糖尿病診療の最前線………………………………………………………熊本大学 荒木 栄一 招

請講演4.11 時20 分~12 時00 分(40 分) 座長 大阪医科大学 樋口 和秀

 

日本から発信するIBD診療の新たなエビデンス……………東京医科歯科大学 渡辺  守

 

 

炎症性腸疾患(IBD)は、潰瘍性大腸炎クローン病のことです。

 

潰瘍性大腸炎は18万人強、クローン病は4万人強で合わせると22万人を超し、306ある難病の中でも一番患者数が多くなりました。IBDの診断に関する新しい展開として、

 

1)クローン病に対するMRE(MRエンテログラフィ)小腸内視鏡所見の比較論文

現在は日本でしか汎用されていない小腸内視鏡を最大限に活用した研究で、小腸バルーン内視鏡とMRIは、小腸の病変評価および予後評価において同等とするもの

 

2)潰瘍性大腸炎の病状把握には便ヒトヘモグロビン定量(FIT)が有用とする論文

FIT検査は簡便であり、しかも内視鏡による粘膜治癒と相関しているので、実臨床に意義がある検査であるとするもの

 

3)潰瘍性大腸炎に発生する大腸がんは見つけにくいばかりではなく、進行が速く、転移を来しやすい悪性形質を有するため、サーベイランスが不可欠とする調査結果

 

渡辺先生の御発表は、実地臨床家による日常診療というよりは、この分野での研究の国際競争において主導的な地位にあった日本の研究が低迷するなか、若手研究家を大いに鼓舞しようというエネルギーに満ちたものでした。一点だけ確認しておきたいのは便ヒトヘモグロビン定量(FIT)とは、大腸がん検診で使われている便潜血検査との異動です。

 

私と同様に、日常診療に役立つ実務的な情報を期待している多くの参加者は、12時に配給される軽食を受け取るために、さっさと講堂を出て長蛇の列をなしていました。これこそ、まさに日本の内科医の知られざる実像、昼食からしてエコノミークラスです。おそらく、皆さんが乗る飛行機の座席もエコノミーでしょう。

 

 

 

一般演題プレナリーセッション 12 時00 分~13 時00 分(60 分) 座長 札幌医科大学 高橋 弘毅

 

1.長期化学療法時におけるdenovo B型肝炎の再活性化… (演題番号177)……………九州がんセンター 杉本 理恵

 

固形腫瘍の治療中のB型肝炎再出現率は約4%でした。

再活性化率は長期的には上昇 HBVDNA出現時期が早いものほど治療が必要になります。

再活性化時期は消化管がんで早いです。

 

癌患者のB型肝炎の自然史を長期に亘って観察する貴重な研究だと思いました。

 

 

2.2 型糖尿病に合併した骨折リスクの予測因子と治療による影響の検討: J-DOIT3 試験の有害事象データから(演題番号233)…………東京大学 笹子 敬洋

 

2型糖尿病の合併症の一つに骨折があります。ところが骨密度は2型糖尿病では必ずしも低下しません。骨折予測因子:女性のハザード比は男性の約2倍以上。女性においてはFRAXスコアが骨折リスクの予測因子となります。ピオグリダゾン誘導体は糖尿病女性の骨折リスクを上昇させます。1年時点でのピオグリダゾン投与、血糖降下薬の選択に有用。

 

糖尿病も骨折リスクも高円寺南診療所では毎日のテーマです。糖尿病の女性に処方する経口血糖降下剤も骨折リスクを考慮して選択しなければならない、という情報は貴重です。骨折予測のため、糖尿病の女性では骨密度測定は役に立たず、FRAXスコアを検討することは意味がありそうなので、勉強をはじめたいところです。いずれにしても、少々頭が混乱してきたので、この発表内容を再度検討してみる必要がありそうです。

 

 

3.本邦におけるErdheim-Chester病に関する疫学研究… (演題番号278)… …………………………………………………東京大学 小倉 瑞生

 

すでに診断基準が提唱されている。指定難病になっていない。

 

ECD LCHの類縁疾患、組織球が全身の諸臓器に浸潤

 

画像:骨シンチ、CD

 

治療:ステロイド、放射線療法

 

5年生存率71%、骨病変は85%

 

飯嶋博士も初耳の病名!?聴いたことのない病名。それもそのはず。非常に稀な病気で報告例は世界で81例。高円寺南診療所で100年臨床を続けたとしても遭遇することは、まずないでしょう。

 

さすがは東大のアカデミズム。稀少疾患に苦しむ患者を見捨てずにきちんと研究しています。

 

そういえば、私の東大での博士論文も先天性無痛無汗症という希少疾患でした。

 

希少疾患を徹底的に勉強すると、大多数の意味が見えてきます。例外を見つめると原則が見えてくるのです。

 

たとえば痛みを感じないということはどういうことなのかを、そうした患者さんに直に接することによって、初めて痛みの意味や役割がわかってきたように思われました。

 

そういえば医師ではない研究者(痛みの計測器の開発者)が私に向かって

「痛みが無い病気なんか、痛みで苦しむ患者に比べれば、大した問題ではない。」

という発言をしたことは今でも忘れられません。

 

実臨床を知らない人間の愚かな発言ですが、この方の臨床的センスは素人以下だと思いました。僭越なる愚人です。

 

 

4.超音波検査での線維束性収縮の頻度観察による筋萎縮性側索硬化症(ALS)の 進行速度予測(演題番号284)………………国立病院機構兵庫中央病院 藤堂 紘行

 

確立した根治療法なし。進行予測は重要だが困難

 

線維束性収縮は下位運動ニューロン障害の特徴、頻度

 

