抗不安薬の投与法


抗不安薬の投与法が問題になるのは、依存性が生じるためです。そのため抗不安薬は漫然と使用しないことが望ましいです。

そこで、抗不安薬は必要最小量をなるべく短期間使用するように工夫することが原則となります。

ただし、依存性の程度は、抗不安薬の種類によって異なります。依存性は、半減期の短い薬物でより認められます。

 

以上のことから、半減期の短い抗不安薬は、可能な限り他の薬剤に置き換えていく方法が工夫されています。

その一つは、できるだけ半減期の長いものに置き換えること、もう一つは、同様に抗不安・抗焦燥効果のあるSSRIに置き換えていく方法があります。

 

終日不安となる場合は、短時間作用性の抗不安薬を1日に複数回内服するのではなく、長時間作用性の抗不安薬の1日1回内服でコントロールできるように支援します。

 

発作を止める場合や行動療法で苦手な状況に晒されるときなどは短時間作用性の抗不安薬を頓用していただきますが、この頓用回数を減らしていけるような治療を工夫していくことが必要になります。

 

抗不安薬の減らすことが必要なのは、短時間作用性型のものを数種類服用していても耐性を生じてしまうからです。

そのため減薬が勧められますが、長時間作用型のものに置換するほかに、漸減を行ないます。

たとえば、2週間前に1/4量ずつ緩徐に漸減することが望ましいとされます。

ときに抗うつ薬や非定型抗精神病薬の抗不安作用を利用して投与し、減量することも一考に値します。

 

そもそも、心療内科とは心理療法や心身医学療法も治療手段として併用する内科なのです。

ですから、心療内科の実臨床診に際しては抗不安薬のみに頼らず、環境調整や生活指導に加えて、心理療法や心身医学療法を積極的に取り入れることによって、抗不安薬を減薬、中止することを得意としている専門領域であるといえるでしょう。

抗不安薬の特徴

 

抗不安薬と睡眠薬は、異なる薬に思われていますが、これらの薬のいずれもが、実はほとんどベンゾジアゼピン(BZD)受容体作動薬という同一カテゴリーにいます。
これらの化合物の中で抗不安効果のより強いものが抗不安薬、催眠効果の強いものが睡眠薬と呼ばれています。
 

 

ベンゾジアゼピン(BZD)受容体作動薬は情動と関係する大脳辺縁系をはじめ全身に分布する神経活動を抑制し、作用をもたらします。
 

抗不安薬は、神経症性障害を中心として基本的に不安を伴うすべての病態に適応があります。

また、アルコール離脱の予防や身体的な疾患でその発症や経過に心理的因子が密接に関連している場合、すなわちストレス関連性身体疾患や心身症に使用されます。

アルコール依存の離脱予防には、肝機能保護も同時に考慮すべきなので、ロラゼパム(ワイパックス®)を処方しています。その理由は抗不安薬のうち、ロラゼパムはP450という肝臓の酵素に関与しないので、その分、身体疾患(特に肝疾患)や、多くの身体治療を服薬している患者さんや高齢者など、あらゆるケースに使用しやすい薬剤です。

またベンゾジアゼピン(BZD)受容体作動薬の中でも、クロナゼパム(リボトリール®)などは抗てんかん薬としても用いられています。パニック発作が強い場合や過活動型の線維筋痛症で処方しています。

 

ストレス関連性身体疾患や心身症は心療内科の専門領域であるため、私共、心療内科専門医にとって以上の抗不安薬は診療に不可欠な薬剤ということになります。
ただし、抗不安薬はベンゾジアゼピン(BZD)受容体作動薬以外の薬剤もあります。それらを一括して非ベンゾジアゼピン系といいます。

 

まずセロトニン1A受容体作動薬タンドスピロン(セディール®)はBZD受容体作動薬とは異なり、全身に作用せず、不安、抑うつに関与する大脳辺縁系の1A受容体を中心に刺激します。

