運動症状出現前のパーキンソン病

 

超高齢社会を迎えたわが国の今後の医療を考えると、認知症・脳血管障害とならんでパーキンソン病など神経内科が担当する疾患の症例数が増えることが予想されます。

 

とりわけパーキンソン病は中年以降に発症する比較的頻度の高い代表的な中枢神経系の変性疾患の一つです。

 

 

多数の医師が認識しているのはパーキンソン病のトリアス(3主徴)といって、

静止時振戦(ふるえ)

筋強剛(筋肉のこわばり)

無動(動作の緩慢)

という運動症状です。

そして、神経内科の専門医であるかどうかにかかわらず、パーキンソン病を日常的に診療している医師であれば、上記の三症状に姿勢反射障害(姿勢の不安定性)を加えた4症状がパーキンソン病にとって特徴的な症状であることを認識しているはずです。

 

 

さいわいにも全国にはパーキンソン病を診療することができる神経内科専門医が6000人近くも活躍しているので、私自身も、そうした専門医に任せておけばよいと考えていました。

 

しかし、最近、それは誤りであったことに気が付きました。

なぜなら、大切なのは早期診断でだからです。パーキンソン病の典型的な4症状が出そろうのは、かなり病気が進行している段階だからです。

 

 

そのための有益な手掛かりは、パーキンソン病の典型的な症状であるこれらの運動症状出現以前に病気を発見することです。

 

具体的な症状としては、便秘うつ状態の他に、不安嗅覚低下レム睡眠行動異常症日中の過眠症、があり、これらの一連の症状は、より早期の中枢神経病変を反映するものと考えられています。

 

これらの症状はパーキンソン病の非運動症状と呼ばれ、運動症状出現の数年前から出現することが知られています。

 

日頃から、パーキンソン病の非運動症状を早期に発見し、診断と評価を行なえるようにしたいものと考えております。

 

<はじめに>

 

 

前回は「喉の痛み、咳、痰」に効果のあるツボを紹介しました。

 

 

「天突」は左右の鎖骨を結んだ中央の窪みにあり、

 

 

「天鼎」は下顎角の直下で胸鎖乳突筋中の1寸下方胸鎖乳突筋の後縁にあり、

 

 

「尺沢」は肘前面のしわの上にあり、肘を曲げることで出てくるの腱のすぐ外側にあるというお話でした。

 

 

 

今回は「首のこり」に効果のあるツボを紹介しましょう。

 

 

 

<首のこりに効果のあるツボ>

 

2020-02-13 14-30

 

 

今回は「大椎(だいつい)」「天柱(てんちゅう)」「風池(ふうち)」を紹介します。

 

 

「大椎」は首を曲げたときにできる出っ張りの下にあります。

 

 

「天柱」は後頭部の髪の生え際で、太い筋肉に挟まれたくぼみから左右へ親指1本分外側へずれたところにあります。

 

 

「風池」は後頭部のくぼみと耳の下を結んだちょうど中間にあります。

 

 

この後頚部のあたりが緩むと首が楽になるだけではなく、鼻詰まりや目の疲れも改善します。

 

 

鍼治療で必ず治療する部位です。

 

 

 

杉並国際クリニック 統合医療部 漢方鍼灸医学科 鍼灸師 坂本光昭

野口君が手配してくれたホテルの近く小倉時代の鴎外の旧宅跡があることを知って、そこを見学することにしました。

 

鴎外の旧居後は、私が以前、文京区本駒込に棲んでいた関係で、千駄木の鴎外記念図書館を訪問したことがあります。

それから、ドイツのベルリンでの医学会参加の際にも、鴎外博物館に立ち寄りました。

 

今回の痛風学会も会場が小倉だというので何となく気にはなっていたのですが、御縁というものかもしれません。

いずれ機会があったら、鴎外の生誕の地津和野も音連れてみたいと思います。

 

それから、鴎外の墓所が三鷹であるということも改めて認識しました。

 

今月団体登録したばかりの水氣道の新しい稽古場が三鷹なので、不思議な縁を感じました。私は知らず知らずのうちに鴎外に導かれていたのかもしれません。

 

