論を出してしまう傾向のことです。

 

 

 Aさんははっきりした根拠もなく、状況も確定していないのに、

 

不安を先取りしてしまう傾向があります。

 

その結果、事態は確実に悪くなると決めつけてしまいます。

 

そうすると、気持ちも落ち込みやすくなります。

 

 

 

3)「一般化のし過ぎ」(過度な一般化):

 

たった一つの良くない出来事があると、

 

「いつも」「必ず」「何もかも」「みんなが」と一般化してしまう傾向のことです。

 

Aさんは一回のミスから「肝心な時にいつも」と、

 

また、たった一人からの指摘を「みんなが私に否定的」と解釈を広げ過ぎています。

 

すると、ミスした体験ばかりが

 

量的・質的に強調され、印象づいてしまいます。

 

 

 

みなさんの中で「あるある」はありましたか。

 

もし、あてはまるものがあったとしても心配しないでくださいね。 

 

認知のクセは誰にでもあるもの。  

 

工夫してより生きやすくなるきっかけにしていただければよいのではと。

 

次回は残りのよくあるパターン④~⑤についてお話しします。

 

 

臨床心理士 宮仕 聖子

 

ドクトル飯嶋の「認定痛風医試験」受験顛末記 (その2)

 

 

<前号から、すでに一週間たっているので要約します。>

 

「認定痛風医試験」(6月18日受験) 受験会場は慈恵医大の狭い会議室。

 

在室者4名:試験官2名(帝京大学藤森教授、慈恵医大細谷名誉教授)、

 

事務局員1名、受験生1名(高円寺南診療所 飯嶋正広)

 

つまり、受験者はドクトル飯嶋ただ一人

 

試験時間は1時間、合格基準点:不明

 

試験終了後早々に新宿のハイジアに向い、「水氣道」の稽古を楽しみました。

 

 

 

<この試験制度が発足して今年度で第3回目・・・すべてがはじめて>

 

ドクトル飯嶋は、受験資格が得られてはじめての受験

 

「試験問題が持ち帰り可」であるということも試験直後に初めて知りました

 

不合格であった場合、次回の受験の参考になるので有難い話ではあります。

 

しかし、大学の医局員などであれば、事前に過去問にアクセスし対策が講じられたはず。

 

 

これまで様々な専門医資格試験を経験してきましたが、

 

開業医は、受験情報に疎いので、

 

どうしてもハンディキャップが大きくなります。

 

 

 

<わざわざ受験して合格しなくても、認定痛風医になれる!>

 

それでは、認定痛風医になるには、

 

試験を受けて合格しなければならないのでしょうか。

 

 

そうではないことは、試験直前になってはじめて知りました

 

 

試験実施の直前に、試験委員長の藤森教授から

 

直接ご説明を受け、文書をいただきました。

 

TVのCMの科白のように「早く言ってよ~」

 

受験生がドクトル飯嶋だけだった理由が、

 

すこしだけ見えてきた瞬間でした。

 

 

(第8条)本学会認定痛風医の資格

 

第4項 以下のいずれかの要件を満たすこと。

 

1)最近の10年間に痛風・高尿酸血症に関する学会発表、

 

又は論文発表が3編以上あり、少なくとも1編は筆頭者であること。

 

 

2)認定痛風医試験に合格した者。

 

 

ドクトル飯嶋は、論文発表(共著)1回のみなので、

 

学会発表を2回こなさなければ1)の条件を満たせません。

 

学会は年1回ですから、最低2年以上を要することになります。 

 

 

 

それでは、この試験の受験はドクトル飯嶋にどんなメリットがあるのでしょうか。

 

 

メリットその1:

 

合否に係らず、勉強した分だけ、

 

痛風や高尿酸血症をはじめプリン体・核酸代謝について、

 

最新の高度な知識を身に着けることができる。

 

 

メリットその2:

 

痛風・核酸代謝学会が認定医に求めている専門知識や

 

その水準を知ることができる。

 

 

メリットその3:

 

正味1時間の試験に合格すれば、

 

2年以上の申請準備期間を省くことができる。

 

 

メリットその4:

 

開業医の生涯学習のプロセスを、

 

高円寺南診療所のHPで報告できる。

今月のテーマ<腎臓の特定内科診療>

 

「急速進行性糸球体腎炎」①

 

 

症例:60代男性。「カゼ」との自己診断とともに、

 

「風邪薬が欲しい」とおっしゃる方でした。

 

尿検査をするように指示したところ、「なぜ余計な検査をするんだ」

 

と不満をおっしゃりながらも、尿を提出してくれました。

 

 

尿所見:蛋白3+、潜血2+(⇒腎臓の病気が疑われます!)

