今月のテーマ「感染症の最新医療」

 

 

<HIV感染症>

 

 

高額な医療費がかかる治療の医学的適応と患者の経済状況の間で

 

患者と共に悩みながら治療開始・継続を探るのが

 

現代保険医療特有の実情になりつつあります。

 

 

日本でのHIV感染者数は2010年頃からの新規登録患者数はほぼ横ばいです。

 

ただし、未診断の患者は登録患者数の数倍に上ると推定されています。

 

そのためエイズ感染拡大防止のための対策の重要性は増しています。

 

HIV感染患者では心血管疾患・慢性腎臓病の発症率が非感染者より高いことがわかっています。

 

 

近年、レトロウイルス療法の開始基準が早期化しています。

 

CD4陽性リンパ球数が350/μL以下であれば直ちに治療開始しますが、

 

それ以上でも治療開始を推奨されています。

 

 

こうした抗レトロウイルス療法の進歩により、患者の余命が延び、高齢化が進み、

 

そのため慢性疾患(心血管疾患・骨粗しょう症・慢性心疾患・慢性腎臓病など)

 

の増加への対応の必要性も増しています。

 

 

日本のAIDS指標疾患で最も多いのはニューモシスティス肺炎です。

 

感染してから数週間の潜伏期間の後、

 

急性期の症状として発熱・皮疹・咽頭痛・全身性リンパ節腫脹など

 

伝染性単核症様症状を起こすことがあり、HIV感染症を疑う1つのきっかけになります。

 

 

HIV感染症患者と疾患の進行度にしたがって、免疫機能障害の身体障害者手帳が取得可能です。

 

抗レトロウイルス療法の開始基準は早期化しているものの、実際は高額の医療費を賄うため、

 

より等級の高い身体障害者手帳を取得できるまで

 

疾患の進行を待たざるを得ないこともあるそうです。

今月のテーマ「感染症の最新医療」

 

 

コリスチン・カルバペネム耐性腸内細菌科細菌・肺炎球菌多価莢膜抗原ワクチン

 

 

薬剤耐性菌の蔓延地域は世界的に拡大傾向にあり、

 

その拡大防止は国際的な保健衛生上の重要課題となっています。

 

 

○コリスチン

 

ポリペプチド系抗菌薬に属し、グラム陰性菌に広いスペクトラムを持っています。

 

ただし、プロテウス、ブルコルデリア、ビブリオ、カンピロバクタなどには有効性が乏しいです。

 

 

βラクタム系、キノロン系、アミノグリコシド系抗菌薬とは作用機序が異なり、

 

使用頻度が低いことから、多剤耐性菌であっても感受性が保たれることが多いです。

 

 

主に多剤耐性菌(緑膿菌・アシネトバクター)、カルバペネム耐性腸内細菌症で、

 

他に有効な抗菌薬が無い場合の最終手段として用いられます。

 

 

たとえば、ESBL産生菌感染症は、

 

ペニシリン系・セファロスポリン系抗菌薬のほとんどに耐性化しますが、

 

他に耐性がなければカウバペネム系抗菌薬など感受性のある抗菌薬が残っていることが多く、

 

その場合、コリスチンは使用しません。

 

 

注意点は、高頻度で腎機能障害が出現し、投与中の腎機能のモニタリングが必須です。

 

 

また単剤での有効性は低く、

 

内服薬としては吸収率・組織移行率が低く有効な血中濃度に達しにくいことです。

 

 

○カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)

 

5類感染症の全数把握疾患に指定され、全例保健所に報告します。

 

 

腸内細菌(腸内細菌科細菌)とは、グラム陰性桿菌に属し、

 

大腸菌、クレブジエラ菌、赤痢菌、サルモネラの他、

 

主に環境中に存在するエンテロバクタ、セラチアなども含みます。

 

 

広域抗菌薬の乱用が拡大の一因になっています。

 

とくに腸内細菌がカルバペネム系抗菌薬に耐性化すると、βラクタム系抗菌薬もほぼ無効となり、

 

また他の耐性遺伝子を同時に獲得して多剤耐性化し、

 

ニューロキノン系やアミノグリコシド系の抗菌薬の耐性も獲得することが問題になっています。

 

 

とくに大腸菌やクレブジエラなど市中感染症を起こす

 

病原性の高い菌の耐性化することも大きな問題になっています。

 

 

耐性化の機序は、プラスミド上に存在する耐性遺伝子を他の菌から獲得することによります。

 

