全身性強皮症

 

多臓器に線維化、血管内皮障害をきたし、肺では間質性肺炎と肺高血圧を合併することが多いです。

 

全身性強皮症の患者で呼吸困難が進行する場合、間質性肺炎の合併、肺高血圧症の合併、腎不全からの肺うっ血などが原因となります。

 

分類:びまん性皮膚硬化型、限局皮膚硬化型

前者は抗Scl-70抗体陽性、間質性肺炎の合併が多く、

後者は抗セントロメア抗体陽性、肺高血圧症の合併が多いです。

 

膠原病関連の肺高血圧症はニース分類でⅠ群の肺動脈性高血圧症に分類されました。
呼吸機能検査で核酸能の低下と肺高血圧症との関連が多数報告されています。それには、全身性強皮症の血管内皮障害が影響していると考えられています。

 

DLco/alveolar volume<60%で肺高血圧症を発症するリスクが高くなります。
肺高血圧症の正確な評価のためには右心カテーテル検査で、平均肺動脈圧が25㎜Hg以上であることを確認する必要があります。

 

肺高血圧症における運動耐用能の評価に6分間歩行試験が有用とされますが、歩行距離は必ずしも肺高血圧症の重症度を反映しない点に注意する必要があります。
また、肺動脈病変のみならず、肺静脈閉塞症など高率に肺静脈にも病変が及び、選択的肺血管拡張薬は、前毛細血管の肺動脈のみを拡張させるため、肺水腫を惹起させやすく、治療抵抗性を示し、予後不良の一因となります。

 

全身性強皮症に合併した肺高血圧症に対する治療法は確立していません。
しかし、Ⅰ群の肺動脈性肺高血圧症に準じてプロスタサイクリン、ホスホジエステラーゼ5阻害薬、エンドセリン受容体拮抗薬などを使用する場合が多いです。
ただし、一般的に治療抵抗性であり、予後は悪いです。

関節リウマチ診療ガイドライン2014(RA診療GL2014)に準拠した診療の課題

 

 

私はリウマチ専門医の一人としてRA診療ガイドラインに準拠して、関節リウマチの厳格なコントロールを適切な薬剤で行うことが、関節および生命予後の改善につながることを期待しています。しかし、実臨床においては、いろいろな未解決出悩ましい課題が残されています。

 

課題1:

いまだに治療が満足できない場合があること

 

杉並国際クリニックでは、早期の関節リウマチを診断して、即座にガイドラインに沿った治療を開始できる実績をもっています。

しかし、せっかく早期発見・早期治療の開始ができても、多くの薬剤にアレルギー反応が出る方がいらっしゃいます。

抗体製剤にアレルギーがある場合は、有効性の判定の前に、その薬剤の使用することができなくなります。あるいは、最初はスムーズに治療が進んだかに見えて、しばらくすると効果不十分になる難治性の関節リウマチもあります。

これは、関節リウマチが一様な疾患ではなく、患者さんの間でも互いに異なる多様な体質的背景をもつ疾患だからです。つまり、患者ごとの病態に関連するサイトカインや免疫細胞が異なり、多くの患者で原因治療が行えていないことに起因しています。

 

 

課題2:

合併症の多い長期罹患の関節リウマチ

 

生物学的DMARDなどの今日では広く用いられている薬物の恩恵を受けられるようになったのは21世紀に入ってからです。

したがって、今から20年以上前から治療を続けている方は、こうした薬剤の恩恵を受けられず、すでに関節変形が進行してしまっている患者さん、ステロイドの合併症が至る所に表れている患者さん、あるいは肺合併症を有する患者さんでは、強力な免疫抑制療法を行ないにくくなります。

この場合は、治療目標を臨床的寛解ではなく低疾患活動性とすることが多くなります。しかし、患者さんはどうしても痛みや機能障害を訴えることが多いために生活の質は著しく低下することを余儀なくされます。

このような患者さんを、今後増やさないようにするため、早期診断と早期治療は重要です。なお高齢の関節リウマチ患者さんに関しては認知機能の低下が加わると生活の質は一層低下することになるので悩ましい課題であるといえます。

 

 

課題3:

妊娠希望の女性の関節リウマチ

 

関節リウマチ(RA)患者は女性が多く、発症時点で見るとほぼ半数が妊娠可能な年代です。妊娠は計画的に行うことが必要です。妊娠の希望を伝えること、すぐに希望がないとしてもお付き合いしていて妊娠の可能性がある場合は、妊娠可能な薬で治療しているか、避妊が必要かについて、予めリウマチ専門医や産科医と相談し理解を深めておくことも重要でしょう。

妊娠を計画したら、病状が安定しており、寛解(病気の活動性がないこと)や低い活動性で安定した状態を継続していることが重要です。病気の活動性が高いと妊娠しにくくなり、不妊症の率が高くなります。

また、関節リウマチの病状は、6〜7割の患者さんで妊娠期間中に次第に良くなる傾向がありますが、妊娠した時に病気の活動性が高いと良くならない場合も多く、妊娠中に患者さん自身の関節症状が進んでしまったり、妊娠を継続するのが難しくなったりすることもありえます。