そこで、全く馬鹿げた試みではありますが、鴎外の事績と私自身のそれとを比較してみることにしました。

 

 

誕生:

〇 鴎外文久2年(1862)島根県津和野

× 私昭和34年(1959)茨城県水戸
   

⇒おおよそ1世紀後れ、いずれも中央から離れた地方です。

 

 

結婚歴:
   

〇 鴎外初婚27歳
   

× 私29歳
   

⇒2年遅れ
   

〇 鴎外再婚40再
   

× 私なし

 

 

大病罹患歴:
   

〇 鴎外肋膜炎(結核)19歳
   

× 私なし

 

 

医師歴:
  

〇 鴎外19歳

ただし、鴎外は1873年(明治6年)11月、入校試問を受け、第一大学区医学校(現・東京大学医学部)予科に実年齢より2歳多く偽り、12歳で入学
  

× 私26歳(防衛大学校早中退の経歴等のため)
   

⇒7年遅れ

 

 

ロンドン・パリ訪問歴:
  

〇 鴎外26歳
  

× 私ロンドン訪問歴なし、パリ訪問56歳

 

 

外国語学習歴:
藩医家の嫡男として、幼いころから論語や孟子、オランダ語などを学び、養老館では四書五経を復読した。当時の記録から、9歳で15歳相当の学力と推測されています。

 

<中国語(漢籍)>
   

〇鴎外おそらく幼少期から
   

×私30歳頃から概ね独学
   

⇒比較になりません!
   

 

<ドイツ語>

〇鴎外10歳から
   

×私16歳から
   

⇒6年遅れ、実力は月とスッポン、とうてい追い越せません!
   

 

<フランス語>
  

〇 鴎外37歳(小倉天主公教会=カトリック教会、ベルトラン神父から)
  

× 私20歳から独学するも成らず、59歳時に阿佐ヶ谷エコールサンパのフランス語教師ベルトラン(カトリック信者)からフランス語を学ぶ
   

⇒速習力で全く歯が立ちません。私は未だにフランス語には不自由しています。

 

 

漢方医学学習歴:
  

〇 鴎外12歳から
  

× 私30歳から本格的に学び始め38歳にて「漢方専門医」資格取得
    

⇒18年遅れ。

 

 

留学歴:
  

〇 鴎外22歳(官費)ライプチヒ大学ホフマン教授、
ミュンヘン大学ペッテンコーフェル教授、ベルリン大学コッホ教授
  

× 私なし、短期研修滞在のみ(自費)

 

 

文学活動歴:
  

〇 鴎外28歳「舞姫」
  

× 私なし

 

 

学位取得:
 

〇 鴎外「医学博士」29歳「文学博士」47歳
  

× 私「医学博士」50歳

 

⇒医学博士取得は21年遅れ
    

「文学博士」取得に至っては想定能力外

 

 

軍事・衛生学と医学との関係:
   

〇 鴎外19歳で陸軍軍医副(中尉相当)

22歳で衛生学を修めるとともにドイツ帝国陸軍の衛生制度を調べるためドイツ留学。

45歳で陸軍軍医総監(中将相当)官を極める
   

 

× 私18歳で防衛大学校入校するも同年退校、30歳から38歳まで東京大学医学部衛生学教室(故和田攻教授)の研究生として在籍し、医師としての基本スタンスを確立。

衛生学から健康科学(後に東京大学より保健学修士の学位授与)、労働衛生学(後に労働衛生コンサルタント国家試験合格)、リハビリテーション医学(東京大学より医学博士の学位授与)、東京大学医学部付属病院分院心療内科エクスターン(末松弘行名誉教授、久保木富房教授に師事、後に心療内科専門医・指導医となる)。令和の時代は、まさにいろんなウイルスとの国際戦の様相を呈しています。

 

 

死亡歴:
  

〇 鴎外60歳(死因:肺結核)

向島弘福寺に埋葬。後に三鷹の禅林寺に改葬。
 

× 私現在60歳にて生存中。いつの日か茨城県笠間市のカトリック友部教会(イエズス・マリアの聖心修道会本部墓地)に埋葬される予定。

 

 

まとめ:

鴎外と自分を比較しようなどという物好きな発想がどこから湧いてきたのでしょうか?