17MHzプローブBモード、上腕二頭筋、前脛骨筋で観察。超音波動画。これは表在エコー

 

線維束性収縮の頻度は、予後予測に有用だが、不可欠ではないが、高頻度ほど進行が早く予後が不良。

 

 

5.関節リウマチ患者において喫煙はTNF阻害剤の効果を減弱させる: TNFαと喫煙(AhR)シグナルのクロストーク(演題番号304)……………大阪南医療センター 葛谷 憲太郎

 

生物学的製剤の課題:中断理湯20%が効果不十分・無効

 

その理由の一つが喫煙、喫煙習慣はTNF阻害薬の効果を低下させる

 

喫煙物質によるNF-kBの活性化と炎症性サイトカイン(IL-6)濃度の上昇

 

TNFαと喫煙(AhR)シグナルのクロストークがみられた。

医学の根本は内科学にありますが、凄まじい進歩に、本日も驚くばかりでした。

 

これに対して外科も不滅であるとは思いますが、かつて外科医が担当していた領域を、内科医がどんどん開拓して素晴らしい成果を挙げています。

 

その代表がカテーテルや腹腔鏡による手術です。

 

内科の守備範囲は、とどまることなく拡張し、膨張を続けています。

 

 

それだけに最先端の医学を現場の医療に活かすことは、やはり簡単なことではないです。

 

しかし、本日も来週からの診療に直接役立つ大きな収穫が得られました。

 

 

先月、例年通り2週間の中欧研修を貫徹しましたが、そこで大いに集中力が鍛えられた模様です。

 

日本内科学会は、すべて日本語によるレクチャーと発表なので、連動しないと考えていましたが、そうではないようです。

 

もっとも、医学の世界、とりわけもっとも理屈っぽい内科理論は、日常の日本語とは言い難く、一種の外国語であるといっても良いかもしれません。日本語で議論する方がややこしく感じることがあるくらいです。

 

 

以下は、講義ノートのようなものですが、一般の皆様にも理解し易いように書き改めています。私の感想や思い付きは朱書きとしました

 

今回は、最後の教育講演11~13を除いて、一通り復習してコメントを加えました。

 

教育講演11~13を含め、記録が不十分なレクチャーは、今後、逐次、各領域の「最新の臨床医学」で報告と解説を試みたいと思います。

 

 

第2 日 ―平成30 年4 月14 日(

講演会場(京都市勧業館(みやこめっせ)第3 展示場)

 

シンポジウム2.9 時00 分~11 時00 分(120 分) 循環器領域におけるCatheter based therapyの現状 ………司会 榊原記念病院 住吉 徹哉・大阪府済生会富田林病院/近畿大学 宮崎 俊一

 

1.冠動脈疾患に対するカテーテル治療の現状と今後… …………東邦大学 中村 正人

 

冠動脈疾患に対して、心臓外科的な血行再建ありきの時代が終焉し、個別化時代へと突入しました。

 

循環器内科では経皮的冠動脈形成術(PTCA)、なかでも薬剤溶出性ステント(DES)の登場により、冠動脈インターベンション(PCI)のアキレス腱とも称された再狭窄の問題解決に向けて大きく前進しました。

 

 

学会2日目の最初のレクチャーは、中村先生の動画のインパクトで、私の脳は完全に覚醒状態になりました。

 

しかし、新しい技術の弱点は短期的な成績を向上させても、それが必ずしも長期成績を約束するものではないことです。

 

医療コストも問題です。つまり、長期予後や患者の幸福度についてどれだけ貢献できるか、ということの検討が必要だと思います

 

 

2.大動脈弁狭窄症に対するTAVIの現状と課題… …………榊原記念病院 桃原 哲也

 

経カテーテル大動脈弁植込術(TAVI)は、術後30日死亡率が約1.5%であり、日本での成績は世界のトップクラスです。2013年から保険償還されています。

 

しかし、これは完璧な治療ではなく、植込み特有の合併症やアクセスサイトの血管損傷等が課題です。

 

低侵襲であり、数日で退院できるというメリットがあるが、超高齢社会にあって認知症やフレイルが進行しているケースでの対応など、適切な適応とコスト面についてどのように考えるか等の課題が残っています。

 

 

桃原先生は、最新技術に対してメリットとデメリットや限界、課題についても考察されていました。

 

最新医療技術に対して望ましい公平な態度だと思いました。

 

 

高円寺南診療所の役割は、最先端の医療技術の進歩を見守りつつ、可能な限り、そのような技術の恩恵に頼らなくてよいような日常の健康維持増進を図るための工夫と努力を継続することだと考えました。

 

「医療が進歩しているのだから、予防にこだわらずに、好き勝手な生活を送っていても何とかなる」と考える人が増えていくとしたら、間違いなく日本の医療は崩壊するでしょう。

 

 

3.僧帽弁閉鎖不全症に対するカテーテル治療… … 国立循環器病研究センター 安田  聡

 

僧房弁閉鎖不全(MR)は、心臓弁膜症で最も頻度の高い疾患で、日本での患者数は80~100万人と推定されます。

 

症候性重症MRには手術が推奨されますが、手術リスクが高い等の理由では手術は行われていません。近年では、クリップによる経皮的カテーテル修復術(TMVRe)が開発され、より多くの患者で治療が可能となり、心不全の新たな治療選択として注目されています。

 

一方、クリップによるTMVRe治療では、弁輪形成術を行えないため、MR再発の要因ともされています。僧房弁の弁輪拡大、弁尖を牽引する腱索や左心室乳頭筋などの損傷がある場合など、適応とはならないケースもあります。

 

僧房弁閉鎖不全(MR)が最も頻度の高い弁膜症であることから、改めて心臓超音波検査の活用の重要性を考えました。

 