 

 

後日、尿沈渣(赤血球10~20/1視野、白血球3~5/1視野)

 

の結果をご本人に報告しました。

 

 

「腎臓の糸球体という領域の病変が疑われます。

 

まず血液検査で確認し、次回、腎臓の超音波の検査をしましょう」

 

 

と提案すると、前回の非を詫び、血液検査に協力してくださいました。

 

 

血液所見:総蛋白6.4g/dL,アルブミン4.0 g/dL、尿素窒素32mg/dL、

 

クレアチニン4.0 mg/dL、尿酸8.0 mg/dL、総コレステロール200mg/dL.

 

 

尿素窒素、クレアチニンの値が異常高値であり、腎不全状態であることが判明しました。

 

 

<次回に続く>

 

今月のテーマ<腎臓の特定内科診療>

 

「難治性ネフローゼ症候群」②

 

症例:50代男性。「足がむくみをとってほしい」と来院された方

 

<続き>

 

腎生検所見:

 

     1)H-E染色標本<基本検査>:腎糸球体の基底膜肥厚

 

     2)二重蛍光抗体法:腎糸球体基底膜上皮側にIgGの顆粒状沈着

 

     3)電子顕微鏡:腎糸球体の基底膜上皮側に高電子密度沈着物

 

 

病理組織学的診断:膜性腎症によるネフローゼ症候群

 

「一般臨床で、ネフローゼ症候群の診断をすることは難しくありませんが、

 

病理学的診断レベルである膜性腎症を疑って紹介されたのは飯嶋先生がはじめてです。」

 

とおっしゃってくださりました。しかし、これは褒めすぎです。

 

なぜなら、医師国家試験レベルの知識に過ぎない、と私は思っているからです。

 

 

ネフローゼ症候群では脂質異常症になり、

 

腎臓の糸球体から濾過される脂肪成分が増加します。

 

その結果、腎臓の尿細管上皮細胞が脂肪変性をきたし、

 

それが脱落して尿中に出現します。

 

この症例では、膜性腎症に特徴的な尿沈渣所見が得られていました。

 

 

この患者さんの脂質異常症の原因はネフローゼ症候群によるものであり、

 

食生活の乱れが原因なのではありません

 

循環器内科の先生は、「高血圧と脂質異常症が合併した生活習慣病」

 

との思い込みがあったのだと思います。

 

多忙な専門外来では有り得る話だと思いました。

 

 

ネフローゼ症候群の食事指導:腎臓に負担を掛けないように

 

低たんぱく食が推奨されています。

 

すると筋肉や血液などの体のタンパク質が分解されてしまう

 

「蛋白異化亢進」に傾きがちです。

 

そこで、十分なエネルギー補充(体重1㎏あたり、1日35kcal以上)が必要です。

 

この方は、入院後体重が63㎏となり、理想体重になりました。

 

ですから、63×35=2,200kcal以上を摂取していただく必要があります。

 

 

エネルギーは炭水化物と脂質から十分に補うべきなので、

 

この方が続けている低炭水化物食は軌道変更していただくことになりました。

 

その代わりに、頑張っていただかなくてはならないのが塩分制限です。

 

ネフローゼ症候群では、腎臓の血流が低下することによって、

 

アルドステロン症がもたらされます。

 

この病気では、体にナトリウムが蓄積して浮腫みを生じさせるからです。

 

 

循環器の先生には手紙を書いて、降圧薬の変更をお願いしました。

 

 

 

患者さんからのご報告:

 

「母親から、父親のように早死にしないよう厳しくしつけられてきました。

 

私自身もかなりの健康オタクで、体に良いといわれることは、

 

なるべく実行してきました。一生懸命に健康管理しているのに、

 

病院の専門医の先生に、『生活習慣の改善を!』

 

と言われ続ける自分が情けなくなり、意気消沈していました。

 

今回は、自分の病気のことが良くわかり、

 

納得のいく無理のない健康管理の大切さに気付くことができ、

 