そのためBZD受容体作動薬とは異なり、筋弛緩、依存性、記憶障害などの有害事象が少なく、長期の投与や高齢者に相応しいとされます。しかし、効果発現が2週間近くかかるうえ、効き目が弱いため、即効性を期待しがちな傾向がある不安症の方には、最初の2週間のみBZD受容体作動薬を併用しなければならないことがあります。

次に選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)は、抗不安・パニック効果があること、強迫症や社交不安症などに適応があるため、心療内科ではよく用いられます。

しかし、効果が発現するまでに3週間ほどかかることや、屯用使用には向かないため、初期にはBZD受容体作動薬を併用し、安定期に入ってからSSRIを基軸とした治療を行うことが多いです。

 

杉並国際クリニックでは、筋緊張型頭痛や肩こりの相談が多いため、あえて筋弛緩効果が強いとされるエチゾラム(デパス®)を処方することがあります。

不安症の種類

以前は神経症というカテゴリーでしたが、WHOが作成したICD-11(国際疾患分類第11版)では、不安または恐怖関連症候群、強迫症、ストレス関連症、解離症群などに分かれました。

 

不安または恐怖関連症候群やストレス関連症と同様に、精神科医に限らず、一般内科医を受診しているケースが多いです。その理由は、身体疾患を伴っていたり、身体症状が前面に表れてきたりすることが少なくないからです。こうした広い意味での心身症をより専門的に扱うのが心療内科専門医です。

 

つまり、総じて心理的要因によって心身の症状が引き起こされた状態を指し、パニック症、身体症状症、また適応反応症なども該当します。

 

身体症状症とは、器質的に異常がないのに身体症状が出現するものであり、また適応反応症とは大きなストレスに適応できないため不調となるものです。

心身医学に精通している心療内科専門医こそが、しっかりとした対応をすべき責任があるものと考えています。
 

 

不安の診療に心療内科医が活躍できる背景としては、例えば、社交不安症(社交不安障害)を例として説明できるかもしれません。
社交不安症の愁訴としては、公衆の面前や人と関わる状況において、不安、緊張、恐怖、羞恥、無力感などとともに、これらの感情に関連する身体反応として赤面、震戦、発汗、顔のこわばり、声の震えなどが出現すること、あるいはそのような心身の反応が起こることへの強い予期恐怖が一般的です。

こうした社交不安症に特異的な検査は存在しないので、類似の症状を呈する身体疾患との鑑別疾患が大切になります。これは日常診療において身体疾患を診ている内科医にとっては難しいことではありません。

 

甲状腺機能亢進症などとの鑑別のためには血液検査が必要ですし、またパーキンソン病との鑑別のためには神経学的検査を実施することが望ましいとされます。内科医としての経験と基礎資格があることを前提としている心療内科専門医は、こうしたケースに対しても的確に鑑別診断手続きを取ることができるという点で強みを持っていると自負しています。

睡眠障害の治療戦術(4)

 

前回までで既に

1)症状把握、

2)治療の要否判定、

3)睡眠衛生指導、

4)リスク評価、

5)各種の薬物療法

までのステップについては説明をしました。

 

薬物療法が有効であれば、維持薬物療法を計画しますが、薬物療法が無効であったり、部分寛解といって、十分満足のいく効果が期待できなかったりするときには、6)認知行動療法を導入します。

 

 

認知行動療法

原則として、薬物療法と同時に、状況が許す限り、できるだけ早期からの心理的・行動的介入が推奨されています。これが認知行動療法です。

 

認知行動療法は、不眠を長引かせてしまう生活習慣(行動パターンや睡眠に関する考え方)と身体反応(過覚醒:目覚めすぎてしまう傾向)をカウンセリングなどで修正し、不眠を改善させることを目的として行われます。

 

広義の認知行動療法の技法としては、①刺激制御法、②睡眠制限法、③漸進的筋弛緩法、④認知療法があります。①および②は行動療法、③は自律訓練法に近い関係があります。

 

1回50分のセッションを4~8回行うことで改善することが示されています。

 

特に入眠困難の改善には薬物療法よりも効果が高いと考えられています。

 

また、睡眠薬の長期服用者には減薬促進の効果が期待できます。

 