高円寺南診療所の超音波診断装置カラードプラー法が使えるので、僧房弁輪の計測のみならず、僧房弁閉鎖不全に特有の逆流の評価など、これまで以上に丁寧に観察することができます。

 

それによって、より早い段階で、僧房弁機能や無症候性心不全(ステージA・B)の診断をすることにより、これまで以上に早期介入をはかりたいと思います。

 

 

4.New Deviceによる心房細動治療の進歩………………………京都大学 静田  聡 教育講演8.11 時00 分~11 時20 分(20 分) 座長 富山大学 戸邉 一之

 

肺静脈を標的とした心房細動に対する最初のカテーテル・アブレーション(フランス、1998)以来、心房細動発生の原因のほとんどが肺静脈内の袖状心筋からの異所性興奮であることが明らかになってきました。

 

その後、肺静脈と左心房の接合部を全周性に焼却することによる肺静脈隔離術が心房細動根治のための標準術式になりました。

 

静田先生は、最近の技術革新について興味深いレクチャーをしてくれました。

 

心房細動に対して、高円寺南診療所としても新たな取り組みが必要となってきました。

 

より安全で確実な心房細動根治術を実施できる高度医療機関を都内に複数見出し、必要に応じて適切な時期に紹介できるシステムを構築する準備に取り掛かりたいと思います。

好天に恵まれました。桜も終わってしまったので、未練なく研修ができました。

 

医学の根本は内科学にありますが、凄まじい進歩に驚くばかりです。

 

最先端の医学を現場の医療に活かすことは、簡単なことではないのですが、今回は大きな収穫が得られました。

 

 

以下は、講義ノートのようなものですが、一般の皆様にも理解し易いように書き改めています。私の感想や思い付きは朱書きとしました。

 

 

今回は、シンポジウム1.サルコペニアの科学と臨床を中心に報告します。

 

その他のレクチャーについては、今後、逐次、各領域の「最新の臨床医学」で報告と解説を試みたいと思います。

 

 

第115回日本内科学会総会・講演会 第1日目

 

第1 日 ―平成30 年4 月13 日(金)―

 

講演会場(京都市勧業館(みやこめっせ)第3 展示場)

 

開会の辞…………………………………………………………………………会長 河野 修興

シンポジウム1.9 時00 分~11 時00 分(120 分)

 

サルコペニアの科学と臨床……………………………………司会 名古屋大学 葛谷 雅文

大阪市立大学 平 田 一 人

 

 

サルコペニアとは、「加齢に伴う筋肉量の減少ならびに筋力・身体機能の低下」(Rosenberg)を指します。サルコペニアの存在は、高齢者では「ふらつき」、『転倒』、さらには「フレイル」に密接に関連し、その先には要介護状態が待ち受けています。

 

このようなことが盛んに議論されていますが、薬物療法のみでは解決できないためか、内科学会は具体的な方法論を示せていません。水氣道®は、サルコペニア対策上優れたツールであり、全国的な普及を図る必要があります。

 

サルコペニアの診断は、骨格筋量の低下を必須とし、筋力または歩行速度等の身体機能の低下を合わせ持つことです。また、加齢以外に明らかな原因が無いものを原発性サルコペニア、廃用や疾病起因性(進行した悪性腫瘍や臓器不全等)、低栄養によるものを二次性サルコペニアと分類することが提唱されています。

 

 

1.サルコペニア診療ガイドライン… …………国立長寿医療研究センター 荒井 秀典

 

サルコペニアの新たな診療ガイドラインは、サルコペニアの診断・予防・介入に関する方針を明らかにしました。

 

サルコペニアの定義:「筋量と筋力の進行性かつ全身性の減少に特徴づけられる症候群。

 

身体機能障害、QOL低下、死のリスクを伴うもの」

 

診断手順は、筋量低下、筋力低下、身体機能低下から構成されます。

 

筋量『指輪っかテスト』、握力、歩行速度で診ます。

 

握力はすでに定期的フィットネス検査で実施しています。

 

『指輪っかテスト』は早速、実験してみようと思います。簡便だし、コストがかからないので、だれにでもできます

 

 

筋量を増やすもの:栄養と運動が重要

 

筋量を減らすもの:加齢と炎症

 

危険因子:1)加齢、2)疾病、3)低活動性、4)低栄養

 

70歳までに骨格筋面積は20歳を比較して25~30%、筋力は30~40%減少します。

 

50歳以降、筋肉量は毎年1~2%程度減少します。

 

ですから、高円寺南診療所では、定期的に骨密度と同時に筋肉量を測定しています。

実際にこれを行っている医療機関は全国的にも限られているようです。

 

サルコペニアがあると術後合併症の発症率が3倍、死亡リスクが高くなります。

 

 

腎機能障害・骨粗鬆症

 

予防:1日当たり体重1㎏あたり1g~1.2g以上の蛋白質を摂取、ビタミンDの補給

 

複合的運動:レジスタンス運動・有酸素運動・インターバル運動

 

ロコモ体操(日整会)片足立ち1分間ずつ、かかと挙げ30回/日、ハーフスクワット

 

一日歩行量:8,000歩/日以上

 

治療:運動療法 骨格筋量 最大歩行能力、膝進展能力

 

強度、頻度、期間:週2~3回、1回60~90分、準備体操をきちんと

 

結局、すべての要素が水氣道®に含まれていることを再確認できました。

 

 

 

2.認知症とサルコペニア・フレイル… ……………………………杏林大学 神㟢 恒一

 

フレイルとは、『身体的要因、精神・心理的要因、社会的要因に起因する、要介護状態に至る危険性が高い状態』

 

身体的要因:サルコペニア、精神・心理的要因:認知症とうつ、社会的要因:独居、閉じこもり

 