とても気が楽になり、体調もすこぶる良好です。」

 

入院中は1日食塩摂取量が4gに制限されて、とても辛かったそうです。

 

ただ、真面目な方なので、それを順守したため、

 

現在では8gに緩和でき、それで十分食事を楽しめるようになったとのことでした。

 

 

痛々しさを感じさせるくらいとてもまじめで方でした。

 

しかし、他のドクターには苦手扱いをされてきたようで、

 

気の毒に思いました。

 

今月のテーマ<神経の特定内科診療>

 

 

「重症筋無力症クリーゼ」

 

この症例は70代女性でした。女子大生の寮の受付に従事していた方です。

 

 

「午前中は問題ないが、午後になると上瞼が重たくなり、頭を支えていることが辛くなる」

 

とのことでした。

 

疲れやすく、力が入りにくくなるが、休息すれば回復するという報告だったため、

 

水氣道に毎週1回参加していただくことになりました。

 

       

素朴ですが物静かで落ち着いた方でしたが、団体生活の中での悩み等もあり、

 

慢性疲労による軽度抑うつ状態であると考えていました。

 

 

しかし、抑うつ状態に比して、疲れやすさが増強してくる傾向があり、

 

ちからを使えば使うほど力が入らなくなる、という訴えに対して、

 

身体的精査に取り掛かるためのお話をはじめようと準備していました。

 

 

その矢先のことでした。

 

「しゃべりずらく、飲み物が飲みにくく、ろれつが回らなくなってきたことを同僚に指摘され

 

某病院に入院することになりました」

 

とのご報告を受けました。

 

 

精密検査の結果は、重症筋無力症、でした。

 

 

この病気の後発年齢は、小児や20から40歳代までの女性、50から60歳代の男性で、

 

初発症状は眼瞼下垂(まぶたが下がる)、複視(物が二重に見える)で、

 

次第に筋力低下が明らかになってきます。

 

彼女は、下半身はしっかりしていて、水氣道の稽古により、体調も良く、

 

午前中の生活に関しては全く支障がありませんでした。

 

 

胸部CT検査で胸腺腫が発見されたため、胸腺摘除術を受けることになりました。

 

ただし、手術ストレスやその後の過労や治療薬により、

 

筋無力性クリーゼという重症化発作を経験されたそうです。

 

その後は、ステロイド内服療法と免疫抑制薬療法を継続されているとのことです。

 

 

四肢の脱力や呼吸困難といった顕著な症状が出現する前の段階で、

 

この病気を早期発見することのむずかしさを経験しました。

 

元来体力が低下していて永年運動習慣のない方であったため、

 

入院や手術の前に、水氣道一定程度の体力と抵抗力を養っておくことができたのは、

 

せめてもの幸いだったと思います。

 

 

解説:重症筋無力症

 

神経と筋肉をつなぐ部位である神経筋接合部において、

 

アセチルコリン受容体に対する自己抗体が出現することによって、

 

神経筋伝達障害をきたす疾患です。

 

自分の体の一部を異物と錯覚して攻撃してしまう病気を自己免疫疾患といいますが、

 

関節リウマチをはじめとする膠原病や、

 

バセドー病や橋本病などの甲状腺の病気もその仲間です。

 

有病率は10万人あたり1ないし2です。しばしば、胸腺腫を合併します。

 

高円寺南診療所で永年の実績がある外来栄養食事指導。

 

それが、いったいどのようなものか、ご質問をうけることがございます。

 

指導員は高円寺南診療所の専任管理栄養士、中田美砂恵先生です。

 

指導時間帯は、火曜日・・・

 

患者さんは基本的に個人指導ですが、

 

食事の準備を担当されるご家族に同伴していただくこともあります。

 

そこで、今回は具体例を挙げて、ご紹介いたしたいと思います。

 

 

 

相談者:Mr.X。40代男性(毎月1回、継続的指導に参加)独身。

 

Xさんの指導を具体的に見ていきましょう。

 

 

 

データ

 

身長:171センチ

 

体重:98.8kg

 

BMI:33.7

 

脂質異常症、肥満

 

 

<前回からの振り返り>

 

タンパク質を減らした。

(肉、魚を減らし、豆腐に置き換えたが量が多かった)

 

間食はなし。

 

 

〈具体的に〉

 

