高血圧の初診時管理計画と初期治療

 

降圧療法は高血圧の重大合併症である心不全の発症を50%以上、脳卒中発症率を35~

40%、心筋梗塞を20~25%低下させることが示されています。

 

初診時には、

1)高血圧の重症度と血圧以外のリスク要因を組み合わせて高血圧患者のリスクを層別化、

2)それに則って血圧管理計画を立案します。

 

リスクの高さ(高、中、低)に応じて、診断して直ちに、あるいは1~3か月の生活習慣の修正後、140/90㎜Hg以上であれば降圧薬を開始します。

 

 

家庭血圧測定の重要性

診察室血圧が高血圧の場合、家庭血圧(HBP)測定が奨められています。

 

早朝起床後あるいは就寝前のHBPが≧135/85㎜Hgの場合、高血圧と診断します。

 

両者の診断に較差がある場合には、家庭血圧のデータを優先します。

 

白衣高血圧(診察室のみで高血圧)は、臓器障害や糖尿病などの危険因子がなければ、経過観察とします。

 

一方、仮面高血圧(診察室以外が高血圧)は、診察室血圧が正常でも降圧治療の対象となります。

 

また、24時間自由行動下血圧測定(ABPM)も有用とされていますが、多くの医療場で日常的に実施されるようになるまでにはするまでには至っていません。

 

 

高血圧の非薬物療法

薬物療法の有無に関わらず、生活習慣の改善すなわち非薬物療法は重要です。

 

減塩(6g/日未満)、野菜・果物、魚(魚脂)の積極的摂取、コレステロールや飽和脂肪酸の摂取制限、減量〔BMI(㎏/m²)未満〕、運動、節酒(エタノール換算:男性20~30ml以下、女性10~20ml以下)、禁煙が奨められます。禁煙(受動喫煙防止も含む)、脂質代謝の改善自体には降圧効果はありませんが、動脈硬化症の予防のためには必須の条件です。

 

いずれも数㎜Hg以上の降圧効果が期待できますが、特に減量と運動の効果が大きいです。

 

生活習慣の修正が維持できてはじめて休薬が可能となります。

 

一般に抜毛症の診療は、多くの場合、精神医学的に強迫神経症(強迫性障害)診断に基づき、主に薬物療法として抗不安薬や抗うつ薬が処方されることが多いと思います。ここまでは保険医療の範囲で診療が可能です。

 

しかし抜毛症は難治性疾患と誤解されがちです。その理由は、主として西洋医学的薬物療法のみで効果的で持続的な結果を期待してしまうからです。

 

抜毛症は、抜毛という行動の結果としての身体症状、抜毛という行動の障害の他に、本来望ましくない行動に駆り立てられてしまう背景としての成育歴や家庭・職場環境などの心理・精神状態、といった複数の観点を踏まえたうえでのサポートが必要です。さらに生き方そのものの意味をどのように受け止めているか、なども大きくかかわってきます。

ですから、一般的な精神科医にとっても標準的とされる薬物療法のみでは治療効果を挙げにくいため積極的な診療を担えないことも少ないと思います。ただし、より専門的で良好な治療実績を挙げている熱心な医療機関であれば、臨床心理士などによる認知行動療法をはじめとするカウンセリングが行われることでしょう。ですから、こうした背景が診療コストに反映されることは、ある程度は已むを得ないことのように思われます。当クリニックで専門的で計画的な心理療法を継続される場合は、専門の臨床心理士が担当し、1回45分で6,480円(税込み)です。

 

そうして、一般的な薬物療法中心の西洋近代精神薬理学的療法のみに頼らず、伝統的東洋医学的養生法(漢方薬や鍼灸)や当クリニックにて独自に考案し20年の経験を有する水氣道®によって心身両面で統一された自己を取り戻そうとする真の心療内科的な統合アプローチをとることが、結局は近道であり、安上がりであるため、是非お勧めしたい方法です。

 

一般的な便秘症の薬物療法の目的と問題点

 

慢性便秘症に用いる下剤には、その機序から、腸管内容の容量を増加させ軟らかくし排泄を容易にするなど物理的に働く機械的下剤と、腸の蠕動を亢進させる刺激性下剤の二つに分けられます。

 

機械性下剤のうち、塩類下剤は習慣性が少なく、長期間の投与も可能であるとされてきました。非吸収性塩類下剤は腸管内に水分を移行させることによって腸管内容を軟化膨大させ、その刺激により便通促進効果を現します。大量の水分とともに服用すると、より効果的です。

 

