武蔵野音大別科生の手記

 

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聖楽院主宰 テノール 

飯嶋正広

 

第9回レッスン(6月7日)から第11回レッスン(6月21日)まで

 

#1.ロシア・ロマンス

<нет,толькотот,ктознал...>

(憧れを知る者のみが...)

 

昨年末に、すなわち別科受験の前に、岸本先生からいただいた最初の課題曲。国立音大AIセンターや二期会の稽古場でもレッスンを受けた思い出深い作品です。私は、この曲によって、チャイコフスキーの歌曲(ロマンス)に入門しました。

 

別科に進学してからも稽古は続きましたが、早くも第2回レッスン(4月19日)に、私はピアノ伴奏の王さんと共に入門級合格をいただき、いったんお蔵入 りさせて、自然発酵をさせておく、ということになっていました。

 

しかし、第9回レッスンの際に、岸本先生から、門下のコンサート(練馬区大泉学園ゆめりあホール:8月22日<月>)出演のお許しをいただくことになったため、第10回レッスンから稽古復活となりました。

 

 

#2.ロシア・ロマンス

<Oтчего?...>

(何故?)
  

慣れないロシア語の発音に伴う活舌の悪さが次第に修正され、表現をのせてレガートに歌えるようになってきました。一応の基礎ができたため、毎週の稽古は第5回(5月10日)のレッスンでいったん終結。お蔵入りさせて、自然発酵を待ちましょうとのご指導でした。そして、今後は、演奏の機会などの必要に応じて、その際におさらいすることにしましょうということになりました。

 

これは、#1(憧れを知る者のみが...)に続く第2曲目の準備完了ですが、門下生コンサートでの演奏候補曲であるため、同様に第10回からレッスン復活となり、継続レッスン中です。

 

 

#3.<Cредь шумного бала.>

  (騒がしい舞踏会の中で...)

 

ロシア語のアクセントと拍節感がそのまま楽曲になっているように感じられてきました。まだわずかですが、馴染みになってきたロシア語がちらほら見出され、その語感と意味、イメージが音楽と結びついていくようになることを目指していました。しかしながら、私の解釈は底が浅く、不適切な表現でした。岸本先生からは、もっとドルチェに歌うようにアドバイスを受け、そのように歌うことによって、このロマンスの素晴らしさを、より実感することができるようになったような気がします。
この曲も、門下生コンサートでの演奏候補曲です。

 

 

#4.<Cеренада дон-жуана>

  (ドン・ファンのセレナード)

 

この曲は、私にとってはオペラ・アリアに匹敵する大曲です。しかしながら、芸術歌曲であるため、丁寧にレガートに歌わなければならない作品です。焦らずコツコツ、じっくりと鍛錬していくしかないと観念して稽古を続けていきましたが、ドン・ファンのキャラクターが浮き彫りになるような表現が必要であるとの岸本先生からのご指導を受けました。
   

この曲の習い始めの段階では、私の発声法はオペラ・アリアを歌うような表現になっているので、端正に歌曲を歌うようにとのご指導を受けていたために慎重に歌い過ぎて、かえってドン・ファンのキャラクターを殺してしまっていたようです。
   

声楽のレッスンは、このようにらせん階段状に習得していくのがよいのかもしれません。歌詞が自然に心身に馴染んでくるまでは、丁寧に、慎重に基本骨格を組み立てていき、その上に、表現を載せていくという構築の仕方が効果的であるということを実体験できたように思います。