転倒・転落による頭部外傷の危険性

―高齢者、特に抗血栓薬を服用中の患者の皆様のためにー

 

過去約10年間の外因死の原因を見ると、交通事故が減少する一方で転倒・転落が持続的に増加しています。転倒・転落のリスクは60歳以上の高齢者で急激に高まることから、転倒・転落は高齢者における主要な予後因子と考えられています。
 

60歳を境に急増するのが転倒・転落と同様に、心房細動(AF)です。AF治療に使われる抗凝固薬を服用している高齢者の割合は20人に1人、抗血小板薬は10人に1人に上ります。

 

抗血栓薬(抗凝固薬、抗血小板薬)を服用中の高齢患者では、服用していない高齢患者に比べて転倒リスクが有意に高いことがわかっています。

それに加えて出血病変を有する割合も有意に高いです。さらに受傷直後は問題なく会話ができていても、数時間経過した後に意識障害が出現し、症状が急速に悪化が生じる"Talk & Deteriorate"の頻度が、非服用者と比べ約2倍有意に高いというデータがあります。

 

こうした背景により、高齢者の転倒・転落、特に抗血栓薬服用者における頭部外傷は転帰不良となる可能性が高く、早期受診・治療がより重要です。早期治療を実現するには、一見軽症であっても速やかに頭部CTなどの画像検査を行う必要があるので、遠慮せずに早い段階で申告してください。

CT検査は外部の医療機関に紹介させていただくことになりますが、初回検査で出血所見が認められなかった場合、2回目以降に検出される確率は1%未満にとどまります。そのため初回検査が重要となり、CT検査を迅速に行うことが求められます。

抗血栓薬服用中の頭部外傷患者に対する初回頭部CT検査で頭蓋内出血が認められた場合は、軽症であっても24時間の経過観察入院が必須となります。

大学病院等では、抗凝固活性の中和を至急検討し、該当する中和剤がある場合はすぐに投与し、入院下で厳重な経過観察を行っているところもあります。そして中和処置により、抗血栓薬を服用していない患者と同等の予後が得られているとの報告があります。


 一方、抗凝固薬の投与を再開する時期も重要で高度な専門性が求められています。

その理由は症例ごとに血栓形成リスクと出血リスクという対抗するリスクの兼ね合いがあり、症例によりリスクの比重が異なるからです。

そのため、両者のリスクバランスを検討して抗凝固薬再開の有無および時期を決めるための提言(da Silvaら)が参考にされています。

このあたりの判断は一般の外来診療ではなく、入院管理下でなされるものです。

 

健康管理は、なるべく外来診療にて賄えるようにして、救急医療や入院医療などにいたらなくても済むような事前の具体的な対策が必要不可欠だと考えられます。

内科の重要な領域の一つである神経病学は、先日のテーマでも触れましたように、循環器病学と切り離して扱うことができません。それは、脳血管疾患において明らかです。

 

日本では高齢者が要介護となる原因の第1位は脳血管疾患です。中でも重症度が高いとされるのが、心房細動(AF)に起因する心原性脳塞栓症です。日本のAF患者数は増え続けており、来年(2020年)には105万人を超え、その後もさらなる増加が予測されています。

 

日本では70万人以上が心房細動を持っているといわれています。特に、心臓病や高血圧、慢性の肺疾患、甲状腺機能亢進症のある人に多くみられますが、心臓に病気のない人でも精神的ストレスや睡眠不足、アルコールやカフェインの摂りすぎ、不規則な生活などが原因となって引き起こされます。
 

 

また要介護原因の第4位(約12%)が骨折・転倒です。転倒は60歳を超えると急増し、転倒・転落による死亡者数は交通事故死を上回ります。転倒・転落による外傷で最も注意すべきは頭部外傷であり、65歳以上の重症頭部外傷患者の約30%が抗血栓薬を服用しています。65歳以上の重症頭部外傷患者における転帰良好の割合は約15%、死亡率は約44%にものぼるので、65歳未満に比べて明らかに転帰不良です。
 

 

頭部外傷の原因で最も多いのも転倒です。では、転倒場所はどこが多いでしょうか。

東京消防庁のデータによると、圧倒的に自宅内が多いです。家の中での転倒は、滑り止めや手すりを付けることで防げるかもしれません。 

ご本人やご家族の努力により少しでも救命率が上がる可能性があるため、家の中での転倒を防ぐことができれば、そもそもけがをせずに済むかもしれません。

 

杉並国際クリニックが水氣道®を主宰し、積極的に推奨しているのも、有酸素運動による動脈硬化予防(心臓病や高血圧による心房細動の予防を含む)のために、単なるパワーやスタミナ増強だけではなく、平衡感覚を訓練して、転倒防止等をも視野に入れているからなのです。