 

耐性遺伝子の種類はKPC(クレブジエラ・ニューモニアイ・カルバペネメース)型、

 

 

NDM(ニューデリー・メタロβラクタメース)型などが知られています。

今月のテーマ「感染症の最新医療」

 

 

<新興感染症>

 

国内で発生していなくとも、

 

近年世界的に流行地域が拡大している感染症については警戒が必要です。

 

 

今後、とくに東京オリンピックの開催などで海外からの渡航者の増加が予想されるため、

 

感染患者の流入による大流行の予防対策が必要と考えられます。

 

 

専門家でなくとも診断・初期対応についての基礎的知識が必要とされます。

 

 

○デング熱:2014年に60年ぶりで国内流行が確認されました。

 

日本国内に生息するヒトスジシマカが媒介可能です。

 

原因ウイルスはフラビウイルス科に属します。

 

 

症状:発熱・関節痛・頭痛・皮疹

 

経過:多くの場合、自然軽快し、初感染での重症化はまれです。

 

検査:ELISA、HI法などを用いた血清学的診断、抗原蛋白(NS1抗原)の検出、

 

RT-PCRによる遺伝子検出などがあります。血小板減少症がみられます。

 

RT-PCR法や抗原蛋白の検出は発症後1週間程度経過すると感度が著しく低下します。

 

複数回感染すると重症化リスクが高まります。

 

重症デング熱は、血管透過性の亢進による血漿漏出によるショック・DICにより

 

死の転帰をとることもあります。

 

5つの血清型があり、同一の血清型であれば終生免疫が得られます。

 

 

異なる血清型のウイルスでは一過性の免疫しか獲得できないため

 

複数回感染することがあります。

 

 

治療:ウイルスワクチンは開発中です。

 

 

○チクングニア熱:世界的に流行地域が拡大しています。

 

日本国内に生息するネッタイシマカ、ヒトスジシマカが媒介可能です。

 

原因ウイルスはトガウイルス科に属します。

 

症状:発熱・強い関節症状(関節痛/関節腫脹)・頭痛・皮疹

 

経過:多くの場合、自然軽快し、重症化はまれです。

 

急性期症状が改善した後も、数か月間残存することがあります。

 

 

○中東呼吸器症候群(MERS):2012年にサウジアラビアで報告されました。

 

2015年より2類感染症に指定されています。

 

原因ウイルスはMERSコロナウイルス科に属します。

 

詳しい経路は不明。接触・飛沫感染とされ、約1週間の潜伏期間を経て発症します。

 

症状:消化器症状(嘔吐・下痢)が1/3、発熱・咳

 

経過:重症化すると肺炎・腎不全により死亡することもあります(致死率20~40%)。

 

背景:発症者のほとんどが何らかの基礎疾患を有しています。

 

流行の多くは医療施設内で起こっています。

 

予後不良因子:免疫不全、合併症(肥満・糖尿病・心疾患・肺疾患など)、

 

併発する感染症、低アルブミン血症、65歳以上の高齢者など。

 

 

○エボラウイルス感染症:2014年にギニア・リベリア・シエラレオネで大流行

 

1類感染症に指定(指定医療機関のみ入院可能)されています。

 

原因ウイルスはフィロウイルス科に属するエボラウイルス。

 

感染した動物(コウモリ・霊長類など)との接触によりヒトに感染します。

 

ウイルスが含まれている血液などの体液へ直接接触感染とされます。

 

症状:インフルエンザ様症状、消化器症状(嘔吐・下痢)約半数、出血症状は半数以下。

 

経過:進行するとDIC・多臓器不全により死に至ります。

 

予後:致死率は高いが流行ごとに変動し、25~90%。

 

症状:消化器症状(嘔吐・下痢)が1/3、発熱・咳

 

経過:症状が改善した後も精液中にウイルスは長期間残存しており、

 

性行為で完成した事例もあります。

 

重症化すると肺炎・腎不全により死亡することもあります(致死率20~40%)。

 

対策:接触感染対策(感染防御具の正しい着脱)、医療機関内での二次感染予防。

今月のテーマ「感染症の最新医療」

 

<深在性真菌症>

 

 

深在性真菌症は、特に集中治療領域において

 

二次予防(早期診断・早期治療)の必要性が認識されつつあります。

 

 

ただし、早期診断のためには培養検査のみでは感度が十分でないため問題があります。

 

 