認知症は症状が重くなるにしたがい、問題が認知機能障害、行動心理症状から身体症状に移行していくことが多いです。認知機能が低下すると、身体的にもフレイルにもなります。

 

フレイルについて、内科学会は盛んに議論し、データを収集し始めています。しかし、フレイル対策の実践については、具体例を示すことに成功していないようです。

 

今後も限りない議論が続き、論文も増えることでしょうが、現場に還元される前に現在の多くの患者さんは寿命が尽きてしまうことでしょう。

 

なぜなら、

①身体的要因であるサルコペニア対策の具体的実践ビジョンが見えてこないこと、

 

②精神・心理的要因について必要性を説きながら、自ら関与しようという内科医は少ないこと、心身医学の専門医、とりわけ心療内科指導医や専門医は、内科学会に出席していても十分貢献できていないこと、

 

③社会的要因に至っては、指摘するにとどまり、社会の役割であって内科医の役割ではないかの如くの認識でしかないこと、

 

私は、議論のための議論、論文業績を増やすために内科学会に出席しているわけではないので、とても歯痒い想いです。具体的な行動こそが肝要なのではないでしょうか。

 

 

水氣道®や聖楽院での『聖楽療法』は、サルコペニア・フレイルに対して具体的な方法を示し、実践を続けています。

 

これを内科学会に認知させるためには、まずは地道なデータを集めるほかありません。

 

そして、心療内科の分科会を内科学会の中に確立することを急がねばならないと思いました。

 

 

 

老年症候群

 

高齢者のQOL,ADLを阻害する大きな要因:

活動性低下⇒閉じこもり・廃用、歩行機能障害⇒転倒・骨折、摂食・嚥下障害⇒低栄養

 

フレイルの評価:Friedの基準(筋量、筋力、歩行機能)

フレイルは老年症候群保有数の増加、転倒発生の増加等とも関連し、認知機能が低下すると、身体的にもフレイルになり、さまざまな点で機能が低下することが判明しました。

 

現在注目されている新しい概念に、コグニティブ・フレイルがあります。

 

これは、『認知症に至らない程度の軽度の認知障害と身体的フレイルが合併した状態』です。

 

単独のフレイルの状態に比べ、より認知症や要介護になりやすい可能性が指摘されています。

 

 

診療所の外来で、水氣道®をお勧めすると、断りの理由として多いのは、

 

1)水が苦手である、2)自宅でストレッチをしている、3)ヨガ(ホットヨガ)をしている、4)まずはウォ―キングから始めたい、5)スポーツジムに通っている、などの回答が多いです。

 

何もしないより、何か体に良いことを始めていただくきっかけとして、水氣道のすすめは、ライフスタイルの改善のための良い機会を提供していると考えています。

 

運動習慣の形成は、具体的で意識的な検討なしには成功しないからです。

 

概ね、3か月に1回実施することを推進しているフィットネス・チェック(体組成・体力テスト)で、成績が向上しているのであれば、どれを選択しても良いと思います。

 

しかし、コグニティブ・フレイルという誰でも陥りやすい状態になることを予防するためには、どれが最も優れているかを、もう一度吟味していただけたらと思います。

 

 

3.呼吸器疾患とサルコペニア・フレイル… ………………………東邦大学 海老原  覚

 

演者の海老原先生は「慢性呼吸器疾患のフレイルは、身体的側面のみならず、精神的・社会的事象が多面的のみならず、精神的・社会的事象が多面的に負のスパイラルを形成しているのが特徴であり、そのようなフレイルには医療・看護・介護が連携したアプローチである包括的呼吸リハビリテーションが有効である」と述べています。

 

また、海老原先生は、呼吸リハビリテーション介入時期について、日本呼吸器学会の「COPD(慢性閉塞性肺疾患)診療と治療のためのガイドライン」の第2版までは、Ⅲ期以降としていたものが、第3版以降はⅠ期からの介入に改められたことを紹介しました。

 

呼吸器疾患では筋量減少が報告されており、身体的フレイルはサルコペニアと密接な関係があります。

 

このサルコペニアに対して、栄養療法と運動療法を組み合わせることが重要です。

 

なお、呼吸器疾患においては、呼吸促迫により、呼吸・嚥下の協調不全が生じ、嚥下障害等の口腔フレイルも問題になっており、低下した呼吸機能に誤嚥が起こると重症化し易く早期に介入することが必要です。

 

そして、海老原先生は、この口腔フレイルでも包括的チームアプローチが重要かつ必須と思われる、と結論付けました。

 

海老原先生の現状分析は概ね了解可能ですが、その方法としての包括的チームアプローチと早期介入は非現実的であると思います。

 

少し考えていただければわかることですが、早期の呼吸器疾患に対する治療アプローチとして、大掛かりな包括的チームアプローチを望む患者さんが存在するでしょうか。

 

そして、保険医療の限界に毎日直面している私としては、そもそも保険医療でこの治療アプローチにかかるコストを賄うことができるとは到底思えません。 

 

さらにいえば、最も重要な前提となる禁煙指導ですら十分に達成できていない包括的チームの存在意義は、残念ながら大きいとは言えません。

 

総論には賛成ですが、各論としてのアプローチの方法が非現実的であると指摘せざるをえません。

 

海老原先生の総論に沿いつつ、実効性と有効性とを兼ね備えているアプローチは水氣道®に他なりません。

 

また、聖楽院の聖楽療法は口腔フレイル対策になります。

 

この問題は、抽象的理論至上主義で具体的実践活動に乏しい内科学会や、施設基準至上主義の総花的リハビリテーション学会の発想では解決できないのではないでしょうか。

 

 