杉並国際クリニックでしばしば実施している検査の一つに頸動脈エコー検査があります。これは、心臓と脳を繋いでいる頸動脈という重要な動脈の変性病変(特に動脈硬化)を評価するうえで有用性が高い検査です。

 

さて私たちの身体は、血液から必要な酸素や栄養素などを取り込むことによって、元気に活動することができます。その血液を運ぶための交通路として、大切な役割を担っているのが血管です。喉の両側にある2本の頸動脈は主要な血管の一つで、内頸動脈と外頸動脈に分かれています。内頸動脈は大脳へ、外頸動脈は顔へと血液を運んでいます。
 

頸動脈の血管にコレステロールなどがたまり、動脈硬化によって血管が狭くなった状態を「頸動脈狭窄症」、詰まった状態を「頸動脈閉塞症」と呼んでいます。
頸動脈狭窄症や頸動脈閉塞症になると、脳梗塞(アテローム血栓性梗塞)を発症する危険性が高まります。

 

頸動脈狭窄症にかかりやすい(黄色信号)が現れているかどうかのセルフチェック!

 

この病気が怖いのは全く症状が出ない人が4人に1人くらいの割合でみられることです。

 

以下に挙げた項目は、「頸動脈狭窄症」の危険因子といわれるものです。これらの因子を持っていると、それだけリスクも高まります。下記の項目にあてはまる人は、危険因子を一つでも減らすことを心がけるとともに、頸動脈の状態を確認しておきたいものです。

 

 

以下の項目のうち2つ以上該当する場合には、頸動脈エコー検査を受けていただくことをお勧めいたします。

 

  中高年男性である
  高血圧症にかかっている
  糖尿病にかかっている
  高脂血症にかかっている
  毎日お酒を飲んでいる
  タバコを吸っている

 


脳梗塞の前触れ(赤信号)を見逃さない!
頸動脈が狭くなった状態でも、脳梗塞を発症する前に前触れのような症状が起こることがあります。この黄色信号を見逃さないことが何よりも重要です。

 

以下の症状が一つでもあり、その症状があらわれて数分後に消える場合は、速やかにご相談ください。

  ろれつが回らない
  片側の手や足に力が入らない
  半身にしびれがある
  左右どちらの目で見ても真ん中から
     半分の視野がかける(半盲)

 

<はじめに>

 

前回は「口内炎」に効果のあるツボを紹介しました。

 

 

「衝陽(しょうよう)」は第二指と第三指の間で足の甲の出っ張りの真上にあり、

 

 

「太白(たいはく)」は足の親指の内側、骨が出っぱっているところの後ろにあり、

 

 

「女膝(じょしつ)」は踵と足首の間のくぼみでアキレス腱のいちばん下にあります。

 

 

今回は「ドライマウス」に効果のあるツボを紹介します。

 

 

 

<ドライマウスに効果のあるツボ>

 

 

今回は「頬車(きょうしゃ)」「耳門(じもん)」を紹介します。

 

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「頬車」は下顎のエラから1cm程上のくぼんだところにあります。

 

 

「耳門」は耳の穴の前にある突起(耳珠)のやや上にあるくぼみに位置します。

 

 

特に「頬車」は効果があります。痛くない程度に指圧してみてください。

 

 

唾液がたくさん出ますよ。

 

 

 

杉並国際クリニック 統合医療部 漢方鍼灸医学科 鍼灸師 坂本光昭

関節リウマチで当院通院中の40代の女性が、他の病院の人間ドックで肝機能障害を指摘され、その原因はリウマチの治療薬によるものではないかと疑って相談を受けました。

 

まじめに内服を続けられ、治療反応も良好であったため、使用していた2種類の抗リウマチ薬のうちメトレキサートは1週間に1回1カプセル(2㎎)のみとなり、サラゾスルファピリジンも通常投与量の半量(1日500㎎)でコントロール可能となっておりました。

 

本人は一切飲酒せず、正常体重であり、まずアルコール性肝障害は除外され、また生活習慣病による脂肪肝の可能性は低いうえに、ウイルス性肝炎でないことはすでに確認済みでした。

そのため、少量投与とはいえ本人が内服している抗リウマチ薬(メトレキサートとサラゾスルファピリジン)のいずれか、あるいは両方による薬物性肝障害を疑うのも尤もです。

確かに、いずれの薬剤も注意すべき副作用として肝障害が挙げられているため、無理はありませんでした。

 

自己免疫性肝炎では20%程度が肝硬変であり、3~5%に肝細胞癌が合併します。幸い、腹部超音波検査では、脂肪肝等は見出せず、肝硬変や肝癌の所見もありませんでした。

 

