『嘱託産業医』の相談箱

 

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臨床産業医オフィス

<高円寺南労働衛生コンサルタント事務所>

 

産業医・労働衛生コンサルタント・第一種作業環境測定士・衛生工学衛生管理者

 

飯嶋正広

 

産業医の企業の健康経営参加について(続編)

 

4.健康経営のデメリット

健康経営の導入には、メリットばかりでなくデメリットもあります。

 

1)わかりにくい効果の実感

健康経営は、導入計画を立てる段階で、長期的な取り組みであることを認識し、施策によっては効果が分かりにくい面もあるということを、予め十分に認識してから導入することが大切です。

 

なぜならば、健康経営は①長期的かつ②全社的に少しずつ計画的に取り組むべき業務だからです。そのため、①⇒導入当初は取り組みという投資効果が見えにくいかもしれません。しかも、②⇒個人では効果を感じにくい点もあります。

 

 

2)困難な効果検証のためのデータ収集

健康経営を導入して、投資した資金の効果検証をするためにはデータが必要です。このデータ収集の際にのデメリットは①負荷が大きくなりやすいこと。また、②収集したデータの信頼性や妥当性の検証や集計が難しい作業となりがちであること、また、③効率よくデータを収集し分析するためシステムを導入する場合は、その費用も予め見積もっておく必要があることです。

 

 

3)従業員が感じる負担

健康経営を導入する際には、予め経営計画を周知させ、従業員が受けるメリットを浸透させることに加えて、特定の個人の負荷が大きくなり過ぎないよう組織内の協力・支援体制を確保しておくことが大切です。

 

従業員が取り組む課題が増えると、従業員の中には、課題が増えることでストレスを感じる人もいるかもしれません。従業員の負担が増え、ストレスを増加させてしまっては、健康経営の趣旨に反する結果を招いてしまします。

 

 

5.健康経営の導入方法の4段階

健康経営を導入するためには、導入方法を検討する必要があります。

 

ステップ1:健康経営プロジェクトチームを作る

 

健康経営に取り組むには、経営者はもちろん、産業医や健康保険組合、労働組合、従業員など、さまざまなメンバーが関わることになります。

そのため、健康経営の計画を立て実施するには、組織横断プロジェクトチームを設置したり、人事部門など既存の組織に担当者を任命したりするなど、ある程度チームを組成して取り組む必要があります。              

 

チームメンバーには、要所要所に任務を遂行できる意欲と能力のある人材をリーダーとして任命しましょう。専任者が難しい場合は、一定程度の裁量権を与えたうえで、兼任として所属させることも検討しておくのが良いでしょう。

 

またふだんから職場内勉強会を開催したり、外部研修や外部の成功事例などで資料を集め、健康経営についての知識を深めたりしておくことも有意義です。必要に応じて、産業医など専門家の協力も視野にいれておきましょう。

 

 

ステップ2:課題を確認する

 

健康経営を進める上で、まず従業員の健康上の課題を把握することが必要です。課題の把握のためには、企業が保有しているデータを活用しましょう。

 

基本的には①定期健康診断や②ストレスチェックの受診率や結果をデータ化しておきましょう。それを達成することができれば、徐々に有給休暇の消化率や残業時間の累計・月平均・週平均についても洗い出してデータ化できるとよいです。このように整理された定期的な情報は、健康経営の課題を把握する上での基礎データとなります。それにより、医療費を下げる、メンタル不調者を減らす、生活習慣病の罹患を予防するなど、具体的な目標に向けた施策を検討することができます。

 

 

ステップ3:計画の実行と評価

 

健康経営の課題が把握できたら、課題克服の計画を立てて実行に移しましょう。実行スケジュールは明確にすることが大切です。また、楽しみながら気軽に取り入れられる施策にすると、従業員の参加率も高まります。

 

取り組みやすい計画の例)

・ラジオ体操・社内分煙・アプリでの歩数計測・食後のウォーキング推奨

・リモートトレーニング・休憩室の設置

 

 

ステップ4:社内外へ告知する

 

まず肝心なことは、健康経営に本気で取り組むという会社トップの姿勢と言動です。
健康経営を計画し実施する際には、まず会社トップが内外に健康経営の重要性や自社の取組方針を宣言しましょう。そのメッセージがプロジェクトチームを筆頭に全従業員に伝われば、健康経営は成功への軌道に乗せやすくなります。

 

その後、社内広報などで全従業員に周知しプレスリリースで社外に告知することによって同時に、取引先や顧客へも健康経営に対する姿勢が伝わり、大きな信用を獲得することに繋がって行くことでしょう。