認定内科医、心療内科指導医・専門医、アレルギー専門医、リウマチ専門医、認定痛風医
飯嶋正広
専門医でも迷うリウマチ関連疾患の診断(その4)
たかが参考検査項目、されど血清フェリチンの測定
スティル病の診断をする上で欠かせない大切なポイントは、他のリウマチ性疾患や感染、悪性腫瘍がないことを確認することです。このためには様々な検査と専門医の診察が必要となります。
しかし、成人スティル病だけにみられる検査(診断に特異的な検査)はないため、専門医であっても診断は容易ではないことがあります。
一般的には全身の関節炎がみられるにも関わらずリウマトイド因子、抗核抗体が陰性であることは、他の膠原病とは異なる特徴を示します。非特異的な所見としては白血球増多、炎症反応高値、肝機能障害、血清フェリチン値の上昇などがみられることが多いとされます。ただし、そのなかでも血清フェリチン値の上昇が顕著であることから、スティル病の診断基準(山口基準)の参考項目とされています。
この相談者の方に、成人スティル病の可能性があることを示唆したところ、総合病院のアレルギー感染症科にて、血清フェリチンとともにプロカルシトニン(PCT)や可溶性IL-2受容体の検査を受けたとの報告がありました。
おそらく、その担当医は、感染症や非ホジキンリンパ腫、成人T細胞性白血病/リンパ腫 (ATL)などの悪性疾患の可能性を否定できず、同時に感染症や敗血症の見落としを避けるために慎重な検査方針を立てたのだと想像します。
プロカルシトニン(PCT)は重度の炎症、感染症、敗血症のバイオマーカーであり、濃度が高いほど、全身性の感染症と敗血症の可能性が大きくなります。
またヒト可溶性IL-2受容体は、免疫防御機構の活性化に伴い血中濃度が上昇することが報告されています。そして非ホジキンリンパ腫又は成人T細胞性白血病/リンパ腫 (ATL)ではしばしば血中sIL-2R濃度が高値を示し病態を反映することから、治療効果の判定や寛解又は悪化の推定、再発の予測に有効とされています。
後日確認したところによると、ヒト可溶性IL-2受容体検査の結果から、リンパ系の悪性疾患は否定的である一方、血清フェリチン値はかなりの高値(具体的なデータは不明)であったため、成人スティル病という診断に落ち着いた、とのことでした。
<完>
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