『嘱託産業医』の相談箱

 

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臨床産業医オフィス

<高円寺南労働衛生コンサルタント事務所>

 

産業医・労働衛生コンサルタント・第一種作業環境測定士・衛生工学衛生管理者

 

飯嶋正広

 

 

企業の禁煙推進戦略 No.5

 

職場は、適切な組織的対策が求められている!

 

Q5.衛生担当者からは、どのようなアプローチが求められますか?

 

禁煙サポートには、人事部と衛生管理者をはじめ衛生委員会参加者と産業医が連携して進めることが良いと思います。そして、禁煙成功者に禁煙促進員(ファシリテータ)に加わっていただくことも有効です。


安全衛生委員会の委員の中にも、当然、喫煙者の方が参加されている可能性はあります。私が、禁煙対策について地道なサポートを続けていく過程で、そうした喫煙者であった委員の方から禁煙成功のご報告を受けることがしばしばあります。

 

私のように喫煙歴のない産業医より、禁煙に成功した元喫煙者の方の方が影響力が大きいことをしばしば実感します。ですから、そうした禁煙成功者を禁煙推進者として活躍していただきことはとても有意義だと思います。

 

つまり、<善意による健康の拡大再生産>をはかることです。

そのためには、企業の衛生担当者がタバコについて情報収集することも大切です。
今では禁煙に関する有用なテキストが数多くありますので、そういった資料を活用して、企業の方には理解を深めていただくことも大切です。

 

また、経済産業省の認定制度「健康経営優良法人」の認定基準にも「受動喫煙対策」は必須項目になっています。

 

最近の高校生、大学生は吸わないことが当たり前の世代ですから「スモークフリーな職場」でないと新入社員が確保できにくくなると考えています。

 

2022年度を新たな節目の年度として、この流れの先陣を貼っていただきたいと願っております。

 

 

まとめ:企業の経営者、衛生担当者、喫煙者の方へメッセージ

 

職場の喫煙問題の解決に必要なこと、それは受動喫煙が発生しないための環境づくりです。

 

繰り返しになりますが、第一歩は、決断することです。

つまり、思い切って職場から喫煙スペースを無くしてしまうことです。
タバコが吸える環境を無くしてしまうことで「禁煙企図」が高まり、その結果、禁煙の支援になります。

 

1年間だけでもトライしてみて、支障がなければそのまま喫煙スペースを無くしてしまうのも手でしょう。

 

そして、喫煙者の方に知ってもらいたいのは「禁煙は、何歳からでも遅くない」ということです。

「もう長年タバコを吸ってきたから、今さら…」という方も多いですが、禁煙をはじめた瞬間からリスクは減少していきます。

 

禁煙して10年で心血管系疾患への影響はなくなり、15年経過すると肺がんのリスクも非喫煙者と差がなくなります。

仮に失敗しても、あきらめずに何度でもトライしてください。

 

私の禁煙指導歴は30年以上に及びますが、現在私のクリニックを受診される方で喫煙者はゼロです。私は諦めることも、匙をなげることも決してせずに、根気強くチャンスを待ちました。こうして喫煙者も全員禁煙に成功しました。ですから、禁煙の最大のコツは「成功するまでトライする」ことです。