ただし、塩類下剤も刺激性下剤と同様に長期投与は奨められません。塩類下剤は習慣性が少ないため長期使用されがちですが、マグネシウムを含むものでは高マグネシウム血症を来すことがあり、特に腎障害では注意を要します。また、大腸刺激薬は骨盤内充血を来すので痔疾患患者、骨盤内臓器の炎症、月経、妊娠時には通常禁忌です。授乳中は大黄、アロエ、センノシド(プルゼニド)も慎重に投与されます。

 

また、同じく機械性下剤のうち、膨張性下剤も習慣性はなく、作用が緩徐であり、これは高齢者、痔疾患患者にも使用できます。多量の水分を含んで膨張するため、機能性便秘に有効です。最大効果は2~3日連用後に出現します。ただし、狭窄のある腸疾患では用いません。妊婦には流早産を起こす恐れがあるため慎重投与とされます。

 

 

一般的に、慢性便秘症の第一選択薬としては、酸化マグネシウム、上皮機能変容薬であるルビプロストン(アミティーザ®)などが用いられています。上皮機能変容薬のルビプロストンは、腸役分泌促進という新たな機序の緩下剤です。

 

第二選択薬としては、第一選択薬が無効な時に、大腸刺激薬 (プルゼニド、アローゼンなど)を加えるが、その際には、痔や骨盤内炎症が無いことを確認しなければなりません。アントラキノン系誘導体は、大腸刺激性下剤のうち、センナ、ダイオウ、アロエなどの生薬類に含まれる配糖体であり、小腸より吸収されて血行性に、または直接大腸粘膜を刺激します。アルカリ尿で赤色を呈し、連用すると大腸黒皮症を来すので注意を要します。これらの薬剤は、短期間の使用を原則とします。同一薬剤の長期連用は習慣性を生ずるため種類を変えるか、または作用機序の異なるものを併用します。

 

高齢者や長期臥床者に多い腸管弛緩が疑われる場合は、膨張性下剤、刺激性下剤を用います。また、高齢者、全身衰弱患者、貧血患者、腹部手術後1週間程度の患者には、強力な下剤は控えます。

 

逆に、痙攣性便秘のように大腸の緊張が高まっている腸管痙攣が疑われる場合には、塩類下剤、膨張性下剤、浸潤性下剤のような非刺激性のものがよく、これにオピアド作動薬であり、慢性胃炎における消化器症状や過敏性腸症候群にも適応があるセレキノン®や過敏性腸症候群における便通異常(下痢、便秘)及び消化器症状に適応のあるポリカルボフィルCa(ポリフル®)などを併用します。

 

その他、便秘患者には食後にルビプロストン(アミティーザ®)の他にリナクロチド(リンゼス®)などの懲役分泌を促す薬剤が奨められます。リナクロチドは腸管上皮の表面のグアニル酸シクラーゼC受容体作動薬であり、腸管内への水分分泌を促進して排便を促します。また、大腸の痛覚過敏を改善することにより、腹痛・腹部不快感を改善するため、便秘型過敏性腸症候群に限らず器質性疾患によらない慢性便秘症にも用いられています。

 

胆汁酸トランスポーター阻害薬のエロビキシバット(グーフィス®)は、食前投与薬で、回腸末端上皮の胆汁酸トランスポーターを阻害し、胆汁酸再吸収を抑制し、大腸内の胆汁酸を増加させます。それによって、水分分泌や消化管運動が促進され、便秘治療効果が示されます。腸閉塞またはその疑いがある場合には禁忌となります。

 

直腸性便秘に対して、直腸内で徐々にCO₂を発生して、腸運動を亢進させる新レシカルボンが用いられます。

 

排便リズムの回復を図り、それによって薬剤は漸減、中止します。心因性が強い場合には、自律神経作用薬、抗不安薬、心理療法なども併用します。こうした治療法については、次回で取り上げたいと思います。

睡眠障害の治療戦術(3)

特殊な睡眠障害に対する薬物治療

 

1)概日リズム関連性不眠

生物時計の位相を変化させる目的で睡眠物質とされるメラトニンを用います。睡眠層に問題がある場合の不眠には、メラトニン受容体作動薬ラメルテオンの使用が適しています。また、通常では入眠困難が問題となることが多いため、超短時間型あるいは短時間型睡眠薬が使用されることもあります。

 

 

2)睡眠時無呼吸症候群(SAS)

患者本人は、ほとんどのケースで無呼吸に気づかず不眠のみを訴えます。

 

軽症から中等症のSAS患者の不眠治療では、睡眠薬を服用しても呼吸状態の悪化が生じないという報告があります。安全性が優れているラメルテオン(メラトニン受容体作動薬:ロゼレム®)やスボレキサント(オレキシン受容体拮抗薬:ベルソムラ®)を用います。

 

重症例では、睡眠薬の影響を否定できないため、持続陽圧呼吸療法(CPAP)などで十分にSASの管理をしたうえでの睡眠薬投与が望まれます。

 