包括的とは技術者の寄せ集めだけでは完成できず、指導力と調整力に優れたリーダーの存在が不可欠だと考えています。

 

 

4.肝疾患とサルコペニア… ……………………………………兵庫医科大学 西口 修平

 

肝臓は分枝鎖アミノ酸を合成し、アンモニアを分解します。したがって、肝疾患では分枝鎖アミノ酸の低下をはじめとする低栄養状態やアンモニア高値をもたらします。

 

アミノ酸は筋肉の蛋白質の構成要素であるため、肝疾患では直接筋肉の減少を誘発します。そこで、肝疾患は二次性サルコペニアの代表とされます。二次性サルコペニアであるため、65歳未満の若年者においても一定の割合でサルコペニアが存在し、これは一次性サルコペアの基準を直接適応することができません。

 

そこで日本肝臓病学会では、「肝疾患におけるサルコペニア判定基準」を作成しました。

 

肝疾患のサルコペイニアの発症機序として、肝硬変特有の病態であるアンモニア高値とL-ロイシン低値が重要であるとします。それらは、ともに筋蛋白の合成を直接的に阻害します。肝疾患に伴うサルコペイニアも、一次性サルコペイニアと同様に食事・運動療法を基本としたうえで、たとえば、アンモニア高値例に対する治療を行います。

 

 

5.高齢者薬物療法とサルコペニア… ………………………………東京大学 秋下 雅弘

 

東大の秋下先生は、「サルコペイニアの管理には、老年医学的視点が必須」と説いていました。

 

老年医学的視点とは、

1)サルコペイニアの多くは生活習慣病等の慢性疾患を背景とすること、

2)合併疾患をどのように管理するかが問題になること、

3) 薬物有害事象と服薬管理への配慮が不可欠であること、

 

これらは、高齢者ではサルコペイニアの問題のみならず多剤併用(ポリファーマシー)となり、有害事象や服薬アドヒランス(きちんと薬を使うこと)低下等の問題を起こしやすいです。多くの薬物がサルコペイニアの原因となります。

 

高齢者の薬物有害事象は、アレルギー症状や薬剤性腎障害・肝障害としてよりも、老年症候群として現れ易いため、薬剤起因性老年症候群と呼ばれています。

 

薬剤起因性老年症候群では、ふらつき・転倒、抑うつ、記憶障害、せん妄、食欲低下、便秘、排尿障害・尿失禁が代表的です。これらの症状は高齢者によくみられる症状であるため、薬剤性とは気付きにくく、発見が遅れることが特徴です。

 

これらのうち、ふらつき・転倒はサルコペイニアの代表的表現型です。

 

その他、抑うつ⇒廃用性萎縮、食欲低下⇒栄養摂取不足⇒サルコペイニア

 

便秘⇒食欲低下⇒サルコペイニア

 

多くの薬物がサルコペイニアの原因となるが、ベンゾジアゼピン系薬物(抗不安薬、睡眠薬)をはじめとする向精神薬、抗コリン系薬物に対する注意が最も重要です。

 

高齢になるにつれて、病気が増えるので、どうしても多剤併用になりがちです。

 

秋下先生が言及していないことで、大切なことがあります。それは多剤併用の背景には、高齢者に限らず、日本では患者さんが窓口となる主治医をもっていない人が多いこともその原因であると考えています。

 

極端にいえば、病気の数ではなく、多彩な症状ごとに個別の医師に診てもらいたがる傾向があるからだと思います。

 

その理由は、極端なブランド志向、専門医志向にあるとも感じています。

 

その結果、多科受診となり、それは多医受診に通じます。また、極端な場合は、誤ったセカンドオピニョンを求める方が少なくありません。

 

お薬についての質問は、そのお薬を処方している医師に直接尋ねて納得することが必要であって、聴きやすいというだけの理由で、別の医師に説明を求めるのは誤りだと思います。

 

それ以上に問題なのは、本来一つの病気であるにもかかわらず、気になる症状ごとに、複数の医師から重複して薬剤を処方して貰っていることを何とも思わないことだと思います。

 

 

ドイツ心身医学会2017(報告)その2

 

 

昨年のドイツ心身医学会2016は、3月16~18日にポツダム大学で行われました。

 

今年のドイツ心身医学会2017は、3月23~25日にベルリン自由大学でした。

 

来年もベルリンで開催され、3月21~23日に決まり、3回目の参加を予定しています。

 

 

日本心療内科学会とドイツ心身医学会は2011年に姉妹関係を締結して以来、

 

毎年、相互の往来があるため、年に2回の国際交流が続き、

 

徐々にその内容が深くなってきていることは頼もしい限りです。

 

 

この臨床領域でも、英語が基幹言語ですが、英語に変換されていない、

 

あるいは変換しづらいドイツ語ならでは活かされている研究業績も少なからずあることに気づきました。

 

 

より良い医療を求めて、日本語や英語だけでは気づけない、

 

さまざまな発想や考え方が、日本の医療の発展と充実のためには必要だと感じました。

 

 

来年も、引き続きドイツ語での発表を継続し、日独学術会議の交流にとどまらず、

 

共通テーマを見出して、共同研究開始の準備をしたいと考えています。

 

 

そして、ドイツとの連携を基に、ヨーロッパ心身医学会会議(EAPM)への参加を検討しています。

 

今年は、スペインのバルセロナで開催されますが、準備不足のため見送ります。

 

 

2018年はイタリアのヴェローナ、

 

2019年はオランダのアムステルダムが開催地として決定しているので、

 

徐々に準備を進めていきたいと思います。

 

 

 

 

<ドイツ語原文の写し>

 

Hans Peter Bilek, Harald Mori

 

Synoptische Psychotherapie

 

<ドイツ語による著者サイン>

Für Dr.Masahiro Iijima,

Mit allen guten Wünsche

Herald Mori

 

<公印>

Dienst Siegel

MFA Medical・Viktor・Frankl・Association・Vienna

 

<手書き日付>

Wien,24.3.2017

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

<英訳>

Hans Peter Bilek, Harald Mori

Synoptic psychotherapy

For Dr.Masahiro Iijima,.