朝・夕食のタンパク質減量:豆腐1丁を毎日→1/3丁に、

 

お腹が減るので野菜の量を増やす

 

ごはんはパック(200グラム/1回)

 

昼食は、月・火お弁当、水木金・サンドイッチ、牛乳、野菜パック

 

週1回外食、野菜が多い定食

 

 

<今回の指導>

 

ごはんの量が1回200グラムと少し増えた。

 

自炊で1合を半分にした量(180グラム)にできると良い。

 

それ以外は、このまま継続し、1か月1㎏減量、

 

マイペースで続けていきましょう。

 

実際の「栄養食事指導せん」です

(画像クリックで拡大、ブラウザの戻るボタンでもどります)

IMG_20160704_155205

今月のテーマ<腎臓の特定内科診療>

 

「難治性ネフローゼ症候群」①

 

50代男性。「足がむくみをとってほしい」とのことで来院。

 

問診によると「高血圧のため3年前から循環器内科で降圧薬の処方を受けている」

 

とのことでしたので、「循環器の担当の先生にご相談されましたか」と尋ねました。

 

すると、「3か月ごとの通院のたび担当医から『変わりありませんね?』と

 

尋ねられますが、返事する間もなく『いつものお薬お出ししておきますね。

 

コレステロールも高いので食事に気を付けてください。

 

とやられてしまうので、相談できませんでした。」とおっしゃる。

 

 

詳しくお尋ねすると

 

「3ヶ月前から、尿の泡立ちに気づき、

 

1ヶ月前から膝から下が浮腫み、体重が4.5㎏増加し、

 

重だるいです。」とのことでした。

 

 

 

「父は高血圧なのに酒タバコで早死にしたので、煙草は吸いません。

 

お酒は人付き合い程度でしたが、最近は控えています。

 

それから、コレステロールの少ない食事を採っています。

 

糖尿病にならないよう、ローカーボ(低炭水化物)ダイエットを励行しています。

 

1日1,800kcalです。」と御自分から説明してくださいました。

 

(高円寺南診療所では、必ず喫煙のことや食事のことを尋ねられることを、

 

事前に奥様から聴いていらしたそうです。)

 

 

 

体重の急増と下肢の浮腫(⇒心不全、肝不全、腎不全、栄養失調?)

 

血圧156/94mmHg(⇒コントロール不良の高血圧)、脈拍74/分、脈不整なし。

 

身長169㎝、体重76㎏(BMI=26.6:肥満度1)、体温36.6℃

 

尿検査:蛋白4+、糖(-)、尿潜血1+

 

(⇒軽度な血尿と著明な蛋白尿で、ネフローゼ症候群を疑う!)

 

 

診察所見:心音・呼吸音ともに異常なし。

 

腹部は平坦で柔らかい。肝・脾・腎を蝕知しない。

 

前脛骨部に浮腫(指圧すると凹んだまま)。

 

 

尿沈渣:尿赤血球5~10/1強視野、卵円形脂肪体、脂肪円柱、脂肪滴

 

血液生化学所見:総蛋白5.0g/dL、アルブミン2.4 g/dL、尿素窒素20mg/dL,

 

クレアチニン1.1mg/dL,尿酸6.8 mg/dL、総コレステロール330 mg/dL,

 

ナトリウム142 mg/dL、カリウム3.5 mg/dL、カルシウム8.3mg/dL、

 

リン2.9 mg/dL

 

 

臨床診断:高血圧症に合併したネフローゼ症候群

 

尿沈渣所見より、膜性腎症(疑い)とのことで

 

某大学病院腎臓内科に紹介し、腎生検を依頼しました。

 

 

<次回に続く>

今月のテーマ<腎臓の特定内科診療>

 

「難治性腎疾患」グッドパスチャー症候群(肺⁻腎症候群)

 

 

還暦目前の男性。「血を吐いたので肺がんや結核や腎臓のがんではないか」

 

と心配する家族とともに来院。1日60本というヘビースモーカで大の医者嫌い。

 

問診によると「今朝起きてトイレに行ったら尿が真っ赤で、血痰が出るようになった。

 

2日前から尿の出が悪くなり、膝から下が浮腫んできたので、気にはなっていた。

 

全身がだるくて食欲がない状態が1ヶ月半くらい続いている。」とのことでした。

 

 

 

血圧198/112mmHg(⇒コントロール不良の高血圧)、

 

脈拍114/分、脈不整なし、

 

体温37.7℃。

 

身長165㎝、体重56㎏(BMI=20.6)、体温36.6℃

 

尿検査:蛋白3+、糖(-)、尿潜血4+(⇒進行性の腎炎を疑う!)

