昨日に引き続きシンポジウム『睡眠関連障害と全身性疾患をめぐって』のダイジェストです。

 

 

睡眠時には内分泌(ホルモン)や免疫のシステムの変動が激しくなります。

睡眠深度が深くなると脳の活動性亢進がみられるノンレム睡眠(総睡眠時間の85%)と

身体に休息をもたらすレム睡眠(総睡眠時間の15%)という2種類の睡眠がみられます。

 

 

ノンレム睡眠中は、交感神経活性が低下し、副交感神経活性が亢進することで、代謝、血圧、心拍数などが低下し、心血管系において重要な休息時間となります。

この睡眠が量的・質的に障害を受けると高血圧、虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)などを引き起こしやすくなります。

 

これに対してレム睡眠時には自律神経活動の変動が激しく不安定になることに伴い、

呼吸、循環、中枢神経、内分泌代謝機能がよりダイナミックに変化します。

 

 

 

問題となる睡眠不足は量的不足(生体リズムの乱れによる)と

質的不足(睡眠分断と深睡眠の欠落とによる)によっておこります。

 

睡眠の量的不足は免疫機能の変調により炎症をひきおこします。

 

また睡眠の質的不足の代表例が睡眠時無呼吸症候群です。

 

これらは生活習慣病すなわち高血圧、虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)、糖尿病のほか癌、

不安抑うつなどの気分変調などとの関連性までもが注目されています。

有楽町の東京国際フォーラムでの3日間のシンポジウムのテーマについて、

最初に私の印象をご報告しましょう。

 

今年の日本内科学会は総合内科や心療内科の方向へのシフトを感じました。

 

 

初日のテーマは『睡眠関連障害と全身性疾患をめぐって』

これは高円寺南診療所開設以来の臨床実践課題にピッタリと重なっています。

 

 

睡眠は生命維持には不可欠で、能動的に引き起こされることがわかってきました。

(昼夜の環境変化など受動的な刺激で睡眠のリズムは影響を受けますが、睡眠現象自体は能動的)

 

そのメカニズムは、恒常性維持【必要睡眠量】や体内時計の機構で説明されています。

しかし、「眠気(ねむけ)」という自覚症状の本体はいぜんとして謎に包まれています。

ただし、眠気は生体防御のために重要な現象であると認識されています。

 

 

不安や緊張が強いストレスフルな状況や躁的興奮状態では

「ねむけ」や「疲労」を感ないまま覚醒し活動し続けます。

 

その異常に気付かないままでいると、睡眠不足が慢性化し、睡眠負債が蓄積し、

慢性疲労や慢性疼痛を引き起こされたと思われる症例は高円寺南診療所では多数経験しています。

 

鍼灸治療・心理療法・薬物療法など治療の種類を問わず、

「ねむけ」や「だるさ」や「疲労」の自覚は心身の緊張緩和(リラックス反応)です。

 

この症状を否定的にとらえてしまうと自然治癒の妨げとなりますが、

肯定的に受け止めて受け入れることが望ましい養生の姿勢であり、治療効果が促進されます。

診療研究 今月は、診療の合間に以下の学会に出席します。

 

第113回日本内科学会(東京フォーラム)15日~17日

 

第60回日本リウマチ学会(パシフィコ横浜)21日~23日

 

日常診療において有益な最新医学情報については、この

「新着情報」にわかりやすく解説して掲載する予定です。