SAS患者はCPAP治療初期に睡眠薬を併用すると、より効率的なCPAP圧の設定と、その後の長期的なアドヒアランスの向上が期待できます。

 

このような場合は、通常では、マウスピース使用、鼻腔持続陽圧呼吸法、などに加えアセタゾラミドを用いて腎からの重炭酸イオン排出を促進することによって、代謝性に呼吸を促進させるなどの方法があります。

 

 

3)アルコール性嗜好品使用に伴う不眠

アルコールは睡眠導入には効果があるが、レム睡眠に影響し、また利尿作用もあることから、中途覚醒、早期覚醒の原因となることがあります。カフェインやニコチンなどの不眠の原因となる嗜好品とともに寝酒の習慣を修正するように勧めます。そしてアルコールを中止させたうえで中・長時間作用型の睡眠薬を使用します。

 

 

4)薬物による不眠

ステロイド、インターフェロン、ドパミン作動薬(パーキンソン病治療薬)、β遮断薬(血液脳関門を通過しやすい)で不眠をきたすことがあります。

 

また、テオフィリンなどのキサンチン系薬はカフェインと同様に覚醒作用があります。

 

 

5)その他の疾患に伴う不眠

①レストレスレッグズ症候群(RLS)

RLSでは、就寝時に「虫が這うような」むずむずした知覚異常のため、臥床していられなくなり、入眠困難や中途覚醒を示します。治療薬としてはクロナゼパム(リボトリール®)やプラミペキソール(ドパミン作動薬:ビ・シフロール®)、さらに本疾患に焦点を当てたガバペンチンエナカルビル(レグナイト®)が用いられます。

 

②周期性四肢麻痺

高齢者に多く、夜間片側または両側の足関節の背屈運動を主体とする周期的な不随意運動が反復して起こるものです。入眠直後の浅いノンレム睡眠のときに出現し、夜間前期から中期にかけて発生しやすいです。治療はクロナゼパム(リボトリール®)が用いられます。

<はじめに>

 

 

前回は「胃経」についてお話ししました。

    

 

    「巨髎(こりょう)」というツボは瞳と小鼻の交差したところにあり「副鼻腔炎」に効果があります。

 

 

「天枢(てんすう)」というツボはへその横指3本分の場所にあり「便秘」「下痢」「腹部膨満感」に効果があります。

 

 

今回も「胃経」の続きです。

 

 

<胃経>

3胃経

 

 

「胃経」は 顔面から胸部、腹部、太腿、脛を通り最後は人差し指の爪の生え際につながります。

 

 

45個のツボがあります。

 

 

今回は 「梁丘」「足三里」を紹介します。

2019-06-20 10-10

 

 

 

「梁丘」は太腿の外側膝蓋骨から指3本分上にあります。

 

 

「膝関節痛」に効果があります。膝が痛い人がこの部位を押すととても痛いです。

 

 

押して痛みが軽くなるまで押圧してみて下さい。

 

 

膝痛が軽くなります。

 

 

 

「足三里」は膝の下の外側の窪みから 指4本分下にあります。

 

 

「胃痛」「食欲不振」「腹部膨満感」「体力増強」などに効果があります。

 

 

松尾芭蕉がお灸をしながら旅をしたツボとして有名です。

 

 

 

「足三里」に鍼をすると胃が動き始めるそうです。

 

 

つまり食べ物の消化能力が向上するということです。

 

 

それが体力の増強につながるということですね。

 

 

 

杉並国際クリニック 統合医療部 漢方鍼灸医学科 鍼灸師 坂本光昭

竹田貴雄の「からだとこころと人間関係に効く漢方講座」

 

杉並国際クリニックで行っている漢方診療に共通する考え方を簡単に説明している記事を発見したので紹介いたします。

 

第4回花粉症に効く漢方薬の選び方

 

竹田 貴雄(北九州総合病院麻酔科部長)

 

桃の節句を過ぎ、花粉症シーズン真っ最中ですね。皆さまいかがお過ごしでしょうか。今回は、花粉症の漢方治療についてお話しします。

 

今年は花粉の飛散量が多いようですが、同じ環境の中にいても、花粉症の症状が出る人と、全く無反応な人がいます。両者の違いは「水滞(すいたい)」という体質の差であると言えます。

 

漢方では、花粉症を「あるべき所に水がなく、十分足りている所に水が余っている状態=水滞」が原因と考えます。くしゃみや鼻水は、鼻に水があふれている状態と考えます。

 