炎症の時に上昇する蛋白が胎盤を通って胎児の発達に影響する可能性もあります。 病気を進行させないため早く良くするために、流産や先天異常を起こしやすい薬を一時的に必要とする場合があります。

その場合は、有効性の高い方法で避妊することが必要です。病状が安定して妊娠を計画したら、妊娠に安全な薬で病気をコントロールします。全ての薬を中止してしまって病状が悪くなれば、かえって妊娠しにくい状況になってしまいます。

結婚を目前に控えた女性である場合、精神的に不安定になりやすく、それが関節リウマチの病態をさらに悪化させ生活の質を低下させがちになります。そこでの心理面でのサポートは極めて重要で、特別な配慮が」必要になることが多いです。

 

 

課題4:

医療費の問題

 

生物学的製剤(bDMARD)が使用できるようになってから、関節リウマチ患者の医療費は大きく増大しました。この高価な生物学的製剤をいつまで続けるか、ということに関しては回答が出ていません。

今後、臨床的寛解あるいは低疾患活動性が達成されたら、コストの低い従来型合成疾患修飾性抗リウマチ薬(csDMARD)を中心に維持療法を行なうなどといった2段階に分けた関節リウマチ治療が提案される可能性がありますが、容易に解決できる課題ではないと思われます。

関節リウマチ診療ガイドライン2014(RA診療GL2014)の包括的原則


RA診療GL2014には、治療を遂行するための包括的原則が示されているので紹介します。


治療目標:

・臨床症状の改善のみならず、関節破壊の抑制を介して長期予後の改善、特に身体機能障害の防止と生命予後の改善を目指す

 

 

治療方針:
・関節炎をできるだけ速やかに鎮静化させて寛解に導入し、寛解を長期間維持する
     

・合併病態の適切な管理と薬剤の適切使用によって有害事象の発現を予防あるいは低減し、もしも生じた場合には適切に対応する
     

・関節破壊に起因する機能障害を生じた場合には適切な外科的処置を検討する
     

・最新の医療情報の習得に努め、日常診療に最大限適応する
     

・治療法の選択には患者と情報を共有し、協働的意思決定を行う

 

治療原則:

・RA診療は最善のケアを目指すものであり、患者とリウマチ専門医の協働的意思決定に基づく
     

・リウマチ専門医はRA患者のケアを行うスペシャリストである
     

・RA治療は個人的、社会的、医療費的に大きな負担を生じるものであり、リウマチ専門医はこれらすべてを勘案して治療に当たらねばならない

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 

以上の要点は、関節リウマチの治療は、関節のみを標的としていてはいけない、ということです。関節リウマチは、さまざまな合併症を伴いやすい全身性疾患であるため、合併症にも気を配り、患者さんの生活の質の維持・向上をはかることによって、生命予後の延長を治療目標とすることです。
 

治療方針として、タイトコントロール(厳格な水準での治療コントロール)することと、いったん治療目標に達したら、それを維持することの重要性が強調されています。なお、治療方針が医師の自己満足にならないよう協働的意思決定の大切さにも触れられています。
 

治療原則では、社会経済的観点にも言及していて、多数の薬剤を使いこなすことができる必要性から、関節リウマチは専門性の高い疾患とされています。
     

以上の原則を振り返って感じられることは、RA治療は個人的、社会的、医療費的に大きな負担が患者本人のみならず、彼らを支える家族や医療機関、あるいは社会全体にとっても負荷が大きいということの意味と、そうした現実に対する具体的な取り組み方についてのヴィジョンが示されていないということです。

 

個人的負担の軽減のために必要なことは、身体機能障害の防止と生命予後の改善のみで果たせるものではありません。心理社会的サポートが不可欠なはずですが、そうした言及がないことは残念です。

 

また、リウマチ専門医がRA患者のケアを行うスペシャリストであることを高らかに宣言するのであるならば、リウマチ治療のための薬物療法や手術療法以外の、非薬物療法、すなわち、リハビリテーションや精神心理的ケアの必要性と有効性についても十分な見識と経験のある、真のリウマチ専門医が活躍できなければならないのではないかと思われます。

関節リウマチ(RA)初期治療における治療アルゴリズム

 

<杉並国際クリニックでの関節リウマチ早期対応モデル>

 

 

関節リウマチ(RA)の早期診断には2010ACR- EULAR分類基準が有用です。これを簡単に説明してみましょう。

 

大切なのは、少なくとも1関節に明らかな滑膜炎(腫脹)が存在することです。

これが、すべての始まりなのですが、早期診断は必ずしも容易ではありません。

 

たとえば、X線(レントゲン)画像は骨や関節の障害を評価することに適していますが、炎症を直接観察することはできません。またリウマトイド因子(RF)や抗CCP抗体、CRPや血沈といった血液検査は、たしかに、2010ACR- EULAR分類基準による診断基準に含まれてスコア化されていて、治療の参考にはなりますが、これらの数値が高い(低い)ことが関節リウマチである(ない)、活動性が高い(低い)ことを断定することにはなりません。

 

 

そこで、威力を発揮するのが関節エコー(超音波)検査です。

 

関節超音波(関節エコー)検査は、関節リウマチがひきおこす滑膜の炎症を直接観察する画像検査です。炎症を起こしている関節滑膜は健常な場合と異なり厚みをもち関節液が増加した状態となるため、パワードプラ―法という機能によって内部に異常な血流信号を観察することができます。