 

そういえば、小倉百人一首をコンコーネ50番とトスティ50番に誂えるという発想自体も唐突だと言われています。

 

しかし、なぜか一流の音楽家の皆様の協力が得られたばかりでなく、これまた医学の領域で一流の仕事をされている諸先生方にも高い評価を得ています。

 

小倉百人一首には豊富な掛詞がありますが、現代人は「ダジャレ」だとか「オヤジ」などという品のない反応をしてしまいがちなのが頗る残念です。

 

小倉(おぐら)百人一首のCDをお世話になってきた医学会の各領域の重鎮の先生方にプレゼントするととても喜んでくださいます。多忙であるにもかかわらず、感想を手紙やはがき、あるいはメールで送ってくださっています。
     

今回は早くも『さすが飯嶋先生。わかっていますよ!小倉(こくら)百人一首という趣向ですな‼』などとおっしゃってくださった大先生がいらっしゃいました。います。それは全くの買い被りで、私自身もそれに気付いていませんでした。

 

一流の方は頭の回転が速く、しかも「ダジャレ」だとか「オヤジ」を馬鹿にせず、ウィットとユーモアに富んだ芸術的な対応をしてくださるものだと感心した次第です。

―熱心な整形外科医に熱いエールを送りたい!-

 

昨日(2月13日)最後の学会プログラムであったシンポジウム1「改訂ガイドラインの評価と今後の課題~関連学会の立場から~」は印象的でした。

 

現在、日本の痛風患者の多くが、痛風を専門としない整形外科を受診していることは知っていました。

しかし、近畿大学医学部整形外科・リウマチ科の森成志先生ご発表の調査報告によると、残念なことに、想像していた以上に一般的に日本の整形外科医は痛風や高尿酸血症について体系的な教育を受ける機会が乏しく、知識も十分でなく、苦手意識をもっているらしい、というのが実情のようです。

 

質疑応答で山中寿先生(前女子医大主任教授)も指摘されていましたが、痛風の患者が集まりやすい整形外科医が専門教育を受けることができるシステムを構築することが望まれます。

 

 

私自身は内科医であり、他の痛風医の多くと同じくリウマチ専門医でもあることから、痛風や高尿酸血症の経験は豊富でした。

しかし、当該学会認定の教育医療機関での研修機会がなかったため、筆記試験を受験し、資格取得までに数年を要しました。

ですから、痛風診療に意欲的な整形外科医も、私と同じ方法で認定痛風医となることが可能なので、知り合いの整形外科医には、勧めていきたいと思います。

そして、今後も一緒に研鑽し、協力し合って質の高い痛風・高尿酸血症の実臨床が全国規模で推進できるようにいきたいと考えています。

 

改めて日本痛風・尿酸核酸学会のホームページを確認し、認定痛風医名簿を確認して、その思いを新たにしました。

 

現在、認定痛風医は全国で55名ですが、東京に限ると14名です。しかも、積極的に痛風診療を行っていると想定される医療機関は6件に過ぎません。

 

新たに杉並国際クリニックが加わっても7件のみです。

東京女子医大のような専門中核医療機関は、症例数が増えすぎたためか、重症のリウマチ患者に特化しつつあるように思われ、軽症のリウマチ患者や痛風・高尿酸血症の患者さんは杉並国際クリニックに逆紹介される時代になってきました。

同じく痛風の専門機関病院である東京慈恵会医科大学病院でも痛風の新患は受け付けていないことが掲示されています。

 

杉並国際クリニックは、昨年5月以来、すでに、新患受付はすべてインターネットを通しての予約制システムを導入しています。

 

そのため、本年4月以降に増加が見込まれる痛風・高尿酸血症の新患対応により、これまで通院されている多忙な皆様の待ち時間が増えないように一層の配慮と工夫を凝らしておりますので、どうぞご安心くださいますように!

