こころの健康(身心医学)

 

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認定内科医、心療内科指導医・専門医、アレルギー専門医、リウマチ専門医、認定痛風医

 

飯嶋正広

 

特別編:不見識で無責任な医学会と医学者

 

医学会が国際紛争に対して緊急声明を発表することがあります。
緊急声明のすべてが不適切であるとまでは考えませんが、十分に吟味すべきではないか、と私は心配しています。

 

なぜならば、「緊急」ということは、下調べが不十分である可能性が高いからです。
専門分野であれば、情報の積み重ねや体系的な分析に基づくコメントが可能になりますが、医学の高度な専門家は国際政治について素人以下の認識しか持ち合わせていないことが少なくないからです。

 

ローマ法皇をはじめとする宗教界の指導者のような声明を、実務世界の専門外の各種代表がリリースすることにどれだけの意味があるのでしょうか。

 

ノーベル賞受賞者である山中伸弥氏の新型コロナに関する若干の発言の影響力は図り知れないのですが、これと同様の弊害をもたらす原因となると言わざるを得ません。

 

なぜなら、事件の背景や真相についての情報を収集し、分析する、という市民としての思考プロセスを脇に追いやってしまうことに繋がるからです。賢者であると思い上がった専門外の愚者が、人々の自然な洞察力や思考力を麻痺させ、救いようのない衆愚にしてしまいかねないのではないでしょうか。

 

これは、医学会にとっても望ましくない傾向であると私は考えます。

私は、日本高血圧学会の会員であるためか、以下の公式メールが届きました。

 

日本高血圧学会理事長の楽木宏実氏は使命感と正義感に燃えているのかもしれませんが、独自の調査や裏付けを取ることなく国際組織の見解に付和雷同することは、インテリにあるまじき恥ずべき行動で、無責任でさえあるといえるのではないでしょうか。

 

残念ながら、極めて軽薄な振舞いであり、おっちょこちょいのお調子者であると言わざるをえません。

 

このようなメッセージは、一見人道的な印象を与えますが、真実を覆い隠し、紛争の根本的解決から遠ざけてしまいかねないのです。責任を感じて自重していただきたいと思います。

 

改めて意識を喚起するまでもなく、多くの人々が願っていることを、敢えて緊急声明といった、鳴り物入りでリリースする場合には、必ず隠された真の意図があると考えてもよさそうです。

 

日本人の多くは、私を含めて「勧善懲悪」物が好きです。私の亡父も、水戸黄門や大岡越前が大好きでした。国際社会においては、明確に白・黒を区分することはナンセンスです。その際大切なのは、白を装っているリーダーの発言の背景と、その狙いをきちんと分析しておくことです。そして、黒とされているリーダーの発言のすべてを問答無用に切り捨てることがあっては、国際平和へ向けての人類の努力が大きく妨げられてしまうことになります。

 

それぞれの発言や行動の真の意図とは何か、誰が、どのような組織が黒幕なのか、ということを考えてみることもインテリジェンス向上のためには必要な作業過程であると思われます。

 

 

 

日本高血圧学会ニュース<臨時便>

 

JMSFおよびISH: ロシアによるウクライナ侵攻に関する緊急声明

 

会会員各位

本学会も加盟しております日本医学会連合および国際高血圧学会から今般のロシアによるウクライナ侵攻について下記URLのような声明が出されましたので皆様にお知らせいたします。

 

日本高血圧学会は人命および人権を侵害するいかなる軍事行為にも強く反対します。

 

世界各国が協調と対話を重ね、平和的外交手段で可及的速やかに事態が収拾されますことを望みます。

 

日本医学会連合:声明はこちら

 

国際高血圧学会:声明はこちら

 

日本高血圧学会
理事長 楽木 宏実