<はじめに>

 

 

前回は「腹部の膨満感」に効果のあるツボを紹介しました。

 

 

「大腸兪(だいちょうゆ)」は左右の腸骨稜を結んだ線が腰椎と交わるところから指2本分外側にあるというお話でした。

 

 

今回は「胸焼け」に効果のあるツボを紹介しましょう。

 

 

 

<胸焼けに効果のあるツボ>

2020-02-18 16-51

2020-02-19 16-20

 

 

 

「中脘」は お臍から指4本分上にあります。

 

 

「足三里」は膝のお皿の下の外側にあるくぼみから指4本下にあります。

 

 

 

杉並国際クリニック 統合医療部 漢方鍼灸医学科 鍼灸師 坂本光昭

<土曜日特集:統合医学(心身医学・漢方医学)カンファランス>

 

先週に引き続き、新型コロナウイルス肺炎の漢方治療について検討を続けていきます。

 

さて中国当局が推奨している「清肺排毒湯」は以下の21の薬味から構成されています。

 

麻黄 、炙甘草 、杏仁 、生石膏 (先煎)、 桂枝、澤瀉 、猪苓 、白術 、茯苓 、柴胡 、黄芩 、姜半夏 、生姜 、紫菀 、冬花 、射干 、細辛 、 山薬 、枳実 、陳皮 、藿香

 

これらのうち、藿香、射干、紫菀、冬花の4種はわが国の保険調剤では扱われていませんししたがって、以下に再掲する17種の構成生薬について検討を加えてみました。

 

ただし、上記の17種の生薬のうちで、日本での表記と異なる生薬があります。それらを日本での表記に改めると以下のようになります。

 

白術=白朮、生石膏 (先煎)=石膏、姜半夏=半夏

これらの構成生薬の配合を分析してみると、解表剤、和解剤、補気剤、理気剤、利水剤などの効能を併せ持つ処方であると考えられます。

 

これらのうち、今回は、エネルギーを補充して活性化させる(補気作用)ことによって病邪による消耗から守る働きのある補気剤、および滞っていた気を再び活発に巡らせること(理気作用)により効力を発揮する理気剤について解説します。

 

 

杉並国際クリニックの分析

「清肺排毒湯」の構成生薬には、豊富な気剤が含まれています。

気剤には不足した「気=エネルギ」を補う補気剤と、流れが滞って働かなくなった

「気」の流れを整える理気剤があります。

 

まず、「清肺排毒湯」の構成生薬の中から、以下のような補気剤としての組み合わせを抽出することができます。

 

麻黄 、炙甘草 、杏仁 、生石膏 (先煎)、 桂枝、澤瀉 、猪苓 、白術 、茯苓 、柴胡 、黄芩 、姜半夏 、生姜 、細辛 、 山薬 、枳実 、陳皮
啓脾湯加減(そう朮、茯苓、山薬、沢瀉、陳皮、炙甘草)

 

 

また「清肺排毒湯」の構成生薬には、以下のような理気剤としての組み合わせを抽出することができます。

 

麻黄 、炙甘草 、杏仁 、生石膏 (先煎)、 桂枝、澤瀉 、猪苓 、白術 、茯苓 、柴胡 、黄芩 、姜半夏 、生姜 、細辛 、 山薬 、枳実 、陳皮
二陳湯減(半夏、茯苓、陳皮、生姜)

 

以上を元に、わが国で保険処方が可能なエキス製剤を挙げてみます。

 

補気剤 気虚を治す方剤です。

気虚とは一般に機能低下、エネルギー不足です。常用される生薬は、人参、黄耆、炙甘草などです。本来の啓脾湯には人参が含まれています。

 

啓脾湯加減(そう朮、茯苓、山薬、沢瀉、陳皮、炙甘草)として
128啓脾湯(そう朮、茯苓、山薬、沢瀉、陳皮、炙甘草
      +人参、蓮肉、山査子)
      適応:胃腸虚弱、慢性胃腸炎、消化不良、下痢
      痩せて、顔色が悪く、食欲がなく、下痢傾向のある方に処方すると元気になります。

理気剤 気の巡りを改善して気滞(エネルギーが滞り、体が重く感じ、気力も低下する状態)を治す方剤です。

 

 

二陳湯減(半夏、茯苓、陳皮、生姜)として
81二陳湯(半夏、茯苓、陳皮、生姜
      +甘草)
      適応:悪心・嘔吐
      厳密には適応外ですが、「胃のもたれ」に良く効きます。

週間<外国語>旅行

 

スペインの有力紙、記録的新聞ABCを読むNo2.