真菌感染症:カンジダ、アスペルギルス、ニューモシスチス、クリプトコッカスなど

 

 

アスペルギルス症の分類:

 

1)組織侵入型…侵襲性肺アスペルギルス症

 

2)定着型…肺菌球症、気管支断端アスペルギルス症

 

3)アレルギー型…アレルギー性気管支肺アスペルギルス症

 

血中β-D⁻グルカン:血清中の抗アスペルギルス沈降抗体は、肺アスペルギローマ、

 

ニューモシスチス肺炎では陽性、続発性肺クリㇷ゚トコックス症では陰性です。

 

きのこ類の多量摂取、真菌薬投与、消化管手術などでも上昇します。

 

 

侵襲性肺アスペルギルス症:

 

血液や喀痰培養感度が低いため血清学的検査や画像検査と併せて総合的に診断します。

 

 

クリプトコッカス髄膜炎:

 

血清クリプトコッカス抗原検査は診断において感度・特異度共にすぐれているため有用です。

 

 

カンジダ血症:

 

眼内炎の併発リスクが高いので視覚異常がなくても全例で眼科受診が必要です。

 

 

真菌血症:

 

留置カテーテルが挿入されていると、多くの場合カテーテルに真菌が定着しています。

 

抗真菌薬のみの治療は困難なため、カテーテルを抜去あるいは交換します。

 

今月のテーマ<感染症の特定内科診療>

 

 

「敗血症」

 

 

昨日の<医学クイズ>の正解は、A,B,C,D,Eのすべてです。

 

ただし、Cのみは注意が必要です。

 

Cは「外傷で入院していた小児が、その翌日、麻疹(はしか)を発症した。」

 

でした。これは、少し難しかったかもしれません。

 

感染性の病気に罹ってから症状が出現するまでの期間を潜伏期(せんぷくき)といいますが、

 

麻疹(はしか)の潜伏期が約10日であることを知っていないと判断がむずかしいでしょう。

 

また入院期間を示していないので、正確な判断はできません。

 

仮にこの小児が入院して数日であるとすれば、

 

この小児は「院外」ですでに感染し、それが入院後発症したと考えるべきでしょう。

 

その場合は「市中感染」です。

 

ただし、麻疹そのものは感染力が強いため院内感染の大きな原因の一つになり得ます。

 

 

 

さて、本日のテーマ「敗血症(はいけつしょう)」について説明いたしましょう。

 

 

「敗血症」とは、血液中に細菌が侵入することが原因となります。

 

 

その場合は、血液中より細菌を検出できても、

 

顕著な臨床症状を呈しない場合には「菌血症(きんけつしょう)」と診断されます。

 

 

しかし、それにとどまらず、

 

発熱、ショック、意識障害などの激しい臨床症状を呈することがあります。

 

このような状態を全身性炎症反応症候群といいます。

 

 

このように、菌血症に全身性炎症反応症候群が伴ったものが「敗血症」です。

 

 

これは感染症防御機能が低下している場合に起こりやすいです。

 

 

敗血症は重度になると血圧低下または重要臓器の循環不全に陥り、

 

重症敗血症という状態に進むことがあります。

 

 

こうなると、やがて点滴などの輸液をしても血圧低下を食い止めることができなくなり、

 

これを敗血症性ショックといいます。

 

 

ドクトル飯嶋の亡父は、最終的に敗血症性ショックになりました。

 

 

ドクトル飯嶋は入院先の担当医と協議しながら治療対応し、

 

父の最期を看取ることになりました。

 

 

可能な限り入院生活を送らなくて済むよう、

 

健康管理や通院加療のみで、

 

生き甲斐に満ちた長寿を楽しめるよう、

 

日々の養生と鍛錬に勤しんでいきたいものです。

今月のテーマ<感染症の特定内科診療>

 

 

「院内感染」

 

 

そもそも、「院内感染」とは、

 

病気の治療を受けている病院などの医療施設において、

 

新たに感染症に罹患することをいいます。

 

 

これは「市中感染」と区別されます。

 

 

両者の違いは、「いつどこで」感染したかということです。

 

 

高円寺南診療所は入院施設をもたず外来のみの医療機関です。

 

 

入院施設をもつ医療機関ほどではありませんが、

 

「院内感染」問題は避けて通れない現代医療の問題点です。

 

 

高円寺南診療所では、インフルエンザのワクチン接種を積極的に勧めています。

 

 