 

 

日本痛風・尿酸核酸学会認定痛風医名簿

 

東京の認定痛風医14名(令和2年2月14日現在)

 

「外来を行なっている医療機関」6件

 

令和2年4月1日以降に、杉並国際クリニックが追加されて7件となる予定です。

 

 

東京医科大学腎臓内科

〇 菅野義彦先生

 

 

帝京大学医学部付属病院内科

〇 内田俊也先生(所属:帝京平成大学)

 

 

帝京大学医学部付属新宿クリニック

〇 藤森新先生

 

 

両国東口クリニック(墨田区両国)

〇 大山博司先生

 

 

サクラビアクリニック(世田谷区成城)

〇 寺井千尋先生(所属:自治医科大学)

 

 

長瀬クリニック(板橋区徳丸)

〇 長瀬満夫先生

 

 

「外来を行なっている医療機関」欄が空欄もしくは、現在新患を受け付けていないもの6件

東京大学医科学研究所付属病院

 

東京女子医科大学付属病院

 

東京慈恵会医科大学付属病院

(病院のHPにあるように再診患者さんのみを診療しており、新患の診療は行っていません。)

 

虎の門病院

 

木場病院

 

東京薬科大学 

非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD/NASH)の治療の実際

 

NAFLD/NASHの治療は、内臓肥満を是正するための運動及び食事等の改善が第一であることは、多くの医師が認識しています。

 

しかし、残念なことに、こうした地道な健康管理を遂行・持続するように指導しても、そうした患者さんにはあまり感謝されることもなく、実行に至らず困難に直面するというシナリオが相場です。

 

そうした現実もあってか、我々医師は、ややともすれば、早期にお薬を処方するしかないと考えがちになるようです。

 

とても残念なことですが、生活リズムの是正をはじめ運動療法や栄養食事療法に熱心な医師は、とても少なく、自らが患者と共に運動療法に励むような医師は、特別天然記念物扱いです。

 

杉並国際クリニックは、水氣道®という運動療法の実践を20年間続けていますが、肥満者の体重を10%以上減量させることは無理なく達成可能です。

 

ガイドラインでは7%減量の達成を唱えていますから、水氣道®を始めていただけるのでしたら、有力な治療手段となります。


そうは言っても、現在NASHに対する直接的な薬物療法は確立していないことが多くの患者さんやその患者さんのサポートを担当するほとんどの医師にとっての大問題になっています。

 

そのため、NASHの背景にあるメタボリックシンドロームに合わせた治療方略が、少し古きなった診療ガイドライン「NAFLD/NASH診療ガイドライン2014」(日本消化器病学会、2014年)で推奨されています。幸い今年の4月に改訂版が公表される予定です。

 

NASHに対する薬物療法は、種々試みられていますが、長期予後等に関するエビデンスには乏しく、評価困難です。日常臨床では、NASHの背景にあるメタボリックシンドロームの基礎疾患である糖尿病、脂質異常症ならびに高血圧症等に準じた薬物療法が考慮されています。

 

杉並国際クリニックでは、これらの基礎疾患に対応する個別データに基づく、以下の治療計画シートを作成しています。糖尿病早期発見および治療管理基準(杉並国際クリニック版)、動脈硬化症予防・治療管理基準(杉並国際クリニック版)、高血圧治療管理基準(日本高血圧学会:高血圧治療ガイドライン2014、改変)は、一般にも公開することにしました。

 

非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の大多数は肝生検を施行しないのでNASHという確定診断が得られませんが、その場合はNASHの可能性を検討して治療します。

 

基礎疾患の有無にかかわらずNASHは、抗酸化剤としてビタミンEが選択肢となりますが、保険適応になっていません。

 

そして高血圧症が基礎疾患の場合はアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬、高コレステロール血症が基礎疾患の場合はスタチン、インスリン抵抗性の2型糖尿病にはピオグリタゾンを追加投与することがあります。

 

 

もっとも、基礎疾患のあるNASHへの治療を検討すべき基準としては、

 

(1) BMI≧37(肥満度Ⅲの基準をも超えた肥満です)

 

(2) BMI≧32(肥満度Ⅱの基準を超えた肥満です)で、

 

糖尿病を合併するもの、または他の肥満に起因する合併症を2つ以上ある場合
です。

 

ビタミンEはNASH患者の血液生化学検査のみならず、肝組織も改善することが示されています。しかし、長期の服用によって脳出血や前立腺がんの発症を増加させる可能性があります。