 

スペインのコロナウイルス感染症のトレンド

 

 

前回に引き続き4月7日付のABCを読んでみます。

 

 

La llegada del coronavirus a España

コロナウイルスのスぺインヘの到来

 

 

Con la pandemia generalizada, resulta ya lejano el primer caso en La Gomera, registrado el 31 de enero, y en Palma de Mallorca el 9 de febrero, recuperados antes de la explosión del virus en toda España. Desde el 24 de febrero, con un nuevo caso en Tenerife, los casos se han multiplicado cada día. El 25 ya llegó a la Península, con los primeros casos en Madrid y Cataluña.

パンデミックの世界的拡大に伴い、最初の症例はゴメラでは1月31日にパルマ・デ・マヨルカでは2月9日に記録されましたが、スペイン全土にウイルスが拡散する前にすでに回復しました。2月24日以降、テネリフェでの新たな症例をはじめとして、日ごとに症例数が増加していきました。25日には、マドリッドカタルーニャでの症例がイベリア半島での初のウイルス到来となりました。

 

註:スペイン語原文で、la Penínsulaとあるのは、単に特定の半島を意味する単語であって、イベリアという固有名詞は記載されていません。これは、例えば、日本では「列島激震」などと書いてあれば、わざわざ日本と書かなくても日本列島のことであることは誰にでも了解可能であるのと同様だと思います。上記の文脈からすると、La Gomera、Palma de Mallorca、Tenerifeなどの地名はイベリア半島以外の地方であることになります。私も良く知らないので調べてみました。

すると、カナリア諸島州には、ゴメラという火山島やテネネリフェ島があり、パルマ・デ・マヨルカはバレアレス諸島州の州都で地中海西部のバレアレス諸島マヨルカ島南西部に位置していました。

 

 

Todos eran todavía casos procedentes de pacientes llegados zonas de riesgo, antes de que España fuera un foco por sí sola. La enfermedad pronto dejó de estar bajo control y los casos se contaban por todo el país. Andalucía y Comunidad Valenciana, el 26 de febrero. El 28, también en Aragón y Castilla y León. Al día siguiente, en País Vasco. El 1 de marzo, en Asturias, Cantabria, Castilla-La Mancha, Extremadura y Navarra. Al día siguiente, en La Rioja. Los últimos fueron Galicia, el 4 de marzo, y Murcia, el 8 de marzo.

 

全症例はまだリスク地帯から戻ってきた患者であって、スペイン自体が発生原の一つとなる以前のものでした。この病気は制御によって速やかに終息し、そのことが国全体で報告されました。2月26日にはアンダルシアヴァレンシア自治体で、28日にはまたアラゴンカスティーリャ・レオンにも、その翌日にはバスク地方で、3月1日にはアストリアスカンタブリアカストリア・ラマンチャエクストレマドゥーラナバッラでした。最後は3月4日ガリシア、3月8日のムルシアでした。

 

 

En el siguiente gráfico puedes ver la evolución de la variación diaria del número de casos confirmados, es decir, la diferencia entre el número acumulado de contagiados de un día respecto del anterior. Filtra los datos por comunidad autónoma para conocer las cifras de cada región.

 

以下のグラフ(省略)では以下のグラフ(省略)では、一日ごとに確定した発生数、一日ごとの累計数を前日との違いを示しています。自治体ごとに加工したデータは各地での数値を知るためのものです。

 

 

令和二年度の日本医学会所属各分科会の開催延期の動きから見えてきたこと

 

4月1日から「東京都受動禁煙防止条例」・「改正健康増進法」が全面施行され、決められた場所以外では、喫煙できなくなりました。
喫煙がSARS-V2ウイルスによるCOVID-19の感染性を高め、重症化させていることは、各国からのデータでも明らかになってきました。小池都知事の賢明なる決断を高く評価します!

 

さて、コロナパンデミックは、医学会の開催中止ばかりでなく、専門医制度の運営にも影響を及ぼしはじめました。わたしは、還暦を迎えて後は、新たな専門医資格取得にチャレンジすることは卒業するつもりでいました。最後に、取り残していたのが、『総合内科専門医』です。私の最期の受験のチャンスは、今年の9月13日(日)のはずでした。

 

ところが昨日、以下のメールが届きました。

 

私のようなベテランにとっては、医師としての賞味期限が切れていないかどうかの客観的な指標として、つまり、平たく言えば、ボケ防止策としての受験であるためさほど大きな問題ではないのですが、これからの日本の医学・医療を支えていく優秀な若手医師にとっては大打撃となる可能性があります。彼らの中にはキャリア形成のプランも変更を余儀なくされる方も少なくないことでしょう。日本の医学・医療の根幹をなす保守本流の日本内科学会の専門医試験が丸々1年延期となると、これが大きな前例となって、他の領域の専門医試験も順次延期となってしまうことでしょう。

 