まず、予め診療所職員の全員に摂種を済ませてから、一般の患者の皆様の摂種を開始します。

 

インフルエンザで高円寺南診療所を受診される方のほとんどが初診の方で、

 

しかも、そのほとんどがインフルエンザのワクチンを受けていない方です。

 

 

インフルエンザの「院内感染」は可能な限り避けていきたいところです。

 

ですから、患者の皆様にも、繰り返しお勧めしている次第です。

 

 

 

さて、院内感染に関する<医学クイズ>にチャレンジしてください。

 

 

院内感染に該当するものを選んでください。

 

 

A:癌で化学療法中の入院患者が肺炎を併発した。

 

B:院内で多発しているインフルエンザに入院患者が感染した。

 

C:外傷で入院していた小児が、その翌日、麻疹(はしか)を発症した。

 

D:手術を受けた患者の創部(手術によるきずの部分)が化膿した。

 

E:医師が針刺し事故でB型肝炎に罹患した。

 

 

正解と解説は次回<明日>です。

今月のテーマ<呼吸器の特定内科診療>

 

 

慢性閉塞性肺疾患(+肺がん)

 

80代の男性。「痰混じりの咳が出て息苦しい」とのことで長男の嫁に連れられて来院。

 

お話を伺うと、二日前に痰混じりの咳が始まり、

 

だんだん息苦しくなってきたとのことでした。

 

 

すでに20年以上も前から、少し動くと息が苦しくなっていたそうです。

 

 

お耳が遠いせいか、息苦しいとおっしゃる割には大きな声で話をされ意識は清明でした。

 

 

喫煙は50本/日を50年間

 

(⇒ブリンクマン係数=50×50=2,500:最重度の喫煙者、肺癌の可能性あり。)

 

身長165㎝、体重47㎏(BMI=17.3:低栄養)。

 

呼吸数28/分。体温37.8℃。

 

経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)86%(⇒低酸素血症)

 

 

診察所見:頸静脈が怒張、胸郭がビア樽状。

 

両側の胸部に喘鳴(ゼーゼー)と粗い水泡音(プツプツ)を聴取

 

 

胸部レントゲン検査:肺の過膨張、肋間腔の拡大、横隔膜の平低化滴状心

 

(両方の肺が拡張して両側から心臓を圧迫している状態)

 

肺動脈主幹部の拡大、肺の上部の正常の陰影が薄い。

 

心臓の陰影に重なる半円形の異常陰影。

 

 

ただちに、禁煙をおすすめしたところ、

 

「タバコが俺の生き甲斐。患者の生き甲斐を奪わずに治すのが仁術じゃないんすか。

 

まどろっこしい説教はたくさん。すぐになんとかしてくれ。」とおっしゃる。

 

そこで、「わかりました。

 

たしかに、いまから急いでタバコを止める必要はなくなる可能性もあります。

 

その代り、約束していただきたいことが一つだけございます。

 

精密検査が必要ですので、紹介先の病院を直ちに受診してください。」

 

とお答えしました。

 

 

レントゲンの正面のフィルムに部分的に見えた影が、

 

どうも質の悪そうな顔をしていました。

 

すぐに側面像を追加で撮影したかったのですが、

 

正面のフィルムを貸出すことにとどめて、

 

そのあとの検査は紹介先の病院にお願いすることにしました。

 

 

長男の嫁からの報告:「先生からお借りしたフィルムをお返しに参りました。

 

先生が心配されていた通り、義父は、肺がんでした。

 

永年吸っていたタバコのせいで肺気腫がひどくなっていた上に、

 

肺がんにかかり、気管の空気の通りが悪くなったところへ、さらに感染症を併発し、

 

敗血症から多臓器不全を起こして昨夜亡くなりました。」

 

とのご報告でした。

 

 

立て板に水のようなご報告だったので、それとなく伺ってみると、

 

彼女は某大学病院の呼吸器科病棟の看護師長とのことでした。

 

かなり前から、義父を高円寺南診療所に受診させたいと思っていらして、

 

やっと首を縦に振ってくれた矢先の悲しく残念なできごとでした。

 

今月のテーマ<呼吸器の特定内科診療>

 

 

急性呼吸窮迫症候群

 

 

30歳になったばかりビジネスエリートの男性。

 

「息が苦しい」とのことで来院。

 

 

お話を伺うと、「朝出勤時に交通事故に遭い、胸を強く打撲したが、

 

会社に顔を出さなければならないので部下に指示を与えながら、

 