NASH患者の70%に高血圧が合併しています。アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬のロサルタン(ニューロタン®)、テルミサルタン(ミカルディス®)は、安全性の確立した降圧薬であり、肝臓の炎症及び線維化を抑制します。
 

スタチン系薬剤のアトルバスタチン(リピトール®)はNASH患者の血液生化学検査と肝組織を改善させます。
 

ピオグリダゾン(アクトス®)によって脂肪組織のインスリン抵抗性が改善しますが、それは肝細胞の改善とも相関します。

 

ただし、長期投与では、前立腺がん、膵臓がん、体重増加ならびに女性における骨折等の副作用に対する注意が必要です。

第53回日本痛風・尿酸核酸学会総会(小倉・北九州国際会議場)にて正式発表

 

2月13日(木)に、痛風・高尿酸血症の診療のエキスパートとして、上記学会の認定痛風医に認定されました。正式には4月1日から認定医の資格が与えられることになります。

 

 

日本痛風・尿酸核酸学会認定痛風医

 

英語表記:

Board Certified Member of the Japanese Society of Gout and Uric&Nucleic Acids

 

 

認定期間は2020年4月1日から2025年3月31日まで、となります。

 

 

私は、開業医となってから資格取得のための準備をはじめたため、研修指定病院における業績報告等の代わりに筆記試験を受験し合格することが条件でした。

 

幸に試験に合格できましたが、合格後も業績を積み増すことが要件であったため、本年に至ってようやく認定されるに至りました。

 

伝統ある上記学会についてご紹介すると

「本学会は、痛風認定医をはじめとする痛風・高尿酸血症の診療のエキスパートのみならず、尿酸・核酸代謝をキーワードとする分子遺伝学、分子生物学、薬理学、栄養学、内科学、小児科学、腎臓病学、血液病学、泌尿器科学、整形外科学など多くの基礎医学・臨床医学分野の会員が参集し、一会場制で多様性に富む議論が展開されるところが魅力です。」

と総会会長が開催にあたって宣言しているとおりです。

 

食生活の欧米化に伴ってわが国の高尿酸血症患者数は年々増加し、2010年頃は成人男性の20~25%に高尿酸血症が認められ、女性でも5%に上ると報告されていました。

 

そして2016年の国民生活基礎調査で推定された痛風患者数は全国で100万人を超えていました。

 

これに対して、痛風・高尿酸血症の診療のエキスパートであると公認される認定痛風医は、令和2年4月1日の段階で私を含め新たに4名が新規に登録されても全国で55名に過ぎません。

 

このことは、日本全国の痛風・高尿酸血症の患者さんのほとんどが非認定医による診療を受けざるを得ないことを意味します。

 

 

以下が、総会で公表された令和元年度第9回認定痛風医(新規)4名の氏名・勤務先です。

 

No1 飯嶋正広 杉並国際クリニック 院長

 

No2 石井健夫 善仁会 横浜第一病院 副院長 (日本腎臓病学会学術評議員)

 

No3 川口真  防衛医科大学校病院 泌尿器科

 

No4 森田美穂子 福井大学医学部 血液・腫瘍内科 病院助教

 

 

新規認定医4名のうち3名が首都圏に勤務していますが、東京都では私一人のみであることを改めて認識しました。

 

令和2年度は、これまで実績を積み重ねてきた診療守備範囲の中でも、痛風・高尿酸血症を重要な柱の一つとして明確に位置付けて、新たな体制を汲んでいくことを計画しております。

非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD/NASH)肝癌リスク評価

 

非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)において、脂肪肝の診断は超音波画像によって行われてきましたが、軽度の脂肪肝を見逃してしまうという問題点が指摘されています。

 

NAFLDでは、肝線維化が生じやすく、これが発癌や予後と相関するため、とくに高度線維化症例の拾い上げが最も重要な課題です。

 

 

肝障害を指摘された症例、肥満、糖尿病ならびに脂質異常症などの代謝性危険因子を有する症例は、腹部超音波検査(Bモード)を行ないます。

 

そこで脂肪肝の所見が確認された場合には、肝線維化マーカーを評価する必要があります。

 

またBMI高値や糖尿病の合併を契機として超音波検査を用いて肝硬変合併例を発見し、肝癌サーベイランスを行なうことが現時点での肝癌早期診断への方策になります。

 