 

維持療法

認知行動療法が有効であれば、認知行動療法の維持療法を継続しながら、薬物を併用している場合には、維持薬物療法を検討します。

 

維持薬物療法をどの程度の期間継続すべきかは、患者ごとに検討します。原薬・休薬を実施する前提としては、不眠症が寛解(回復)していることが求められます。不眠症の寛解とは、不眠症状と生活の質(QOL)障害の両面が改善していることを意味します。寛解に至ってから減薬・休薬を開始するまでの間には、再燃(再発)のリスクを低減させるのに十分な期間を置くべき、とされています。

 

 

休薬トライアル

不眠症が寛解した後には、適切な時期に適切な方法で減薬し、可能であれば休薬を試みます。

 

睡眠薬の減量の方法としては、

①漸減法

②認知行動療法の併用

③補助薬物療法

④心理的サポート

以上があり、これらを適宜用います。

 

杉並国際クリニックでは、最終的には睡眠薬の減量⇒休薬⇒睡眠薬治療終了⇒睡眠衛生指導による再発防止、というプロセスを踏まえたケアを行っています。

 

睡眠薬は①漸減法を採用しますが、むしろ、これは結果であって、睡眠薬を漸減できるように、②認知行動療法の併用や④心理的サポートを行い、③補助薬物療法としては、漢方薬を効果的に用いています。

睡眠障害の治療戦術(3)

特殊な睡眠障害に対する薬物治療

 

1)概日リズム関連性不眠

生物時計の位相を変化させる目的で睡眠物質とされるメラトニンを用います。睡眠層に問題がある場合の不眠には、メラトニン受容体作動薬ラメルテオンの使用が適しています。また、通常では入眠困難が問題となることが多いため、超短時間型あるいは短時間型睡眠薬が使用されることもあります。

 

 

2)睡眠時無呼吸症候群(SAS)

患者本人は、ほとんどのケースで無呼吸に気づかず不眠のみを訴えます。

 

軽症から中等症のSAS患者の不眠治療では、睡眠薬を服用しても呼吸状態の悪化が生じないという報告があります。安全性が優れているラメルテオン(メラトニン受容体作動薬:ロゼレム®)やスボレキサント(オレキシン受容体拮抗薬:ベルソムラ®)を用います。

 

重症例では、睡眠薬の影響を否定できないため、持続陽圧呼吸療法(CPAP)などで十分にSASの管理をしたうえでの睡眠薬投与が望まれます。

 

SAS患者はCPAP治療初期に睡眠薬を併用すると、より効率的なCPAP圧の設定と、その後の長期的なアドヒアランスの向上が期待できます。

 

このような場合は、通常では、マウスピース使用、鼻腔持続陽圧呼吸法、などに加えアセタゾラミドを用いて腎からの重炭酸イオン排出を促進することによって、代謝性に呼吸を促進させるなどの方法があります。

 

 

3)アルコール性嗜好品使用に伴う不眠

アルコールは睡眠導入には効果があるが、レム睡眠に影響し、また利尿作用もあることから、中途覚醒、早期覚醒の原因となることがあります。カフェインやニコチンなどの不眠の原因となる嗜好品とともに寝酒の習慣を修正するように勧めます。そしてアルコールを中止させたうえで中・長時間作用型の睡眠薬を使用します。

 

 

4)薬物による不眠

ステロイド、インターフェロン、ドパミン作動薬(パーキンソン病治療薬)、β遮断薬(血液脳関門を通過しやすい)で不眠をきたすことがあります。

 

また、テオフィリンなどのキサンチン系薬はカフェインと同様に覚醒作用があります。

 

 

5)その他の疾患に伴う不眠

①レストレスレッグズ症候群(RLS)

RLSでは、就寝時に「虫が這うような」むずむずした知覚異常のため、臥床していられなくなり、入眠困難や中途覚醒を示します。治療薬としてはクロナゼパム(リボトリール®)やプラミペキソール(ドパミン作動薬:ビ・シフロール®)、さらに本疾患に焦点を当てたガバペンチンエナカルビル(レグナイト®)が用いられます。