With all good wishes

Herald Mori

 

Official seal  

MFA Medical・Viktor・Frankl・Association・Vienna

 

Vienna,24.3.2017

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

<日本語訳>

ハンス‐ペーター・ビレーク、ハラルド・モリ

心理療法提要

 

飯嶋正広博士のために

ご多幸とともに

ヘラルド・モリ

 

公印 MFA 

ヴィクトル・フランクル・医学協会・ウィーン

 

ウィーン、2017年3月24日

Book サイン

23日(木)

9:00~10:30am (日本時間5:00~6:30pm)

 

Deutsch-Japanisches Symposium(日独交流セッション)

 

発表者は5名

(座長のクロネク医師、アンドレアス医師をはじめ他の2名の日本人医師すべてが英語による発表で、

 

アンカーとして<線維筋痛症の水氣道による著効例>について

 

ネーティブでない私が唯一ドイツ語で発表をしました。

 

 

共同座長のツィップフェル教授は、昨年、日本の水氣道の会員に向けてのメッセージメモを書いてくださった先生です。

 

クロネク医師も、以前からの顔なじみの先生で、日独交流プログラムのバリント・グループセッションのリーダーです。

 

 

ところが、私のところで急にテクニカル・トラブルが生じて、

 

画像が出てこないというアクシデントが生じました。

 

ロスタイムが生じたため、とっさの判断で、起動作業は現地のテクニシャンに任せ、

 

プレゼンテーション用のドイツ語原稿を予定よりだいぶ早口で読み上げることになりました。

 

 

結局、準備してきた画像は全く映し出せないままでした。

 

しかし、幸いなことに、ドイツ人・オーストリア人の医師たちは、私のプレゼン中、

 

熱心に興味深く耳を傾けてくれている様子が直に伝わってきました。

 

精神的にはとても落ち着いて、早口ですがメリハリをつけて話すことができたためか、

 

とても良く理解して貰うことができました。

 

このあたりの感覚は、日頃の声楽コンサートでの経験の積み重ねが活かせたことを実感しました。

 

また、直前までウィーンで夜な夜なドイツ語のオペラを聴いていたことも役にたったような気がします。

 

 

ドイツ語は、とても論理的で明晰な言語のためか、画像が無くても十分にコンセプトとイメージが伝わるようです。

 

<災い転じて福となる>ということがありますが、トラブルが生じたために、

 

かえって確かな実績と評価に繋がりました。

 

 

《ドクター飯嶋のドイツ語は滑らかで音楽的でセンスが良く、とても分かりやすく、しかも説得力があり感銘を受けた》と、

 

読み上げたドイツ語の原稿を祈念に希望するドクターたちに、予備のコピーを含め3部すべてを差し上げてきました。

 

 

その私のドイツ語でのプレゼンがささやかな話題となったようで、

 

5:30pm(日本時間1:30am)から始まったGerman-Japanese Balint 独‐日バリント・セッションは充実しました。

 

ドイツ心身医学会を代表する複数の重鎮、

 

ルクセンブルグ出身でパリで開業しているドクターなど充実した顔ぶれとなりました。

 

このことについては改めてご報告することにします。

20日月曜日。日本では春分の日で祝日ですね。

 

本日の主な課題は、まずは時差調整、昨日までの失敗の克服、

 

①学会準備、②音楽(声楽研修、オペラ鑑賞)です。

 

 

生活リズムは昨日の11:00pm(日本時間7:00am)に覚醒し、順調に研究発表のための準備作業をつづけています。

 

次の課題は、2:00pm(日本時間10:00pm)までの時間帯を活動的に継続し、

 

6:00pm(日本時間2:00am)まで休み、

 

7:00pm(日本時間3:00am)のオペラに間に合わせることです。

 

 

6:00am (日本時間2:00pm) 遅めの昼食の時間帯であることを意識して摂取しました。

 

 

すでに落ち着いた中国語を話しているシニアのカップルが席に着いていました。

 

そこにアジア系のウェイトレスが朝の挨拶がてら話しかけていました。

 

すると、そのカップルは英語で話はじめ香港からの旅行客であり、

 

二人で東欧巡りを楽しんでいるとのことでした。

 

ウェイトレスはフィリピン出身で語学留学の後、現地に職を得て定住していることなどを話していました。

 

このホテルのレストランやバーの職員のおよそ半数はアジア系で、受付は欧州系主体です。

 

日本人の若い女性のいくつかの団体もあり、丁度学年末に相当する時期を利用して、

 

観光、語学研修、音楽留学準備など、いろいろな目的で来ているようでした。

 

 

7:00am (日本時間3:00pm) 食事とシャワー浴、着替え等が済むとこの時間です。

 

欧州では一般にシャワー浴が主ですが、日本ほど入浴の必要性を体感することがありません。

 

ただし、シャワー浴にしろ、バス浴にせよ、水浴行動は食事ほどではありませんが、

 

生活リズムや習慣と密接に連携していることが感じられます。

 

 

学会発表用のパワーポイント用スライドは、視覚的にわかりやすいものになってきました。

 

しかし、発表時に、ドイツ人専門医を前にして、ドイツ語を流暢に話すのは至難の業です。

 

リート(ドイツ歌曲)を歌うときも同様です。

 

 