 

リウマチ専門医は注意深い診察により関節の評価を行ったうえで、これらの検査を参考にして診療を行っておりますが、診察や血液検査では捉えきれない炎症の有無やX線画像では検出できない細かい骨の変化を観察するために、杉並国際クリニックでは必要に応じてパワードプラ―法を併用した関節超音波検査を実施します。

 

より早期に関節リウマチを診断するため(早期診断)、よりしっかり関節の炎症が抑えられていることを確認するため(寛解判定)に関節超音波検査は有用です。また関節リウマチのみならず、痛風その他の関節疾患においても有用であり、積極的に活用しています。

 

ひとたび関節リウマチ(RA)と診断できたら、メトトレキサート(MTX)の禁忌がない限り、MTXを抗リウマチ治療薬として選択します。その後の3か月で改善がみられなければ、治療を見直し、従来型の抗リウマチ薬を併用します。短期間のみ少量のステロイドを追加することは認められています。

 

さらに治療開始後は、少なくとも6カ月で治療目標を達成することが求められています。治療目標としては、まず臨床的寛解をめざすが、達成できない場合でも低疾患活動性を目指します。寛解に至るまでの間は1~3か月毎に、複合指標を用いた疾患活動性の測定を行います。寛解導入が成功した場合は、寛解の維持に努めます。治療開始から6カ月以内に治療目標が達成できない場合には、PhaseⅡ(主に生物学的製剤、JAK阻害薬の使用)に進みます。その後も3~6カ月毎に疾患活動性を評価します。

 

生物学的製剤は感染症に注意すれば臓器障害の副作用の懸念は、一般に低分子薬よりも少ないことがわかってきたので、今後は、杉並国際クリニックでも実施症例が増えることが予想されます。

 

第116回日本内科学会講演会は2019年4月26日(金)から28日(日)の3日間、名古屋で開催されました。未曽有の大型連休の前でもあるため、初日の26日(金)は出席せず、高円寺南診療所としての最終診療日としました。

 

しかし、4月26日(金)は、聞き逃したくない貴重な演題が目白押しでした。そこで、学会レジュメをもとに関節リウマチに関する重要なトピックを紹介します。

 

招請講演3.骨と関節の科学―関節リウマチの病態を中心に、免疫系が骨代謝系に及ぼす影響および免疫系の制御による治療のパラダイムシフトについてー(その2)

 

免疫系および代謝系の接点から関節破壊のメカニズム

 

関節リウマチにおける関節破壊は、関節滑膜組織で産生されるTNFやIL-6によるものです。TNFやIL-6は、関節滑膜からのマトリックスメタロプロテアーゼ等の産生および滑液中への放出を促し、滑液に浸っている軟骨表面の細胞間質を酵素分解してしまいます。

 

そこで、関節破壊の引き金となるTNFやIL-6を標的とするバイオ抗リウマチ薬は、滑膜細胞からの分解酵素の産生を抑制することによって、関節破壊を最小限にすることができます。

 

なお、骨組織は骨基質および骨細胞等から構成されます。破骨細胞は骨細胞に発現するRANKLによる刺激を受けると活性化して骨を吸収し、名称通りに骨組織を破壊してしまいます。一方、抗RANKL抗体は、骨細胞や骨芽細胞上のRANKLによる破骨細胞の成熟および活性化を刺激する骨粗鬆症薬です。また抗RANKL抗体は、滑膜細胞やT細胞に発現するRANKLによる破骨細胞の成熟を抑制する作用をもつため、関節リウマチの骨びらんの進行を抑制することができます。

 

 

経口JAK阻害薬による関節リウマチ治療の新展開

 

関節リウマチでは、すべての患者で寛解を目指すことが治療目標となりましたが、実際にはバイオ抗リウマチ薬を使用しても寛解導入率は3~5割です。バイオ抗リウマチ薬の分子量は巨大であるため注射が必要ですが、内服可能な低分子化合物であるJAK阻害薬は、標的型合成抗リウマチ薬という新たな範疇の治療薬に分類されます。すでにJAK3阻害薬(トファシチニブ)、JAK1/2阻害薬(バリシチニブ)は関節リウマチの治療に用いられています。

 

JAK阻害薬は低分子量であるため生物学的製剤とは異なり、細胞内のシグナル伝達を阻害し、マルチターゲット効果を有します。しかし、こうした特性が長期安全性に関する懸念材料でもあります。JAK阻害薬は経口薬であるため使いやすいのは確かですが、使用前のリスク・スクリーニングおよび治療中のモニタリングを徹底すべきであることから、入院設備を備え、全身管理を行なえる環境下で使用すべきだと考えます。

第116回日本内科学会講演会は2019年4月26日(金)から28日(日)の3日間、名古屋で開催されました。未曽有の大型連休の前でもあるため、初日の26日(金)は出席せず、高円寺南診療所としての最終診療日としました。

 

しかし、4月26日(金)は、聞き逃したくない貴重な演題が目白押しでした。そこで、学会レジュメをもとに関節リウマチに関する重要なトピックを紹介します。

 

 

招請講演3.