追加して実施した血液検査では、抗核抗体640倍(基準値≦40倍)、IgG3,280㎎/dl(基準値≦1,700)でした。抗核抗体は、全身性エリテマトーデス(SLE,陽性率ほぼ100%)、混合性結合組織病(同ほぼ100%)、全身性硬化症(80-90%)、シェーグレン症候群(70-90%)、多発性筋炎/皮膚筋炎(50-80%)では陽性率が高く、関節リウマチ患者でも40%程度に見られます。

 

この患者さんの肝機能障害の原因が、薬物性肝障害なのか、自己免疫性肝障害なのかの臨床的鑑別は困難であるため、転院先の病院で肝組織検査を受けていただくことになりました。

 

組織による病理検査によって、自己免疫性肝炎の診断が得られ、副腎皮質ステロイド薬の内服が開始されました。

その間、抗リウマチ薬は継続しておりましたが、肝機能は徐々に改善していったようです。

ただし、副腎皮質ステロイド薬の長期投与は、必然的に骨粗鬆症(ステロイド骨粗鬆症)を招くことになるため、新たな副作用対策が必要となります。

 

遠方への転居のため更なる転医をされたために、連絡が途絶え、その後の経過は不明です。

あらゆる肝障害、とりわけ急性あるいは慢性の肝障害を見出した場合に常に念同に置くべき肝疾患の一つが自己免疫性肝炎です。

これは中年以降の女性に好発する慢性肝炎で、その発症に自己免疫機序が関与すると考えられていますが原因不明です。

 

そして自己免疫性肝炎には特異的な診断根拠となる検査はないため、国際診断基準などをもとに診断します。

その過程の中で、肝障害をもたらす他の原因を除外する必要があります。

そのなかで、もっとも苦慮するのが薬物性肝障害です。その理由は、薬物性肝障害も、やはり除外診断をしながら診断基準から推定していくからです。

 

また、自己免疫性肝炎症例の約1/3に他の自己免疫性疾患の合併が認められ、慢性甲状腺炎(橋本病)、シェーグレン症候群、関節リウマチなどがその代表です。

 

そのため、私は、は、自己免疫性肝炎とは、アレルギーやリウマチ膠原病の専門知識があって、かつ、すべての肝障害を熟知していなければ診断できない、極めつけの肝炎であると考えています。

 

典型的な自己免疫性肝炎であれば、少なくとも抗核抗体もしくは抗平滑筋抗体が陽性、免疫グロブリンIgG高値となります。

しかし、やっかいなことに、抗核抗体が低力価(もしくは陰性)かつIgGも正常な症例もあるので、それだけでは診断の決め手にはなりません。

つまり、血液検査情報だけでは、診断を絞り込むことは困難です。そのような場合は、肝組織検査が必須となり、入院設備を持つ病院へ紹介する必要があります。

 

自己免疫性肝炎の予後は、治療例では進行例が少なく死亡率も高くないため一般的には良好です。しかし、複数回の再燃を繰り返す症例や無治療例では進行は早く、肝硬変に進展することも稀ではありません。

 

それでは次回は、実際に経験した自己免疫性肝炎の症例について振り返ってみたいと思います。

 

<明日につづく>

私が医学生だった頃には、おそらく非B非C型肝炎として一括りにされたウイルス性肝炎が、その後、次々に同定されました。その一つがE型肝炎です。

 

30年以上も外来診療を続けてきた間に、ひょっとすると一例ぐらいは紛れ込んでいた可能性は否定できませんし、今後は遭遇する可能性が増えるのではないかと考えています。

 

急性E型肝炎の診断にはIgA型HEV抗体(定性)が保険診療で検査することが可能になったのは2011年からです。つまり、言い換えれば、2011年以前では、たとえ急性E型肝炎を疑ったとしても、日常診療で診断を確定することは、実際上不可能であったということになります。

 

従来、E型肝炎は熱帯、亜熱帯地域でウイルスが混入した糞便に汚染された水を摂取することにより感染すると考えられていました。

そして南アジアでは雨季の洪水後の井戸水汚染がHEV流行に寄与して、水系感染を増やしています。

地球の温暖化や輸入食肉の増加による日本での発生の影響を懸念します。

ただし、日本では、水系感染よりもE型肝炎ウイルス(HEV)に感染したブタ(肉やレバーを含む)、イノシシ、シカなどの食肉を十分加熱調理しないで経口摂取して感染した事例が報告され、人畜共通感染症として注目されるようになりました。

 

臨床的にはA型肝炎と類似点が多いです。潜伏期は15~50日(平均6週)で、E型急性肝炎は高齢者で重症しやすいようです。

 

 