一般の方には、おそらく少しわかりづらい点があるかもしれません。権威のある高度な専門医試験の受験準備をするということは、オリンピックに出場する選手の準備計画にも匹敵するものがあります。日々多忙な診療の隙間時間を見つけて、あるいは、たまの休日などで、相当程度集中的に準備しないとクリアできない試験だからです。確実に合格するためには年齢的にも旬というもの、受験日に合わせての綿密な調整が必要だからです。

 

・・・・・・・・・・・・・

 

飯嶋 正広 様

(このメールは、4月10日までに受験願書をご請求いただきました
先生方全員に一律にお送りしております)
平素よりお世話になっております.
日本内科学会 事務局でございます.
この度、2020年9月13日に実施する予定でありました
第48回総合内科専門医試験につきまして、
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響に伴い、
安全かつ公平な試験の実施見通しが立たないため、
試験実施を【翌年に延期】することといたしました.

 

     ※重要※

翌年に延期した試験に臨む場合は、
・従来どおりの受験コース
・措置的受験コース
・海外の内科専門医資格保持者コース
いずれも必ず【4月30日(当日消印有効)まで】に出願してください.
※既に出願されていらっしゃる先生方におかれましては、
 新たに出願する必要はございません.
※お支払いいただきました受験料は原則翌年に持ち越しさせていただきます.
 但し、延期となりましたため受験を見合わせる方には返金致します.

 

◇お知らせ
 【COVID-19 対応】資格認定試験について(実施時期延期)
 https://www.naika.or.jp/info/2020exam1/

 

なお、試験振替実施日および試験会場につきましては、
決定次第ご案内させていただきます.

 

先生方におかれましては、只今大変な状況下にいらっしゃることと存じますが、今般の状況を鑑み、ご理解のほど何卒宜しくお願い申し上げます.

 

一般社団法人日本内科学会
専門医制度審議会
資格認定試験委員会

 

****************************************
一般社団法人 日本内科学会 事務局 松本 進 拝
※本会事務局も在宅勤務実施中です※
https://www.naika.or.jp/info/20200408/
*****************************************

 


4月から7月までの学会出席はすべて開催側からキャンセル(延期決定のため)となりました。休診とせず、すべて通常通りの診療となります。

 

 

 

4月:学会出席はありません。

 第64回日本リウマチ学会総会およびアニュアル・レクチャー
    ⇒8月に延期

 

5月:学会出席はありません。
 第85回日本温泉気候物理医学会(早大・井深大ホール)
        <温泉療法専門医>としての研修
    ⇒無期延期

 

6月:学会出席はありません。
 第71回日本東洋医学会(仙台国際センター)
⇒2021年8月13日~15日に延期
    <漢方専門医>としての研修

 

 第61回日本心身医学会(札幌コンベンションセンター)
26日(金)・27日(土)
<心療内科指導医・専門医>としての研修
 2020内科生涯教育セミナー(大阪)

28日(日)

 

7月:学会出席はありません。

 

8月:学会出席4件
 第64回日本リウマチ学会アニュアル・レクチャー・コース(京都国際会館)

 

3日(月)
<リウマチ専門医>としての研修
 第64回日本リウマチ学会総会(京都国際会館)

 

4日(火)~6日(木)
<リウマチ専門医>としての研修

 

 第117回日本内科学会(グランドプリンスH新高輪)
7日(金)・8日(土)・9日(日)ただし、LIVE配信
<認定内科医>としての研修

 

 第14回相模原臨床アレルギーセミナー(パシフィコ横浜)
21日(金)・22日(土)・23日(日)
<アレルギー専門医>としての研修

 

9月:学会出席1件
 第69回日本アレルギー学会(京都国際会館)
17日(木)・18日(金)・19日(土)・20(日)
<アレルギー専門医>としての研修

 

10月:学会出席1件
 第25回日本心療内科学会(仙台国際センター)

 

31日(土)
  <心療内科指導医・専門医>としての研修

 

11月:学会出席1件
 第25回日本心療内科学会(仙台国際センター)

 

1日(日)
<心療内科指導医・専門医>としての研修

 

 

さて、私が関与する医学の各学会の開催の延期の連絡が続いているため、今後の学会出張に伴う休診日の変更の見通しをつけることは難しいことを御報告いたしたばかりです。

 

3月はとっくの昔に行き過ぎて、いまは4月の花盛り、の感です。さて例年3月中旬にはベルリンで開催されるドイツ心身医学会も中止であったことを御報告したばかりでしたが、さらに4月10日になって、新たな延期ではなく、中止の連絡が入りました。

週間<外国語>旅行

なぜイタリアでの混乱が収まらないのか?No2

 