骨と関節の科学―関節リウマチの病態を中心に、免疫系が骨代謝系に及ぼす影響および免疫系の制御による治療のパラダイムシフトについてー(その1)

 

21世紀に入って、モノクローナル抗体等の免疫学的手法およびJAK阻害等の免疫学的新知見を臨床応用することが実現しました。その結果、難治性とされてきた関節リウマチ等の全身性自己免疫疾患の治療にパラダイムシフトがもたらされました。

 

現在の関節リウマチの治療は、免疫異常を抑制して疾患活動性を制御することを目的として、抗リウマチ薬を用います。

 

抗リウマチ薬は、メトトレキサート等の従来型合成抗リウマチ薬、TNFやIL-6、T細胞共刺激分子を標的とした生物学的製剤であるバイオ抗リウマチ薬に分類されます。

 

診療ガイドラインでは、診断されれば速やかにメトトレキサートで治療を開始し、治療開始後3カ月以内に改善がみられない場合、あるいは半年以内に目標である寛解に達しなければ、バイオ抗リウマチ薬等を追加することが推奨されています。

 

免疫系の不均衡を是正しないと、骨代謝系の不均衡を生じ、骨や関節の破壊を生じることもわかってきました。その結果、適切な治療を受けている全ての患者さんが寛解を目指すことを治療目標とすることになり、関節破壊や機能障害の進行が抑止できるようになってきました。さらに、寛解維持により、10年間に亘って身体機能障害が進行しないことが示されました。さらに、発症早期であれば、寛解導入後にバイオ抗リウマチ薬を中止し、ドラッグホリデーを目指すことも可能となってきました。

 

しかし、抗リウマチ薬には禁忌があります。そして、その重要な副作用として感染症が多いです。特にバイオ抗リウマチ薬の使用においては、特定の標的分子を制御することに伴う副作用に留意する必要があります。重篤な副作用のなかで最多なのは細菌性肺炎です。高齢、呼吸器疾患の既往ならびにステロイド薬併用は細菌性肺炎発症の危険因子です。このような症例には肺炎球菌ワクチンの接種を積極的に推奨すべきものとされています。また、結核やニューモシスティス肺炎等の日和見感染症等の重篤な副作用の危険因子も同定され、関節リウマチの治療においては、内科的な全身管理、予防ならびに治療が不可欠となっています。

 

 

<まとめ>

関節リウマチは、診断されれば速やかにメトトレキサートで治療を開始することが推奨されています。

 

そのためには、関節痛などの症状があれば、できるだけ早期にリウマチ専門医等を受診して、診断を受けることが最も重要です。

 

そして、もし治療開始後3カ月以内に改善がみられない場合は、バイオ抗リウマチ薬等をメトトレキサートに追加することが推奨されています。

 

改善がみられる場合でも、治療開始後半年以内に目標である寛解に達しなければ、やはりバイオ抗リウマチ薬等をメトトレキサート追加することが推奨されています。

 

杉並国際クリニックでも、早期にメトトレキサートでの関節リウマチ治療を開始しています。しかし、これまでバイオ抗リウマチ薬等を積極的に追加することはせず、その場合は、入院設備のある医療機関、とりわけリウマチ専門医の教育機関である病院と連携することにしています。

 

その理由は、抗リウマチ薬の重要な副作用として感染症が多いからです。特にバイオ抗リウマチ薬の使用においては、特定の標的分子を制御することに伴う副作用に留意する必要があります。

今年の日本リウマチ学会総会・学術集会は、これまでの中で、もっとも大きな収穫がありました。それは、学術集会に先立つアニュアルレクチャーコースで最新の専門知識がアップデートできたこと、関節エコーライブ&ハンズオンセミナーといって、超音波検査の専門実習(参加者限定)で実践的なスキルアップができたこと、それに加えてMeet the Expertといって、特殊領域のエクスパートのレクチャーに続き、その講師を囲んで臨床に即した質疑応答(参加者限定)に参加でき、日常診療における専門的な課題の克服に大いに役立つ経験ができたからです。

 

そこで今月の木曜日のシリーズは4月14日(日)に開催された日本リウマチ学会総会2019アニュアルコースレクチャーの内容を、講義録のメモ〔講義録メモ〕をもとに要点を少しでもわかりやすく<まとめ>皆様にご紹介することにいたします。

 

アニュアルコースレクチャーは、2006年より、日本リウマチ学会の学術集会に併せて開催されています。リウマチ学会の中央教育研修会の中心となる7つの講演で、丸一日をかけて1年分のリウマチ医学の最新情報を得ようとするものです。

 

昔から難病とされてきた関節リウマチではありましたが、日進月歩の医学の発展により、関節リウマチの疾患活動性のコントロールも充分に可能な状況となりつつあります。そして、寛解状態を目指すことが現実的な治療ゴールになってきました。
とりわけ、関節リウマチの薬物療法の進歩は大学病院のみならずリウマチ専門医が勤務する地域のクリニックで高度な対応ができる時代になってきました。しかし、そこで重要なことは、やはり、早期に診断し、速やかに治療を行うことです。

 