 

肝臓の線維化マーカーを評価するための基礎データを得るためには、まず血液検査によるスクリーニング(ウイルス性肝疾患、アルコール性肝疾患当を除外)をすると同時に(FIB-4,NFSなど)の評価のための基礎データを確保します。

 

FIB-4<1.3、NFS<-1.45は低リスクと考えられるため、採血や画像検査のフォローアップで問題はありません。その他の症例は中・高リスクの可能性があるため、さらなる精密検査を行います。

非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD/NASH)のための健診の意義

 

NAFLD/NASHでは、生活習慣病・肥満の合併が高頻度です。

そして、これにより生活習慣病・肥満に関連する心・脳血管病変合併の危険が増えることが考えられます。

 

そこで、日常診療に際しては、これまで通り、性・年齢等を考慮し、生活習慣病の範疇にある種々の病変にも十分な注意を払うなかで、肝病変への対応を強化していくことを含めて長期にわたる経過観察をしていくことが大切だと考えます。

 

 

健診受診成人において肝障害を呈していた頻度は約30%、性別としては男性40%(30歳代から70歳代まで)、女性では15%(若年層)から約30%(閉経後に急増)とされ、かなりの頻度に登ります。

 

ですから、日頃通院していない方のためには、たとえば区の健診や人間ドックの機会を有効に活用していただくことが大切だと思います。

 

ただし、最近懸念されることは、健診や人間ドックを収益を上げるための効率的ビジネスとする一方で、最も重要で専門性と手間暇のかかる結果の説明やフォローアップの部分を臨床現場の担当医に無報酬で丸投げして事足れり、としている実施機関が少なくないことです。

 

私は現在の自動化健診は医師不在の無責任システムと化しているのではないかと残念に思っております。

 

 

さて、区の健診には超音波検査までは含まれていませんが、肝臓のためには不可欠です。

 

超音波検査による健診では、NAFLDの診断がついた頻度は、男性で20.8%、女性で12.8%であったという信頼性の高い報告があります。

 

 

それでは、どのようにして非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD/NASH)を拾い上げていけばよいかということになります。

 

NAFLD/NASHは、肥満との関係が極めて強いことが報告されているので、最も初歩的で簡便な方法は、身体計測です。腹囲の計測からはじめて、体重と身長をもとにBMIを算出してみることです。

 

そして肥満はメタボリックシンドロームの最も重要な危険因子とされます。腹囲は内臓脂肪蓄積を反映し、内臓肥満とNAFLD/NASHの頻度は強い相関がみられます。

 

また、BMI30㎏/m²以上の高度肥満者(肥満度Ⅱ以上)では約80%がNAFLD/NASHを合併しているとの報告があります。

 

 

杉並国際クリニックでは、概ね3カ月に1回程度のフィットネスチェック(体組成・体力測定票)を行っています。

 

これは非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD/NASH)の早期発見のためにも有用性が極めて高いことを自負しています。

 

本日の冒頭で、NAFLD/NASHでは、生活習慣病・肥満の合併が高頻度であって、生活習慣病・肥満に関連する心・脳血管病変合併の危険が増えることを紹介しましたが、これらの基本的なリスク因子の評価を統合的にスクリーニングできるからです。

 

非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD/NASH)のための健診結果をより有効に評価するためにも、こうしたフィットネスチェックをスポーツジム等に任せずに、医療機関が医学的な側面からきちんと捉えなおして他の医学データと総合的に組み合わせて評価・診断することが望ましいという信念から、今後も積極的に推進していきたいと考えております。

 

新型コロナウイルス(2019-nCoV)感染患者の臨床症状について、健康人集団や武漢以外の患者について、はじめて、まとまった報告が北京からなされました。

 

中国・北京の中国人民解放軍総医院のDe Chang氏らは、北京市内の病院に入院し2019-nCoV感染が確認された13例の初期の臨床的特徴を、JAMA誌オンライン版2020年2月7日号のリサーチレターに報告しました。
 

 

対象:

著者らは、中国の首都北京にある3つの病院に2020年1月16~29日に入院した患者(北京清華長庚医院8例、首都医科大学附属北京安貞医院4例、中国人民解放軍総医院1例)を、2月4日まで調査しました。

