わが国医学界・医療界の忌々しき課題
特論4<我が国の医学と医療の現状>
続・勇気ある学会発表、新型コロナワクチン副反応例3発表!
(第32回日本リウマチ学会関東支部学術集会抄録集から)
今週末の10日(土)・11日(日)に、六本木にて上記学会が予定されています。
ちょうど同じ期日に秋葉原にて日本アレルギー学会関東支部の学会も重なるため、私は<はしご>をすることになります。
とりわけ、10日(土)8:10からの一般演題2(RA・ワクチン)のセッション(座長:東京大学大学院医学系研究科整形外科、田中栄先生)の6演題のうちの3演題は新型コロナワクチンの副反応に関する発表です。
本日は、2例目です。
O2-4:新型コロナワクチン接種後に発症したIgG4関連疾患の1例
<東京大学医科学研究所付属病院アレルギー免疫科、青地翠己ら>
前回紹介したTAFRO症候群ほどではないにしても、今回のIgG4関連疾患もありふれた病気ではありません。一般の方はほとんど耳にすることはないかもしれません。そこで、まず概略の説明を試みます。
IgG4関連疾患とは、大雑把に言えば全身諸臓器が腫大しする特殊な慢性炎症性疾患です。この病変は組織で結節の形成や肥厚を来します。その背景としてリンパ球や特殊な形質細胞(抗体を産生し分泌するBリンパ球由来の細胞)が著しく組織を浸潤し線維化がみられます。
原因はよくわかっていません。抄録によれば、患者は心房細動の治療中の78歳の女性で、新型コロナワクチンの2回目の接種を受けて2週間後に発症したとのことです。このようなケースの多くは、臨床報告されずに放置されるか、あるいは、新型コロナワクチンの接種との関連性を積極的には疑わないようにする風潮があることを鑑みるならば、勇気ある症例報告であると評価したいです。
特殊な形質細胞と説明したのは、この形質細胞が免疫グロブリンの一種であるIgG4(免疫グロブリンGの一種)に陽性となる性質をもつからです。
この症例報告によると、この症例(患者さんのこと)の受診のきっかけは、両側の顎の下が徐々に腫れてきたことであるようです。
両側の下顎部の腫脹を診る場合は、通常、唾液腺炎やリンパ節炎などの炎症や悪性リンパ腫などを疑うことになります。
診断の端緒は血液検査であったようです。高IgG4血症とは、血液中のIgG4の濃度が異常高値を示す検査所見名であり、特定の病名ではありません。通常5種類とされる血清免疫グロブリンの中で最も高濃度なのがIgGなのですが、その成分であるIgG4が著増する病態は比較的限られているため、診断の手掛かりになります。
IgG4関連疾患の包括的診断基準(厚労省、2011年)によると、高IgG4血症とは135㎎/dl以上としていますから、この症例の1,100㎎/dlというデータは顕著な高IgG4血症であるということになります。
もっとも、臨床的には臓器(単一か複数かを問わない)に特徴的な腫大(びまん性か限局性かを問わない)、腫瘤、結節、肥厚性病変を認めることが前提条件です。
上記のように、臨床症状と高IgG血症とが確認されれば、IgG4関連疾患(疑診群)とされます。確定診断のためには、さらに病理組織診断が必要になります。しかし、患者本人の同意が得られなかったため、顎下腺生検は実施されなかったと報告されています。
検査において病理像が特徴的であり、診断価値が高いのではありますが、画像診断としてCTで病変部位(両側の顎下腺および膵臓)の腫大が確認され、さらにFDP-PET検査での陽性所見が得られていることは、診断の根拠を支持しているといえるでしょう。
この疾患は原則としてステロイド治療が有効とされます。幸いこの症例もプレドニゾロン(ステロイド剤)が著効したようです。
さて、この報告を勇気ある症例報告と評価したのには、抄録本文に発表者の心理的葛藤を読み取ることができるからです。
この症例報告も〔利益相反の有無:無〕と標示されていますが、私は疑問を感じます。
患者が接種した新型コロナワクチンのタイプを明記するのが、抄録とは言え学術報告の常識と言えるのではないかと考えるからです。しかも、ワクチン接種は2回目であるとすれば、1回目のワクチンの銘柄も記載していただきたいところです。それを加筆しても文字数の制限を超えることはありません。
また、〔考察〕においては不要と思われる根拠の乏しい感想文が加えられています。
<新型コロナワクチンは世界中で接種が行われ>この前振りは厳密ではないとしても許容範囲ですが、<COVID19の重症化や死亡率低下に大きく貢献した。>とのコメントには疑問を感じます。
素人相手のプロパガンダであれば良くあるお決まりのフレーズですが、フロアに出席しているのは専門医であることをお忘れなのでありましょうか?この文言は論理の飛躍であるだけでなく、十分な根拠に乏しい感想文に過ぎません。
むしろ、これらの共同演者たちに過剰な忖度(そんたく)を強いているのは何者なのかという背景を知りたいところです。
<一方で、稀ではあるが新型コロナワクチン接種後の免疫疾患発症の報告も増えつつある。>という警告こそが彼らの良心であると考えたいところです。
抄録だけに頼って、これ以上の追求したくはないというのが率直なところなのですが、<稀ではあるが>という文言も、私には一種の忖度の、婉曲的表現であるように感じられてなりません。
たしかに、新型コロナワクチン接種後にIgG4関連疾患という限定された疾患が発症することは稀であるかもしれません。しかしながら、新型コロナワクチン接種後の免疫疾患全体の発症頻度という括りに対してまでも<稀である>と言い切ることは難しい現状になりつつあると考えます。
免疫疾患の概念や、副反応の病態メカニズムやについて不得手な医師にとっては、新型コロナワクチンによる副反応の発生は<稀である>と判断してしまっても已むを得ないところです。しかし、専門医、とりわけ、そのエキスパートまでが、真に<稀である>と考えているとは信じがたい、というのが現時点での私の個人的な見解です。
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