医師免許や博士号などの学位とは異なり、専門医のタイトルは、常にアップデートな情報に触れ、新しい知識を取得しておくことが必須の条件になっています。また、社会環境の変化も重要です。なぜなら、社会が医療に求める内容は、日々めまぐるしく変わって、より高度で有益で安全なものが求められていくからです。それについても、絶えずアップデートされた知識や技術が求められていることを実感しています。

 

 

〔講義録メモ〕

<日本リウマチ学会総会2019アニュアルコースレクチャーのリポート⑤>

 

4月14日(日)


15:20~16:20

 

ACL7:高齢者関節リウマチの治療のコツ

 

演者:杉原毅彦(東京医科歯科大学生涯免疫難病学)

 

高齢者の定義:

75歳以上(歩行速度、握力)

フレイリティ(身体的虚弱)
1.体重減少
2.歩行速度低下
3.易疲労感
4.筋力(握力)低下
5.低活動

フレイリティ(身体虚弱症)3つ以上
プレ・フレイリティ(身体虚弱前症)1または2
ノン・フレイリティ(身体機能正常:非身体虚弱)該当なし

 

フレイルは可逆性のステージがあるので、不可逆性のステージに移行しないうちに発見し、支援する

 

 

関節リウマチ
1) 高齢者の有病率増加
2) 発症年齢のピーク60歳
3) 高齢者では急性発症例、関節破壊急速進行例、大関節型が多い

 

関節リウマチの治療目標
1) 疾患活動性のコントロール
2) 関節破壊振興抑制
3) 身体機能改善(仕事や趣味の継続)
4) 長期的予後の改善
5) 高齢者では身体的な虚弱(フレイル)の進行防止
6) 健康寿命の延長

 

高齢者関節リウマチの特徴と留意点:
病態の複雑化
合併症の増加
加齢に伴う変化
動脈硬化、心疾患、脳卒中、肺疾患、骨密度低下、変形性関節症、
認知機能低下、抑うつ、
サルコペニア、生理機能低下、免疫機能低下

 

高齢者関節リウマチ患者の薬物療法の注意点:
メトトレキサートを中心とした治療を実践しないと、副腎皮質ステロイド併用による関節破壊進行抑制効果は期待できない

 


TNF阻害薬、トシリズマブ、アバタセプトにおいて、高齢者関節リウマチと非高齢関節リウマチの治療反応性は同等である。
リウマチ性多発筋痛症との鑑別が難しい例がある。
末梢関節症状のある症例の50%が一年後に滑膜炎を伴ってくる。

 

予後不良因子
ACPA、疾患活動性

 

 

 

<まとめ>
このレクチャーは、関節リウマチに関するものではありますが、「高齢者」診療全般にとって有意義な内容でした。

 

75歳以上を高齢者と定義する流れができつつありまが、加齢に伴い個人差は拡大していきます。ですから、75歳以上を一括りに高齢者と定義するならば、75歳未満であれば、どれほど老化が進んでいても非高齢者ということになってしまいます。

 

個人差というバラツキを無視した平均値的な定義は、実臨床上は有害でさえあります。なぜなら、老化対策は75歳になってからでは遅きに失することがほとんどだからです。

 

他方においては、今月16日、政府の大綱で、政府は70代に占める認知症の人の割合を、2025年までの6年間で6%減らすとの数値目標を公表しました。現役世代の減少や介護人材の不足、社会保障費の抑制に対応するために認知症の予防促進を掲げており、その一環として初めて数値目標を設定したものです。しかし、これには確かな医学的裏付けがありません。これとて70歳になってからの認知症予防では、とうてい数値目標を達成することは不可能でしょう。

 

それでは、私たちはどのような心構えと対策を持ったらよいでしょうか。
それは、まずフレイル(身体的虚弱)対策です。基本は、歩行速度と握力です。歩行速度は、意識さえしていれば、他者と比べることができるでしょう。若い人たちと比べたり、同年配の人たちと比べたりしてみることも有意義です。また、定期的に握力を測定し、数値データとして記録を残しておくとよいでしょう。

 

杉並国際クリニックでは3カ月に1回のフィットネス・チェックを推進しています。それによって四季ごとの体調の変化を観察することができます。握力は全身の筋肉のパワーを反映することが知られています。

 

また知らず知らずのうちに身体的虚弱に陥っていないかどうかのチェックを定期的に行うことによって、有効な対策を講じることができます。体重の測定も重要な項目の一つです。

「最近、疲れやすくなった」といった主観的な症状もフレイルを評価するための重要項目です。

 

なお、関節リウマチは、若い女性でも発症しますが、60歳にもピークがあります。関節リウマチと診断されることによって、早い時期からフ適切なフレイル対策を始めることによって、長期的にて、一般の方より良い予後を得ることも不可能ではありません。
水氣道に参加している関節リウマチの方のお話を聞いていただければ、それが確かであることがわかるでしょう。

今年の日本リウマチ学会総会・学術集会は、これまでの中で、もっとも大きな収穫がありました。それは、学術集会に先立つアニュアルレクチャーコースで最新の専門知識がアップデートできたこと、関節エコーライブ&ハンズオンセミナーといって、超音波検査の専門実習(参加者限定)で実践的なスキルアップができたこと、それに加えてMeet the Expertといって、特殊領域のエクスパートのレクチャーに続き、その講師を囲んで臨床に即した質疑応答(参加者限定)に参加でき、日常診療における専門的な課題の克服に大いに役立つ経験ができたからです。