 

②周期性四肢麻痺

高齢者に多く、夜間片側または両側の足関節の背屈運動を主体とする周期的な不随意運動が反復して起こるものです。入眠直後の浅いノンレム睡眠のときに出現し、夜間前期から中期にかけて発生しやすいです。治療はクロナゼパム(リボトリール®)が用いられます。

<心療内科でしばしば経験する複合精神科疾患>

 

うつ病は、いまや精神科のみならず一般の内科医が対応する必要がある精神疾患です。ましてや、心療内科医が、うつ病を診る機会は多いです。しかし、うつ病の診断と治療は必ずしも容易ではありません。精神科医ですら手をこまねいている症例が少なくないからです。そうしたうつ病の中には、背景に社交不安症が潜在するタイプがあります。その多くは、社交不安症をベースとしてう発症するうつ病です。

 

 

◆概要

社交不安症の臨床では、常に併存疾患を考えながら治療することが大切です。社交不安症の6割近くに併存精神疾患があります。とくにパニック症などの社交不安症以外の不安症、うつ病、アルコール使用障害などが多く認められるとされています。その他に、身体化といって身体症状を伴うことが多いです。この点、身体の診察に習熟している内科医である心療内科医は、こうした複雑なケースにも本領を発揮できることが多いです。

 

社交不安症はうつ病の発症の危険因子とも言われています。そして社交不安症とうつ病を併存した場合には、うつ病単独発症の場合よりも難治性であったり、再発を繰り返しやすかったりすることなどが知られています。つまり、社交不安症がうつ病の経過の増悪因子にもなるのです。

 

社交不安症だけで医療機関を受診する人は少ないです。なぜならば、そうした患者さんは、病気であるという認識を持つことが少なく、むしろ自分の性格の問題であると思い込んでいる場合が多いからだと思われます。しかし、社交不安症を発症している人がうつ病を併存し、職場等での不適応を来すようになって医療機関を受診するケースはあると思います。

 

その場合、うつ症状だけに注目してしまうと、うつ病治療自体がうまくいかなくなりがちです。社交不安症とうつ病を併存している場合には発達歴を聴取して、治療反応性や経過についての慎重な対応が求められます。そこには社交不安症の歴史や基本的な考え方があり、うつ病に潜在する社交不安症を見逃さないためのコツがあります。

 

うつ病治療においても社交不安症の存在を念頭に入れておくことは大変重要です。そのために経験豊富な臨床心理士による心理査定や、段階的な発達歴や家族関係性の聴取を含むカウンセリングが必要になってきます。

 

<今月の論点:リウマチ膠原病診療の盲点―心療内科指導医・専門医 兼 リウマチ専門医 の立場からー>

 

③NPSLEの類型について

米国リウマチ学会によるNPSLEの分類は、出現する精神症状は以下の4つの主要症候群に分類しています。①認知障害(せん妄および認知症)、②精神病性障害、③気分障害、④不安障害です。

 

次のステップの「病因診断」はSLE患者では苦慮することが多いとされます。

 

その理由は、

①NPSLEはSLE以外の要因による精神障害(例:ステロイド精神障害)と症候学的に区別不能

 

②NPSLEには診断に有用な疾患特異的な単一の指標がない

 

③SLEの全身性の疾患活動性と連動せずに症状が出現することがある

 

そこで、必要になるのはNPSLE以外の要因を除外することが重要であると、西村先生は指摘しています。このあたりが、精神科医の仕事と言いたいところなのでしょうが、優秀な精神科医でも困難極まりない仕事だと考えます。

 

なぜなら実際の診断は、総合的に行わざるをえないからです。すなわち、臨床症状、血液および髄液検査所見、脳波、脳イメージング、免疫学的マーカーなどが判断材料になります。

 

たとえば、脳波の特徴としては半数以上に全般性除波化が観察されます。また、SLEをはじめとする膠原病では自己抗体が産生されます。この自己抗体が脳血液関門(BBB)を通過し、神経細胞やグリア細胞に結合すると精神障害をきたしやすくなります。脳血液関門(BBB)の透過性の評価にはQ-albumin(髄液と血清のalbumin比)が用いられることがあります。