水滞に要注意なのは、普段から水、お茶、コーヒー、お酒など水分を摂り過ぎている人や、砂糖たっぷりのスイーツが大好きでむくみがちな人、汗をかきにくい人、尿が少ない人などです。このような人は体に余計な水分が溜まっているため、アレルゲンに反応して、くしゃみや鼻水、涙、湿疹などの症状として余剰な水分が出てきます。

 

漢方治療を行う前に、必要以上の水分や甘いものを摂りすぎない、汗をかくために適度な運動をするなど、生活習慣の見直しによって水滞を予防することがまずは最も大切です。

 

 

温めるべきか、冷やすべきか、それが問題だ

 

漢方では、「余っている所から足りない所へ水を移動させる=利水(りすい)」という治療を行います。利水は、体が冷えているか、寒熱中間か、熱くなっているかという患者さんの状態によって、以下の3つの治療法に分けられます。

 

(1)体が冷えている人:体を温めながら水を移動させる

 

(2)寒熱中間:体を温めず冷やさず水を移動させる

 

(3)体が熱くなっている人:体を冷やしながら水を移動させる

 

この3つのパターンごとに、漢方薬の選び方を詳しく見ていきましょう。

 

体が冷えている人:体を温めながら水を移動させる

 

体が冷えると、顔が青白くなり、サラサラの鼻水が出ます。西洋医学での治療薬としては、フェキソフェナジン(商品名アレグラ他)やロラタジン(クラリチン他)などの抗アレルギー薬が該当します。

 

漢方では、附子(ぶし:トリカブトのこと)や乾姜(かんきょう:乾かした生姜のこと)といった生薬が、体を強力に温めて水を移動させます。代表的な漢方薬としては、

・附子が入った漢方薬:麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)

・乾姜が入った漢方薬:小青竜湯(しょうせいりゅうとう)

が挙げられます。

 

麻黄附子細辛湯は、麻黄(まおう)、附子(ぶし)、細辛(さいしん)の3つの生薬から構成され、シャープな切れ味を持った漢方薬です。麻黄+細辛で体の表面を、附子で体の中心を強力に温めます。生姜(しょうきょう:「しょうが」とは読みません)、大棗(たいそう:ナツメのこと)、芍薬(しゃくやく)、甘草(かんぞう)などの胃薬が入っていないため、長期間の内服には向いていません。服用期間は3日程度にとどめます。

 

小青竜湯は、五味子(ごみし)という酸っぱい生薬が入っていますので、好き嫌いが分かれるところではありますが、芍薬、甘草などの胃薬が入っていることから、長期間の内服に向いています。

 

なお、麻黄附子細辛湯や小青竜湯には、エフェドリンを主成分とする麻黄が含まれていることに注意が必要です。エフェドリンは血管を収縮させますので、臓器血流が低下しやすく、胃腸の弱い人では胃が痛くなるなどの副作用を起こすことがあります。麻黄が飲めない虚弱な人には、麻黄が入っておらず、小青竜湯のウラ処方ともいわれる苓甘姜味辛夏仁湯(りょうかんきょうみしんげにんとう)がおススメです。

 

寒熱中間:体を温めず冷やさず水を移動させる

寒熱中間の場合、鼻水に加え鼻づまりが併発した状態です。漢方では辛夷(しんい:コブシやモクレンなどの花の蕾を乾燥させたもの)という生薬が、鼻の通りを良くします。代表的な漢方薬としては、葛根湯加川芎辛夷(かっこんとうかせんきゅうしんい)が挙げられます。

 

葛根湯加川芎辛夷は、漢方のかぜ薬として有名な葛根湯(かっこんとう)に、川芎(せんきゅう)と辛夷が加わった処方です。川芎は頭痛の薬です。川芎で副鼻腔炎の痛みを取り、辛夷で鼻の通りを良くします。生姜、大棗、芍薬、甘草などの胃薬が入っているため、長期間の内服に向いています。

 

体が熱くなっている人:体を冷やしながら水を移動させる

体が熱くなると、赤ら顔になり、鼻づまりや粘稠な痰が絡むようになります。西洋医学での治療薬としては、モンテルカスト(キプレス他)などのロイコトリエン受容体拮抗薬、ナファゾリン(プリビナ)などの血管収縮点鼻薬が該当します。

 

漢方では、石膏(せっこう)という生薬が、体を強力に冷やして水を移動させます。代表的な漢方薬としては、

・石膏+辛夷が入った漢方薬:辛夷清肺湯(しんいせいはいとう)

・石膏が入った漢方薬:越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう)

が挙げられます。

 

辛夷清肺湯は、石膏や辛夷の他に、水を排出しながら冷やす生薬である黄芩(おうごん)、山梔子(さんしし:クチナシのこと)と、保水しながら冷やす生薬である知母(ちも)、麦門冬(ばくもんどう)とがバランスよく組み合わされています。体の水分バランスを取り、鼻から肺までの気道を開く処方です。