 

そこで今月の木曜日のシリーズは4月14日(日)に開催された日本リウマチ学会総会2019アニュアルコースレクチャーの内容を、講義録のメモ〔講義録メモ〕をもとに要点を少しでもわかりやすく<まとめ>皆様にご紹介することにいたします。

 

アニュアルコースレクチャーは、2006年より、日本リウマチ学会の学術集会に併せて開催されています。リウマチ学会の中央教育研修会の中心となる7つの講演で、丸一日をかけて1年分のリウマチ医学の最新情報を得ようとするものです。

 

昔から難病とされてきた関節リウマチではありましたが、日進月歩の医学の発展により、関節リウマチの疾患活動性のコントロールも充分に可能な状況となりつつあります。そして、寛解状態を目指すことが現実的な治療ゴールになってきました。

 

とりわけ、関節リウマチの薬物療法の進歩は大学病院のみならずリウマチ専門医が勤務する地域のクリニックで高度な対応ができる時代になってきました。

しかし、そこで重要なことは、やはり、早期に診断し、速やかに治療を行うことです。

 

医師免許や博士号などの学位とは異なり、専門医のタイトルは、常にアップデートな情報に触れ、新しい知識を取得しておくことが必須の条件になっています。また、社会環境の変化も重要です。なぜなら、社会が医療に求める内容は、日々めまぐるしく変わって、より高度で有益で安全なものが求められていくからです。それについても、絶えずアップデートされた知識や技術が求められていることを実感しています。

 

 

〔講義録メモ〕 

<日本リウマチ学会総会2019アニュアルコースレクチャーのリポート④>

4月14日(日)

13:10~14:10am

ACL5:リウマチ性疾患におけるリハビリテーション治療

演者:酒井良忠(神戸大学リハビリテーション機能回復学)

 

 

<2015年リウマチ白書>

リウマチ患者の70.3%がリハビリテーション治療を受けていない。

 

患者も医師もリハビリテーションの導入方法を見失っている。

 

その理由は、介護保険へシフトさせる医療政策のため、外来でのリハビリテーションの保険医療が極端な不採算部門と化してしまったことによる影響が大きい。

 

外来診療が中心となる関節リウマチ患者においては、とくに外来リハビリテーションを受けることが困難になってしまった。このように、極めて厳しい環境となってしまったが、関節リウマチ患者にとってトータルマネージメントを行う上でとても重要であることには変わりがない。

 

 

<関節リウマチのリハビリテーション治療>

治療効果のエビデンス:

多数の研究があり、評価のエビデンスレベルは高い。

 

痛みについて、患者教育、関節保護指導、レーザー治療、パラフィン浴以外の温熱療法は効果なし。

運動療法、コンディショニングは効果あり⇔水氣道®は鎮痛効果あり。

 

機能改善について、患者教育は短期的機能改善がみられる。

長期的機能改善は不明確⇔水氣道®では機能改善の長期的効果が観察されている。

関節保護指導には高い保護効果あり

運動療法は効果あり

作業療法では、3か月の自宅での手指の動作訓練は、手指機能を向上する.

 

 

関節破壊・変形について

運動療法は関節破壊の進行には影響しない

理学療法(運動療法と物理療法)

作業療法

嚥下障害

装具治療

 

基本は有酸素運動療法や筋力訓練が推奨⇔水氣道®は有酸素運動かつ筋力訓練

 

筋力訓練と有酸素運動(持久力運動)の複合運動コンビネーションで週2回80分行えば、疼痛改善、一般健康状態改善、筋力・久力増加、体重・体脂肪減少がみられる。

 

2週間に3回程度の低頻度のトレーニングでも、筋力、歩行速度、最大酸素摂取量の改善を期待できる。

 

最近では、コンディショニングエクササイズが注目させる。

これは、筋力訓練、有酸素運動、プライオメトリクス、

柔軟、実生活動作をベースとした複合的なメニューである。

 

システマチックレビューが一つある

健康状態(AIMS-2)、痛みの改善に有効である。

 

 

<まとめ>

多くを解説する必要がないくらい、具体的で有益な情報が集まっています。

 

ただし、残念なことは、現在の日本の保険医療システムのもとで、これらの研究の成果を活用することが事実上不可能であるということです。これらの最新の医学的知見に適合し、かつリウマチ専門医自らが参加して20年の実績を積み重ねてきたリハビリテーションメソッドは、水氣道®をおいて他にないということを自負しております。水氣道®にどれだけの意義と価値があるのかについては、継続的に参加されている会員に直接お尋ねいただくのが何よりだと思います。

今年の日本リウマチ学会総会・学術集会は、これまでの中で、もっとも大きな収穫がありました。それは、学術集会に先立つアニュアルレクチャーコースで最新の専門知識がアップデートできたこと、関節エコーライブ&ハンズオンセミナーといって、超音波検査の専門実習(参加者限定)で実践的なスキルアップができたこと、それに加えてMeet the Expertといって、特殊領域のエクスパートのレクチャーに続き、その講師を囲んで臨床に即した質疑応答(参加者限定)に参加でき、日常診療における専門的な課題の克服に大いに役立つ経験ができたからです。