-イタリア病の病理学と病態生理学- 
 

イタリアは、欧州連合(EU)の加盟国ではギリシャに次いで公的債務の対GDP比が高い国です。<公的債務拡大>それを国家の崩壊のみならず、新型コロナ・パンデミック拡大や高い死亡率にまで直接結びつける政治経済の専門家が少なくないようですが、私はそうした見解は短絡的過ぎると考えています。むしろ、それ以上に問題なのは、イタリアの統治機構の欠陥(病理)と国家機能の混乱・麻痺(病態生理)にあるとみています。
 

そのためには、イタリアの現在の責任政権の歩みを整理し、その病理と病態生理を指摘してみました。
 

2018年3月4日の総選挙にて左派ポピュリズム(大衆迎合)の五つ星運動が大勝し、5月21日に同党は右派ポピュリズムの同盟と共に閣僚評議会(内閣に相当)の議長(首相に相当)として政党に属さない法学者のジュゼッペ・コンテ氏を首相に担ぎ出し、セルジョ・マッタレッラ大統領に推薦し、同月23日に大統領はコンテを首相に指名し、組閣を指示しました。

 

<病態生理:左派と右派の連立の共通基盤が大衆迎合であること>

 

<病理:左右バランスの軸である首相に政党人(政治家)ではなく学者を据えたこと>

 

しかし、経済相候補に立てた欧州懐疑主義のパオロ・サボナ元産業相をマッタレッラ大統領が拒否したため、27日になってコンテはいったん組閣断念を表明したが、サボナを経済相から欧州担当相にスライドさせるなどの妥協が図られ、再びコンテが首相に指名され、6月1日に左右ポピュリズム(大衆迎合)連立政権が発足しました。

 

<病理:大統領が閣僚指名権までも握り、首相は内閣の議長に過ぎず、
首相の権力基盤が不安定であるという統治機構であること。
つまり、合議体である内閣は大統領がデザインした箱庭という枠組みに過ぎないこと>

 

註:

イタリアの大統領はイタリアの国家元首です。概ね象徴的な元首であるとされていますが、議会解散権、首相任命権、軍隊指揮権などの非常時大権(議会や内閣の助言によらずに独自の判断で行使できる権限)を持っているのが特徴的です。
コンテ首相は、就任当初からポピュリストを自任し、緊縮財政に反対する政策を掲げました。これに対して欧州委員会も2018年10月に史上初の加盟国に対する予算案差し戻しによる修正を要求して対峙しました。また、移民・難民に対する受け入れ規制も大幅に強化しました。

 

<病態生理:反EU・欧州懐疑主義の立場で、自らもポピュリストであったこと>

2019年3月、G7で初めて「中国の一帯一路協力の覚書」に調印してアメリカ合衆国やEUの懸念を呼びました。

 

<病態生理:反EU・反米かつ親中路線を打ち立ててしまったこと>

同年4月、EU各国が財政難を背景に受給開始年齢を引き揚げ傾向にある中で、イタリアが単独で年金受給開始年齢引き下げるなど異例の措置をとり、同時期に大規模減税とともに最低限賃金保障制度までも導入しました。しかし、これらの裏付けとなる財源については、制度発足段階では担保されませんでした。

 

<病態生理:不要不急の人気取り政策をとり、財政崩壊を加速させてしまったこと>

そこで同年5月に欧州委員会はイタリアの財政規律違反を認定して「過剰財政赤字是正手続き」(EDP)の開始を勧告しました。これに対してコンテ首相は、安定・成長協定(SGP)を改正すべきと反発していました。

 

<病態生理:EUに対して強気の態度を示していたこと>

結局、同年7月に財政赤字目標の引き下げによりEDPの正式開始は見送られました。
しかし、左右のポピュリストが同居する連立政権内は意見の相違により多くの政策で折り合わず、2019年8月、マッテオ・サルヴィーニ副首相(同盟の党首でもある)は対立激化を理由に早期の解散総選挙を要求しました。コンテはこうした要求を拒否したため、サルヴィーニは連立離脱を表明し、内閣不信任決議案を提出しました。連立相手の五つ星運動はこうした動きを非難し、連立政権が事実上崩壊。8月20日にコンテは首相を辞任すると表明しました。8月29日、‪五つ星運動と中道左派の民主党が連立政権の樹立で合意したことを受けてマッタレッラ大統領はコンテを首相に再指名し、9月5日に第2次コンテ内閣を組閣し、所信表明演説で第1次内閣の欧州懐疑主義の方針を修正してEUとの融和路線を打ち出しました。‬‬‬

 

<病態生理:にわかにEUとの融和路線を打ち出したが、十分な支援を取り付けるまでの信用が得られていないこと>

こうした、国内およびEU内での状況のもとで、コンテ首相は、新型コロナウイルス感染症の流行の際はミラノやベネチアなどの主要都市を封鎖し、イタリア全土に外出禁止令を発動しました。

 