 

越婢加朮湯は、石膏と麻黄によって体の余剰な水を尿として排出します。朮(じゅつ)、生姜、大棗、甘草などの胃薬が入っているため、長期間の内服に向いています。

 

 

花粉症の漢方治療 まとめ

温める・胃薬なし:麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)

温める・胃薬あり:小青竜湯(しょうせいりゅうとう)※

(※麻黄を飲めない虚弱者:苓甘姜味辛夏仁湯[りょうかんきょうみしんげにんとう])

 

寒熱中間・胃薬あり:葛根湯加川芎辛夷(かっこんとうかせんきゅうしんい)

冷やす・胃薬なし:辛夷清肺湯(しんいせいはいとう)

冷やす・胃薬あり:越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう)

 

繰り返しになりますが、花粉症の治療において大切なのは、生活習慣の見直しで水滞を予防することです。必要以上の水分や甘いものを摂り過ぎない(私は花粉症シーズンにはビールやアイスクリームを控え、唐辛子を摂るようにしています)、汗をかくために適度な運動をするといった養生が第一で、漢方治療はその次です。

 

その上で漢方薬を選ぶ際には、まず、温めるべきか冷やすべきか、次に、胃薬成分が必要かどうかで使い分けましょう。

 

寒熱や胃薬成分の有無などの判断に迷う場合には、寒熱中間・胃薬ありの葛根湯加川芎辛夷が一番無難な処方です。ただし、葛根湯加川芎辛夷には、麻⻩附子細辛湯や小⻘⻯湯と同様に麻黄が入っています。胃薬成分が入っているとはいえ、麻黄が飲めない虚弱者には、服用困難な場合があります。

 

花粉症の漢方薬選びに迷ったら、寒熱中間・胃薬ありの葛根湯加川芎辛夷を処方しつつ、虚弱な人には苓甘姜味辛夏仁湯に変更するのがよいでしょう。

 

 

杉並国際クリニックからのコメント

竹田貴雄先生の解説は、漢方専門医としてのみならずアレルギー専門医としての立場からも説得力があり、概ね同意できます。「花粉症の治療において大切なのは、生活習慣の見直しで水滞を予防することです。・・・汗をかくために適度な運動をするといった養生が第一で、漢方治療はその次です。」これはそのとおりだと思います。そして「必要以上の水分や甘いものを摂り過ぎない(私は花粉症シーズンにはビールやアイスクリームを控え、唐辛子を摂るようにしています)」という部分に関しては、「甘いものを摂りすぎない、ビールやアイスクリームを控える」というのは賛成です。

 

しかし、「必要以上の水分を摂りすぎない」という個所については注意が必要です。花粉症体質の方は、必ずしも水分が過剰であるとは限らず、水の分布のバランスが崩れていることがむしろ問題であることが多いからです。花粉症で涙や鼻汁に悩まされているからといって、必ずしも水分が過剰であるとは限らないのです。むしろ、粘膜面での水分が欠乏して乾燥状態に陥らないように、身体が調整してくれている結果であることもあります。たしかに、水分の過剰摂取は無意味ですが、腎機能が正常である限り、大きな問題はありません。むしろ、脱水に気を付けて、良い水分を摂取することによって、花粉症にともなって産生される「毒」の尿中排泄を促すことが有効であると考えています。

独法国立相模原病院・アレルギー科  VS

杉並国際クリニック・アレルギー科(その2)

 

杉並国際クリニックのアレルギー科が行っているアレルギー専門外来診療の守備範囲を説明する目的で、我が国におけるアレルギー診療の最先端の医療センターである相模原病院との比較してみました。

 

情報源は、同病院のホームページです。

 

 

対象となる疾患

 

1.気管支喘息

原因がはっきりしない喘息の方

現在の治療法に疑問や不安をお持ちの喘息の方

難治性喘息(通常の治療でよくならない方も含めて)

ペットやカビなどによる喘息

解熱鎮痛薬喘息(いわゆるアスピリン喘息)

お仕事や環境が原因の喘息

典型的でない喘息症状(咳、息切れ、胸痛など)の方

鼻茸や副鼻腔炎のある喘息

特殊な原因の喘息の方

 

 

2.成人の各種アレルギー

その原因として

カビ動物ラテックス 、食物花粉食品添加物 、果実昆虫職業に関するものなど

 

 

3.薬剤アレルギー

 

 

4.ペットアレルギー

ハムスター、イヌ、ウサギ、ネコ

 

 

5.アレルギーによる肺炎

過敏性肺炎          

好酸球性肺炎      

アレルギー性気管支肺真菌症

 

 

6.好酸球増多症

 