8:00am(日本時間4:00pm) 好天に恵まれウォーキングで体調を維持すべく、早めにホテルを出立。

 

8:30am(日本時間4:30pm)に音大到着後、キャンパスを歩きながらレッスン曲の暗譜。 

 

10:00am(日本時間6:00pm)に、Visca先生の第2回目のレッスン。

 

ドイツ語は子音の発音の仕方によって意思や感情を豊かに表現できる言語なので、

 

ドイツリートを上手に歌える人は、ドイツ語で効果的なコミュニケーションができる人だと思います。

 

 

私のレッスンの後は、日本人ソプラノで、

 

彼女の出身地と姉妹都市になっているドイツのとある都市でのコンサートにて日本歌曲を歌うのだそうです。

 

幸い私は聴講を許されて、彼女のレッスンを見学することができました。

 

6月にコンサートがあるそうですが、美しい日本語の歌を芸術的な旋律に載せて歌うことは、

 

日本の魅力を海外にアピールするために大きな力になると思いました。

 

 

正午(日本時間8:00pm)音大の門を出ると、若い男性からアンケートを求められました。

 

建築科の学生で、大学に提出するレポートのようです。留学生の多い音大の前に居たのは、

 

外国人からの情報を得ることが目的だったのかもしれません。

 

ウィーンの建築物に対する感想、古い建築と新しい建築のどちらに興味があるか、

 

外観や内装など形態が重要か、生活の至便性や音響・採光など機能が重要か、

 

などかなり真面目な質問項目だったので、協力することにしました。

 

 

最後に、音大の近くにあるらしいウィーン技術博物館(Technisches Museum Wien)の所在を彼に教えて貰いました。

 

交差点を超えてすぐのところに、巨大な博物館がそびえていました。

 

これは素晴らしい高度な展示物が陳列され、

 

しかも見るだけではなく体験型の要素もふんだんに取り入れられ、

 

要所に工夫が凝らされていました。

 

技術博物館とはいっても、楽器や医学関連の技術にもおよび興味深く、期待以上の勉強ができました。

 

 

2:00pm(日本時間10:00pm)ホテルに戻り食事を摂り、仮眠。

 

5:00pm(日本時間1:00am)仮眠より覚醒

 

6:00pm(日本時間2:00am)ホテル出発、国立歌劇場へ。

 

座席は前から4列目、すぐ目の前にオーケストラのピット、

 

楽団員の様子も、舞台の上も良く見える良い席。

 

前の列には日本人の家族、左横にはテキサスから来たという米国人夫妻。

 

開演前の一時、気さくに話しかけてくる体格の良い温厚そうな紳士の言葉がよくわかりませんでした。

 

その理由は、彼がドイツ語で話しているものと思い込んでいたこと、

 

彼の英語は若干テキサス訛があったことだと思います。

 

ただし、そうとわかってしまうと、互いに大いに会話が弾みました。

 

 

彼との体験を通して気づいたことがあります。

 

私がドイツやウィーンでドイツ語で話しかけても聞き返されるのは、

 

相手が私の言葉が英語に違いないと思い込んでいるせいと、

 

もう一つ、ドイツ語の子音をかなり明確に発音しないと、

 

そもそもドイツ語として認知されにくい、ということらしいです。

 

それから、ウィーンの人のドイツ語はかなり早口に感じられます。

 

早口で話さないと、かえって分かりずらいのかもしれません。

 

 

7:00pm(日本時間3:00am)オペラ“アラベッラ”開演

 

10:30pm(日本時間6:30am)ホテルに帰還。学会発表用原稿の読み上げ練習。

 

 

19日日曜日。本日の主な課題は、まずは時差調整、②語学研修です。

 

 午前中は仮眠をとり、午後から活動を開始するはずでしたが、

 

午前9時にホテルまで迎えにきてくれるバスツアーに参加しました。

 

 

ウィーンの森とハイリゲンクロイツ修道院、マイヤーリンク(ハプスブルグ家の狩りの城)、

 

それから欧州最大の地底湖ゼーグロッテ見学です。

 

 

参加者は様々で、現地人ガイドが、ドイツ語、スペイン語、英語の3か国語を

 

一人で駆使して、すべて流暢に解説するのには驚きました。

 

私は、英語の次にはドイツ語が理解しやすいだろうと予想していましたが、

 

ドイツ語だけはとても早口なので、とうていついていけませんでした。

 

ベルリンでの発表がドイツ語なので、少し気になってきましたが、

 

英語の解説の助けがあったためか、スペイン語が分かりやすく感じられたのは不思議でした。

 

 

あいにくの雨天でしたが、地底湖ゼーグロッテ見学も含めて、日照の影響が少ないため時差調整にはもってこいの条件でした。

 

 

ツアー客の中にはイタリア人も混じっていて、

 

たった一人の東洋人の私に、イタリア語で話しかけてくるので驚きました。

 

彼女は、私の顔はイタリア語が理解できる顔だ、というので不思議でした。

 

彼らはおそらく英語やスペイン語を参考にしてガイドの解説を聴いていたのだと思います。

 

私も彼らと同様に、すべての言語の解説を真剣に聞き取ろうとしていた仲間だと感じてくれたのかもしれません。

 

 

午後2時にホテルに到着して、予定通り昼食をとったあと、

 

学会発表用のスライドや口述原稿を再検討し、仕事はとても順調に捗りました。

 

安心したためか、ちょいと一息休憩のつもりが熟睡となり、気がつくと現地時間で11:00pm(日本時間で7:00am)。

 

時差リズム解消のためには概ね成功を収めましたが、

 

楽しみにしていたオペラ観劇<トリスタンとイゾルデ>を無駄にしてしまったのは残念至極でありました。

18日土曜日。本日の主な課題は、②語学(外国文化摂取と国際交流)、

 