ポピュリズム政権の困る点は、国内での危機管理体制が脆弱になるばかりでなく、国外からの緊急支援が得られにくくなるからることです。
その理由は、目先の利益や利便性、平時での表面的な人気取り政策がすべてに優先してしまうと、国民の勤勉さや謙虚さが後退してしまい、国際協調性や信頼関係が希薄になり、往々にして不要不急の国民ニーズに対する財政支出が増える一方でGDPが伸び悩み、その結果として非常事態に対する備え(医療機関や医療スタッフ、医療技術など)がますます疎かになってしまうからです。


イタリアが、非常事態に対する人的・物的資源やインフラが確保されていたならば、さらに、EU諸国や日米との間の深い信頼関係を維持・発展させていたならば、また、せめて、中国とのリスクの高い関係を結んでいなければ、今回のような最悪の結果を避けることは十分に可能であったと思います。

自己免疫性肝疾患の最近の動向

 

自己免疫性肝疾患の疫学調査では、症例数の増加や自己免疫性肝炎(AIH)、原発性胆汁性胆管炎(PBC)での男性比率の増加が報告されています。

ただし、AIH、PBCの原因はいまだに不明です。

肝臓病は消化器内科領域ですが、肝臓病専門医であっても、病態を深く理解するには免疫学の造詣が深くなければ難しいと思われる疾患です。

リウマチ専門医やアレルギー専門医は臨床医の中では最も専門的に免疫学を勉強している集団なのですが、それでも最先端の基礎理論を理解するのには骨が折れます。

 

専門的な話になりますが、AIHにおいては、肝細胞に対する自己免疫性T細胞の活性化やPD-1等の抑制性共刺激分子、制御性T細胞、Th17細胞ならびにサイトカイン・ケモカインを含む免疫異常が病態形成に重要であることが報告されています。

つまり、免疫異常がもたらす病気だということです。

このAIHでは目下、重症度判定の見直し、薬物性肝障害との鑑別も含め、非定型例の診断法の確立が急務のようです。治療法としては、公知申請により、プリン代謝拮抗薬に分類される免疫抑制薬アザチオプリン(イムラン®、アザニン®)が保険適応となりました。

ただし、再燃例では本剤は適応になっておらず、また重症例に対する治療指針の策定も求められているところです。

 

さて、AIHとの鑑別が難しいことが課題となっている薬剤性肝障害は薬物性肝障害ともいいます。その大部分は服用前の予測が難しいアレルギー性です。

アセトアミノフェンは中毒性肝障害の代表例であり、用量依存性に肝毒性を来します。自己免疫性肝炎(AIH)の診断が難しいとされる理由の一つは、鑑別疾患である薬剤性肝障害の診断が難しいからです。

逆に薬剤性肝障害を考慮するためには、①肝障害患者であること、②飲酒歴を聴取してアルコール性肝障害を否定できること、③肝炎ウイルスマーカーが陰性でウイルス性肝炎を否定できること、④超音波など画像診断や血清生化学データで閉塞性黄疸を否定できること、最後に⑤自己免疫性肝障害を否定できること等、が必要となります。

 

好酸球の増加(6%以上)を認めれば薬剤性肝障害を疑います。また除外診断等で薬剤性肝障害考慮するならば、服用中のすべての薬を原因として疑うことになります。

発症は服用開始後5~90日の場合が多いですが、それより長期でも否定できません。服用中は定期的な肝機能のチェックが望ましいとされます。

このように薬剤性肝障害の治療の基本は原因薬物の中止ですが、経過によっては肝庇護剤、ステロイドなどが使われます。

 

ところでAIHの治療薬であるアザチオプリンは、抗がん剤(6-MP:メルカプトプリン)のプロドラッグ(体内で代謝されてから作用を及ぼすタイプの効力の高い薬)です。

従来からの適応は

❶ 移植時拒絶反応抑制(ⓐ腎移植、ⓑ肝・心・肺移植)、

❷ ステロイド依存性のクローン病の寛解導入および寛解維持ならびにステロイド依存性の潰瘍性大腸炎の寛解維持、

❸ 治療抵抗性の次のリウマチ性疾患:全身性血管炎(顕微鏡的多発血管炎、多発血管炎性肉芽腫症、結節性多発動脈炎、)好酸球性多発血管炎性肉芽腫症、高安動脈炎等)、全身性エリテマトーデス、多発性筋炎、皮膚筋炎、強皮症、混合性結合組織病、および難治性リウマチ性疾患…これらの疾患群はリウマチ・膠原病専門医の担当領域です。

 

他方、PBCの胆管障害については、自己免疫を起点に獲得免疫が加わり、胆管障害が進展すると考えられています。

さらに、胆管細胞の細胞内HCO₃⁻と細胞外Cl⁻の交換を担う陰イオン交換因子2の発現低下やオートファジーの異常も注目されています。

本邦では治療において胆汁酸利胆薬であるウルソデオキシコール酸:UDCA(ウルソ®)とフィブラート系脂質異常症治療薬であるベザフィブラート(ベザトールSR®)の併用治療が長期予後を改善する報告がされました。