 

7.原因不明のアレルギー症状

 

 

8.アナフィラキシー

 

 

9.好酸球性血管性浮腫

 

 

10.その他アレルギー疾患

 

 

 

<杉並国際クリニックからの視点>

要するに、相模原病院のアレルギー科は、アレルギー内科として気管支喘息を主たる対象疾患としていることが、ここからわかります。

 

ただし、一口に喘息とはいっても千差万別なのが現実です。原因があきらかでなくとも標準的な治療でコントロールできる喘息が多いですが、逆に、原因が明かにされても治療効果に結びつかないこともあります。相模原病院では、主に、以下のタイプの喘息を例示列挙しています。

 

難治性喘息、解熱鎮痛薬喘息、環境性喘息、耳鼻科領域関連喘息、ペットやカビなどによる喘息、特殊な喘息、など

 

ここで、気になるのは、喫煙関連の喘息に関しての対応です。

 

超高齢社会を背景として、高齢者を中心にCOPDを合併した気管支喘息の患者の外来受診が増加しています。

 

COPDは、タバコ煙を主とする有害物質への長期にわたる吸入暴露により生じる肺の炎症性疾患で、従来、慢性閉塞性肺疾患、と訳されることが多かったものです。臨床的には、徐々に生じる労作時の呼吸困難や慢性の咳、痰を特徴とします。そのため、心不全との鑑別が必要なこともあり、実際に右心不全という状態であったりもします。また気管支喘息とは異なり呼吸機能検査で完全には可逆的ではない気流閉塞を示します。

 

このようなCOPDを合併する気管支喘息をACOといいますが、相模原病院では、どのような扱いなのかが必ずしもあきらかでないので心配です。

 

杉並国際クリニックでは、受動喫煙を含めて、徹底した、根気強い禁煙サポートをしています。本人が喫煙者であるばかりでなく、家族や職場の喫煙者の副流煙にさらされるだけでACOは増悪しますが、禁煙により治療反応性が改善した症例を多数経験してきました。

経口血糖降下薬の使い方(1)

 

2型糖尿病では、インスリン分泌不全とインスリン抵抗性の両者があいまって、様々な程度のインスリン作用不足をもたらします。

 

インスリン分泌不全とインスリン抵抗性のいずれが主たる役割を果たしているかは症例毎に異なります。

 

欧米白人ではインスリン抵抗性が顕著であるのに対して、日本人ではインスリン分泌不全が主たる病態であることが多いことがわかっています。

 

いずれにも、食事療法・運動療法をしっかり行い、なお、血糖コントロールが不十分な場合に薬物療法を開始するのが原則です。

 

なお、日本糖尿病学会は、第一選択薬は特定せずに主治医の判断に任せる立場をとっているが、わが国においてはインスリン抵抗性を改善するビグアナイド(BG)類やインスリン分泌を促進するインクレチン関連薬のうちDPP-4阻害薬が頻用されています。

 

経口血糖降下薬は、主にインスリン非依存状態であり、急性代謝失調を認めない2型糖尿病の治療に用いられます。尿ケトン体陰性で、随時血糖値250~300㎎/dl程度か、それ以下であることが目安となります。

 

インスリン抵抗性改善薬:ビグアナイド(BG)類

メトホルミンがインスリン抵抗性改善作用を目的として使用されています。この薬剤は、インスリン分泌促進作用はなく、肝臓からの糖放出抑制、末梢での糖取り込みの促進、消化管からの糖吸収抑制により血糖を降下させます。GLP-1分泌促進作用もあります。

 

もっとも注目すべき副作用は乳酸アシドーシスです。発生頻度は9.6~16.2人/10万人です。

 

肝・腎機能、心肺機能に障害のある患者、アルコール多飲者では禁忌です。とくに腎機能障害では推定糸球体濾過量(eGFR)30mL/分/1.73m²未満(GFR区分G4:高度低下、G5:末期腎不全)には禁忌です。ヨード造影剤を用いる場合は一時的に中止します。継続服用中であっても、下痢や嘔吐などで脱水を来す危険があるときは服用を中止します。

 

欧米(米国および欧州糖尿病学会)では、肥満のある場合の第一選択薬ですが、食事内容、肥満度、使用できる用量などが異なるなる日本人での合併症予防効果は確立していません。

 

そこで、今後、わが国においてもメトホルミンはさらに頻用されることが見込まれています。

 

しかし、腎障害、過度のアルコール摂取、シックデイ、脱水、心血管・肺機能障害、手術前後、肝機能障害、高齢者などには投与を控えるなど適切な対応が必要です。

 

 