 

こうした総合判断を、リウマチ医と精神科医が協働して行ったとして、どれだけ整合性ある統合的結論に結びつくかははなはだ疑問です。複数の専門医が一人の患者さんの一つの病気に関与する場合は、身体症状に対するアプローチと神経精神症状に対するアプローチに対する理解を何とか総合することはできても、すっきりと一つのまとまりに統合することは、それぞれの専門医にとっても事実上不可能になります。

 

そのような難題の受容を医療の素人である患者さん自身に負わせていかなければならないことになります。心と体とがバラバラにされたままの再統合されないままの治療を余儀なくされた患者さんの苦しみは、たいていの医師の想像を超えたレベルに達しています。

 

それでも、目の前に患者さんが存在する以上、何らかの有効な現実的手立てが求められることになります。

今月の論点:リウマチ膠原病診療の盲点

―心療内科指導医・専門医 兼 リウマチ専門医 の立場からー

 

 

②NPSLEの見立てのプロセスについて

 

NPSLEとは全身性エリテマトーデス(SLE)による神経精神症状(NP)です。

 

NPSLEの治療のためのポイントは、NPSLEの精神症状の診たてとマネジメント、精神科医との連携の重要性ということのようです。

 

リウマチ医は神経精神症状の診たて、マネジメントに苦慮しているのが現状であるため、精神科医との連携が重要である、ということはよくわかります。

その場合、NPSLEの患者さんは一つの病気のために複数の専門医を受診しなければならないことになります。

 

しかし、NPSLEは膠原病という身体疾患をベースとして神経精神症状を出現させていることから、心身症の延長であるという見方ができます。

 

もし、心身症を専門とする心療内科医が同時にリウマチ医であれば、NPSLEの患者さんは一人の主治医で済むということになるはずです。

しかし、両方の専門医の資格と臨床経験を持つ医師は国内で数名のみであるので、注目されるどころか、誰にも気づかれずに日蔭の存在に追いやられています。

 

一般に身体疾患患者における精神症状の診断は「症候群診断」と「病因診断」の2ステップで行われることを西村先生は説明していますが、その通りだと思います。

今月は、内部からでさえ、もはや絶滅危惧種と叫ばれつつある心療内科が如何に誤解されているか、混乱させられているか、という深刻問題点について考えてみたいと思います。すでに世間に広く広報されている具体的な声を題材にしました。

 

第4回:心療内科の今後と課題

 

わが国の心療内科の発展を図ります。

出典:日本心療内科学会HP

九州大学総長(元、九州大学医学部心療内科教授)久保千春

 

現代の日本社会は、政治経済社会の不安定、国際化、情報化、対人関係の厳しさ、少子高齢化、などにより、ストレスがますます増加しています。平成23年3月11日の東日本大震災および福島原発の放射能問題が大きな影響を及ぼしています。

 

医療については、現在、日本で増加している病気として、1)糖尿病、冠動脈疾患、がん、高血圧、脳卒中、肥満などの生活習慣病、2)動脈硬化、肺気腫、気管支炎などの老人病、3)うつ病、不安障害、適応障害、心身症等のストレス病があげられます。

 

現代医療の課題とニーズとしては、次のようなものがあります。

1)長寿社会であるがQOLは低い→全人的医療への期待

2)医療費の高騰→予防医療の充実

3)身体医学・西洋医学のみの限界→統合医療への期待

4)患者の意識の高まり→自分による治療法の選択

 

このような中で、心療内科の専門性は、

1)心身相関の病態を詳細に把握し、いくつかの心理療法に習熟しており、心身両面の治療ができる内科医、

2)生理・心理・社会・実存的側面からの全人的医療ができることです。

 

心療内科の発展は診療・教育・研究において進歩していくことが必要です。

 

診療では

単に典型的な心身症にとどまらず、プライマリケア、緩和ケアの分野でも積極的に行うことです。

 

