臨床産業医オフィス
<高円寺南労働衛生コンサルタント事務所>
産業医・労働衛生コンサルタント・第一種作業環境測定士・衛生工学衛生管理者
飯嶋正広
<先月から、当面の間、職場の健康診断をテーマとして、産業医紹介エージェント企業各社が提供しているコラムを材料として採りあげ、私なりにコメントを加えています。>
産業医紹介サービス企業各社が提供する<健康診断>コラム
No2.ファースト・コール提供資料から(その4)
長時間労働がもたらすリスクと企業における解決策
2022-05-27
勤務問題を原因・動機とする自殺者の状況
職場での勤務問題によって自殺に至るケースも見られています。勤務問題を原因・動機とする自殺者は、2022年の自殺者総数の9.1%を占めており、“被雇用者・勤め人”の自殺者数は 6,742人にも上ります。
画像引用元:厚生労働省『令和3年版 過労死等防止対策白書』
また、自殺の理由として推定されている勤務問題を見ると、“仕事疲れ”が全体の26.6%を占めていることが分かりました。
画像引用元:厚生労働省『令和3年版 過労死等防止対策白書』
このような過重労働によるリスクを防止するためには、残業削減をはじめ、職場における健康管理体制を整備することも重要だと考えられます。
出典:厚生労働省『令和3年版 過労死等防止対策白書』
企業における長時間労働の解決策
過重労働による健康被害や事故、自殺などのリスクを防止するためには、長時間労働の削減に向けた具体的な取組みが不可欠です。
ここからは、長時間労働の削減に向けた2つの解決策を紹介します。
①従業員の労働時間を管理する
使用者には、従業員の労働時間を適正に把握する義務があります。従業員の始業・終業時刻を現認して確認するとともに、客観的な方法で記録することが重要です。
労働時間を適正に管理することで、長時間労働の状況や法令違反の有無を把握できる体制を構築できるようになります。
▼労働時間を記録・管理する方法
• タイムカードで始業・終業時刻を記録する
• パソコンの使用時間を記録する
• 勤怠管理システムを利用して残業時間を管理する
これらのような方法で労働時間を見える化することで、残業が多い従業員に対して、業務内容やスケジュールの調整を行うことが可能になります。特定の従業員に労働負荷がかかることを防ぐことで、病気や事故などのリスク削減へつなげられます。
なお、従業員の自己申告と実労働時間に乖離(かいり)がある場合、使用者は実態調査を行う必要があります。
出典:厚生労働省『労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン』『「過労死等ゼロ」緊急対策』
②業務方法・取引慣行を見直す
生産性を向上しつつ、長時間労働をなくすためには、現状の業務方法や取引慣行を見直して効率化を図ることも重要です。
まずは、従業員の業務内容や進め方を可視化して、非効率な工程、時間のかかっている業務などがないか、現状課題を洗い出しましょう。現状課題を踏まえて業務方法や取引慣行を見直すことで、業務効率の向上を図れます。
現状課題の洗い出しから改善策を講じるまでの例は次のとおりです。
▼具体例①
• 課題:上司への承認依頼から承認を得て次の作業に進むまでにタイムラグがある
• 改善策:ITツールを導入して、オンラインで承認できるフローを構築する
▼具体例②
• 課題:データの入力や計算を手作業で行っていて、定型業務に時間がかかる
• 改善策:RPA(Robotic Process Automation:ロボットによる業務自動化)を導入して入力や計算作業を自動化する
出典:厚生労働省『働き方改革~一億総活躍社会の実現に向けて~』/総務省『RPA(働き方改革:業務自動化による生産性向上)』
産業医からのコメント
産業医にとっての究極の課題は、担当企業における業務関連での死亡者を発生させないことにあります。勤務問題を原因・動機とする自殺者は、2022年の自殺者総数の9.1%を占め、自殺の推定理由が“仕事疲れ”が全体の26.6%を占めていたというデータは、従業員の労働内容の量(労働時間)および質(業務効率)の両方に注意を払う必要があることを示唆しています。
そもそも、使用者には、従業員の労働時間を適正に把握する義務があります。そこで、労働時間を適正に管理することで、長時間労働の状況や法令違反の有無を把握できる体制を構築することが前提となります。
また、従業員の業務内容や進め方を可視化して、非効率な工程、時間のかかっている業務などがないか、現状課題を洗い出し、重要度および緊急度などを考慮して、解決に向けての対策を立案し、コツコツと実践して行けるように促すことも、産業医にとって大切な役割であると考えております。
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