インスリン分泌促進薬:DPP-4阻害薬

インクレチンの分解に関わるDPP-4の活性を阻害する経口血糖降下薬です。その主たる作用は活性型GLP-1濃度の上昇によるインスリン分泌促進とグルカゴン分泌抑制です。

 

特徴は

①単独治療での低血糖のリスクが低い

 

②確実な食後血糖改善効果があり、血糖変動幅が狭くなる

 

③他の経口血糖降下薬やインスリン製剤の併用薬として有用性が高い

 

④服薬アドヒアランスが良好に保たれる

 

⑤治療に伴う体重増加がみられない、

 

⑥欧米の2型糖尿病患者に比し、日本人を含めたアジアの患者において効果が高い

 

などが挙げられます。

 

ただし、SUと併用する場合には低血糖に注意し、SUを減量します。

 

高齢者や中等度以上の腎障害を認める患者では、特に注意を要します。

 

膵癌・膵炎のリスク、心血管系への影響、免疫系(感染症、膠原病、癌を含む)への影響に関してのエビデンスの集積が不十分です。

 

DPP-4阻害薬を用いても十分な血糖コントロールが得られない場合は、長時間作用性で、空腹時血糖も食後血糖も下げるGLP-1受容体作動薬であるリラグルチドやデュラグルチドへの切り替えを検討するのが良いとされます。ただし、これらのGLP-1受容体作動薬は経口薬ではなく、皮下注製剤です。

 

 

杉並国際クリニックからのコメント

日本糖尿病学会は、第一選択薬は特定せずに主治医の判断に任せるとしていますが、実臨床の現場では、さまざまな使い分けがなされるべきであると考えます。わが国において頻用されているビグアナイド(BG)類やDPP-4阻害薬にも様々な未解決の問題点が残されています。

 

そこで杉並国際クリニックでは、まず2型糖尿病患者の重症度に着目しています。

 

耐糖能異常の段階から軽症の2型糖尿病で、空腹時血糖はさほど高くなく、食後に高血糖になるタイプでは、まずα-グルコシダーゼ阻害薬(α‐GI)を試みます。この薬剤は、消化管の二糖類分解酵素を阻害するため、耐糖能異常(IGT)から糖尿病への進展を抑制する効果があります。

 

また、即効型インスリン分泌促進薬の血糖改善効果はスルホニル尿素(SU)類ほど大きくはありませんが、SU類のようにインスリン分泌を促進します。

 

軽症から中等症の2型糖尿病であれば、肥満者か非肥満者かに着目します。

 

非肥満2型糖尿病であれば、スルホニル尿素(SU)類を試みます。しかし、この薬剤は、インスリンの基礎分泌・追加分泌をともに高めるためるため、β細胞の疲弊を早めてしまう可能性があると考えています。低血糖を引き起こしやすいので注意を要します。

 

肥満2型糖尿病であれば、まずSGLT2阻害薬を用います。この薬剤は、腎のブドウ糖再吸収を阻害するため、血糖改善に加えて体重減少も期待できます。

 

慢性腎臓病(CKD)に合併する高血圧の治療

 

高血圧は、慢性腎臓病(CKD)の発症・進展及び心血管疾患(CVD)発症の最大の危険因子で、高血圧治療はCKD診療における要です。

 

高血圧治療の要点を示します。

 

①高圧目標は130/80㎜Hg未満とする。

ただし、非糖尿病で尿蛋白陰性のCKDでは140/90mmHgを推奨する。

 

②高齢者でも同様であるが、過度な降圧は避ける。

 

③糖尿病及び尿蛋白陽性(0.15g/gCr以上、アルブミンでは30㎎/gC以上)のCKDでは、ACE阻害薬/ARBを第一選択薬とする。

 

④尿蛋白陰性の非糖尿病CKD(多くは高齢者の腎硬化症)では、病態に応じて降圧薬を選択する。

 

⑤降圧薬(特にACE阻害薬/ARB)を服用中の患者(特に高齢者)が脱水になると急性腎障害(AKI)発症の危険がある。

 

したがって、下痢・嘔吐・食欲不振など脱水の危険があるときには、これらの降圧薬を中止して速やかに受診するように患者に伝える。

 

特に尿蛋白陰性で高齢の患者や腎機能が既に低下している患者においては、Ca拮抗薬が使いやすい。

 

 

杉並国際クリニックからのコメント

慢性腎臓病(CKD)に合併する高血圧という視点からの治療指針を紹介しましたが、実際には高血圧患者の腎機能を調べてみると、そのほとんどが慢性腎臓病(CKD)に該当します。

 

特に、高齢者ではそれが顕著です。したがって、高血圧がある受診者には尿検査によって早めに慢性腎臓病(CKD)のチェックを行うことが大切であり、

 