また、他診療科や医療関係者との連携やチーム医療が重要です。

さらに、進歩している新しい知識と技術を取り入れると共に、新しい治療法の開発に取り組むことです。

 

教育では

全国の大学の医学教育カリキュラムに取り入れるようにすることや

若者に魅力ある教育、研修を確立し、多くの優秀な良き医療人を輩出することです。

 

研究では

1)心身相関についての生体レベルから、 組織、細胞、遺伝子レベルの研究、

2)環境(内的・外的ストレス)と生体との相互関係、

3)精神・神経・内分泌・免疫関連、

4)過敏性腸症候群、気管支喘息、糖尿病、疼痛性障害、摂食障害などの典型的な心身相関の臨床研究、

などを推進することです。

 

 

<杉並国際クリニックの立場から>

久保先生からは、何度も励ましの言葉をいただいていて、私自身にとっても崇高な指導者のお一人です。この文書の対象は、第一義的には日本心療内科学会の会員ですが、示唆に富んだ内容であり、心療内科の現状から将来を展望する上での具体的指針ともなるべきドキュメントです。

 

 

心療内科の専門性は、

1)心身相関の病態を詳細に把握し、いくつかの心理療法に習熟しており、心身両面の治療ができる内科医、⇒いくつかの心理療法とありますが、もともと、心療内科は心理療法内科に由来しています。ただし私は心身両面の治療ができる内科医が行う心理療法は、すなわち心身医学療法であると考えています。ここでいくつかの心理療法というものの中には、新しいオリジナルな心理療法ないしは心身医学療法を開発して普及発展に努めることも含めたいと考えています。杉並国際クリニックでは、水氣道®や聖楽院の聖楽療法は、オリジナルの心身医学療法として診療の中に位置づけています。

 

2)生理・心理・社会・実存的側面からの全人的医療ができることです。

 ⇒また、こうした全人的医療の実現に向けて開発してきた心身医学療法が、水氣道®や聖楽院の聖楽療法であるといえます。

 

診療では

単に典型的な心身症にとどまらず、プライマリケア、緩和ケアの分野でも積極的に行うことです。⇒杉並国際クリニックは、典型的な心身症にとどまらず、プライマリケアを実践しますが、緩和ケアの分野を担当できる環境にはありません。

また、他診療科や医療関係者との連携やチーム医療が重要です。

 

⇒すでに院内でのチーム医療(医師・薬剤師・臨床心理士・鍼灸師・ソーシャルワーカー)の体制が確立し、地道な活動を展開しています。

 

さらに、進歩している新しい知識と技術を取り入れると共に、新しい治療法の開発に取り組むことです。⇒繰り返しになりますが、毎年、国際学会に出席して最先端の知識と技術に触れる機会を大切にし、かつ、水氣道®や聖楽院の聖楽療法という画期的な新しい治療法の開発ならびに発展のために取り組んでいます。

 

研究では、過敏性腸症候群、気管支喘息、糖尿病、疼痛性障害、摂食障害などの典型的な心身相関の臨床研究、⇒具体的疾患名が列挙されていますが、これらのう疾患は日常的に診療していますが、アレルギー内科専門医を兼ねる立場からは気管支喘息、リウマチ専門医を兼ねる立場からは疼痛性障害(線維筋痛症など)は日常診療の中から常に新しい研究課題を模索しています。

 

この他、久保先生が直接触れておられないテーマとして、杉並国際クリニックは、国際医学、外国人診療、とりわけ英語診療に力を注ぎ、心療内科の外来診療を英語で対応できるような高度な全人的医療を目指しています。

 

心療内科医は絶滅危惧種か?その1

 

今月は、内部からでさえ、もはや絶滅危惧種と叫ばれつつある心療内科が如何に誤解されているか、混乱させられているか、という深刻問題点について考えてみたいと思います。すでに世間に広く広報されている具体的な声を題材にしました。

 

 

第1回:患者の誤解(あなたは心療内科の患者様ですか?)