 

 

診察所見:下腿の浮腫あり。

 

両側の肺に水泡音(プツプツいう雑音⇒肺胞腔の液体貯留所見)を聴取。

 

胸部レントゲン検査:肺浸潤像のみ

 

臨床判断:吐いた血液は消化管からではなく痰交じりなので肺胞出血を疑いました。

 

また、急速に進行する腎炎(急速進行性糸球体腎炎の疑い)

 

が発症していていることから、顕微鏡的多発血管炎、多発血管性肉芽腫、

 

グッドパスチャー病あるいは全身性エリテマトーデスなどの膠原病を疑い、

 

血液検査を済ませて、

 

即日、某大学のアレルギー・リウマチ内科を紹介するための準備をしました。

 

 

血液検査データが届いたため、紹介先のドクターに報告しました。

 

血液所見:赤血球245万、ヘモグロビン7.6g/dL,ヘマトクリット21%、

 

白血球8,800、血小板19万。

 

 

血液生化学所見:総蛋白6.6g/dL、アルブミン4.4 g/dL、尿素窒素78mg/dL,

 

クレアチニン5.8mg/dL,尿酸10.8 mg/dLナトリウム142 mg/dL、

 

カリウム5.8 mg/dL、クロール103 mg/dL。

 

 

免疫学的所見:C反応性蛋白3.8mg/dL, 抗基底膜抗体(+)

 

肺胞出血、急速進行性腎炎の疑い、抗基底膜抗体陽性の所見が揃ったため、

 

グッドパスチャー病を強く疑い、確定診断のため、腎生検を依頼しました。

 

 

この病気は、結核などの感染症やがんではありません。

 

一言でいえばアレルギー性の病気です。

 

細胞傷害型あるいはⅡ型アレルギー群の一つです。

 

体内で形成された自己抗体が直に自己の正常組織を障害するものです。

 

慢性甲状腺炎(橋本病)、バセドウ病、自己免疫性溶血性貧血、

 

特発性血小板減少性紫斑病などと同じグループです。

 

 

 

グッドパスチャー症候群はしばしば急速に進行し,

 

早期発見と早期治療が遅れた場合,死に至ることもあります。

 

この方は、幸いなことに呼吸不全または腎不全の発症前に治療が開始され、

 

即日禁煙を開始してくださったため、現在もお元気です。

 

 

 

教訓:臓器別専門医療で陥りやすい大問題の一つは、

 

複数の臓器が同時に侵される病気についての見落としです。

 

患者さんの全身を診察しなければ診断がつかない専門医である、

 

アレルギー専門医やリウマチ専門医は、その点が強みである、

 

と言えるかもしれません。

 

今回は交感神経が働き続けることによる弊害の

 

第三段階である「蓄積疲労」を見ていきましょう。

 

 

疲労度分類のオレンジ色の部分と自律神経の働きの表を見ながら読んでください。

 

(表をクリックで拡大、はっきりと表示されます、ブラウザの戻るボタンで戻ってください) 

Pasted Graphic

 

Pasted Graphic 1

 

蓄積疲労の自律神経状態をグラフでイメージすると

 3蓄積疲労

ようになります。

 

 

自律神経は共に疲弊しますが、

 

副交感神経の方がより顕著に疲労して働きにくくなります。

 

その結果、交感神経が相対的に優位な状態になります。

 

 

 

脳に余裕がなくなるため新たな情報を処理することが困難になります。

 

その結果、根気・興味欠如等がおきます。

 

 

 

また、喫煙の増加や酒量の増加等、身体に悪いこととは気づいていても、

 

制御できず、悪癖を繰り返すことがあります。

 

脳の疲労で新しい行動をとることができなくなり、

 

慣れ親しんだ行動をとりたくなるからです。

 

 

交感神経の働きが優位になるので、消化器の働きが抑制されます。

 

それにより食欲不振になります。

 

 

 

次回は、疲労困憊について解説していきます。

 

 

高円寺南診療所 統合医療部 漢方鍼灸医学科 鍼灸師 坂本光昭