医務室で休んでいました。」とのことでした。

 

 

血圧124/80mmHg、脈拍98/分、脈不整なし。

 

経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)88%(⇒低酸素血症)

 

心電図:異常なし

 

胸部レントゲン検査:骨折なし。左右両側の肺にすりガラスのような影

 

(⇒急性肺傷害、成人呼吸窮迫症候群の疑)。

 

 

臨床判断:まず交通事故による病態を疑い、肋骨骨折などを疑いました。

 

しかし、骨折を認めず、肺の障害を認めました。

 

また、心臓には異常を認めませんでした。

 

緊急の事態であるため、予め手配していた救急病院へ、

 

奥様が運転する自家用車で向かっていただきました。

 

 

後日譚:救急外来に到着するや否や血液の混じった泡状の痰(血性泡沫状喀痰)を吐き、

 

肺挫傷の存在が明らかになったとのことでした。

 

即座に非侵襲的陽圧換気を始め、一命を取り止めたとのことです。

 

その後の経過は不明です。

 

 

今月のテーマ<呼吸器の特定内科診療>

 

 

「気管支喘息重症発作」その3

 

 

救急外来でテオフィリンの急速静脈注射を受けて、気管挿管された例:

 

 

患者Cのメッセージ

 

 

『以前の主治医からアミノフェンを処方されしっかり内服をしていたのに、

 

喘息発作がでたので不信感を覚えました。

 

救急車を呼んで救急外来に到着後、

 

テオフィリンの急速静脈注射を受けました。

 

注射直後から、嘔吐、頭痛、めまい、手の震え、

 

けいれん、不安、興奮などとともに呼吸困難がさらにひどくなって気管挿管され、

 

ひどい目にあいました。もう、医者はまったく信じられません!』

 

 

 

Dr.飯嶋の見立て:気管支喘息+カフェイン中毒+ニコチン中毒

 

(気管支喘息の重症発作で気管挿管や人工呼吸管理が必要になる状態とは、

 

まず低酸素血症による意識消失や呼吸停止など

 

重篤な呼吸障害が起きていれば直ちに挿管します。

 

このケースでは、テオフィリンの急速静脈注射がきっかけになったものと推定されます。)

 

 

Dr.飯嶋のアドバイス:良い医療を受けるためには、確かな信頼関係を築くことが肝要です。

 

救急医療は患者さんばかりでなく、医療従事者も共に極度の緊張状態にあります。

 

普段内服しているお薬等は、きちんと相手方に伝える必要があります。

 

 

またコーヒー日本茶紅茶などのカフェインを含む飲料を多量に飲むと、

 

薬が効きすぎて副作用がおこりやすくなります。

 

カフェイン中毒やテオフィリン、アミノフィリンの内服療法者に、

 

テオフィリンの急速静脈注射をすることは禁忌とされます。

 

 

Dr.飯嶋の手当:禁煙指導、カフェイン摂取制限、吸入ステロイド剤開始

 

患者cの現状レポート

 

『ただでさえ医療不信、医者嫌いの私に、いきなり禁煙はないだろう』

 

と腹が立ったのを覚えています。

 

しかし、最愛の夫から、『その医者(Dr.飯嶋)はきっと本物だ。

 

お前の方が傲慢だ。俺も今日から禁煙する。』と一方的に宣言され、かなり焦りました。

 

『裏切り者』と思いましたが、以来、たばこは夫婦でキッパリやめました。

 

発作が出なくなって3か月ほどたった私の誕生日に、

 

夫が、『お前の喘息、半分は俺のせいだったんだな、許せ。』

 

といって結婚後はじめての誕生日プレゼント、感激しまくりでした。  

今月のテーマ<呼吸器の特定内科診療>

 

「気管支喘息重症発作」その2

 

 

2)吸入ステロイドによる治療が効かなくなって重症化した例:

 

『むしろ、だんだんひどくなってきたので、

 

こちら(高円寺南診療所)を受診しました。』

 

 

Dr.飯嶋の見立て:気管支喘息+COPD(慢性閉塞性肺疾患)

 

Dr.飯嶋のアドヴァイス:気管支喘息だけではなく、

 

長年にわたるたばこの被害を受けているようです。

 

慢性閉塞性肺疾患の治療も同時に行います。

 

温度・湿度が維持され、きれいな空気の環境で

 

定期的な有酸素運動(⇒水氣道など)を始めてみませんか?