 

調査方法:

2019-nCoV感染の可能性がある患者は入院・隔離し、咽頭スワブのサンプルを収集して中国疾病管理予防センターで2019-nCoVについて定量的PCRアッセイを用いて調べました。また、胸部レントゲンもしくは胸部CT検査を実施しました。

 

調査結果:
診断された患者は専門病院に移送されました。
 

主な疫学的・臨床的特徴は以下のとおりです。

 

・患者の年齢中央値は34歳(25〜75パーセンタイル:34〜48歳)

 

1)2例が小児(2歳および15歳)で、10例(77%)が男性

 

2)12例は武漢を訪れた家族(両親と息子)や、2019-nCoVの流行発生後に武漢を訪問3)小児(2歳)の祖父母などで、1例は武漢との関連が不明であった。

最年少患者(2歳)は発熱が1週間断続的に続き、2019-nCoV診断前の13日間、咳が持続していた。

C反応性タンパク質などの炎症マーカーが上昇し、リンパ球数がわずかに上昇した。

 

4)12例は入院前から発熱(平均1.6日)がみられた。

・症状は、咳嗽(46.2%)、上気道うっ血(61.5%)、筋肉痛(23.1%)、頭痛(23.1%)などがみられた。

 

・専門病院に移送されるまで(平均2日)に呼吸補助を必要とする患者はいなかった。

 

・4例が胸部レントゲン、9例が胸部CT検査を実施した。5枚の画像で浸潤影も瘢痕像も認められなかった。胸部レントゲン写真の1枚で、左下肺に陰影が散在していた。6例で、右肺または両肺にスリガラス状陰影がみられた。

 

・2月4日時点ですべての患者が回復したが、12例はまだ病院で隔離されていた。

 

 

考察:
今回調査した患者のほとんどは、武漢を訪問もしくは武漢から来た人と濃厚接触していたが、1例は当てはまらないことから、著者らは「北京でのウイルス感染が活発である可能性を示唆している」という。


また、患者のほとんどが健康成人で、50歳以上と5歳未満の患者は1例ずつのみであったが、著者らは「小児や高齢者のウイルス感受性が低いからではなく、これらの人々は旅行することが限られているためではないか」と推測している。

 

 

杉並国際クリニックの見解

北京からのリポートは、北京市内の複数の国際水準の医療機関からの具体的報告であり信頼性があるものと思われました。

北京での新型コロナウイルス感染は、すでに活発であり、今後も当面の間は、感染者が増え続けるであろうと推定されます。

 

感染者の症状は、インフルエンザ様であるが、通常のインフルエンザより症状が重く、しかも発熱や咳などの症状が長引き回復までの日数が長い傾向にあることがうかがわれます。
 

日本の一般の医療機関では2019-nCoV感染の可能性がある患者は入院・隔離せず、咽頭スワブのサンプルを収集するところまでは可能です。

しかし、これは感染のリスクを増やすだけであり、しかも、そのリスクを冒して得た検体を直ちに受け取って2019-nCoVについて定量的PCRアッセイを用いて調べてくれる専門の検査センターがありません。

また、日本では保険医療制度が完備していますが、この検査は、保険収載されていないため、患者さんから実費を徴収せざるを得ませんが、どのくらいの検査コストがかかるかも明らかにされていない状況です。

 

つまり、外来診療での検査実施は事実上困難であるということを承知しておくべきでしょう。

もはや「保険証一枚で、いつでも、どこでも、国内での必要な医療が受けられる」というのは、もはや国民の勝手な幻想に過ぎないということになります。

 

画像検査としては、まずは胸部レントゲンでしょう。報告された所見から想定されるのは、急性間質性肺炎類似の所見のようです。

 

北京で2019-nCoV感染の可能性がある患者は入院・隔離していることは、とても重要なことです。

これに対して「軽症の場合は、すべての医療機関で対応」という日本での国策に基づく指針は無責任極まりない勧告である、ということは、この報告から考えても明らかではないでしょうか。

私たちは、独自の対策を講じていかなければならないと考えます。

 

 