 

そのままコピーできないので、若干短縮し編集の手を加えました。

 

原文は、上記出典を検索してください。

 

 

読売新聞 オンライン 発言小町

 

タイトル「心療内科で傷つきました」2018年10月12日 17:50

5年ほど前から適応障害とうつ状態と診断され心療内科(病院A)に通院

この2~3ヶ月、気分の落ち込みも減り、そろそろ投薬を減らしたいと思い始めた。

先生の問診時間は2~3分と短く、②カウンセリングの時間も減らされたり、③いつもの担当の方が辞めたりと、なかなか自分の気持ちを上手く伝えられずモヤモヤしたことが続いていた。

(病院Aはカウンセリングと診察は担当者が別。)

 

 そこで心療内科もある総合病院(病院B)を受診。
 私が「病院Aではカウンセリングの時間を減らされてしまって…」と話をすると、

担当の医師から鼻で笑うように「え?うちだってカウンセリングなんて5分だけど?

長く話したいなら他所行って」と話し始めてすぐにガツンと言われ、堪らず泣いてしまった。

 

その医師曰く「うつ状態になっている原因は他の体調不良によるものかも知れないし、検査はしてみた方がいい」と言われたのと、ここひと月ほど風邪が治らなくてしんどかったので、今日は血液検査と胸部CTを撮りました。

 

結局今日は精神系の処方はされずに風邪薬だけでした。

結果を聞きに1週間後行かなくてはいけないのですが、正直行きたくありません。

また収まりかけてた不安な気持ちが復活して辛いです。

病院Aに戻すべきか、それともBに通うのがいいのか、もうごちゃごちゃしてます。

 

この投稿者に共感されるような方に参考にしていただきたいメッセージを豊中市の精神科クリニックのホームページから見つけましたので貼り付けます。

 

医療法人 秀明会 心療内科・精神科 杉浦こころのクリニック

 

理事長・院長の杉浦正義先生は、近畿大学医学部御出身の精神科指導医です。

 

 

 

心療内科とカウンセリングの違い

近年はメンタルのヘルス問題が深刻化していて、うつ病になる方も増えています。そういった中で、心療内科に行こうかカウンセリングに行こうか迷っている方も多いと思います。

 

心療内科の診察をカウンセリングと呼んでいる方もいますし、医師にカウンセリングを要求される方もいます。ハッキリと診察とカウンセリングを分けることが難しいポイントもありますが、どちらがよいというわけでなく、それぞれ特徴の違うものですので、医師とカウンセラー(臨床心理士)の役割を理解してもらう意味で説明したいと思います。

 

まず、心療内科・精神科などの医師は、精神的に困っている患者様に対して、こころの病気の背景としての心理・社会的要因を含めて、身体に現れる症状も考えて診断し、「病気を治療する」という医療的な視点での薬物療法や精神療法がアプローチの中心となります。もちろん、一人ひとりの気持ちを聞いて理解することも大事ですが、保険診療であることから考えてどうしても一人当たりに割ける時間は短くなってしまうので、ゆっくり話を聞くことに限界があります。症状が辛い状態で、生活に支障が出ている場合などは、お薬の治療を行わないと改善が難しいこともあります。

 

一方で、臨床心理士は長い時間をかけて(1回50分程度)、一人ひとりの気持ちを受容、共感、傾聴することを一番に重視しています。カウンセリングでは、自分の感情を表現したり、自分の問題をカウンセラーと一緒に考えたりすることで、気持ちが楽になって、自分がどうしたらよいのか、自分がやりたいことは何なのかなど、自己理解が深まり解決方法が見つかっていくと思います。「病気を治す」ということも目標の一つになりますが、病気ではなくても悩みや話したいテーマがあれば、それはカウンセリングの大事な目的になります。ですから、「カウンセリング」=「精神的な病気の人が受けるもの」という感覚は間違いです。カウンセリングでは、相談者のことを「患者」ではなく、「クライエント(依頼者)」と呼びます。

 

このように、カウンセリングと医療では視点が異なる点があります。医療機関での治療を長期間続けてもなかなかよくならないという場合には、異なる視点でのアプローチとしてカウンセリングを考えてみるのも大事な選択肢だと思います。薬物での治療とカウンセリングを平行して行うことがもっとも治療に適しているというデータもあります。どちらを受けることが正しいということは自分で判断することが難しく、迷うこともあるかもしれませんが、カウンセラーがお薬の治療も平行して行う必要があると判断した場合には、医療機関をご紹介することも可能です。

 

自分一人で悩むことに限界を感じたら、気軽に心療内科などメンタルヘルスの専門機関のサポートを受けてみてはいかがでしょうか?