慢性腎臓病(CKD)であれば、少なくとも、毎月1回は尿検査を実施するように心がけたいと考えています。

 

上記③で、尿蛋白陽性(0.15g/gCr以上、アルブミンでは30㎎/gC以上)のCKDとは、蛋白尿区分でA2(軽度蛋白尿)もしくはA3(高度蛋白尿)の場合に相当します。

 

そして、蛋白尿区分がA1で蛋白尿に関して正常区分であっても、糖尿病の場合は、合併する高血圧症の治療にはACE阻害薬/ARBを第一選択薬とすることが推奨され、高圧目標は130/80㎜Hg未満ということになります。

 

逆にいえば、蛋白尿区分A1(正常)で非糖尿病のケースでの合併する高血圧症の治療にはACE阻害薬/ARB以外の選択の可能性が大きくなります。

 

この区分に属する高齢者の多くは腎硬化症であり、病態に応じて降圧薬を選択することが推奨されていますが、このようなケースではCa拮抗薬が使いやすいとされるので、これを第一選択薬とするのが妥当だと考えます。

 

逆に、特に高齢者であれば、ACE阻害薬/ARBを服用して脱水になると急性腎障害(AKI)発症の危険があることから、なるべくCa拮抗薬でコントロール可能な状態を維持することが望まれます。

 

<はじめに>

 

 

前回は 「大腸経」のお話をしました。

 

 

「合谷」は「頭痛」「歯痛」「肩こり」「便秘・下痢」「目の疲れ」に効果があり

 

 

「手三里」「曲池」は「肩こり」に 効果があるというお話でした。

 

 

今回は「胃経」についてお話します。

 

 

<胃経>

3胃経

 

 

「胃経」は 顔面から胸部、腹部、太腿、脛を通り最後は人差し指の爪の生え際につながります。

 

 

45個のツボがあります。

 

 

では、その45個のツボを挙げていきましょう。

 

 

1.承泣(しょうきゅう)

 

2.四白(しはく)

 

3.巨髎(こりょう)

 

4.地倉(ちそう)

 

5.大迎(だいげい)

 

6.頬車(きょうしゃ)

 

7.下関(げかん)

 

8.頭維(ずい)

 

9.人迎(じんげい)

 

10.水突(すいとつ)

 

11.氣舍(きしゃ)

 

12.缺盆(けつぼん)

 

13.気戸(きこ)

 

14.庫房(こぼう)

 

15.屋翳(おくえい)

 

16.膺窓(ようそう)

 

17.乳中(にゅうちゅう)

 

18.乳根(にゅうこん)

 

19.不容(ふよう)

 

20.承滿(しょうまん)

 

21.粱門(りょうもん)

 

22.関門(かんもん)

 

23.太乙(たいいつ)

 

24.滑肉門(かつにくもん)

 

25.天枢(てんすう)

 

26.外陵(がいりょう)

 

27.大巨(だいこ)

 

28.水道(すいどう)

 

29.帰来(きらい)

 

30.氣衝(きしょう)

 

31.脾関(ひかん)

 

32.伏兎(ふくと)

 

33.陰市(いんし)

 

34.梁丘(りょうきゅう)

 

35.犢鼻(とくび)

 

36.足の三里(あしのさんり)

 

37.上巨虚(じょうこきょ)

 

38.条口(じょうこう)

 

39.下巨虚(げこきょ)

 

40.豐隆(ほうりゅう)

 

41.解谿(かいけい)

 

42.衝陽(しょうよう)

 

43.陷谷(かんこく)

 

44.内庭(ないてい)

 

45.厲兌(れいだ)

 

 

覚えるの大変だったことを思い出します。

 

 

4個ずつに区切って覚えるようにすれば良いことに気付いてなんとか覚えました。

 

 

一生懸命だったあの頃を思い出します。

 

 

今回は「巨髎」と「天枢」を紹介しましょう。

 

 

<巨髎>

2019-06-13 11-09

 

 

瞳と小鼻の交差したところにあります。

 

 

「巨髎」は「副鼻腔炎」に効果のあるツボです。

 

 

副鼻腔炎のときに押すととても痛いです。

 

 

痛さを我慢して押していくと鼻が通ってきます。

 

 

<天枢>

2019-06-13 11-10

 

 

     へその横指3本分の場所にあるツボです。

 

 

「便秘」「下痢」「腹部膨満感」に効果のあるツボです。

 

 

押してもいいのですが、横になって手のひらを当てて手の温かさを伝えていくようにしていくといいでしょう。

 

 

私の印象では、特に「下痢」に効果があります。

 

 

来週も「胃経」のツボを紹介していきます。

 

 

 

杉並国際クリニック 統合医療部 漢方鍼灸医学科 鍼灸師 坂本光昭