原著論文: Chang, et al. JAMA. 2020 Feb 7.[Epub ahead of print]

【日本感染症学会・日本環境感染学会から】

 

新型コロナウイルス(2019-nCoV)感染症は、現時点ではまだパンデミックではなくエピデミックとされています。

 

現在は湖北省からの渡航者の入国を拒否しています。しかし、それ以前に多数の入国者がいたことから、既に日本国内に2019-nCoVが入り込み、市中において散発的な流行が発生し、また感染者の症例数の増加に伴い重症例が増えるであろうことをあらかじめ想定して備えておく必要があります。

 

しかし、世界保健機関(WHO)のSylvie Briand氏は「根拠のない情報が大量に拡散するインフォデミックが起きている」と指摘しています。また、国の機関である国立国際医療研究センターも政策的な配慮を加えた見通しを立てている可能性が否定できません。

 

こうした状況では2019-nCovというウイルス感染症をより冷静に客観的に捉えられるはずの専門家の提言が重要になります。そこで、日本感染症学会と日本環境感染学会が2月3日に公表した「一般診療として患者を診られる方々へ」を紹介します。

 

日本感染症学会と日本環境感染学会は、一般診療として診察に当たる医療従事者における対策の在り方について提言していますので、その概要を列記します。

  • 2019-nCoVの感染性は、基本再生産数推定1.5〜2.5
  • 感染性・病原性はインフルエンザ相当か、やや強い程度と推察
  • 患者家族、担当する看護師/医師における感染例の報告は今のところない
  • 基礎疾患のある人や高齢者における肺炎合併、重症化に要注意
  • 他の入院患者などへの伝播の可能性を可能な限り低減させる。

 

医療従事者の安全を守るなどの観点から、飛沫などの発生が予想される診察時に

 

N95マスクの使用を考慮するなどの方策は否定しない

  • 日本国内で分離された2019-nCovは、中国での初期ウイルスと99.9%の相同性が保持されており、遺伝子変異は起きていない。

現時点では過度に心配する必要はない

  • 中国以外での感染報告例のほとんどは、中国(多くが武漢市)からの旅行者
  • 輸入国における二次感染例/重症例の報告はほとんどない.
  • 武漢市に死亡者が集中している理由は明らかではない.

しかし、医療機関への受診の遅れ高齢者や免疫不全者における感染例の増加二次性の細菌性肺炎の合併などが考えられる

 

  •  現時点での死亡率は約2%とされている。

しかし、多数の検査未実施患者の存在を考えると、今後さらに低下する可能性がある

  • 高齢者における感染例の集積があり、小児における重症例が少ない
  • 日本の長期療養型施設における高齢者はさまざまな基礎疾患を有し、

インフルエンザやノロウイルス、メタニューモウイルスに対する感受性が高い

  • 高齢者施設で流行しないよう、細心の注意を払って対応する必要がある
  • 発熱に加えて呼吸器症状が見られた患者は、

速やかに隔離対応を行う必要がある

  • コロナウイルスは、2019-nCoVを含めて主に飛沫感染により伝播する
  • 外来での対応は通常のインフルエンザ疑い患者への対応に準じて、

感染対策の基本は標準予防策飛沫予防策・接触予防策の徹底

特別な治療法はない

  • 治療は脱水に対する補液、解熱剤の使用などの対症療法が中心
  • 抗HIV薬(ロピナビル・リトナビル配合剤)や抗インフルエンザ薬

(ファビピラビル)が有効との意見もあるが、まだ医学的には証明されていない

  • ステロイドなどの使用に関する知見も不十分
  • 国内での2019-nCoVの分離、培養が成功

このことから、将来的なイムノクロマト法による迅速診断法の確立、SARSやMARSを含めたnCoV感染症に対する特異的な治療法の開発が期待される

 

 

杉並国際クリニックの見解:安心できる情報は少なく、不安な情報がほとんどです。

新型コロナウイルスに感染した可能性のある初診患者の受付を制限すること以上に、現在当クリニックに通院中の皆様の安全と健康を確保するための確かな方法は見出せない、ということが判明しました。

 

当クリニックでは、当面の間、国等の機関の勧告より一層慎重な対応を検討することになりそうです。