 

ウルソデオキシコール酸(UDCA)の適応は

❶ 胆道系疾患・胆汁うっ滞を伴なう肝疾患の利胆.小腸切除後遺症、炎症性小腸疾患の消化不良、慢性肝疾患における肝機能改善

❷ 外殻石灰化を認めないコレステロール系胆石熔解 

❸ 原発性胆汁性肝硬変・C型慢性疾患における肝機能改善…

 

PBCは、原発性硬化性胆管炎(PSC)と同様に慢性肝内胆汁うっ滞性疾患としてウルソデオキシコール酸(UDCA)を治療薬として用います。

上記のUDCAの適応❸ 原発性胆汁性肝硬変は、原発性硬化性胆管炎(PSC)の旧称ですが、改訂されていません。

症例数が増え早期発見が可能になるにつれて「肝硬変」を伴うような進行例の割合が減少したために名称から「肝硬変」がはずされました。

そしてPSCは肝内外の胆管に線維性狭窄を来す進行性の慢性炎症性疾患であるため、「硬化性胆管炎」に改称されたんものです。

ベザフィブラートは家族性を含む高脂血症に適応がある薬剤ですが、原発性胆汁性胆管炎は適応外です。

 

 

杉並国際クリニックからのコメント

保険が通るかどうかは開業医にとっては死活問題です。そして豊富な知識や誠意ある診療行為によって、医療経済的には全く理不尽な結果がもたらされることがあります。

 

たとえば、原発性胆汁性胆管炎(PBC)をきちんと診断できるほどの優秀な開業医がいたとしましょう。その研究熱心で患者思いの医師が、原発性胆汁性胆管炎の患者の治療のために、ウルソデオキシコール酸:UDCA(ウルソ®)とフィブラート系脂質異常症治療薬であるベザフィブラート(ベザトールSR®)の併用治療が長期予後を改善する報告を知っていて、同様の処方をしても保険は通りません。その理由は、ベザフィブラートは原発性胆汁性胆管炎には保険適応外だからです。

この場合、その勤勉で優秀な名医は、自分の銀行口座から、その患者さんの薬剤費の保険負担分が引き抜かれます。調剤薬局も患者さんも損失はなく、処方医のみが理不尽な損害を被ることになるのが現実なのです。

 

また、原発性硬化性胆管炎(PSC)をきちんと診断できるほどの開業医がいたとしましょう。その研究熱心で患者思いの医師が、原発性硬化性胆管炎の患者の治療のために、旧名称原発性硬化性胆管炎という病名を記載してルソデオキシコール酸(UDCA)を処方した場合にも保険が通らず上記と同様の損失を被ることがあり得ます。

旧名称の原発性胆汁うっ滞性肝硬変と新名称の原発性硬化性胆管炎が、事実上、同一の疾患であって、医学的には完全に正しい判断で、妥当な処方内容であったとしても、機械的に形式的に査定されてしまいかねないのが、現行の保険医療制度なのです。新しい知識や情報をもつ医師が、かえって損をする構図の一例です。


免疫抑制・化学療法によるB型肝炎の再活性化


膠原病や癌治療では、免疫抑制薬や生物学的製剤、抗がん薬等を使用する頻度が増えています。そのときに、HBs抗原陽性あるいはHBs抗原陰性例の一部において、B型肝炎ウイルス(HBV)再活性化によりB型肝炎が発症し、そのなかには、劇症肝炎となって死に至る症例があるため、注意が必要です。そこで、対象者をどのようにスクリーニングするのか、HBVキャリア及び既感染者であることが判明すればどのように扱えば良いのかについては、正しい知識が不可欠となります。

 

B型肝炎ウイルス(HBV)は全世界に蔓延しており、その感染者は約20億人、わが国でも1,000万人以上と推定されます。そのうち、HBs抗原陽性キャリアは10%程度、また既往感染例(HBs抗原陰性、HBc抗体ないしHBs抗体陽性)でも、肝細胞の核内には2本鎖閉鎖環状(ccc)DNAが残存しているので、遺伝子レベルではキャリアと差異はありません。

 

このB型既往感染例を2分類すると、急性肝炎等の一過性感染で臨床的に治癒した症例群とB型キャリアの寛解期でHBs抗原が陰性化した症例群に分けられます。いずれも血清HBV-DNAは未検出で、通常であれば肝炎を発症することはありません。

 

しかし、免疫抑制・化学療法を実施すると、HBV再活性化といってHBV-DNAが検出されるようになり、これが高値になるとde novo B型肝炎という臨床タイプの肝炎が発症します。このタイプの肝炎は重症化しやすく、予後が不良の医原病です。