 

そこで今月の木曜日のシリーズは4月14日(日)に開催された日本リウマチ学会総会2019アニュアルコースレクチャーの内容を、講義録のメモ〔講義録メモ〕をもとに要点を少しでもわかりやすく<まとめ>皆様にご紹介することにいたします。

 

 

アニュアルコースレクチャーは、2006年より、日本リウマチ学会の学術集会に併せて開催されています。リウマチ学会の中央教育研修会の中心となる7つの講演で、丸一日をかけて1年分のリウマチ医学の最新情報を得ようとするものです。

 

昔から難病とされてきた関節リウマチではありましたが、日進月歩の医学の発展により、関節リウマチの疾患活動性のコントロールも充分に可能な状況となりつつあります。そして、寛解状態を目指すことが現実的な治療ゴールになってきました。

 

とりわけ、関節リウマチの薬物療法の進歩は大学病院のみならずリウマチ専門医が勤務する地域のクリニックで高度な対応ができる時代になってきました。

 

しかし、そこで重要なことは、やはり、早期に診断し、速やかに治療を行うことです。

 

医師免許や博士号などの学位とは異なり、専門医のタイトルは、常にアップデートな情報に触れ、新しい知識を取得しておくことが必須の条件になっています。また、社会環境の変化も重要です。なぜなら、社会が医療に求める内容は、日々めまぐるしく変わって、より高度で有益で安全なものが求められていくからです。それについても、絶えずアップデートされた知識や技術が求められていることを実感しています。

 

 

〔講義録メモ〕

 <日本リウマチ学会総会2019アニュアルコースレクチャーのリポート③>

4月14日(日)

11:55~12:45am

 

ACL4:最近の副作用発現状況を踏まえたMTXの適正使用

演者:鈴木康夫(東海大学リウマチ内科学)

 

最近の関節リウマチ治療では、メトトレキサートをアンカードラッグとして高容量まで使用し、効果不十分であれば積極的に分子標的薬を併用することで、治療成績は画期的に向上した。しかし、最近の副作用に動向やリウマチ患者の高齢化などの背景から、今後は長期寛解維持後の免疫抑制の緩和が必要です。

 

メトトレキサートは単剤あるいは従来型合成抗リウマチ薬、生物学的製剤やJAK阻害薬との併用で、80%以上の関節リウマチ患者に投与されています。

 

メトトレキサートを週8㎎から週8㎎を超えて増量した場合、寛解症例の比率は約3倍増加し、特にメトトレキサート開始1年未満の症例では、その傾向が顕著でした。なお、2016年に改訂されたメトトレキサート診療ガイドラインでは増量の目標は週10~12㎎とする一方、増量のタイミングも迅速増量について言及し、より積極的な使用法を推奨されています。

 

 

メトトレキサートとの関連が否定できない死亡例の内訳:

感染症25.1%、骨髄障害24.0%、新生物(リンパ増殖性疾患:LPD)21.7%、間質性肺障害17.7%など

 

70歳以上が75%を占め、2年以上の服用例が約半数、メトトレキサート週10㎎以上の症例が35%でした。

 

感染症関連死に関して、死亡例を含む重篤な感染症の60%以上が生物学的製剤やJAK阻害薬の併用例、メトトレキサート週10㎎以上内服が36.7%でした。

 

重症感染症では、肺炎やニューモシスティス肺炎など急性感染症をはじめ、結核、真菌感染症、帯状疱疹・ヘルペス感染症、非結核性抗酸菌症などの慢性の日和見感染症も増加傾向にあります。

 

新生物(LPD)関連死では、70歳以上が53.8%、メトトレキサート週10㎎以上の症例は15.3%と少ないのに対して、2年以上服用例は54.4%(LPDとしての集計例中ではの88.0%)と多数に上りました。DLBCLが最多、次いでホジキンリンパ腫。

 

免疫不全との関連があるものでは100%

 

DLBCLでは自然退縮例もあり比較的良好であるが、ホジキンリンパ腫は退縮率が低く予後は不良。

 

イクティマブが未承認であるのが我が国の問題。

 

 

 

<まとめ>

当クリニックのリウマチ診療の特徴は、これまで、ほとんど生物学的製剤を行っていないということです。

 

その第一の理由は、関節リウマチを比較的早期に診断できていることです。メトトレキサート(リューマトレックス®)を単剤で使用しているか、あるいは従来型合成抗リウマチ薬を併用することによって良好なコントロールが得られているのは、何よりも早期発見と早期治療に負うところが大きいです。

 

第二の理由は、大学病院等のリウマチ専門外来で適切な治療を経験されて安定期を見換えてから当科を紹介されて来院され方の比率が多いからです。そうした患者さんの中で気になるのは、合併しやすい骨粗鬆症の治療や予防が放置されていることが多いことです。そのままでは将来、要介護状態に至ってしまうので、当科では、長期的展望に立って丁寧に、計画的なケアにて対応しています。

 

メトトレキサート(リューマトレックス®)を単剤で使用といっても、骨髄抑制の予防のため、当然ながら葉酸(ビタミンB群の一種)を用いる他、カルシウムなどのミネラル、ビタミンCやDなどのビタミン類、漢方薬を組み合わせることが有用であると考えています。その理由は最少量のメトトレキサート(リューマトレックス®)で、最大限の治療効果を挙げるための工夫をしているからだと思います。