 

 

 

<杉並国際クリニックの立場から>

精神科医の杉浦先生のメッセージは、いろいろな意味で示唆に富むものであるといえます。しかし、文末の結語を<自分一人で悩むことに限界を感じたら、気軽に心療内科などメンタルヘルスの専門機関のサポートを受けてみてはいかがでしょうか?>などと平気で書かれてしまうと、世間の混乱を増幅させてしまうので残念です。

 

精神科医であって、しかも精神神経科の指導医である方が、心療内科を標榜されることはご自由ですが、少なくとも、精神科と心療内科の違いをしっかり患者さんに説明していただかないと、患者さんばかりでなく心療内科専門医も非常に迷惑をいたします。<自分一人で悩むことに限界を感じたら、気軽に精神科などメンタルヘルスの専門機関のサポートを受けてみてはいかがでしょうか?>と訂正していただきたいものです。

 

そもそも、冒頭のキーワード・キーフレーズの流れにも問題があります。

 

メンタルヘルス⇒うつ病⇒心療内科に行こうかカウンセリングに行こうか迷っている方、このような方には、<カウンセリングに行かないのであれば、心療内科ではなく精神科を受診してください>とアドヴァイスすることが精神神経科指導医のお立場であるはずです。

 

<心療内科の診察をカウンセリングと呼んでいる方もいますし、医師にカウンセリングを要求される方もいます。>こうした誤解を増幅させ社会問題化のきっかけを作ったのが、他ならぬ精神科の先生方であるということを深く認識していただきたいものです。<心療内科の診察は身体の診察から始まるので、最初からカウンセリングを希望するのであれば、まずは精神科をご受診ください。>のようになぜ明確に書いてくださらないのでしょうか。

 

 

読売新聞 オンライン 発言小町

タイトル「心療内科で傷つきました」

 

読売新聞にも失望しました。この記事はタイトルからして誤解しています。

本来であればタイトルは精神科で傷つきました」

と訂正されるべきです。

 

投稿者には責任はありませんが、読売新聞の社会的責任は極めて重く、医療を意図的に混乱させいると批判されても仕方がないくらい悪質であるといわざるを得ません。

 

私は精神神経科指導医・専門医である杉浦正義先生とは全く面識がありませんし、個人攻撃をする意図は全くありません。むしろ、解り易い典型的な精神科医の思考法・表現法のサンプルを提示していただけたことに感謝している位です。ただ、どうしても心療内科指導医・専門医の立場から、ただしておかなければならないことを述べておきます。

 

<心療内科・精神科などの医師は、精神的に困っている患者様に対して、こころの病気の背景としての心理・社会的要因を含めて、身体に現れる症状も考えて診断し、「病気を治療する」という医療的な視点での薬物療法や精神療法がアプローチの中心となります。>この文章は、心療内科医と精神科医の役割の違いを非常にあいまいにしています。

 

精神科などの医師は、精神的に困っている患者様に対して、こころの病気の背景としての心理・社会的要因を含めて、身体に現れる症状も考えて診断し、「病気を治療する」という医療的な視点での薬物療法や精神療法がアプローチの中心となります。>と主語を精神科に限定するなら問題はありません。

 

そのかわり、心療内科を主語とするのであれば <心療内科などの医師は、精神的に困っている身体疾患に悩む患者様に対して、からだの病気の背景としての心理・社会的要因を含めて、身体に現れる症状の背景をも考えて診断し、「病気を治療する」という医療的な視点での薬物療法や心身医学療法がアプローチの中心となります。>のように、心療内科指導医・専門医の立場から添削させていただきます。