最新の薬物療法

 

前回はこちら

 


認定内科医、認定痛風医

アレルギー専門医、リウマチ専門医、漢方専門医

 

飯嶋正広

 

肝疾患の治療薬について(No4)

 

<中高年女性に多発し、肝疾患の中にはアレルギー・リウマチ・膠原病科と密接な関係がある疾患も存在>

 

薬物性肝障害と自己免疫性肝障害

 

薬剤性肝障害の大部分はアレルギー性であるため服用前の予測は困難です。

また中毒性の代表例はアセトアミノフェンであり、これは容量依存的に肝毒性をきたします。

 

薬物性肝障害の診断のためには、まず肝障害が存在することを前提として、その後は除外診断が必要であり、

 

1)肝炎ウイルスマーカーが陰性であること、

 

2)超音波など画像診断、

 

3)飲酒歴の確認、

 

4)血清・生化学データで閉塞性黄疸、アルコール性肝障害、自己免疫性肝障害を否定できること

 

が必要です。

 

なお好酸球数の増加(6%以上)は薬剤性との診断を支持します。

 

服薬開始後5~90日の場合が多いが、それより長期でも否定はできません。

 

薬剤性肝障害が疑われれば、服用中の全ての薬を原因として疑います。

 

原因薬物の中止が基本であり、経過により、肝庇護薬、ステロイドなどが使われます。

 

 

自己免疫性肝炎(AIH)

 

これは慢性活動性肝炎であって、自己免疫が関与する疾患です。

 

すなわち、免疫学的な異常を伴い、血清学的には免疫グロブリンのなかで、IgGまたはγ-グロブリンが高値となります。また、自己抗体としては、抗核抗体・抗平滑筋抗体・LKM1抗体などを認めます。

 

中高年の女性に多く見られます。

 

診断は「自己免疫性肝炎(AIH)」診療ガイドライン(2016年)」などに基づき、他の原因を除外することでなされます。

 

治療は副腎皮質ステロイド(PSL)(プレドニン®)(註1)など免疫抑制薬が第一選択です。なお、副作用などで、やむを得ず中止する場合は免疫抑制薬のなかでプリン代謝拮抗薬であるアザチオプリン(イムラン®、アザニン®)(註2)あるいは胆汁酸利胆薬であるUDCA(ウルソ®)(註3)を使用します。

 

予後は上記治療により決定するため、肝生検による診断後に肝臓専門医の下で治療を開始します。

 

服薬中止により再発、急性増悪をみることが多く、生涯にわたり服薬を続ける必要があります。

 

(註1)副腎皮質ステロイド(PSL)(プレドニン®)

(註2)プリン代謝拮抗薬アザチオプリン(イムラン®、アザニン®)

(註3)胆汁酸利胆薬UDCA(ウルソ®)

 

 

原発性胆汁性胆管炎(PBC)
 

慢性胆汁うっ滞性疾患の一つです。

 

この疾患も中高年女性に好発します。

 

症状として、痒みがあります。

 

合併症:骨粗鬆症

 

診断は、以下の3項目のうち2項目を満たせば可能です。

 

1) 慢性の胆道系酵素上昇

 

2) 抗ミトコンドリア抗体(AMA)陽性

 

3) 特徴的な組織学的所見:慢性非化膿性破壊性胆管炎(CNSDC)など

 

治療は、UDCA(ウルソ®)が第一選択薬です。

なお、効果不十分で、脂質異常症が認められる場合にはベザフィブラート(ベザトール®)を用いることがあります。また、痒みに対して、選択的κ受容体作動薬のナルフラフィン(レミッチ®)が効果的です。この薬剤は、PBCに限らず、慢性肝疾患に伴う痒みに用いられています。

 

また、合併症である骨粗鬆症に対しては、食事療法(カルシウム、ビタミンD)と運動療法が勧められます。また、ビタミンD製剤(ワンアルファ®、エディロール®)ビスホスホネート製剤(リカルボン®、フォサマック®、ダイドロネル®)、ビタミンK₁(カーチフN®、ケーワン®)などが投与されます。

 

上記の内で、当クリニックでの処方頻度が高い薬剤には下線を施しました。