 

「B型肝炎治療ガイドライン」(日本肝臓学会、2019年)では、HBs抗原陽性キャリアでは、治療前から核酸アナログを投与することを推奨しています。またB型既往感染例は免疫抑制・化学療法を実施する際に、血清HBV-DNAのモニタリングを1~3カ月の間隔で実施し、その量が20IU/mL以上になったら核酸アナログを投与することを推奨しています。

 

厚生労働省研究班の全国調査には、B型既往感染例のみならず、HBs抗原陽性キャリアで、免疫抑制・化学療法が誘因で、急性肝不全を発症した症例が登録されています。

 

従来、HBV再活性化は、リツキシマブを用いた化学療法をはじめとする血液領域でのリスクが高いとされてきました。しかし、2010年以降は、免疫抑制療法が誘因の症例が増加しています。

 

 

杉並国際クリニックからのコメント
  

杉並国際クリニックは、関節リウマチその他の膠原病の症例が多いため、化学療法や免疫抑制薬を使用する頻度が今後も微増傾向となることが予測されます。そのためHBV再活性化予防を徹底し、その際にはガイドラインに則って実施していかなくてはなりません。そこで、その手順のステップについて、より具体的に整理してみたいと思います。
  
  

Step1(スクリーニング):

全例でHBs抗原を検査する。
  

Step2(場合分けによる二次検査):

HBs抗原陽性例⇒HBV DNA定量検査

HBs抗原陰性例⇒HBc抗体、HBs抗体検査
  

Step3(予防的治療):

HBV DNA定量感度以上⇒核酸アナログ製剤投与
HBc抗体またはHBs抗体陽性例⇒HBV DNA定量感度以上⇒速やかに核酸アナログ製剤投与
  
ただし、HBc抗体またはHBs抗体陽性例⇒HBV DNA定量感度以下の場合でも、
DNA定量、肝機能検査を1~3カ月に1回程度モニタリングし、経過中にDNAが検出感度以上になった場合は、核酸アナログ投与を開始します。

<はじめに>

 

 

前回は「吐き気に効果のあるツボ」を紹介しました

 

 

「天枢(てんすう)」は、おへそから指2本分外側にあり、

 

 

「肓兪(こうゆ)」は、おへそから親指に半分ほど外側にあり

 

 

「巨闕(こけつ)」は、みずおちから指3本分下にありるというお話でした。

 

 

今回は「腹部の膨満感」に効果のあるツボを紹介しましょう。

 

 

 

<腹部の膨満感に効果のあるツボ>

2020-02-25 13-40

 

 

「大腸兪(だいちょうゆ)」は左右の腸骨稜を結んだ線が腰椎と交わるところから指2本分外側にあります。

 

 

仰向けに寝てテニスボールで刺激してみましょう。

 

 

腰痛も楽になって一石二鳥ですよ。

 

 

 

杉並国際クリニック 統合医療部 漢方鍼灸医学科 鍼灸師 坂本光昭

ドイツ銀行物語

 

第1話:事始め

COVID-19対策にも熱心に取り組んでいるドイツ企業として、意外にも経営崩壊が取りざたされているドイツ銀行の常識サイトにたどり着きました。

ドイツ銀行(Deutsche Bank AG)の公式サイト

は起業精神を英文でスマートに紹介している他、信頼のイメージを提供しています。

 

この銀行はフランクフルト・アム・マインのメガバンクです。国内大手同様、戦前から監査役を複数の投資先等で兼任させています。

現在はカール・フォン・ロール会長(Karl von Rohr)と、ドイツ銀行生え抜きのクリスティアン・ゼーヴィング社長(Christian Sewing)です。

 

しかし、素人目にはいかにも謹厳実直な金融企業としての印象を与えているこの銀行が、なぜ破綻の憂き目にあっているのかが不思議なので、横道に逸れて少しだけ調査してみることにしました。

すると、ドイツ銀行の歴史は、そのままドイツの歴史の反映であるばかりではなく、そこには国際社会における虚々実々の駆け引きの歴史が展開されていました。

それは極めて狡猾であり、不誠実の極みでさえあることが判明しました。

それと引き換えに、日本の経済人が、自社の発展ばかりでなく、日本の国益や国際経済に対してどれほど誠実に努力してきたのか、わが国の検察官僚がいかに外国の巨悪と勇敢に戦っていたのか、ということまで少しずつ見えてきました。 

 

ドイツのメルケル首相は、この銀行を救済しない旨の意見を表明していました。

今後はどうなるのかわかりません。しかし、もし、ドイツがこの銀行を救済するとしたら、例外的な扱いとなり、これまでドイツを中心とするEU諸国がイタリアやギリシャの銀行に対してとってきた厳しい姿勢に反することになります。