③音楽(声楽レッスンおよび演奏鑑賞)

 

現地時間で朝8:15(日本時間4:15pm)に、

 

シェーンブルグ宮殿の見学の受付開始を狙って赴いたのですが、

 

見学客のほとんどが東洋人の団体。

 

それぞれの団体を率いるガイドの解説言語は、中国語、英語、日本語。

 

 

英語ガイドに導かれている東洋人は、私語が少なく、熱心であり、ガイドへの質問も的確なので大いに敬服しました。

 

おそらく、香港、シンガポールやマレーシアあたりの教養のある華僑の集団だったのでしょう。

 

これに対して、中国語のガイドに導かれている東洋人は、

 

人数が多いうえに、耳障りな私語が多く、統制がとれていないので通路を塞いでしまいます。

 

そのため、ガイドの声も、流暢で、決して下品ではないのですが、大声になってしまうので、

 

他の旅行客も困っていました。落ち着いてゆっくり鑑賞することもできませんでした。

 

やむをえず、そこをやっと通り抜けた後が大変でした。

 

たまたま運が悪かったのは、日本人女性たちを率いる男性の日本語ガイドとの遭遇でした。

 

「私はお金をいただいて説明しています。私の解説を聴いているのなら、

 

お金を払ってください。マナーに反します。」と、

 

私は彼の解説を日本語で聞くつもりは毛頭なかったうえ、

 

見知らぬ団体を前に公然と侮辱を受けるはめに陥り、とても心外でした。

 

 

気を取り直し、12:30(日本時間8:15pm)にウィーン国立音楽大学声楽科の教室に到着。

 

4年ぶりでClaudia Visca先生の個人レッスンを受講。

 

以前彼女から伝授された大切なテクニックが、相当錆びついていた模様でした。

 

幸い問題点を一つずつ系統的に調整してくださり、発声が劇的に変化しました。

 

シューベルトの歌曲:春の信仰、とりわけ問題山積で、2回目の課題曲となりました。

 

私の診療も、Visca先生のようでありたいと、つくづく思いました。

 

互いに多忙なため、ウィーン滞在中に1時間のレッスンを2コマのみを予定していましたが、

 

上機嫌のVisca先生は、もう1レッスンを特別に追加してくださいました。

 

 

Visca先生から励ましを受けたあとに向かったのは、16:30(日本時間0:15am)開演の楽友協会の定期演奏会でした。

 

伴奏ピアニストの好意でチケットを譲っていただきました。

 

 

そのあと19:00(日本時間3:00am)開演の国立歌劇場で

 

オペラ<ファウスト>を楽しみにしていましたが、最初と最後の他は、全く夢うつつ状態でした。

 

 

ふだんの日本での生活でも、遅くとも午前5時位までには心身をシャキッとさせていないと、

 

現地到着の翌日のオペラ観劇もままならないことを体験した次第です。

 

飛行機の中では、ウィーンで予定している声楽のレッスン曲を聴きながら、

 

最新の内科学書を読みふけっておりました。

 

エコノミークラスの座席のメリットの一つは、集中力の強化です。

 

中継地のパリ・シャルル・ドゴール空港に到着するまでに、3分の1読むことができました。

 

学会の準備のためにはパソコンを立ち上げなければならないので、それはやめておいて正解でした。

 

 

現地(ウィーン)に到着直後から、毎日フルに活動しています。

 

今回の旅行の主目的は、

①医学(一般内科・心療内科、ベルリン自由大学、ベルリン森鴎外博物館研究所、ウィーン大学、ウィーン・フランクル研究所)、

 

②語学(研修:ドイツ語・イタリア語・英語)、

 

③音楽(声楽)です。

 

 

私の宿泊しているホテルは地下鉄U4のPilgramgasseという駅前で便利が良いです。

 

ただ、日本人は良いホテルの嗅覚が良いのか、日本の旅行社のセンスが良いのか、

 

朝6時の朝食時には、ほとんどが日本人、しかも関西弁の年配のご婦人集団です。

 

他に中国語を話す人たちで、国内旅行をしている錯覚に襲われます。

 

 

もっとも、これは時差の影響かもしれません。

 

日本とウィーンの時差は8時間。ウィーンの朝6時は、日本時間では午後2時。

 

ただでさえ、朝の早い年配のご婦人には、ウィーンの夜は永く、朝が待ち遠しいそうです。

 

 

時差といえば、私自身、昨年フランス行きで1ヶ月ほど時差ボケを引きずり閉口しました。

 

その原因は、フランス滞在中、他の不特定の参加者との集団行動であったうえに、

 

現地時間での日中での活動性を高め過ぎてしまったからだと思います。

 

 

日本時間での私の日頃の活動時間帯(6:00am~11:00pm)を基準とすると、

 

現地時間では10:00pm【前日】~3:00pm【当日】に相当します。

 

 

ウィーンでの朝6時の朝食は、夜10時の夕食に相当し、

 

午後1時の昼食が、日本の朝5時の朝食に相当します。

 

午前10:00の声楽のレッスンは、午後6時のレッスンに相当します。

 

午後7:00からはじまるオペラは、何と午前3時!

 

 

ですから、ウィーンでの朝食は少なめにして、仮眠をとったあと、

 

昼食をしっかり摂ってから本格的に活動するのが良いかもしれません。

 

 

今回は、帰国後の診療に支障を来さぬよう、

 

現地でも、なるべく日本時間でのリズムを大きく崩さないように注意しています。

 

しかし、自然環境のリズム(日照時間)や社会活動のリズムの制限は

 

なかなかコントロールできないのも事実です。