 

第三の理由は、関節リウマチは先天的遺伝的な生まれつきの体質による要因よりも、後天的な生活習慣や環境因子に大きな影響を受ける病気であることを、患者さんにしっかりと伝えているからです。身体的ばかりでなく精神的なストレッサーも自律神経やホルモンや免疫の働きを損なうことはよく知られています。ですから、薬ばかりで直そうというのではなく、生活リズムをはじめとする習慣の改善の他、水氣道®など関節リウマチの患者さんに過剰な負担のかからないエクササイズ、聖楽院でのボイストレーニングなど、楽しく継続できる方法を導入していることも少なからず貢献できているものと自負しております。

今年の日本リウマチ学会総会・学術集会は、これまでの中で、もっとも大きな収穫がありました。それは、学術集会に先立つアニュアルレクチャーコースで最新の専門知識がアップデートできたこと、関節エコーライブ&ハンズオンセミナーといって、超音波検査の専門実習(参加者限定)で実践的なスキルアップができたこと、それに加えてMeet the Expertといって、特殊領域のエクスパートのレクチャーに続き、その講師を囲んで臨床に即した質疑応答(参加者限定)に参加でき、日常診療における専門的な課題の克服に大いに役立つ経験ができたからです。

 

 

そこで今月の木曜日のシリーズは4月14日(日)に開催された日本リウマチ学会総会2019アニュアルコースレクチャーの内容を、講義録のメモ〔講義録メモ〕をもとに要点を少しでもわかりやすく<まとめ>皆様にご紹介することにいたします。

 

 

アニュアルコースレクチャーは、2006年より、日本リウマチ学会の学術集会に併せて開催されています。リウマチ学会の中央教育研修会の中心となる7つの講演で、丸一日をかけて1年分のリウマチ医学の最新情報を得ようとするものです。

 

昔から難病とされてきた関節リウマチではありましたが、日進月歩の医学の発展により、関節リウマチの疾患活動性のコントロールも充分に可能な状況となりつつあります。そして、寛解状態を目指すことが現実的な治療ゴールになってきました。

 

とりわけ、関節リウマチの薬物療法の進歩は大学病院のみならずリウマチ専門医が勤務する地域のクリニックで高度な対応ができる時代になってきました。

しかし、そこで重要なことは、やはり、早期に診断し、速やかに治療を行うことです。

 

医師免許や博士号などの学位とは異なり、専門医のタイトルは、常にアップデートな情報に触れ、新しい知識を取得しておくことが必須の条件になっています。また、社会環境の変化も重要です。なぜなら、社会が医療に求める内容は、日々めまぐるしく変わって、より高度で有益で安全なものが求められていくからです。それについても、絶えずアップデートされた知識や技術が求められていることを実感しています。

 

 

〔講義録メモ〕

<日本リウマチ学会総会2019アニュアルコースレクチャーのリポート②>

 

4月14日(日)

10:40~11:40am

 

ACL3:リウマチ・膠原病医に知って欲しい妊娠前、妊娠中、授乳期における産婦人科的知識と診療

    

演者:斎藤 滋 先生(富山大学産科婦人科)

 

リウマチや膠原病は女性に発病することが多い疾患である。

 

40歳以降になると妊娠しづらくなり、体外受精でも出生率は5%、流産率も50%を超えるようになる。

 

疾患の活動性が高い状態で妊娠すると、流産、死産、早産、妊娠高血圧症候群、子宮内退治発育不全等の合併症を引き起こすことになる。関節リウマチの女性の不妊率は31.5%と高率である。

 

リウマチは寛解に達したら妊娠可能であり、妊娠率も向上する。

 

妊娠時には禁忌となる薬剤から許容できる薬剤に切り替えることが必要

しかし、計画妊娠する前に薬剤変更を行うべきである。

 

メトトレキサートは女性でも男性でも妊娠計画の少なくとも3か月前には中止することが推奨される。なお精子形成期間は90日である。

しかし、薬剤添付書に妊娠時や授乳時に禁忌と記載されている薬剤がほとんどであるので問題となる。

そのなかでも、タクロリムス、アザチオプリン、シクロスポリンの妊娠中禁忌が、有益性投与に変更になった。授乳中の禁忌はメトトレキサートのみである。抗TNF抗体製剤は母乳保育を中止する必要がないことが記載されるようになった。

 

 

<まとめ>

少子化は日本社会の抱える大きな課題の一つですが、妊娠・出産に対する過剰な制限が、こうした社会現象に拍車をかけているのであれば、医療者の責めは決して小さくはありません。

 

高円寺南診療所時代の30年間に、リウマチの診療は劇的な大変革を遂げましたが、妊娠希望のリウマチ患者さんには、東京女子医大をはじめとする高度専門医療機関を紹介せざるを得ませんでした。

 

幸い、新たな情報と指針に基づいくことによって、妊娠可能な女性のリウマチ治療薬の選択と支援は、杉並国際クリニックにおいても充分に対応することができるようになってきたことは、とてもありがたいことだと感じております。