コロナ騒ぎで各国の国境が封鎖されている中にあってEU統合の精神はたちまち崩壊し、相互不信に陥ることになるでしょう。

中国やロシアにとっては、願ったり叶ったり、ということになるでしょう。

 

それではドイツ銀行に関する内外の情報をもとに、独自に企業史として時系列的にまとめてみましたのでご覧ください。

 

 

第2話:ドイツ銀行の19世紀史

ドイツ銀行は中央銀行と誤解されやすいが、ドイツの中央銀行はドイツ連邦銀行です。

ドイツ銀行はニューヨーク証券取引所とフランクフルト証券取引所に上場している市中銀行であり、ドイツ株価指数 (DAX) の採用銘柄でもあります。

 

1870年(明治3年)1月22日、中央集権化されたドイツの資本の海外進出を促進するため、外国貿易に特化した銀行としてベルリンで創業しました。

 

1872年(明治5年)、創業2年後には、早くも初の海外支店を日本の横浜と清国の上海に出しました。

このときの人材は、普仏戦争でパリ割引銀行中国支店から解雇された職員を用いました。(註:清朝末期には、パリの銀行がすでに中国の上海に支店を出していたということです。ロンドンのような欧州の一大金融都市よりも早く、極東に支店を置いたのは、植民地支配構想との関係があるのではないでしょうか?)

 

1873年にロンドン支店も開設しました。

 

1875年、東アジア取引は思ったほどうまくゆかず経営を圧迫し、横浜支店も上海支店も3年で閉鎖し、以後は国内の産業に投資するユニバーサルバンク(銀証非分離)への道を選びました。(註:東アジア取引、とくに中国人との取引の難しさのゆえに、大英帝国は阿片を用いたことが想起されます。)

大不況 (1873年-1896年) 期に国内最大の銀行へ成長しました。

 

1890年アリアンツ(Allianz SE)の創業に参加しました。戦後から日本公共外債引受け大手の一つでした。

アリアンツは、フランクフルト証券取引所上場企業であり、ミュンヘン再保険と双子の関係にある保険会社で、資産運用会社などを傘下に持つ世界有数の金融グループです。

 

まとめ:

ドイツ銀行は創業期から東アジア(中国・日本)に関心がありました。それが戦後に再び深いかかわりをもつようになることを予言しているかのようです。

 

B型肝炎治療の現状

 

HBV感染患者に対する治療の目標は、慢性肝不全の予防と肝癌発生予防です。その目標を達成するために肝炎の活動性と肝線維化進展抑制が図られています。

 

また抗ウイルス治療の長期目標はHBs抗原の消失です。しかし、HBs抗原の消失を達成することは難しく、そのためガイドラインでは、まずALTの持続正常化、HBe抗原の陰性化ならびにおHBV DNAの陰性化を短期目標とし、最終的に長期目標に向かうように設定しています。

 

抗ウイルス療法には大きな変遷があります。1987年に従来型のインターフェロン(IFN)が登場し、2011年にPEGインターフェロンの48週間治療が可能となり、現在では、医療徐盛を2回まで使用して治療を行うことができます。また、核酸アナログに関しては、ラミブジン(2000年)、アデホビル(2004年)、エンテカビル(バラクルード®2006年)、テノホビルDF(TDF:セノゼット®2014年)、テノホビルAF(TAF:ベムリティ®2017年)が使用可能となり、エンテカビル、TDF、TAFが第一選択薬となっています。

 

ガイドラインによる抗ウイルス療法の基本指針としては、慢性肝炎の場合はPEGインターフェロンか核酸アナログ製剤ですが、肝硬変の場合は核酸アナログ製剤となります。しかし、慢性肝炎でのPEGインターフェロンによる治療効果は限定的であり、多彩な副作用や週一回の通院を要するなどの制限があるため、実臨床としては核酸アナログ製剤を用いることが多いようです。

 

杉並国際クリニックからのコメント

B型肝炎のキャリア症例を含め、B型肝炎ウイルス(HBV)感染を発見した場合、杉並国際クリニックでは、どのように、どこまでフォローし、どの段階で肝臓専門医に紹介するかについてまとめてみたいと思います。

 

まず、基本となるのは血液検査でHBVのDNA量を測定することです。HBV DNAが3.3logIU/mLを下回る程度であれば、そのまま経過観察をします。そして「無症候性キャリアの定義」を満たしている場合には、1年に1~2回のフォローをします。ただし、血小板数が減少し15万/μl程度になったら肝臓専門医に紹介するようにしたいと考えています。

 

そして、無症候キャリアであっても、最低限1年に1回以上、超音波検査等でフォローアップする必要があると思います。また、B型肝炎ウイルスには再活性化の問題が議論されていますが、その問題については明日ご紹介します。