HEV感染により劇症肝炎を発症して死亡する割合は1~2%ですが、水系感染を含めて妊婦が感染すると死亡率が10~20%に上昇するという報告もあります。

豪雨による河川の氾濫などによって、どのくらいリスクが増えるのかも気になるところですが、確かなデータはありません。

 

E型肝炎は感染症法では4類感染症に指定されているため、診断した医師はただちに届け出る義務があります。

 

40代男性。最近、筋力低下骨の痛みが生じたため、痛風やリウマチを疑い当科の受診となりました。

 

症状や経過が典型的な痛風でも関節リウマチでもないため、最初は関節リウマチ以外の膠原病や神経疾患を疑いました。病的反射を含め神経系統の異常は認めませんでした。

 

血圧は正常でしたが、尿検査で糖(+)でした。

そこで、詳細な問診を行なうと、これまでに血糖値が高いことはなかったし、糖尿病も指摘されたことが無いとのことでした。

ただし、B型慢性肝炎で某大学病院の消化器科の肝臓病専門医を定期受診していることがわかりました。

 

薬についてお尋ねすると、抗B型肝炎ウイルス薬であるアデホビル(ヘプセラ®)ラミブジン(ゼフィックス®)の併用療法であることが確認できました。これはラミブジン治療で耐性が生じたために、アデホビルの併用を開始したものと想定しました。

 

ラミブジンは長期投与で耐性ウイルスの出現(5年で70%)と副作用の問題があるため、現在では第一選択薬としては用いられなくなりました。

耐性というのは病原体に対する薬が効かなくなるということです。しかし、アデホビルで初期治療をはじめても5年で30%の耐性が生じてしまいます。そのため、近年のガイドラインでは最初から両者を併用することによって耐性出現を減らすように推奨しています。

 

なおアデホビルの副作用として肝臓病専門医が常に念頭に置いているはずなのが、腎機能障害(近位尿細管障害)低リン血症です。

 

低リン血症は通常無症候性ですが,重度の慢性欠乏状態では食欲不振,筋力低下骨軟化症が生じる可能性がある他、重篤な神経筋障害が起こることがあり、これには進行性脳症、痙攣、昏睡、死亡が含まれるため看過できません。

 

この患者さんは、筋力低下、骨の痛みとB型肝炎治療薬との関係性はまったく想起していなかったため、忙しそうな肝臓病の担当医に報告せずにいたようでした。

 

血液検査の結果、肝機能や空腹時血糖値はほぼ正常範囲、HBV(B型肝炎)のDNAも検出できませんでしたが、血清クレアチニンの上昇(⇒腎機能障害)および血清リンの低下(=低リン血症)が確認されました。

 

アデホビルによって腎の近位尿細管が障害されると低リン血症の他、ファンコーニ症候群を呈することがあります。

 

リン、尿酸などとともにブドウ糖の再吸収障害が生じるため、尿検査で糖が検出されたことが説明できます。低リン血症が生じると骨軟化症から骨折、骨痛筋力低下などが生じます。

 

以上の検査結果に所見を加えた報告書を患者さんから担当の肝臓病専門医にお渡ししたところ、感謝のお手紙が届きました。

 

 (図1)

スクリーンショット 2020-01-07 時刻 12.46.41

JFIQは線維筋痛症の経過観察に欠かせない指標です。

 

 

最高点が100点で、20点未満が正常値になります。

 

 

 (図1)は左側が初期時の点数、右側が現在の点数でその2点を結んだものです。

 

 

 図2)

スクリーンショット 2020-01-07 時刻 12.46.20

 

 

 

(図2)は線維筋痛症の治療効果の割合を表したものです。

 

 

 50以上点数が下がると「著効」です。

 

 

 20以上50未満点数が下がると「改善」です。

 

 

 20未満の点数の低下は「無効」の判定となります。

 

 

<今回の考察>

 

 

正規性の検定で初期値、現在値共に正規性がありました。

 

 

その後、関連2群の検定と推定を行いました。

 

 

1)統計的にみて、JFIQスコアが有意に改善したことが証明されました。P(危険率)=0.001%でした(図1)

 

 

pが0.05以下であれば統計学的優位である。

 

 

pが0.01以下であれば統計学的に極めて優位である。

 

 

2)JFIQスコアの判定基準として、20点以上改善されると治療が有効、50点以上改善されると著効となります。

 

 

  今回、 14名の平均で  32.6点改善していたため、全体として鍼治療は   有効であったと言えます。

 

 

個別でみると、著効3名(16.7%)、有効8名(44.4%)、無効3名(16.7%)でした。(図2)

 

 

 

杉並国際クリニック 統合医療部 漢方鍼灸医学科 鍼灸師 坂本光昭